イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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たった1人の頂上決戦

「さぁ始めようぜ…世宇子中…!!」

 

たった1人になりながらも雷牙は再びボールを蹴り進む。今試合幾度目かになる光景に世宇子の面々はうんざりしながらも渋々相手をする。

最初に雷牙に襲い掛かるのはFWのデメテルだ。これまで何度も彼からボールを奪ってきた。今回も同じ筈だ。そう考えながらプレーする彼の前に1つの稲妻が走った。

 

「なんだと⁉︎」

「ヘッ…!トロいぜ…!オメーはポーンかよ⁈」

 

先ほどの彼とは明らかに雰囲気が違う。その事を察したアフロディ以外の世宇子の面々は遊びを止めた。

 

「「“裁きの鉄槌”!」」

 

巨大な両足が雷牙を踏み潰そうと襲い掛かるが雷牙は臆する事なく加速し、突き進む。

 

「“イナビカリステップV2”!」

 

進化した雷鳴が一瞬にして彼らを抜き去る。既に世宇子の半分を抜き去る事に成功した事で世宇子に緊張が走る。

 

「今度こそ止める!“アーククェイク”!」

「“メガクェイク”!」

「“スピニングカット”!」

 

幾度となく雷門を苦しめた地響きが雷鳴と化した獣に襲い掛かる。だが、今度勝ったのは獣の方であった。

 

「“レグルスブレイク”…!!テメェらには地面がお似合いだぜ…!」

 

ここまでで9人を抜き去った雷牙の前に立ちはだかるのは最後にして最大の砦であるアフロディだった。

 

「…まさかここまで来るとは正直予想していなかったよ。だがここまでだ、神に手をかける獣はここで狩られる運命だ!」

 

化身を発動し雷牙に襲い掛かるアフロディ。このままでは彼に勝つ事は出来ない。だとすればやる事はただ1つ、力強く一歩踏み出すだけだ。

 

「うぉぉぉぉぉぉお!!!“雷鳴の王 レグルス零式”!!!」

 

「稲魂の化身がレベルアップしているぞ!」

「これなら勝てる!いっけぇー稲魂ぁ!!!」

 

土壇場で化身をレベルアップさせ“絶対神”に対抗しようとする“雷鳴の王”。王の拳は神に向かって殴りかかる。だが、結果は残酷なものだった。

 

「何度言わせるつもりかな…?“王”に“神”を倒す事など出来ないのだよ!!!」

 

“王”の拳は“神”に通用する事はなく“絶対神”の砲撃によって撃ち殺されてしまった。

 

「れ、“レグルス”が…“神”に倒された…⁉︎」

「ここまでしてもまだ差があるって言うのかよ…!ちくしょう…!」

 

ベンチのメンバーに絶望が走る。今のは間違いなく雷牙が最後の力を振り絞った最高の一撃だった筈だ。だがそれすらもアフロディには通用しない。もはや雷門に勝利の女神は微笑んでいなかった。

 

「ふぅ、随分と手間をかけさせてくれたね稲魂君。もうゲームは終わりにしてあげる....何?」

 

アフロディの足に違和感が感じられる。確かに自分は彼からボールを奪った筈だ、なのに自分の足にはボール1つ分の重さが感じられない。

すると彼は信じられない光景を目にする事になる。

 

「こ、これは…!レグルスの残像(・・・・・・・)……⁉︎」

 

撃ち殺した筈のレグルスの残像がこの場に残っている。それはつまり自分が撃ち殺したのは本体ではない事の証明である。

“神”は“獣”の姿を探した。前、左、右、空中、だがどこを見ても“獣”は彼の目に映る事は無い。遂に“神”は100%あり得ない筈の後ろを探す決意をした。“神”である筈の自分を欺く程のスピードを持つ存在などこの世にいる筈が無い、だが残酷にもそこに“怪物(ヤツ)”がいた。

 

「ここからが真の羽ばたきだな。」

 

響木の言葉通り、“怪物”は翼を生やしていた。天馬とも不死鳥とも天使でもない金色に輝く雄々しくも美しい翼を。

 

“怪物”は力強く一歩踏み出す。

 

己の壁にぶつかるのなら何度だってぶち壊してやる。

 

どんなに時間がかかっても、どんなに倒れ続けても必ず立ち上がってやる。

 

だってそれが俺達人間だけが持つ権利だから。

 

“怪物”は天にいる誰かに知らせるように高らかに叫ぶ。

 

「天まで轟けぇぇぇぇえ!!!“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマム”!!!」

 

『な、な、な、なんとぉぉぉぉぉお!!!!稲魂の化身がレベルアップを超えて進化したぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!?』

 

進化を果たした“レグルス”の姿はまさに“王”を超えた存在である“覇王”に相応しいものだった。神すらも一刀両断出来そうな巨大な斧、見た味方に勇気を与えてくれる金色の翼。

遂に“絶対神”を突破した“怪物”は“海神”を名乗る人間に向けてシュートを放つ。

 

「テメェのお望みの化身シュートだ!!!“マキシマム・オブ・レグルス”!!!」

 

雷牙が出せる最強最大のシュートがポセイドンに向けて襲い掛かる。

 

「“アルカディア・ウォール”!!!」

 

楽園の地が“覇王”の一撃を受け止めようとする。だが、楽園は呆気なく“覇王”によって制服されてしまった。

 

『ゴーール!!!遂に…遂に!雷門イレブンが世宇子に一点をもぎ取りましたぁぁぁぁぁぁあ!!!世宇子すらも圧倒する稲魂雷牙のプレーはまさに“怪物”と言っても過言では無い!!!』

 

「へへへ…やりぃ…っと。危ねぇ危ねぇ…、ちょっと気ぃ抜いたらまたアッチに行きそうだわ…。」

 

体力を使い果たし満身創痍となっている雷牙。

だが、彼はまだ倒れる訳にはいかない。今自分が倒れれば後半を迎える事が出来なくなってしまう。それだけは絶対に避けなければならなかった。

なんとか自陣に戻り世宇子のキックオフから試合が再開する。前半終了まで残り1分を切った。これが前半のラストプレーだ。

世宇子はキックオフそうそうアフロディにボールを渡した。ゴールは未だにガラ空きなのだ。シュートを撃ち込むだけで簡単に点が取れる状況ならば別に馬鹿正直に“怪物”の相手をする必要は無い。

アフロディも同じ意見だったが念には念を入れて全力でシュートを打った。ただのノーマルシュートでも彼が全力で放てばそこらへん必殺技とは比較にならない威力となる。

満身創痍の雷牙では止める事が出来ずに突破されてしまう。アフロディは点を取り返した事を確信する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、世宇子はこの男の存在を忘れていた。雷門サッカーの象徴であり、世界一…いや宇宙一の“サッカーバカ”の存在を。

 

「“ゴッドハンド”!!!」

 

「え、円堂守…!!貴様まで復活したか…!」

 

「まだだ!まだまだ終わってねぇぞぉぉぉお!そうだろ…!!!みんな!」

 

アフロディの目に映ったのは円堂に呼応するように次々と立ち上がる雷門イレブンの姿だった。

 

「稲魂がアレだけ頑張ってくれたんだ…!俺たちも寝ている訳にはいかない…!」

 

まるで怪物を見るような目で雷門を見るアフロディ。彼の脳裏には先日言われたあの言葉が蘇る。

 

『もし“怪物”が眠っているとしたら?』

 

この言葉は奴が特別目にかけている稲魂雷牙に向けられた言葉だと思っていた。だが、実際には違った。雷門こそが”怪物”なのだ。そしてその“怪物”は神を喰らおうとしている、そんな事は認められる訳が無い。

その瞬間前半終了のホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。

 

 

____________

 

「あれ?マネージャー達は?」

 

休息を取りにベンチに行くとマネージャー達の姿が無い。響木達も試合の方に集中していた為マネージャーがいなくなった事に気づかなかったようだ。

 

「みんな、聞いて!世宇子の強さの秘密が分かったわよ!」

 

何処かに行っていたマネージャー達の声がした方向を向くと彼女達はかなり焦っている様子だ。

取り敢えず夏未は自分達が聞いた事を雷門イレブンに話す事にした。

 

 

〜数分前〜

 

夏未はアフロディの強さにある違和感を抱いていた。

 

「アフロディさんが強すぎるって、別におかしいところはないんじゃないですか?」

 

「確かにただプレーするだけならそうね。でもあなた達は稲魂君が1日に化身を発動できる回数は知ってる?」

 

「え、ええ…確か1日に3回が限界だったと思うけどそれがどうかしたの…?」

 

「全国トップクラスの体力を持つ稲魂君でさえ3回が限界なのに、アフロディはそれ以上の回数化身を発動しているのよ?それに持続時間も遥かに長いわ。あまりにもただ強いだけじゃ説明のつかない事が多すぎるのよ。何か嫌な予感がするわ…!」

 

そう言うと夏未は立ち上がり何処かへ移動する。さすがに心配になった木野達は彼女を追いかけると夏未は世宇子の控え室に続く廊下で止まった。

 

「見て。普通控え室に警備員がいるなんて考えられないわ、恐らく知られていけない秘密があるのよ…!」

 

「でも、あんな屈強な警備員がいたら入る事は不可能ですよ…!」

 

「どうにかして気を引く事は出来ないかしら…?」

 

控え室に入る方法を思案していると背後から屈強な警備員が彼女の後ろに立っている。つい叫びそうになるが警備員はジェスチャーをし帽子を取って見せる。警備員の正体は鬼瓦刑事だった。

 

「お、鬼瓦さん…どうしてここに?」

 

「どうしてってのはこっちのセリフだ。ここは嬢ちゃん達がいていい場所じゃねぇ。さっさと雷門の応援に戻りな。」

 

彼女達の身の危険を案じた鬼瓦は夏未達に帰るように言うが彼女達の決意は固く、結局鬼瓦の方が折れる事になった。

 

「はぁ…分かったよ…だが俺が本当に危険と判断したらすぐに逃げるんだ。それが条件だ。」

 

取り敢えず許可をもらえたが相変わらず進展が無い。すると暇だったのか警備員達が世間話をし始めた。

 

「はぁ〜それにしても暇だなぁ、どうして影山さんは自分の選手の控え室にわざわざ警備をしくんだ?」

「噂によると控え室に見られちゃマズイ世宇子の秘密があるらしいぜ?」

 

警備員の話を聞いた鬼瓦は良いアイデアを思いつく。自分のアイデアを彼女達に伝えるとすぐに飛び出し警備員に向けて大声を出す。

 

「話は聞かせて貰ったぞ!この話をマスコミに知らせてやる!」

 

「なっ!ま、マズい!追いかけるぞ!」

「あ、ああ!」

 

まさか自分達の話を聞いている奴がいるとは思っていなかった警備員達は急いで鬼瓦を追いかけ警備を疎かにしてしまう。

その隙に夏未達はなんとか控え室の扉の前まで辿り着き扉を開けようとするが何故か開かない。

 

「あ、あら?開かないわ…もしかして鍵がかかっているのかしら…?」

 

「ど、どうするんですか夏美さん⁉︎このままじゃ警備員の人が戻ってきちゃいますよ!」

 

「少しどいて貰えるかなお嬢さん達?」

 

後ろから鬼瓦とは異なる男性の声が聞こえた為後ろを向くと、知らない男性が彼女達の後ろに立っていた。影山の手先だと判断した彼女達は警戒するが、男は軽く笑みを浮かべると懐からカードキーを取り出し扉を開けた。

 

「ほら、開いたよ。君達はこの先にある秘密が知りたいのだろう?ついてきなさい、案内してあげるよ。」

 

「ついてきなさいって…誰なの貴方は…?それにカードーキーを持っているって事は貴方は影山の手先でしょ…?それなのに私たちの味方をするなんて何を企んでいるの…?」

 

「私が影山の手先?おいおい冗談はよしてくれよ?あんな中卒のブラック企業の社長の部下なんて死んでもごめんだね。それより入るのか入らないか早く決めてくれないかなぁ?」

 

今の夏未達にはこれ以上時間は無い為仕方なく男の後についていく事に決めた。そこで目にしたのは世宇子が試合前にこれみよがしに飲んでいたドリンクだった。

 

「これが世宇子の強さの秘密…?ただのスポーツドリンクじゃないですか?」

 

「それは“神のアクア”と言ってねぇ、一度飲めばあら不思議!常人を遥かに超える身体能力と体力が簡単に手に入るスポーツ選手にとっては夢のようなアイテムなのさ!まぁ副作用としてとんでなく強力な依存性があるけどねぇ。」

 

「つまりドーピングって事ね…。許せないわ、こんな薬に頼って稲魂君達を痛めつけるなんて…!」

 

「でも待って!なんで貴方はその薬にここまで詳しいんですか?さっきの警備員の人達は噂程度にしか知らなかったみたいなのに…?」

 

「ん〜?だって“神のアクア”を作ったのは私だもん。そりゃ詳しいに決まっているだろう?」

 

まさか自分達を助けた男が“神のアクア”の制作者本人だった事に驚きを隠せない。

 

「な、ならどうして私達をここに呼んだのよ⁉︎まさか始末するつもりじゃ…」

 

「少し落ち着きたまえ。別に私は影山さんと違って謀殺はしないさ。やりたい事があるから影山さんの足がつかない労働力が欲しかっただけ。」

 

「やりたい事…?それが私達と何の関係があるというの?」

 

「簡単な話さ、“神のアクア”をただのスポーツドリンクに移し変える。でもこの量を全て移し替えるのは少しめんどくさくてねぇ。誰に頼もうか悩んでいる時に君達と出会ったのさ。」

 

ますます男の意図が読む事が出来ない。“神のアクア”の制作者という事は彼は影山の人間の筈だ。だが、彼がしているのは完全に敵に塩を送る行為に他ならない。だが、夏未達はそれ以外出来る事は無い為仕方なく予備のスポーツドリンクと“神のアクア”を移し替える。

 

「貴方の目的は一体なんなの…?やっている事が滅茶苦茶だわ…。」

 

「あー、あまり変態を見るような目をしないでくれるかい?まぁ君の質問に答えるとするならば彼へのお仕置きとさらなる化学反応の為…とだけと言っておこうか。じゃあねお嬢さん達、迷子にならないように気をつけるんだよ。」

 

そう言って男は去って行く。彼女達は不安を感じながらも世宇子の弱体化に成功した事をひとまず喜び雷門が待つベンチに戻った。

 

〜現在〜

 

「という訳なのよ。だから恐らく世宇子は後半は弱体化すると思うわ!偽りの神様なんて叩きのめしちゃいなさい!」

 

余程ドーピングをしていた事が頭にきているのかやたら物騒な事を言う夏美。

だがドーピングによってサッカーを汚された怒りは全員同じだった。

 

「許せない…!サッカーを…俺たちが大好きなサッカーをどこまで汚せば気が済むんだ…!」

 

「落ち着けよ守、怒りに飲まれんじゃねーぞ。俺たちのサッカーで神を気取っているヤツらをぶっ飛ばそーぜ!!」

『おう!』

 

雷牙が指し示した道により雷門の士気がより一層上がる。しかし、対照的にアフロディは俯いていた。

 

「…フロディ…アフロディ…!オイ!聞いているのか⁈」

 

「!…すまない、少し考え事をしていたようだ…」

 

「大丈夫か…?それよりも“神のアクア”の補給の時間だ。後半で必ず雷門を叩き潰すぞ。確かに稲魂の化身が進化したのは予想外だったがお前なら必ず倒せる筈だ。奴のマークを頼んだぞ。」

 

そう言いながら“神のアクア”を口にするメンバー達。アフロディもすぐに“神のアクア”を飲み干し自分に言い聞かせる。

“神のアクア”がある限り自分は無敵だ。自分は選ばれた人間なのだ、負ける事など許されない。さっきのは油断した隙を突かれただけだ、自分の敗北では決してない。

後半が始まるまで何度も自分にそう言い聞かせた。

 

 

 

__________

 

ピーーーッ!!!

 

運命を決める後半戦が始まるホイッスルがスタジアムに鳴り響く。雷門ボールから始まった瞬間世宇子は遊びを捨てて襲いかかる。

世宇子のメンバーは自分達が飲んだのがスポーツドリンクであると気づいていないが元々軍事用の薬である“神のアクア”に耐え切れる肉体を持った選手達の集まりなのだ。彼らのフィジカルは“神のアクア”無しでも雷門を凌駕していた。

それを裏付けるかのようにDFのディオが豪炎寺のボールを奪おうとするが豪炎寺でも簡単に突破出来ない。だが雷門は最初からフィジカルで勝負するつもりは一切無い彼らには信頼する仲間達がいるのだ。フィジカルで敵わないのなら仲間をの手を借りる。それが雷門のサッカーだ。

 

「な、何故奴らを止める事が出来ない⁉︎俺達は“神”を手に入れた筈なのに⁉︎」

「貴様らが言っていた“神”なぞ、所詮影山の手によって作られた“偽りの神”だったという事だ。」

 

狼狽える世宇子の姿にかつての帝国の幻影を見た鬼道はそれすらも振り切る為に歩みを進める。彼に呼応するように雷牙と豪炎寺が集まり、再びあのシュートを放つ。

 

「今更“イナズマペンギン”か!!つくづく学習しない奴らだ!!」

 

「学習できていないのは貴様らの方だというのを分からせてやる!!いくぞ稲魂、豪炎寺!!」

 

「「おう!」」

 

再び3人でシュートを放ち11匹のペンギンが出現する。だがペンギン達が纏う稲妻の量は先ほどとは比較にならない。

 

「「「“イナズマペンギン No.11 G2”!!!」」」

 

このタイミングで更なる進化を果たしたペンギン達はポセイドンの“アルカディア・ウォール”を悠々と破りゴールネットを激しく揺らす。

 

『ゴーール!!雷門さらに追加点だぁぁぁぁぁあ!!あと一点を取れれば同点です!!』

 

更なる成長を見せる雷門イレブンに世宇子は完全に圧倒されていた。自分達が雷門に劣っている事実を認める事は決してない特に彼は。

 

「認められるかぁぁぁぁぁあ!!!僕は神だ…!この程度で終わってたまるかぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

もはや半狂乱になりながら化身を発動するアフロディ。その姿にはかつてあった美しさは微塵も感じられない。

雷牙は発動に足りない体力を気合いで補い、自身の全力の塊を出現させる。

 

「“雷鳴の覇王 レグルス・マキシマム”!」

 

すると世宇子中のメンバーがアフロディの援護に入ろうとしている。

だが、それを見越していた鬼道が壁山に指示を出す。

 

「壁山!稲魂とアフロディを囲むように“ザ・ウォール”を発動しろ!急げ!」

 

「わ、分かったっス!“ザ・ウォール改”!!」

 

鬼道の無茶振りにも進化させる事でなんとか対応し、巨大な壁が雷牙とアフロディを囲む。まるでその様は古代ローマにあったコロッセオを思わせる。

 

「1対1になっただけで僕に勝てると思っているのかい…?自惚れのもいい加減に...「自惚れてんのはオメーだわ、バカアフロ。」....何だと?」

 

「一度俺に負けてんのに相変わらず力押しで戦おうとする…。負けた事を認めずに次に活かそうともしねぇ、そんなヤツになぁ俺は負ける気がしねぇーんだよ!!!」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 

二度目となる雷牙VSアフロディ。“マキナ”は11台の砲台から夥しい数の砲撃が“レグルス・M(マキシマム)”を襲うが今度は巨大な斧によって全て弾かれてしまう。

全て打ち尽くした“マキナ”は攻撃する手段を失い、その隙に“レグルス”の斧が“絶対神”を一刀両断する。

 

『おおっとぉぉぉぉお!!!“絶対神”と“雷鳴の覇王”の決闘は“覇王”の完全勝利で幕を閉じたぁぁぁぁぁあ!!!覚醒した稲魂を止められる選手もはや存在しなーーーい!!!』

 

「“マキシマム・オブ・レグルス”!!!」

 

二度目の覇王の斧がポセイドンに襲いかかる。ポセイドンも“アルカディア・ウォール”で立ち向かうがやはり止める事が出来ず、遂に同点に追いつかれてしまった。

 

『ゴーール!!!!遂に…!遂に!雷門が同点に追いついたぁぁぁぁぁぁあ!!!残り時間も残り僅か!雷門逆転なるかぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!?」

 

3対3。あり得ない、“神”の力を得た世宇子(我々)がただの人間の集まりである雷門に負ける事などあり得ない。試合が再開しアフロディにボールが渡る。彼は化身を出そうとするが、オーラが上手く定まらない。それどころか身体中に力が入らない。まるで体力の全てを使い果たしてしまったような倦怠感を感じる。

 

「な、何故だ⁉︎この僕が体力切れだと…⁉︎ありえない…!“神”の力を得た僕が…!」

 

「ありえるんだよそれが、テメーは使いすぎたんだよ“化身”をなぁ。」

 

「稲魂雷牙ァ…!貴様に何が分かる…!僕は正真正銘“神”の力を得た筈なんだ…!貴様らとは生物としての段階が違う…!」

 

「それも“神のアクア”ってヤツの力だろーが。結局テメーらは借り物の力で自惚れているだけの哀れなピエロだったんだよ。」

 

雷牙の言葉に反論する事が出来ず、アフロディは膝をついたまま立ち上がる事が出来ない。

遂に空高く飛ぶ事で目を背けて続けていた現実という名の地面に叩きつけられた“偽りの神”。

それ以外の“神”達も最大戦力であったアフロディが倒れた事で少なく無い衝撃を受け、僅かにプレーが乱れてしまう。

だが地に堕ちても流石は“神”を名乗っていただけはある。司令塔たるアフロディがいなくても自分達で判断し、“イナズマペンギン”を警戒し体力的に余裕のある鬼道に厚いマークが入る。

その為雷門は豪炎寺か雷牙で点を取らざるを得なくなるが、もう2人は度重なる化身の酷使により体力の限界である。お互い“ファイアトルネード”と“キングレオーネ”を一発放てる体力しか残っていない。

だが、それではポセイドンの“アルカディア・ウォール”を破れるとは思えない。ならばどうするか?答えはもう決まっている。

 

「豪炎寺!!!一か八かで2人で“ファイアトルネード”を撃つぞ!!それしかポセイドンを突破する方法はねぇ!!」

 

「稲魂…。いや、分かった!!雷牙(・・)!!」

 

土壇場で連携技に挑戦する雷牙と豪炎寺。彼らの巧みな連携により遂に世宇子のゴール前まで辿り着く。

そしてボールを上空に上げると左右対称になるように“ファイアトルネード”の体勢に入る。

当然今雷牙が言い出した事なので練習など一度もしていないぶっつけ本番だが不思議と今の彼らには失敗するビジョンが見えない。

 

「行くぜぇぇぇぇぇえ!!!豪炎寺ー!!!」

「絶対に決めるぞ雷牙!!!」

「「“ファイアトルネードDD(ダブルドライブ)”!!!」」

 

熱き炎と旋風が一つになった事で“ファイアトルネード”の威力が数十倍にまで増幅される。

進化した“イナズマペンギン”すらも超える威力となった彼らのシュートはポセイドンに楽園の地を出させる間も無く彼ごとゴールに叩き込む。

 

『き、決まったぁぁぁぁぁぁぁあ!!!遂に雷門が怒涛の攻撃により逆転だぁぁぁぁぁぁあ!!!!残り時間もあと僅か!このまま雷門の勝利となるかぁぁぁぁぁぁあ!!!!?』

 

_______

 

別室で世宇子の試合を見ていた影山は世宇子が逆転された事でようやく“神のアクア”が機能していない事を確信した影山は、十中八九元凶であろう男に連絡を入れる。電話の先にいる男は1コールで電話に出ると気の抜けた返事をする。

 

『やぁ影山さん。遂に逆転されちゃったねぇ?他のみんなの動きも悪いし“神のアクア”の不調かなぁ?』

 

「貴様…!よくもぬけぬけとそのような口が叩けるな…!先ほど鬼瓦らしき人物が見かけたと報告を受けたが、奴如きに控え室の鍵を開けられるとは思えん!貴様が何らかの入れ知恵をしたな!!」

 

珍しく怒声を響かせる影山だが、“雷帝”の声には反省の気持ちは込められていない。

 

「ハハハ、私に何のメリットがあって鬼瓦(・・)に手を貸さなければならないのですかぁ?あんな80近くになっても我々の近くを飛び回る蠅に手を貸すほどこっちも暇じゃあありませんよぉ。それとも何か証拠でも?証拠がなくちゃただの被害妄想ってどこかの誰かさんがよく言っているではありませんか。」

 

普段自分が鬼瓦に対しとぼける際の決まり文句をそのまま引用された影山はこれ以上何も言い返せなくなる。だが“雷帝”は言葉を続ける。

 

「まぁ恐らくどこぞの誰かがカードキーで控え室を開けさせ“神のアクア”をただスポドリに入れ替えたのでしょうねぇ、ですが私の予想では貴方は“神のアクア”を入れ替えた人物に感謝する事になるでしょうね〜。それじゃ私は試合を見る事に忙しいので切りま〜す。」

 

“雷帝”は一方的に電話を切り、スマホからは電子音だけが鳴り響く。今すぐ奴の部屋に行って自らの手で始末してやってもいいが、最後の言葉が気になった影山は取り敢えず結果を見てから処罰を考えてやる事にした。

そして、影山は“雷帝”の言葉の意味をすぐに理解する事となる。

 

_______

 

雷門が逆転した事により世宇子は完全に戦意喪失していた。“神のアクア”を持ってしても雷門中に逆転された事実は彼らの心をへし折るには十分すぎた。キックオフが始まってもまともに走ろうとする選手はいない。

“奴”はそんな彼らの姿に失望する。

 

『これが神の姿か…?なんと醜いものだ…』

 

神とは本来、人間の手には一生届かない崇高な存在だった筈だ。だが今の奴らの有様はなんだ?散々見下していた筈のクズ共に良いようにされているではないか?

 

『私は…こんなクズ共を仲間と思っていたのか…?そもそも何故神が複数存在しているのだ?完璧な存在ならば最初から1人だけでいいではないか?』

 

もはや“奴”は苦楽を共にしてきた筈の仲間への情を完全に失っている。いや、最初から仲間としての意識は無かったのだろう。

 

『翼をもがれた神など私は神として認めない。せめて私が“さらなる高み”へと昇る為の踏み台として利用してやろう。』

 

“奴”がもう残っていない筈の気を高めると同時に世宇子のメンバーが1人、また1人と倒れていく。

 

「な…何が起こってんだよ…!!」

「み、見ろ!“奴”が…!アフロディ(・・・・・)が立ち上がってくるぞ…!!みんな構えろ!!」

 

遂に自分以外の選手が倒れると同時に立ち上がった“アフロディ”。しかし、彼の様子は何処かおかしい。その瞳には先ほどまであった高貴さはもはや存在せず、あるのは勝利への執着心にまみれた狂気だけだ。

 

「ククク…ハハハ…ハーハッハッハッハ!!!もはやチームなどどうだっていい!!僕こそが…いや僕だけが“神”なのだ!!!“神”の名を語る罪人共は僕の生贄になるがいい!!!」

 

チームメイトの気を完全に吸収し再びフィールドに“絶対神(デウス・エクス・マキナ)”を顕現させた“唯一神(アフロディ)”。

頂上決戦の終わりはもう近い。




後半の展開が少し急ぎ足だけどアニメも似たような感じだし許してください。次回決着です。
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