「さすがはウチのダーリンやで〜!イケメンでサッカーも上手いとか完璧やん〜!」
「アハハハ…」
一之瀬をダーリンと呼んでいるガン黒ギャルはまるで恋人のように彼の腕にベタベタと抱き付いている。当の本人は乾いた笑いをしながら、木野から発せられる殺意の波動をその身で浴びていた。
どうしてこうなったのか?話は雷門イレブンが大阪に到着した時まで遡る。
〜数時間前〜
「あの〜監督…、本当にこんな所にエイリア学園のアジトがあるんですか…?」
「えぇ…、理事長の調査によればこの“なにわランド”の何処かにある可能性が高いそうよ。」
円堂達がいるのは日本屈指の遊園地である“なにわランド”だ。とてもあのエイリア学園がアジトを構える場所だとは思えない。
しかし、理事長がここにあると言う以上無視する訳にもいかず、しばらくここを調査する事になった。
「ねぇ君!ここらへんで怪しいアジトを見なかったかい?」
一之瀬はたまたま通りかかった同い年の少女にアジトがないか質問したのが運の尽きだった。
「…知ってるで。その怪しいアジト…。」
「ほ、本当かい⁉︎頼む、そこに案内してくれ!」
「いいで付いてきぃ。」
アメリカ育ちといえど、日本人特有の真面目で純粋な一之瀬は少女の言葉を信用して付いていった先はなんとお好み焼き屋だった。
「さぁダ〜リン!これが“リカの特性ラブラブ焼き”や〜!」
「お、美味しそうだね…。」
あれよこれよという間に、食べたら少女と結婚しなければならない“ラブラブ焼き”を食べさせられた一之瀬は、リカと名乗る少女から婚約者にさせられてしまったのだ。
『こ、婚約者〜⁉︎』
遅れて一之瀬を見つけた雷門イレブンは当然、一之瀬を取り戻そうとするが、気が強いリカは一之瀬を返そうとしない。するとリカが所属するクラブチーム“大阪ギャルズCCC”が現れた事で、目金の提案から試合で勝った方が一之瀬を連れて行けるという提案をし、彼女達はそれを了承したのだ。
肝心の試合結果は…
『試合終了ーー!!!雷門対大阪ギャルズCCCの練習試合は5対0で雷門の勝利です!!』
ここで冒頭に繋がるという訳だ。
試合結果は雷門の圧勝だったものの、彼女達の実力は明らかに初戦のジェミニストームよりも強い。自分達のようにエイリア学園と戦っているチームならまだしも、ただのクラブチームがここまで強いのははっきり言って異常だ。
「ここまで強いのは驚いたよ。ねぇ、リカ一体君達はどんな特訓をしたんだい?」
「ダーリンに言われたら答えるしかないわ〜!本当はウチらの秘密やけど教えたる!付いてきぃ!」
リカに案内された先はやはり“なにわランド”だった。どうやら理事長の情報は正しかったらしい。
「やっぱりなにわランドにアジトがあったんだ…。」
「でもこんなでっかいお城がアジトなら誰か気付くだろ?俺たちもさっきここを調べたけど、特に怪しい所は無かったぞ?」
「と思うやろ?実はこのアトラクションにはとんでもない秘密があるんや!!」
そう言うとリカはアトラクションの角にある隠されたボタンを押すと、突如、円堂達が立っている床が下降した。
「地下にこんな空間があったのか、そりゃ見つからない訳だ…!」
「どうや⁈ここがウチらの練習場やで!!」
エレベーターによって連れられた先は、イナビカリ修練場を思わせる巨大な修練場だった。よく見ると近未来的なデザインに似つかわしくないキラキラとしたシールがところ構わず貼られている。
「いいデザインやろ?全部ウチらが貼ったんやで〜!」
「よーーし!イプシロンとの試合まであと少しだ!みんな特訓するぞー!!!」
『おう!』
リカが見つけた修練場…、“ナニワ地下修練場”にて打倒イプシロンに向けて特訓を開始する雷門イレブン。そこでの特訓はイナビカリ修練場すらも生易しく思える程ハードな特訓の数々だった。
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「少しよろしいでしょうかデザーム様。」
「なんだ?ゼルよ。」
デザームの腹心であるゼルは雷門がエイリアが使っている地下修練場を発見した事を報告する。だが、デザームは特に焦る事もなく涼しい顔をしている。
「失礼を承知で言わせてもらいます…。以前貴方なら今すぐにでも雷門を倒しに行っていた筈です!これ以上奴らが我々の脅威になる前に叩き潰すべきです!」
ゼルの説得にもデザームは答えない。まるで沈黙こそが自分の解答と言わんばかりに…。
「…あの男の影響ですか?デザーム様を差し置いてマスターランクに昇格した“新入り”の…「黙っていろゼル…。」 !」
「確かに奴が私よりも先に昇格したのは悔しい。だが奴の昇格は“エイリア皇帝陛下”直々に決められた事だ、残念だが奴の実力は私よりも上なのだろう。「では!」だからこそ!私は1ヶ月もの猶予を与え雷門が強くなる事を望んでいるのだ!更に強くなった奴らを蹂躙する事で我ら“イプシロン”の強さをあの方に見せつけるのだ!」
珍しく熱く語るデザームを見てゼルはこれ以上何も言えなくなる。再び黙り込んでしまったデザームを見て、ゼルは仕方なくその場を後にした。
「あと数日…、待っていろ雷門イレブンよ…。」
デザームの瞳には静かな闘志の炎が揺らめていた。
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地下修練場で練習を始めてから早数日、雷門イレブンは鬼道の指示で集まっていた。
「どうしたんだ鬼道?急に話があるって?」
「これからの方向性を皆に伝えようと思ってな。」
「方向性?」
「ああ、俺達はこれから“連携技”を重点的に鍛える事にする!」
「連携技か…、別にいいけどもう俺たちには強力な連携技を持っているじゃねーか?」
鬼道の宣言に熱也は疑問の声を漏らす。実際、今の雷門には“ザ・フェニックス”、“皇帝ペンギン2号”、“パラドックスブレイク”などの強力なシュート技がある。しかし、鬼道を首を横に振った。
「確かに熱也の言葉ももっともだ。だが、漫遊寺での試合を思い出して欲しい。イプシロンが俺達に打たせた連携技をだ。」
「…あっ!」
前回のイプシロン戦で雷門が放った連携技は“皇帝ペンギン2号”と“ザ・フェニックス”のみ。それすらも片手で易々と止めるデザームの実力も凄まじいが、彼は“パラドックスブレイク”に関しては一度も撃たせていないのだ。
「気が付いたようだな。奴らは常に吹雪兄弟と鳳凰院の3人が揃わないようにマークを付けていた。つまり、奴らでも“パラドックスブレイク”は脅威という証拠だ。単体では勝てない相手も連携技なら勝てるチャンスは大きく上がる。それに染岡が抜けた事により攻撃力の低下が痛いからな、その穴を埋める為にも連携技を鍛えるという事だ。」
鬼道の提案により、新たな連携技を習得する事になった雷門イレブンは各自ペアを組み、練習に励む。特に吹雪兄弟と或葉はイプシロンからの妨害を受けても“パラドックスブレイク”を放てるように練習を重ねている。
しかし、熱也だけは自分の現状を受け入れる事が出来なかった。
「ハァハァ…、こんなんじゃ駄目だ…!もっと“エターナルブリザード”の威力を上げねぇとデザームには通用しねぇ…!」
皆が寝静まった中、熱也は瞳子の目を盗み自主練を行っていた。今の彼の目標はただ1人、デザームだ。
相棒だった染岡がいない今、雷門の正FWは自分だけ。鬼道の提案に不満は無いが、自分1人の実力ではデザームを打ち破れない現実は熱也のプライドを酷く傷付けていた。
「やれやれ、やっぱりここにいたか熱也。」
「…! 兄貴…。分かってるって、もう寝る…。」
自分がいない事に気付いて訓練場を訪れた士郎はオーバーワークを重ねる弟に呆れる。熱也もその空気を察し、くどくどと説教される前に練習を切り上げようとする。そんな弟の姿を見て士郎は兄として熱也に質問をする。
「ねぇ熱也、君にとってFWって何かな?」
「あん?そんな事、考えた事もねーよ。兄貴も知ってるだろ、俺は昔から点を取るのが好きだった…だからFWを選んだ。ただそれだけだ…。」
これは嘘偽り無い熱也の本心だ。しかし、本心の筈の言葉はまるで嘘をついているかのように感じ、言葉が詰まってしまう。
「じゃあ今の熱也はシュートを打つ事が楽しいかい?」
兄の質問に熱也は答える事が出来ない。確かにジェミニストームとの試合まではシュートを打つのが楽しかった。だが、自分のシュートを軽々と止めるデザームが現れてからはどうだ?円堂の時とはまるで異なる先が見えない実力差がある相手が目の前に立った事で点を取る事は義務に変わり、今の自分に残っているのは焦燥感だけだ。その思いを共有できる唯一の相棒も性悪モヒカンの非道な策略によってチームを去った。
「…今日は疲れたからもう寝るわ。」
答えを見出せなかった熱也は兄から逃げるようにその場を後にする。血の繋がった兄弟である自分にも本心を明かしてくれない弟の姿を見て、士郎は心を痛めるのだった。
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練習を始めて1週間が経った。最初はレベル1の練習にも苦戦していたが、既に最高レベルであるレベル10をクリア出来るほどに成長していた。連携技の習得も順調に進んでいる、後はイプシロンが来るのを待つだけだ。そして遂にその時がやって来る。
「イプシロン…!」
「時は来た!さぁ、どれだけ強くなったのか見せてもらおうか?」
現れたデザームは指を鳴らすと地下からの扉が開き人工芝生で覆われたグラウンドが姿を現した。
グラウンドが出現すると同時に、全国の電波がジャックされ、雷門とイプシロンの姿がありとあらゆるモニターに映し出される。
『聞け、地球の民達よ!我々の強さを改めて貴様らに知らしめる時がきた!この試合を通して我々に歯向かう事の愚かさを知るがいい!』
突然大声で独り言を言い出すデザームに驚く雷門だが、熱也は怖けずにデザームに向けて宣戦布告をする。
「パワーアップした俺たちを舐めるなよデザーム!今度こそテメェの吠え面を拝ませてもらうぜ!」
「こい吹雪熱也!!!貴様のプライドを打ち砕いてやろう!!」
遂に始まった雷門対イプシロンのリベンジマッチ。彼らから与えられた1ヶ月の猶予で雷門はどれだけ成長出来たのか…?
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雷門が対イプシロンに向けてウォーミングアップを行っている頃、何故か存在する観客席の最上部に鋼鉄の獅子が座っている。
「やっぱり君も来ていたんだ。やっぱり雷門が気になるかい?」
「……。」
アケボシの隣にいるのはグラン…いや、ヒロトだ。普段と変わらない鉄仮面をつけて鑑賞しているアケボシとは対照的にいつもセットしている髪を下ろし私服姿というラフな格好でいるヒロトとのツーショットは中々シュールな光景だ。
「それにしても本当にデザームは変わったよね、君が先にマスターランクに上がった事で闘争心が刺激されたんだろうね。」
「……。」
相変わらず無言を貫き通すアケボシだが、バーンの時とは異なり相槌を打つだけまだマシなのだろう。それにどことなくアケボシはヒロトに心を許している雰囲気がある。
「この試合、どちらが勝つと思う?俺は雷門に勝って欲しいとは思っているけど、今の段階じゃまだ無理だろうね。」
「……英雄は語った。“サッカーとは星々の盤上、より強い輝きを放つ星だけが星座として語り継がれる権利を得る”と…。」
「つまり君でも分からないって事か。この試合荒れるな。」
遂に“父さん”以外の人物に言葉を発したアケボシ。果たして雷門はイプシロンを超える輝きを見せつける事が出来るのか?
Q.原作よりも強化された染岡の“ワイバーンクラッシュ”すら片手で止めたデザーム相手に連携技で太刀打ち出来るの?
A.今作の連携技による強化倍率はシュートチェインの比ではありません。分かりやすく言えば、シュートチェインは足し算、連携技は掛け算としている為、強いキーパー相手には連携技が有効です。
Q.大阪ギャルズCCCがジェミニストームより強いって事は世宇子以上って事…⁉︎
A.世宇子>>>>>>大阪ギャルズ>ジェミニストーム(初戦)くらい?
マジで世宇子を強くしすぎたせいでエイリアの強さが霞んでしまう…。