〜数ヶ月前〜
時間は、FF決勝戦の影山が逮捕され、護送している最中まで遡る。
雷帝の策略により、“神のアクア”が鬼瓦の手に渡った事により決定的な証拠が出てしまった影山零治は裁判を受ければ100%有罪判決を受ける身になっていた。
だが、今までも強引な手で何度も鬼瓦から逃げ続けてきた影山の事だ、このまま東京に置いたままでは何をしでかすか分からない。
その為、鬼瓦は多数の護衛をつけた状態で北海道まで連れて行く事にしたのだ。北海道まで行けば簡単には奴の部下に指示を送る事は出来ないだろうと考えて。
その予想は正しかったようで、今に至るまで影山の残党が彼を取り返しに行く様子は見られない。現在の護送車は既に北海道に入り、そこの山奥にある日本最高峰の刑務所に向かっている。
あと数キロで到着する…、そう警察達が思っていると突如上空から大爆発のような轟音が鳴り響いたと思うと、次の瞬間雪雪崩が発生し護衛を含めた警察車両が全て飲み込まれてしまった。
それから数分後、雪で覆われた地面の中から出てきたのは警察官ではなく、“悪魔”であった。
そしてその悪魔の目の前に立つ、モヒカンの少年がいる。
「…誰だ貴様は?言っておくが礼は言わぬぞ。」
「へいへい、噂に聞いてた通りのお人だねぇ。俺の名前は不動明王、俺の雇い主があんたに興味があるんだとさ。」
「…御託はいい、さっさと本題に入れ。」
「雷門イレブンが俺の雇い主に楯突いているそうだ、誰よりも雷門を知っているアンタに駆除を任せたいだとさ。」
「…いいだろう。ただし、私を雇う以上半端な協力は許さん。私の指示に従う事それが条件だ。」
「へ〜いへい、そうと決まれば付いてきな。雇い主に会わせてやるよ。」
「その必要は無い。貴様の方から報告を入れろ、私は1秒でも早く雷門を潰す計画を練る必要がある。もちろん貴様にも手伝ってもらうぞ。」
「だったら最初にチーム名を考えないとなぁ?元帝国学園の総帥サマのお考えを聞かせてくれよ?」
「……“真・帝国学園”だ。」
再び“暴君”が世に解き放たれた。雷門の宿敵と再会する時はすぐそこまで迫っている…。
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「…? 響木さんからメール?」
突如送られて来た響木のメールに瞳子は嫌な予感を感じる。今、響木はエイリア学園の情報を掴む為に自分達とは別のルートで日本全国を回っている。その彼がメールを送ってくるという事は何か情報を掴んだに違いないからだ。
その予感は的中し、脱走した影山が愛媛に“真・帝国学園”を設立したとの連絡が届いた。
「本当ですか瞳子監督⁉︎影山が脱走したという話は!」
瞳子の言葉に誰よりも強く反応したのは鬼道だった。今度はどのような汚い手を使ったかは分からないが、よりにもよってエイリア学園で対処が手一杯のこの時期にもう一つの脅威が現れたのだ、しかも自分から見限った筈の“帝国学園”の名を冠したチームを率いて…。
「なぁ或葉さん、なんで鬼道はあんなに怒っているんだ?影山っていったら帝国学園の監督だったんだろ?いわば鬼道の古巣じゃん?」
「そうか、貴様はまだ知らなかったな…。確かに影山は帝国の監督だった…、だがFF予選で敗北した帝国を裏切り、本戦決勝戦にて新たに世宇子というチームを率いて古巣の帝国を…そしてこの雷門を苦しめた最低最悪の男だ…。」
或葉の解説を聞き、影山の事を深く知らなかった木暮と塔子は彼の残虐性を知り、怒りを露わにする。
何はともあれ、次の目的地は愛媛に決定だ。影山が絡んでいるという事で嫌な予感しかしないが、雷門には行かないという選択肢はない。
〜数日後〜
「監督…、本当に響木監督はここで待ち合わせると言っていたのですか?」
愛媛に着いた雷門イレブンがいるのは、人の気配がしない埠頭だ。それだけならまだしも呼び出した本人である響木の姿が見えない事に鬼道は違和感を覚えていた。
「…もう少し待ちましょう。」
そう言う瞳子だが、彼女は既に何かを察している様子だ。その時、円堂に目掛けてシュートが放たれた。
「誰だ⁈」
「遅っせぇよ、人がわざわざ呼び出してやったってのに待たせやがって。」
突然訳の分からない事を言い出すモヒカンの少年に円堂は困惑してしまう。すると瞳子はその少年に向けて問い詰める。
「貴方が私達をここに呼んだ張本人ね?わざわざ響木さんの名前を使って何のつもりなの?」
瞳子は既にあのメールが自分達をここに呼び出す為の罠である事を見抜いていた。そして目の前にいる少年が件の“真・帝国学園”の生徒である事も。
「なぁ〜に、アンタらを俺達の学園に招待してやろうと思ってなぁ。それにそこの鬼道有人だっけ?アンタにとってスペシャルなゲストがいるからな、だからこの俺がわざわざ招いてやったって訳。」
相変わらず言葉の意図が掴めないが、本人もここでは戦う意志は無いようだ。仕方なく少年をキャラバンに乗せ、道案内をしてもらう事にした。
「貴方名前は?」
「不動明王…、一応“真・帝国学園”のキャプテン。」
モヒカンの少年…不動が案内した先は目の前に海が広がる以外は何もない場所であった。
「何もねぇじゃねぇか!やっぱり俺たちを騙しやがったな、このモヒカン野郎!!」
「お〜怖いねぇ、アンタよく言われるだろ?行列を待つのな苦手なタイプって。」
すると、何も無かった筈の海から突如地響きが鳴り、下から巨大な潜水艦が現れた…いやあれは潜水艦ではない、巨大なサッカーグラウンドだ。
「な、なんだよこれは…!」
「ようこそ雷門イレブンの皆様。ここが俺達が通う“真・帝国学園”でーす。」
彼が言っていた“真・帝国学園”の正体は巨大な潜水艦だったのだ。世宇子の時もそうだったが、いつもあの男のスケールは凡人の上を行くものだ。
そして、雷門イレブンを出迎えるように潜水艦から通路が出現すると中から雷門の宿敵が姿を現した。
「影山ァ!!!!」
「久しいな鬼道。もう総帥とは呼んでくれんのか…。」
「貴様のような外道につける敬称など無い!!今度は何を企んでいる⁉︎」
宿敵の登場に怒りの炎を燃やす鬼道だが、影山は相変わらず冷たい表情を崩さない。
「影山零治!!貴方はエイリア学園と何か関係があるの⁈」
「…吉良瞳子か。貴様の事は
影山が言う“あの方”の正体を察する瞳子は、彼がエイリア学園の援助を受けている事を確信する。
「来い鬼道…、この先に貴様に会いたがっている奴らがいる。」
「待て影山!!逃げるな!!!」
「鬼道!!落ち着け!!」
影山に事になると普段の冷静さを失ってしまう鬼道は、何があるか分からない敵の陣地に乗り込んでしまう。仲間を見捨てられない雷門イレブンは仕方なく危険を承知で鬼道の後を追う。
そこにいたのは……
「何故だ…何故お前達が影山に従う…!!
なんと中にいたのは、鬼道のかつての戦友である佐久間と源田であった。その姿も帝国時代よりも更に邪悪なものとなっており、怪しい紫色の宝石のペンダントをつけている。
「久しぶりだなぁ鬼道…!!御託はいい…!俺達と勝負しろ…、俺は以前の俺とは違う…!俺達は強くなったのさ…、世宇子よりも…そしてお前よりも!!!」
明らかに佐久間の言動がおかしい。鬼道が知っている佐久間は自分の参謀に相応しく常に冷静沈着だった筈だ。だが今の彼はどうだ?かつての冷静さは見る影もなく、勝利に執着する様はまるで影山のようだ。
「佐久間… 源田!!お前はどうなんだ⁉︎何故貴様は奴に従う!」
「…気付いたんだよ。俺が求めていたのは“サッカー”なんじゃない…、“勝利”の二文字…ただそれだけだって事をな。今の俺はもうあの時の俺じゃない、
佐久間よりかはある程度冷静だが、源田も源田で正気を失っている。
「…鬼道君、今の彼らには何を言っても無駄よ。こうなったら実力で目を覚まさせるしかないわ。」
「そういうこった!!いや〜、それにしても感動的だねぇ。世宇子を倒す為に雷門に寝返った鬼道君と、哀れにも世宇子にやられて真・帝国学園に転入したかつての仲間達との再会!涙無しには見られねぇよ!!」
洗脳された佐久間と源田と再会し落胆する鬼道を見て、さぞかし面白そうにゲラゲラ笑う不動。その姿はまさに“悪魔”という他無い。
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「鬼道君、今日の試合の指揮は貴方に任せるわ。」
「ありがとうございます監督…。」
「鬼道、佐久間達の目を覚させてやろうぜ!!」
佐久間と源田の目を覚ませる為に試合に挑む雷門イレブンだが、鬼道にはどうも嫌な予感がする。影山がバックについているのもそうだが、今グラウンドにいる“真・帝国学園”のメンバーには、ちらほら悪い意味で有名だった選手が多数いるのだ、それも全員怪しげなペンダントをつけて。
「皆、聞いてくれ!相手はあの影山の息がかかったチームだ、どんな汚い手を使ってくるか分からない!だからいつも以上に気を引き締めて試合に挑んでくれ!」
『おう!!』
今回の雷門のスタメンは以下の通り
FW:染岡、熱也
MF:一之瀬、鬼道、或葉、塔子
DF:風丸、士郎、壁山、土門
GK:円堂
ジェミニストームを破った、現時点雷門最強のスタメンで真・帝国に挑む。
ピッピー!
帝国キックオフから始まった試合だが、鬼道の指示であえてゴール前まで佐久間を通過させる。
「へぇ?鬼道君にしては珍しく受け身の作戦じゃねぇか?おい、佐久間ァ!アイツらに見せてやれよ、お前の力を!」
パスを受け取った佐久間は徐ろに立ち止まると、突如叫び出す。
「見ていろ鬼道ォ!!!これが俺の強さだぁ!!!」
嫌な予感が最高地点に達した鬼道は、これから佐久間が何をしようとしているか察してしまった。
「やめろ…、やめるんだ佐久間ぁぁぁあ!!!それは
鬼道の静止も虚しく、口笛を吹く佐久間。すると“皇帝ペンギン2号”と同じく地面から5匹のペンギンが出現する。ただ1つ違うのは、ペンギンの色が赤色である点だ。
5匹のペンギンはボールではなく佐久間の脚に噛み付き、直接エネルギーを注入する。
「ぐ…ぐぅぅぅ…、“皇帝ペンギン1号”!!!」
“1号”の名を冠した禁断のペンギンが遂に発射される。その威力は後継技である筈の“2号”よりも遥かに高い。
「“ゴッドハンド”!!!」
円堂は“ゴッドハンド”で対抗するが、一瞬にしてヒビが入る。
「くっ!だったら“ゴッドハンドD改”!!!…! な、何⁉︎」
“ゴッドハンド”では止められないと判断した円堂は、すぐさま左手にも右手と同様のエネルギーを込めて放出するが、“2号”すらも止めてみせた“ゴッドハンドD”でも威力は収まる気配はない。
遂に、円堂の牙城が破られ試合開始から数分で帝国の先制点が決まる。
『ご、ゴーール…!!真・帝国学園の佐久間が放った“皇帝ペンギン1号”が円堂の“ゴッドハンド”から先制点を奪ったぁぁぁあ!!! …おや?なにやら佐久間選手の様子がおかしいようですが…』
「ハァハァ…、これが“皇帝ペンギン1号”の威力…!最高だ…、これさえあれば俺は誰よりも強くなれる…!!」
「佐久間、お前…よりにもよって何故“皇帝ペンギン1号”を選んだ…!お前ほどの選手ならば他にも道はあった筈だ…!!」
“皇帝ペンギン1号”。鬼道が言ったようにこの技は代々帝国学園において“禁断の技”として伝えられていた必殺技だ。
この技を語る為には、まず最初に“皇帝ペンギン”の歴史について語らなくてはならない。
“皇帝ペンギン”とは40年前に影山が考案した最強のシュート技…という事に表向きにはなっているが、本当の目的は円堂大介が使っていた技…もっというと大介の意志を継ぐ者の技を破る事を目的とした必殺技である。
特に“皇帝ペンギン1号”は円堂大介の最強技“マジン・ザ・ハンド”を破る事を目標とした必殺技であるが、それには重大な欠点が存在した。
それは使用者の身体への負担が大きすぎる事。
“1号”はペンギンを通して直接エネルギーを身体に注入しシュートを放つ形式であるが、その注入されるエネルギーが常人には多すぎるのである。その為放てる回数は一度の試合で2回が限界、3回目を放とうとしようものならその後のサッカー人生に多大なる後遺症を残すだろう。
そのような危険な技を使ったというのに、佐久間は狂気の笑みを浮かべている。
「ハハハ…!どうした鬼道ォ…まさか怖いのか…?俺如きに追い越されるのが…!」
「違う!このままではお前の身体は…!」
「敗北者に存在価値は無い…、勝利の二文字の為なら俺は何度でも撃つ…!その道中で死ぬのなら俺は本望だ…!!」
「佐久間…」
「鬼道!何だよ“禁断の技”って⁈」
鬼道達の会話を聞いていた円堂が問いかける。鬼道は雷門イレブンに“禁断の技”の詳細を話す。
「この試合の作戦が決まった!絶対に佐久間にボールを渡すな、もしあいつにボールが渡ったら全力でボールを奪うんだ!」
佐久間を“禁断の技”の手から守る為に、指示を出す鬼道だが自分の考えが甘かった事がすぐに分かる事になる。
「思い出せ佐久間!これが本当の“皇帝ペンギン”だ!」
鬼道は指笛を吹き、“1号”と同じく5匹のペンギンを出現させ前方にいる染岡と一之瀬に向けてシュートを撃つ。
「“皇帝ペンギン”!!」
「「“2号”!!」」
連携技にする事でようやく完成した“皇帝ペンギン”で“1号”に固執する佐久間の目を覚まそうとする。しかし帝国はシュートブロックに入る気配がない。
「“皇帝ペンギン2号”か…、この程度では“皇帝”の名が泣くな鬼道。俺が本物の“
野獣の牙がペンギンに喰らい付きシュートを止める。その瞬間、佐久間と同様に源田も苦しみ出す。
「ま、まさか…俺も知らない禁断の技を影山は源田に覚えさせたというのか…⁉︎」
初めて見る必殺技だが、源田の苦しみ様を見て“ビーストファング”も“1号”と同じく禁断の技である事を確信する鬼道。
「待てよ、源田の奴も禁断の技を覚えているって事は俺たちは攻める事も出来ねぇって事じゃねぇか!!」
攻めたら駄目、守っても駄目、事実上佐久間と源田を人質に取られている雷門は何もする事が出来ない。
「おいおい、何言ってんだよ?もっとガンガン攻めて来てくれよ雷門イレブン!こんなんじゃわざわざ全国から選手を集めた甲斐がないぜ!」
雷門が攻める事が出来ないと分かっているにも関わらず、ヘラヘラと笑う不動。鬼道は徐々に傷付くかつての戦友の姿を見て、どうしようもない無力感を感じていた。
直前に“1号”を使う佐久間を見たのに源田も禁断の技を習得してる思わないのは鬼道迂闊すぎん?って思ったので“ビーストファング”は鬼道も知らない禁断の技って事にしました。
あと、イプシロン強すぎじゃね?っていう意見が出たので今まで雷門と試合したエイリア学園の強さは
イプシロン(今作)>>>>>>(超えられない壁)ジェミニストーム(2、3戦目)≧イプシロン(原作)>>>>>>ジェミニストーム(原作、1戦目)
という感じになっています。真・帝国学園は2戦目ジェミニよりちょっと強いくらいかな?