雷門中を出発したイナズマキャラバンは現在高速道路を走っている。次々と変化する街並みに雷門イレブンは興奮を隠せない。
「なんかワクワクするよなぁ!行った事のない町、見た事のないチーム!どんな奴らが全国にいるんだろうな!瞳子監督、今から行く目的地はどこなんですか?」
まるでピクニックに行くかのような雰囲気を出す円堂に瞳子は若干呆れながら答える。
「今から私達が行く目的地は奈良よ。」
『奈良?』
「奈良…、そうか!『中谷』をスカウトしに行くんですね、監督?」
「『中谷』?そいつってそんなスゲー選手なのか鬼道?」
「ああ、帝国時代に見た資料にあった名前だ。なんでも“奈良最強”、“Mr.あびせげり”と言われるほどの名選手らしい。」
“Mr.あびせげり”はともかく、“奈良最強”というビッグネームを聞いた円堂は目を輝かせるが、瞳子は残念そうに首を横に振る。
「残念だけど彼をスカウトする事は出来ないわ。既に彼がいる学校にエイリアが襲撃をかけて全員病院送りにされたそうよ。」
「え…?じゃあなんでわざわざ奈良に?」
瞳子がタブレットを見せるとそこには『総理大臣誘拐⁉︎犯人は宇宙人!!』と大きく書かれたネットニュースが載っていた。
「ジェミニストームの奴らが総理大臣を誘拐だと…!一体何が目的なんだ?!」
「さぁな、だがこれで奴らの居場所が分かった事だ。今は奈良での決戦に思考を向けるべきだろう。」
「鬼道君の言う通りよ、道中練習時間を挟みつつ、今から奈良まで向かうわ。古株さん運転をお願いします。」
「おっしゃ、任せとけぃ!!安全運転で飛ばすぞぉ!」
瞳子から頼まれた運転手の古株はテンションを上げ早速奈良に向かった。
キャラバンを走らせてから早数時間、東京を離れたキャラバンは人気の少ないキャンプ場に止まっていた。
「ふぁ〜〜…、よく寝た〜。もう奈良に着いたのか?」
「違うわ、今から練習を始めます。軽いアップを済ませたら今日の練習メニューを伝えます。各自ユニフォームに着替えてきなさい。」
瞳子の指示通り、ユニフォームに着替えた雷門イレブンは軽いアップを済ませ瞳子の下に集まった。
「なぁ鬼道?瞳子監督ってどんな練習をさせるんだろうな?」
「やってみなくちゃ俺にも分からん。ただあの人は響木監督が太鼓判を押した人材なんだ。生温い特訓ではない事は確かだな。」
円堂と鬼道は瞳子がどんな練習メニューを立てているのか想像するが、響木とも影山とも違う独特の雰囲気を持つ彼女の考えている事は鬼道にも予想できなかった。
「今から貴方達には私がいいと言うまであそこにある山を走りながら登り降りしてもらいます。」
「え〜と…、具体的にはどれくらいでやんすか?」
「聞こえなかったの?私がいいと言うまでよ。安心して、休憩時間はちゃんと設けてあげるから。」
雷門イレブンは瞳子が指差した山を見るがどう考えても往復する高さじゃない。
すると風丸が真っ先に山に向かって走り出した。
「何をしてるんだお前たち!エイリア学園との決戦は近いんだ!俺たちに立ち止まっている時間はない!早く行くぞ!」
「は、はいっス!」
「なんか風丸さんが怖いでやんす…。」
風丸について行く雷門イレブンだが、その中で豪炎寺は浮かない顔をしていた。
昨夜、エイリアの刺客から言われた言葉が頭を離れないのだ。
「豪炎寺…?何ボーッとしてんだ、早く行こうぜ!」
「あぁ…、今行く。」
すぐに不安の表情を隠した豪炎寺だが瞳子はそれを見逃さなかった。
「あれ、瞳子監督?どこに行くんですか?」
「少し用事があるから離れるわ、何かあったら呼んでちょうだい。」
マネージャー達から離れた瞳子はスマホを取り出し、電話番号を入力し電話をかける。
「もしもし?今は大丈夫かしら…?少し調べて欲しい事があるの、……そう、なら次のジェミニストームとの試合までに結果を送ってちょうだい、頼んだわよ…。」
瞳子は電話の先にいる人物の了承を得ると、要件を伝えてマネージャーの元に戻る。
瞳子の予想が正しければジェミニストームとの戦いはあと1週間後、それまでに彼らをある程度ジェミニと互角に戦う為のプランを頭の中で立てていた。
〜数時間後〜
既に走り始めて数時間。1時間ごとに10分ほどの休憩が入っていたが今日1日はずっと走りっぱなしだった。流石の雷門イレブンでも山の登り降りはキツい。
「ぜぇぜぇ…、15往復目完了…。」
「そこまでよ、今日の練習はこれで終わりにします。ストレッチをして足に乳酸を溜めないようにしなさい。」
ようやく地獄の特訓が終了したがあまりのキツさに殆ど動く事が出来ない。
「スゲェな俺たち…3、4時間くらい山を往復してたんだぜ…。イナビカリ修練場を初めて使った時も死ぬかと思ったが、こっちもこっちで死ねる特訓だぜ…。」
「で、でも…監督は多分俺たちにもっと体力を付けさせる意図があって、この特訓をさせたんだよ…きっと‥、豪炎寺だってそう思うよな…?」
「あぁ…多分な。」
「ヘッ…、どうだかなぁ…?」
未だに瞳子の事を信用していない染岡は少し口を悪くする。彼自身も練習の意図を理解していない訳ではないが、いかんせん先日言われた言葉が彼女を認める事を拒んでいるのだ。
「円堂の言う通りだ…、確かに奴らのスピードは脅威だが今の俺たちに必要なのはとにかく体力だ‥。きっと結果は後からついてくるさ…。」
ストレッチが終わり、近くにあった温泉に入った雷門イレブンはマネージャー達が用意してくれた夕食のカレーを食べる。何人かは自主練をしようとしていたが瞳子がそれを許可せず。明日への疲労を残さない為に、今日はもう寝るように指示された。
瞳子の命令に納得のいかない様子のメンバーも何人かはいたが、結局今日の疲れが残っていた為、すぐに全員眠りについたのだった。
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綺麗な月が辺りを照らす時間帯になった頃、キャラバンから少し離れたところでボールを蹴る影がある。そのドリブルのスピードはまさに疾風の如し俊敏さだ。
月明かりに照らされて判明する影の正体は風丸だった。他のメンバーはハードな練習の疲れで眠っている中、彼だけは睡眠欲求をなんとか抑え自主練に励んでいた。
「ハァハァ…まだだ!この程度のスピードじゃ奴らに勝つ事は出来ない…!」
既に日本でもトップクラスのスピードを持つ彼であるが、本人はまだまだ納得していない様子だ。
「私は明日への疲れを残さない為に休めと命じた筈だけど?」
いつのまにか現れていた瞳子が風丸のオーバーワークを咎める。だが風丸はただ練習するだけでエイリア学園に勝てるとは思っていなかった為止める気にはなれなかった。
「か、監督…。すみません、でももう少しだけ練習させてください…。」
「駄目よ。今の段階で明日までの回復効率が40%も落ちているわ、明日も場所は違えど今日と同じ距離を走らせるわ、この調子じゃ貴方が脱落第1号になるわよ。それで本当に稲魂君に顔向けできるの?」
これが響木であったならば、溜め息をつきながら自主練を許可してくれただろうが、瞳子は違っていた。流石に雷牙の名を出されたら風丸は何も言えなくなる。仕方なく今日の自主練を打ち切り、キャラバンに戻った。
風丸がキャラバンに戻った事を確認すると瞳子は再びスマホを取り出し、メールを確認する。
「…、やっぱり豪炎寺君はエイリア学園に家族を人質にとられているみたいね…。次のジェミニストームとの試合の結果次第で彼の対応を考える必要がありそうね…。」
豪炎寺が今置かれている状況を理解した瞳子は昼間にかけたものとは違う電話番号を入れ、電話をかけた。
『はいもしもし?瞳子のねーちゃんか。どうしたんだこんな時間に?』
「夜分遅くにすみません鬼瓦さん。貴方に頼みたい事があります。」
事情を一通り聞いた鬼瓦は少し黙り込む。
『…事情は分かった。だが1つ腑に落ちねぇ事がある。あんたはその情報をどこで仕入れたんだ?それだけじゃねぇ、エイリア学園が現れる前にあんたは響木に接触していた。まさかと思うがエイリアと繋がってるなんて言わねぇよな?』
鬼瓦の疑問はもっともな事だった。
響木はあえてはぐらかしたが、瞳子はジェミニストームが現れる数日前に響木と接触していた、それだけでなくジェミニストームの陣形、どうすればある程度彼らに対抗できるかまで教えて。
その時はイかれた女性だと思って適当にはぐらかしたものの、実際彼女の予言の通り、ジェミニストームは現れたのだ。
これでエイリア学園との繋がりを疑わない方がどうかしている。
「…すみませんが今はその事について話す事は出来ません。ですがその時が来たら必ず正直に話す事を約束します。だから、どうか豪炎寺君の家族の保護をお願いします。」
瞳子は答えてくれなかったものの、少なくとも彼女の忠告を無視するのは今の雷門にとってマイナスでしかない。仕方なく鬼瓦は彼女の願いを了承し、すぐに豪炎寺一家の周辺に怪しい影がないか調査を命じた。
『取り敢えず今はあんたを信用してやる。だがな!もし雷門イレブンに何かあったら俺が絶対許さねぇ!それだけは肝に銘じておきな。』
「ありがとうございます鬼瓦刑事。それではまた。」
電話を切った瞳子は空に浮かんだ綺麗な満月を見る。それはかつて家族と共に見ていたあの月と全く同じ輝きであった。
「待っていて
瞳子の瞳には硬い決意がみなぎっていた。
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「おまえさん達、遂に奈良に到着したぞい!」
「ふぁ〜…。古株さんありがとうございます〜。ん〜!ここが奈良か!噂通り鹿がいっぱいいるな〜!!」
朝早くキャラバンを走らせ、昼前には目的地の奈良に到着した。
街の至る所には鹿がウヨウヨと放し飼いされている。
「取り敢えず総理大臣が誘拐された公園に向かうわ。そこに何かエイリア学園の手がかりが残っているかもしれないわ。」
その後奈良公園に向かった雷門イレブンであったが、やはり総理大臣が誘拐されたとあって公園内では既に警察が捜査している最中であり、中に入らせてもらえなかった。
そこで夏未が父に頼み、なんとか警察を説得する事で解決した。
「雷門の理事長ってどんだけ顔が広いんだよ…。」
「あはは…、鬼瓦さんに頼んでもらったんじゃないかな…?」
そんなこんなで公園に入ると、ここシンボルである大きな鹿のモニュメントが破壊されている。
「今からエイリア学園の痕跡を探します。貴方達は何人かに分かれて行動しなさい。万が一ジェミニストームと遭遇したら、すぐに逃げて私に連絡する事。いいわね?」
雷門イレブンは2人1組に分かれて公園内を散策していると目金と壁山ペアが川の中で何かを見つけたようだ。
「ハァハァ…。やっと取り出せた…このボール一体何キロあるんだ⁈」
川の中から取り出したのはジェミニストームが学校を破壊する時に使っていた“黒いボール”だった。だが、その重さは普通のボールとは比較にならない程重い。
「この質感…、恐らく使われている素材は鉄だろうな。重さも10キロは軽く超えているだろう…。」
10キロを超える鉄球を軽々と蹴る彼らの身体能力を改めて思い知らされた雷門イレブン。その時橋の方向から男の怒声が聞こえる。
「全員そこを動くな!!」
橋の方に目をやると黒服を着た屈強な大人達が、彼らを睨みつけていた。
「もう逃さんぞ!総理を襲った宇宙人どもめ!」
「お、俺たちが宇宙人…?」
どうやら彼らは雷門イレブンを宇宙人だと勘違いしているようだ。
「警察には話がいってるんじゃなかったのか?」
「そんな事私に言われても困るわ…。それにあの方達は警察なのかしら?」
「我々は総理直属の護衛!“SP フィクサーズ”だ!」
何故かサッカーチーム名のような名前のSP集団だが、証拠の身分証を見せつけられて何も言えなくなる。
「本物の護衛みたいですが、勝手に俺たちがエイリアだと決めつけるのはおk..「宇宙人はどこだぁぁぁぁぁぁあ!!!」誰だ⁉︎」
風丸の言葉を遮ったのは、彼らと同じ黒服を着た女の子だった。
最初は少し興奮していた様子の彼女だったが、円堂達の前に立つと何かに気づいたような顔をし、落ち着きを取り戻す。しかし、次の瞬間不敵な笑みを浮かべると再び彼らを疑い始めた。
「だから…俺たちは宇宙人じゃないって!」
「そこまで言うなら証明してもらおうか!“サッカー”でね!」
あれよこれよという間に、近くにあるグラウンドでユニフォーム姿で立っている雷門イレブン。
「…なんか勢いのまま試合する事になったが、なんで宇宙人じゃない事を証明する為にサッカーをするんだ…?」
「まあそう言うなって風丸!サッカーのプレーであいつらとは違うところを見せれば、きっとあの子だって分かってくれるさ!」
「そういうもんなのか…?」
絶妙に納得のいかない表情の風丸だが、それで自分達がエイリアではない事に納得してもらればもういいやと思考を打ち切った。
「今回の試合の戦術は鬼道君に任せるわ。私は特に口を出しません。」
「口を出さねぇって…、あんたは俺たちの監督だろうが!せめて気の利いたアドバイスくらい言えよ!」
「まだ誤解しているようね、私達の目的はエイリア学園を倒す事。奴らに勝つ為には大人程度、私の指示無しで勝ってもらわなくちゃ困るのよ。それとも染岡君は監督がいなきゃ試合が出来ない程度にしか覚悟はなかったのかしら?」
瞳子の言葉に思わず殴りかかりそうになる染岡だが、円堂達が必死に止める。瞳子は特に気にせずベンチに座った。
「落ち着け染岡。恐らくあの人は俺達がどんなサッカーをするか見たいのだろう。それにあの人の言葉通り、SPクラスの大人に勝てなければ俺達はジェミニストームに勝つ事は出来ない。ここは怒りを抑えろ。」
鬼道の解説を聞き、ようやく怒りを抑え込む染岡だがやはり納得はしてないようだ。
取り敢えず、各自鬼道が指示したポジションに入り試合に挑む。今回のスタメンは以下の通りだ。
FW:染岡、豪炎寺
MF:半田、鬼道、一之瀬、松野
DF:風丸、土門、壁山、栗松
GK:円堂
「稲魂さんがいないのが寂しいっスね…。」
「壁山、弱音を吐くな。あいつは俺たちにそんな事を言わせる為に犠牲になったんじゃない。だから俺があいつの分までプレーする!だからお前も思いっきりやれ!」
「風丸さん…、はいっス!俺、稲魂さんの分まで頑張るっス!」
「ははは!なんだか雷牙みたいな事言うな、今日の風丸は!」
「…そうかな。だが俺はあいつみたいになれやしない。ただ俺のプレーをするだけだ。」
目の前で散って行った友の姿を思い出し、目の前の試合に集中する風丸。試合開始のホイッスルがグラウンドに鳴り響く。
『さぁ始まりました!雷門イレブンある所!常に角馬圭太の実況あり!前代未聞の中学生対大人のガチンコ勝負!果たして勝利の女神が微笑むのはどちらなのでしょうか⁉︎』
茂みの中から飛び出して来た角馬圭太にマネージャー達は驚く。後ろに彼が乗っていた自転車があるが、まさか自転車で東京から奈良まで着いてきた訳じゃないだろう…多分。
「行くぞ豪炎寺!大人に目にものを見せてやろうぜ!」
「ああ、行くぞ!」
キックオフ早々、FW達は攻め上がる。そこにDFのスミスが染岡の前に立つ。
「行かせん!“ボディシールド”!!」
「ぐぁぁあ!?」
彼の必殺技の“ボディシールド”の衝撃波によって染岡がボールと共に吹き飛ばされる。そのこぼれ球をSPが拾おうとすると、風がボールを奪い取った。
「雷門のDFがここまで上がって来るだと⁉︎くそ!お前達守備を固めろ!」
「悪いですが、貴方達のスピードでは俺には勝てませんよ!」
その言葉通り、風丸は持ち前のスピードでどんどんSP達に必殺技を出させる間もなく抜き去って行く。
ゴール前まで辿り着く風丸だが、FW陣のパスコースは既に塞がれている。しかし、彼は最初から彼らにパスを出す気などなかったようにさらに加速する。
「(おかしい…、
その光景を見ていたキャプテンである女の子…塔子は、風丸の行動に疑問を抱きつつも取り敢えず様子を見る事にした。
「見ていろ稲魂!これがお前が完成させたがっていた必殺技だ!!」
そう叫ぶと風丸はトップスピードで走り出す。そのまま加速により生じたエネルギーをボールに乗せるようにシュートを放つ。
「“
放たれたボールは緑のエネルギーを纏いながらゴールに襲いかかる。染岡の“ワイバーンクラッシュ”にも匹敵するスピードにキーパーは反応する事は出来ず、あっさり一点を奪った。
『ゴーール!!!まさかの先制点を奪ったのはDFの風丸一郎太だぁ!!今までの彼からは考えられないプレーに思わず見惚れてしまいました!!』
「申し訳ありません
「大丈夫だって、私も彼のプレーが見たくなったからお互い様だよ。」
お嬢様と呼ばれた塔子は点を取られた事をそこまで気にしていない。だがこのまま負けるつもりも無いようだ。
「そらそら!どんどん攻めるよ!」
『はっ!!』
キックオフ早々先ほどの意趣返しと言わんばかりに攻め込むSPフィクサーズ。
流石総理のSPを勤めているだけあって、体幹の強さは中学生とは比較にならない。
「まともに奴らと張り合おうとするな!パワーには同じパワーではなく、テクニックで対抗するんだ!」
今の雷門では力勝負で勝てないと判断した鬼道は、テクニックで対抗するように指示を出す。すると、SPフィクサーズも簡単に攻め込めなくなり、ボールを奪われた。
「やるね!力で勝てないとみるやテクニックに切り替える判断力、流石だよ!でもそう簡単に私を抜けると思わないでね!」
塔子が立つ地面を起点に巨大な塔が出現し、塔子は彼らを見下す。すると上空から雷がボールを持つ選手目掛けて降りかかった。
「“ザ・タワー”!!」
「うわ⁉︎」
塔子はボールを奪い、ゴール目掛けて攻め上がる。彼女のテクニックはかなりの実力であり、簡単に止める事が出来ない。
「行くよ宇宙人!私のシュートを受けてみろ!」
「へっ!こい、止めてやる!」
塔子が放ったシュートは当たって普通のノーマルシュートであったが、シュートの切れはかなりのものだ。
「“ゴッドハンド”!!」
円堂の十八番である“ゴッドハンド”が炸裂する。雷門イレブンは円堂がシュートを止めた事を確信するが、本人には違和感を感じていた。
ただのノーマルシュートの筈なのに回転力が落ちる気配が見えないのだ。すると突風が吹き、ボールが手に沿うようにすり抜けたのだ。
「何⁉︎し、しまった!」
「うぉぉぉぉぉお!!!」
点を取られてしまったと確信していた円堂だが、そこに風丸が割り込み体を張ってシュートを止めてみせた。
「何が起こったでやんすか…?まるでボールが滑ったみたいでやんすが…。」
「恐らく、あの女子はシュートを撃つ際にボールを竜巻でコーティングしていたんだろう。コーティングされたボールは衝撃を受けると解放され、先ほどのような動きをするわけだ。だか、あそこまで高等なテクニックが可能な選手が日本にもいるとはな…。」
鬼道は先ほどの塔子にシュートに思わず感心してしまう。同時に塔子はシュートを止めてみせた風丸を見ると突如笑い出す。
「あっはっはっは!まさか私の切札を止められるとはね!流石は日本一の雷門イレブンだよ!」
「いや〜それほどでも…って今なんて言った⁉︎俺たちがエイリア学園じゃない事を最初から分かっていたのかよ⁉︎」
「へへへ!私たちの世代でサッカーをやっている奴に雷門イレブンの顔を知らない奴はいないよ!でも、こうでもしないと頭の硬いスミスは宇宙人だって決めつけるからね、あと私もあんた達と試合したかったし。」
まさか自分達が宇宙人ではないと、最初から気づいていた事に呆れる雷門イレブンだが、塔子本人は笑っている。
「ははは!面白い奴だなお前。名前はなんて言うんだ?」
「取り敢えず塔子って呼んでよ!」
疑いは晴れたものの、今更試合を止める選択肢は雷門にも塔子にも無い為、お互い全力を尽くして試合を続けた。試合結果は3対0で雷門の圧勝だった。
「はぁ、負けたよ。流石は雷門イレブンだ、まさかSPでも歯が立たないなんてね。」
「いや、そっちだって凄かったよ。それにあんなシュートを受けたのは俺も初めてだ。全国にはまだまだ凄い選手がいるんだって事を改めて理解出来たよ。」
お互いの健闘を讃え握手をする円堂と塔子だったが、塔子は意を決したように真剣な顔をし円堂にある頼みをする。
「円堂…、1つお願いがあるんだ。」
「お願い?」
「総理を助ける為に私を雷門イレブンに入れて欲しいんだ…。」
「俺たちもそのつもりだったし別にいいけど、なんか意外だな。そんな真剣な顔で俺たちに頼むなんて。」
「…そりゃそうだよ。だって誘拐された総理大臣は…、
私のパパだから…。」
「そっか塔子の父さんが総理大臣なのか……え?」
『えぇ〜〜〜!!!?』
まさかの目の前にいる少女が総理大臣の娘だというカミングアウトに雷門イレブンは思わず大声を出して驚く。その驚きは広大な公園内の敷地の全域に鳴り響くのだった。
原作だと、“SPフィクサーズ”戦は瞳子の観察能力を見せる為の試合でしたが、ジェミニストーム戦でそこまで怪我をしなかった結果、塔子が加入する為だけのイベントになった為省略しました。
〜オリ技紹介〜
マッハウィンド:技自体は原作の技だがエフェクトが青から緑になっている為記載。実は本作品の天馬が使う“マッハウィンド”は雷牙によって伝授されたという裏設定があり、ノートを見た風丸によって10年早く日の目を浴びた。ちなみに雷牙も習得の為に練習していたが、スピードが足りずに習得を断念している。