「全員佐久間をマークしろ!!絶対に“皇帝ペンギン1号”を撃たせるな!!!」
源田も禁断の技を習得している事が分かった以上、雷門イレブンは守りに徹するしかなくなる。
「俺の邪魔をするなぁ…!!!」
「おーおー怖いねぇ。目がイっちゃってるよ!その願いに応えてやらないとなぁ!!!」
雷門のディフェンスも虚しく佐久間にボールが渡ってしまう。だが、彼の前に風丸が立ち塞がる。
「これ以上はさせないぞ!!」
風丸は勇敢に佐久間の前に立ち、“皇帝ペンギン1号”を撃たせまいとする。
ボールを奪いたい風丸とシュートを撃ちたい佐久間は、互いにボールを蹴る形で衝突する。
その瞬間、佐久間の首にかけていた謎のペンダントが突如として輝きだし、風丸を包み込んだ。
「な、何だこの光は!!?」
______________
「“ワイバーンクラッシュ”!!!」
「「“レボリューションV”!」」
「“シューティングスター”!!!」
未だに強烈な光で目が眩んでいる風丸には、聴覚でしか周囲の情報を得る事が出来なかった。耳に入ってくるのは、ボールを蹴る音と仲間達の声。恐らく自分は、さっき佐久間から出た光により突破されたのだ、これ以上佐久間を傷付けさせまいと他のメンバーが頑張っているのだろう。
だが、光が収まった風丸の目には本来あり得ない光景が広がっていた。
(こ、ここは…雷門中…?俺は真・帝国学園と試合をしていた筈じゃ…?)
なんと自分がいたのは雷門中のグラウンドだった。しかし何かがおかしい、ジェミニストームによって破壊された筈の校舎は既に建て直されており新たなデザインとなっている。
それに自分達の前に立っているのは、間違いなく雷門イレブンだ。
「目を覚ませオマエら!!!こんな“サッカー”は望んでいねぇ筈だろーが!?」
(…! い、稲魂…!!何でお前がここに…⁉︎)
今発言したのは、自分を庇って昏睡状態になった筈の雷牙だ。それだけではない、奈良で離脱した筈の豪炎寺もいる。よく見ると全員例外なくボロボロになっており、立っているのもやっとのようだ。
「弱ぇな…、もっと俺を楽しませてやがれ!!」
(そ、染岡…?)
風丸の隣に立っているのはチームメイトの染岡その人だが、どこか様子がおかしい。彼だけじゃない周囲を見ると敵陣地…つまり自分のチームのメンバーは白髪の少年と西垣、杉森以外は全員雷門メンバーで構成されている。だが、その瞳に宿っているのは佐久間と源田と同じ狂気のみだ。
(な、何をやっているんだみんな!!!俺たちはチームメイトだろ!争う理由は無い筈だ…!!)
何故仲間である筈の染岡達が、円堂率いる雷門イレブンと敵対しているか分からないが、この試合だけは絶対に止めなければならない事は分かる。しかし、風丸の必死の説得は誰の耳にも届いていない。
「染岡テメェ…!あの時約束したよな…“一緒に風になろうぜ”って…!その答えがコレなのかよ…!!!」
「覚えてねぇなぁ、そんな約束!!!」
「く、栗松…お前は雷門のムードメイカーだった筈っス…、なんてこんな事になっちゃったっスか…?」
「フン!戦いに感情は必要ないでやんす!!強さにこそ意味があるでやんすよ!!!」
雷門イレブンも必死に説得しているが、狂気に支配された染岡達の耳には届く事はない。
「オイ風丸!!さっきから何黙ってんだよ⁉︎テメーもさっさとシュートを打ちやがれ!!弱い頃の自分に戻っていいのかよ⁉︎」
染岡から自身の足元にボールが送られる。
嫌だ…
風丸のココロは拒否を選択する。だが、自分の身体は走る事を選んだ。
やめろ…
走りだした身体は、人間の限界を超えた速度を出し仲間達を吹き飛ばす。イプシロンすらも遥かに超えるスピードの前では、誰も止める事が出来ない。
やめてくれ…
遂に、ゴールを守る円堂と対峙した“自分”はシュートを撃とうとする。その時、目の前に稲妻が落ちた…ような気がした。
「ヘロ〜風丸く〜ん…、随分と荒っぽいドライブじゃねぇか…、追いつくのに苦労したぜ…。」
軽口を叩きながら“自分”の前に立つ。だがその姿は明らかに限界を迎えており、息も絶え絶えだ。
「なぁ風丸…、オメーはそれでいいのか…?
(そんな目で俺を見ないでくれ…!俺は…こんな事を望んじゃいない…!)
雷牙がしているのは“自分”を軽蔑する目だ。何度も悪夢の中で見た自分に失望するあの瞳、もう風丸のココロは壊れそうだった。
(伝えるんだ…、俺はこうなる事を望んでいない事を…!)
風丸はギリギリの所で踏ん張り、なんとか声を出そうとする。だが、発せられた言葉は
「お前には分からないだろうなぁ稲魂。俺達がどれだけ
(違う…!俺はそんな事思っていない…!)
風丸のココロは必死に否定するが、“自分”の口は止まってくれない。
「俺は
「…本当にそうか?」
“自分”の言葉を聞き、悲しそうな目をする雷牙。
「まだ理解出来てないのなら、その身をもって理解するがいい!!!」
(待て!!!止まるんだ俺の身体!!!それ以上は駄目だぁぁぁぁぁあ!!!)
先ほどの鬼道のように“自分”がこれから行おうとする事を嫌でも察した風丸は急いで止めようとする。だが、時すでに遅く“自分”は漆黒のエネルギーをボールに込め、雷牙に向けてシュートを放った。
(やめろぉぉぉぉぉぉお!!!!!)
「“ダークウィンド”!!!」
漆黒の風を纏ったシュートが、友の命を奪おうと襲いかかる。既に限界を迎えた雷牙では避ける事が出来ずに直撃してしまった。
(稲魂ぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!)
絶叫する風丸を嘲笑うかのように、動かなくなった雷牙を見下す“自分”。再び眩い光が自身の身体を包み込み意識が遠のいた。
______________
「…ぜ丸!‥い…風丸!おい風丸!!!」
「ハッ!そ、染岡…?」
気がつくと風丸は真・帝国学園のフィールドに立っていた。隣には自分を心配する染岡もいる。
「どうしたんだよ風丸?佐久間の野郎をマークしたと思ったら急に立ち止まってよ?すぐに壁山が止めてくれたからよかったが、今はボーッとしている暇ねぇんだぞ?気合いを入れ直せよ!」
「あ、ああ…、悪い気を付けるよ…。」
さっきまでの地獄のような光景は幻だったのか…?どれだけ考えても分かる筈がない。取り敢えず風丸は目の前の試合に集中する為思考を打ち切る。しかし結局、前半終了まで風丸はあの光景が頭から離れる事はなく満足なプレーをする事は出来なかった。
______________
「くそ!攻めても駄目、守っても駄目!一体どうしたらいいんだよ!!!」
答えの見出せない現状に苛立つ染岡。事実上、佐久間と源田が人質に取られている状態の為満足にいくプレーする事が出来ない。
「2人の為を思うなら試合を棄権するしかないのかも…。」
木野の意見も尤もだ。この試合はエイリア学園とは異なり雷門にとっては戦う意味は無いに等しい。佐久間と源田の為を思うならば無理に試合を続ける必要は無い。
しかし、木野の思いを否定したのは瞳子だった。
「駄目よ、試合を棄権する事を認めないわ。」
「認めないだと⁉︎テメーは佐久間と源田を見殺しにしろって言うのかよ⁉︎」
「後半からは私が指揮を取ります。皆は勝つ為のプレーをしなさい!」
血も涙も無い瞳子の言葉に、雷門イレブンは困惑してしまう。しかし、鬼道も瞳子と同じ気持ちだった。
「…試合を続けよう。」
「鬼道⁉︎本当にいいのかよ!これ以上続ければ、100%佐久間と源田は…「分かっている!」 なっ⁉︎」
「だが、試合を棄権したら恐らく佐久間と源田は一生影山の支配下に置かれてしまう…。あいつらを助け出すにはこの試合しかチャンスは無いんだ…!」
「…分かった!俺たちも出来る限りの事はしよう!絶対に佐久間と源田を助け出すんだ!!!」
『おう!』
試合を続行する覚悟を決めた雷門は瞳子の指示で後半からポジションを大幅に変更する。
FW:染岡、熱也、士郎
MF:一之瀬、風丸、鬼道
DF:木暮、或葉、壁山、塔子
GK:円堂
ポジション変更だけでなく、瞳子はFW陣と風丸以外はシュートを打つ事を禁じ、パスと佐久間へのディフェンスに専念するように命じた。
「おい染岡、アレやるぞ。」
「おま…いよいよ“サン”付けしなくなったな…。んで“アレ”ってなんだ?」
「“ワイバーンブリザード”に決まってんだろーが。アレなら“ビーストファング”を使われる前にシュートを決めれる。」
「分かった…、だが絶対にミスんじゃねーぞ熱也!!」
ピッピー!
雷門キックオフから始まり、染岡と熱也は速攻を仕掛けるが、当然、帝国はディフェンスに入る。だがそこへ司令塔である不動が指示を出した。
「シュートを打たせな!どんなシュートも源田が止めてくれるからなぁ!!」
雷門はシュートを打つ事が出来ないと高を括っている不動は、あえてDFを下がらせる。綺麗にシュートコースが空いた染岡は自分達の作戦に不動が引っかかってくれた事に内心ほくそ笑み、願い通りシュートを放った。
「“ワイバーンクラッシュV4”!!!」
翼竜の咆哮が海に浮かんだスタジアム内に響き渡るが、源田は再び“ビーストファング”を使い止めようとする。
しかし、シュートコースは源田から大きく逸れてしまう。
『こ、これは!染岡が放ったのはシュートではない!まさかの吹雪熱也へのパスだぁぁぁぁぁぁあ!!!』
「し、しまった!“ビーストファ…」
「遅せぇよ!!“エターナルブリザード”!!!」
“エターナルブリザード”をチェインする事で染岡と熱也の連携技である“ワイバーンブリザード”が完成する。更に加速したシュートの速度は源田の反射速度を完全に上回っていた。
『ゴーール!!!染岡と吹雪がジェミニストーム戦で見せた“ワイバーンブリザード”がE・O・Gからゴールを奪ったぁぁぁぁぁあ!!!これで1対1の同点!ここから逆転出来るのかぁぁぁぁあ⁉︎』
「染岡にしては珍しく周りを見ていたじゃねぇか?褒めてやるよ。」
「けっ、いつか負かしてやろうと思ってずっと見ていたからな。大嫌いなお前をなぁ!」
相変わらず仲の悪い2人だが、今までとは明らかに異なり奇妙な信頼が生まれている。
「…あの2人、厄介だな…。俺のステージを邪魔する奴には消えてもらうとするか。」
今のプレーで熱也と染岡を脅威だと認識した不動は不穏な笑みを浮かべる。その瞳には染岡の姿が映っていた…
「さぁガンガン攻めて行こうぜ!!!」
「させるかよ!!これでも食らいな!!!」
不動が放ったスライディングが染岡の足に直撃する。あまりの痛みで染岡は倒れ込み、試合が中断してしまう。
「おっと、悪いねぇ。まさかこの程度の攻撃も避けられないなんて思わなくてさぁ!」
「テメェ!今のはワザとだろうが!!!とぼけんじゃねぇ!!」
頭に血が登った熱也は不動に殴りかかろうとするが、それを良しとしない染岡は熱也を静止する。
「や、止めろ熱也…!!お前が奴を殴ったらお前が退場になるんだぞ…!」
「染岡君の言う通りだ熱也君。そして不動君、今のは明らかに危険なプレーだ、イエローカードをとらせてもうよ。」
審判係の古株は不動にイエローカードを提示する。だが、当の本人はヘラヘラと笑い、まるで反省していないようだ。
「酷い…!これ以上のプレーは無理よ…!!」
染岡の傷は予想以上に酷く、これ以上の続行は無理だと木野は判断する。
当然、染岡は自分はまだやれると言い張るが、それを一喝したのは風丸だった。
「駄目だ!!これ以上は試合続ける事は俺が許さない!!」
「なんだと風丸…!!!“ワイバーンブリザード”じゃなきゃ源田からゴールを奪う事は出来ねぇんだぞ!!!」
「ハッキリ言うぞ染岡、今のお前じゃいても意味がない。大人しく交代するんだ。」
ヒートアップする染岡だが、風丸は不気味な程に冷静だ。その表情には彼の感情を読み取る事が出来ない程に…。
「風丸君の言う通りよ、監督としてこれ以上貴方に負担をかけさせる訳にはいきません。当初の予定とは少しズレるけど、風丸君をFWに上げます。空いた穴には松野君が入ってちょうだい。」
「監督!俺はまだ…」
「これは監督命令よ!貴方の意見は受け入れられないわ!」
珍しく怒りをぶつける瞳子を見て、染岡は何も言えなくなる。
「…分かったよ。おい風丸!俺の分までプレーして絶対に佐久間と源田の目を覚まさせろよ!!!さっきみたいにボケーとしてたら承知しねぇぞ!」
「ああ…、分かってる。」
ピッピー!
試合が再開すると、帝国は先ほどとは異なる積極的に攻めの姿勢をとる。
「おらおら!!ボールを寄越しやがれ!」
「ひぃぃぃぃい!」
鬼気迫る不動のスライディングを見た木暮は我先に逃げてしまい、ボールが帝国に奪われる。
それを見越して一之瀬と土門は既に2人がかりで佐久間をマークする。
「これ以上彼に無理はさせない!」
「俺に似ている声の奴がいい子ちゃんみたいなセリフを吐いてんじゃねーよ!!“ジャッジスルー2”!」
審判に見えないように一之瀬の腹にボールを叩き込み連続蹴りを喰らわせる不動。流石の一之瀬も耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
「ま、まずい!」
「ククク…、“皇帝ペンギン…1号”…!」
一度の試合で放てる限度である2度目の“皇帝ペンギン1号”。あまりの負担で絶叫する佐久間を背にし、赤いペンギン達がゴールに向けて襲いかかる。
「(ここは“マジン・ザ・ハンド”…いや“化身”でいく!)」
前半の一撃で“皇帝ペンギン1号”の威力は、雷門最強シュートである“イナズマペンギン”にも匹敵する事を確信した円堂は妥協せずに全力で立ち向かう事にする。その瞬間、円堂の負担を減らそうと鬼道が割り込む。
「ぐ…ぐぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「鬼道…!お前の思いは無駄にはしない!“グレイト・ザ・ハンド”!!!」
円堂最強のキーパー技で“1号”と対峙し、止める事に成功する。しかし、化身技を使用してもなお、手に強烈な痺れを残す“1号”の威力に改めてあの技の危険性を認識する。
「もう分かっただろう佐久間!“1号”は最強のシュート技なんかじゃない!使用者の身体を蝕むだけの毒だ!」
「何度も言わせるな鬼道!!!“皇帝ペンギン1号”さえあれば…俺はお前に追いつけ…いや、追い越せる!お前さえ手の届かないレベルになぁ…!その為ならば俺は喜んでこの身体を差し出そう!!!」
鬼道の説得も虚しく、狂気に飲まれたままの佐久間。少し離れた所でその様子を見ていた風丸は、ある決断をする。
「(なぁ稲魂…、もしお前がこの場にいたならどうする…?)」
残り時間も後僅かとなりお互いに緊張が走る。帝国は佐久間に“1号”を撃たせようとし、雷門は撃たせまいとする。
「邪魔なんだよ!」
「きゃあ⁉︎」
「おい佐久間ァ!今度こそ自慢の“皇帝ペンギン1号”で決めてくれよぉ!!!」
「やめろ佐久間ぁぁぁぁあ!!!」
「“皇帝ペンギン…」
その刹那、佐久間の前に疾風が巻き起こった。その風の正体は言うまでもなく風丸一郎太だ。
「余計な事を…!!!そのボールを寄越せぇぇぇぇぇえ!!!」
あと少しで“1号”を放てる所でボールを奪われてしまった佐久間はまるでゾンビのような生気の無い動きで風丸に襲いかかろうとする。
その姿を見た風丸はもはや正攻法では彼を正気に戻す事は出来ないと判断し、一線を超える覚悟を決める。
「…すまない。」
そう呟くと風丸は佐久間の方を向いて飛び上がり、なんと佐久間の脳天に目掛けて“マッハウィンド”を放った。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」
FW陣に劣るキック力とはいえ、風丸渾身のシュートを不意打ちで脳天にくらったのだ、当然脳震盪を起こした佐久間は気を失ってしまった。
突然起こった風丸の暴挙により雷門だけでなく帝国のメンバーも固まってしまう。だが、不動だけは狂ったような笑い声をあげていた。
「ヒャハハハ!!!こりゃあ傑作だぜ!!まさかエイリア学園を倒そうとする雷門イレブンのメンバーがこんな力づくで佐久間を眠らせるなんてなぁ!!!どんなにいい子ぶっていても所詮は人間!!薄っぺらい仮面の下には邪悪な本性が隠れていたってわけか!」
流石に今の風丸の行動を無視できない古株は、彼の方に近づき懐から赤いカードを提示する。
「…風丸君、流石に今の行いは大人として見過ごす訳にはいかん…。“レッドカード”だ…退場しなさい。」
「分かっています…、ごめんなさい古株さん…。」
既に退場になる覚悟を決めていた風丸は静かにベンチに向かう。だが、幼馴染があのような実力行使に出た事に納得のいかない円堂は彼を呼び止め理由を問う。
「風丸…どうしてあんな事を…?」
円堂の言葉に風丸は振り向く事が出来なかった。
「すまない円堂…、俺にはこうする事しか出来なかったんだ…。」
ピッピッピー!
風丸がベンチに戻った数分後、1対1のまま雷門対真・帝国学園の試合は引き分けという形で終了する。
「まだだ…!俺はまだ負けていない!!!次は誰だ…染岡か、豪炎寺か、稲魂か⁉︎誰でもいい…俺と勝負しろ…!!!!」
試合が終わったというのにも関わらず、まだ戦おうとする源田。今の彼の目にはいる筈のない人間が見えているようだ。
「もう止まるんだ源田…。試合はもう終わったんだよ…。」
「終わっちゃいない!!!俺がこの足で立っている限り試合は続くんだ!!!だからシュートを…俺にシュートを打ってくれ…。」
「そうか…ようやく分かったよ…、お前達がこうなったのは全て俺の責任なんだ…。」
キャプテンであった自分の不甲斐なさが彼らをここまで変えてしまった事を理解した鬼道は次の瞬間には頭を地面につけていた。
「き、鬼道…!何を…!」
「すまないが俺にはこうする事しか出来ないのを許してくれ…。お前が俺を裏切り者と呼ぶのならそれを受け入れよう…、だから頼む…もう止まってくれ源田…。」
誰よりもプライドが高かった鬼道が“土下座”をしてまで自身に頼み込む姿を見て、源田は言葉を失ってしまう。すると、源田がかけていたペンダントが次第に崩れ落ちると、源田自身もそれに呼応するように倒れる。
「源田!おいしっかりしろ!!源田!!!」
「き、鬼道…?こ、ここはどこだ…?俺は病室にいた筈じゃ……?」
遂に正気に戻った源田だが、どうやら今までの記憶がない様子だ。
こうして憎しみをぶつけるだけだった雷門対真・帝国学園の試合は終焉を迎えたのだ。
______________
「ったく、本当に使えねぇ奴らだぜ。ねぇ影山総帥?」
いつのまにか影山の元に戻っていた不動は試合が引き分けに終わった事を不満をたれる。しかし、影山は不動以上に不機嫌である。
「使えないのは貴様の方だ不動。」
「何だと…!」
まさか自分が使えないと言われるとは思っていなかった不動は声を荒げてしまう。
「私は一流の選手を集めてこいと言った筈…。だが現実はどうだ?貴様が集めてきたのは全て二流のクズばかり、もちろん貴様もな。」
「この俺が二流だと…!ふざけんじゃねぇぞ影山!!!」
他人ならまだしも自分すらも二流と評された事に不動は怒りを露わにする。
「貴様如きの魂胆を見抜けない私ではない。私を利用し、雷門を倒す事で“あのお方”に認めてもらおうと思っていたのだろう?いかにも二流が考えそうな事だ。」
影山の言葉を言い返す事が出来なかった不動は憎々しい目で影山を睨んだ後、総帥室から飛び出していった。
すると、モニターを通して聞き覚えしかない声が聞こえる。
『遂に見つけたぞ影山!!!大人しくお縄につきやがれ!!!』
真・帝国学園の騒動を聞きつけヘリでやってきた鬼瓦だ。影山は溜め息を吐くと、意味ありげなカバーに覆われたボタンを押す。すると、潜水艦から火花が飛び始め、爆発が起こる。影山が押したのは“自爆スイッチ”だったのだ。
影山はおもむろに椅子を操作して、船の最上部まで移動すると突然笑みを浮かべた。
「ククク…来ると思っていたぞ鬼道。」
「佐久間をあのような目に合わせて満足か影山!!!」
そこにいたのは鬼道だった。誰よりも影山を知り尽くしている鬼道は影山の居場所を予想し、わざわざ潜水艦の最上部までよじ登ってきたのだ。
「満足…?あの程度で満足できるわけが無かろう!!!私が求めるのは絶対の勝利をもたらすチーム!!!それ以外に価値は無い!!」
あれだけの事がありながらも影山の信念はブレる事はないようだ。
「これまで私が手掛けた最高の作品を教えてやろう!それは鬼道お前だ!」
「違う!俺はもう貴様の人形ではない!!」
影山の言葉を必死に否定しようとする鬼道だが、救助に駆けつけた鬼瓦によって連れ去られてしまう。自分の仲間達をあのような目に合わせた元凶から離れていく、鬼道は最後にただ一つこう叫んだ。
「影山ぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
鬼道の心の叫びは潜水艦の爆発音すらも掻き消し、海に木霊するのだった。
______________
「すまない鬼道…、せっかくの再会だというのにお前達に迷惑をかけてしまって…。」
警察と救急車が到着しひと段落ついた所で、喋れる程度まで回復した源田は鬼道に謝罪する。
「聞かせてくれ…、お前達の身に何があったんだ…?」
源田の話によれば1ヶ月近く前に病室に不動が現れ、怪しいペンダントを受け取って以降の記憶が無いそうだ。
「怪しいペンダント…?そんなものがお前達を狂わせたというのか…?」
「分からない…、だが不動という奴も同じペンダントをつけていた。」
源田の話から“怪しいペンダント”こそが佐久間と源田を狂わせた元凶であるのは間違いないようだ。
「また会ったらもう一度サッカーをやろう…、今度は禁断の技に頼らずに正々堂々と実力でな…。」
「ああ…、待っているぞ。」
源田は警察に連れられて東京に戻って行く。鬼道は源田が乗っている車を見つめ、彼らを狂わせたエイリア学園を倒す事を硬く誓った。
______________
場面は変わり、東京のどこかにある地下研究所に移る。薄暗い研究室には男が1人いるだけだ。
部屋の主である“雷帝”は今日行われた雷門と真・帝国との試合を鑑賞していた。
ちょうど試合が終わったタイミングで彼のスマホから着信音が鳴る。
「やぁ影山さん。残念だったねぇ、勝負は引き分けで終わった挙句潜水艦が爆発しちゃって。」
『ふん…、あのような“偽りの帝国”になぞ初めから興味は無い。それよりも私は“あの方”の命でこれからブラジルに渡る。メールで指定した場所に物資を届けさせろ。』
「へいへい影山さ〜ん?私は君の部下じゃないのだよ、面倒事くらい自分でやってくれないかなぁ?」
『ほぅ?ならば貴様の計画を“あの方”にバラしてもいいのだぞ?』
「…はぁ。十中八九、鬼乃子が漏らしたんだろう?仕方ない、君の言う通りにしてあげるよ。後で代金請求しますからね〜。」
仕方なく影山の言われる通りに、部下に現金と物資を手配した“雷帝”はコーヒーを入れながら今日の試合の分析を行う。
「…やはり“
“雷帝”はコーヒーをすすりながらこれからの事を考える。彼の計画が雷門イレブンにどんな災いを齎す事になるのか?それは誰にも分からない。
Q.なんで風丸にあんな事させたん?馬鹿じゃねーの?
A.ごめんなさい。でもメンタル不安定MAX状態の風丸だったらこんな事しかねないって思ったんです!信じてください!
Q.前半で風丸が見た光景は何?
A.エイリア石との共鳴により脳内に存在しない記憶が溢れ出したんでしょ。深い事は作者にも分からん。