イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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イナストの立向居の『止めてみせる!』とか『ゴッドハンド!』とかの独特な叫び声がかなり好き。


いざ沖縄へ

「ようやく来たかグランよ。」

 

「やけに遅かったじゃねーか。稲魂雷牙1人にボコボコにされた自称“ジェネシス”のキャプテンが聞いて呆れるぜ。」

 

エイリアの拠点の薄暗い一室。今回はある人物による処罰を行う為にマスターランクチームのキャプテン達が集まっていた。

…いや“全員”の二文字には誤りがある。何故ならその処罰の対象こそが彼らに見下される位置で縛られているアケボシその人だからだ。

 

「何か弁明があるか“新入り”よ?我々は貴様が“稲魂雷牙”だと思っていた。だが現実には稲魂雷牙は陽花戸中に潜伏していた。そもそも貴様は何者なのだ?」

 

「……。」

 

「けっ、黙りか。おいガゼル!奴への尋問は俺にさせろ、前々からこの“新入り”の態度は気に食わなかったんだ。俺様の炎で奴の鉄仮面を溶かして化けの皮を剥がしてやるぜ。」

 

アケボシの事となると普段の仲の悪さが嘘のように消えるバーンとガゼル。そんな彼らの様子を彼の親友である筈のグランは静かに傍観していた。

少年2人は今すぐにでも自身の手でアケボシを殺しかねない雰囲気である。

この期に及んでもアケボシは一言も言葉を発する事なく、ただ静かに彼らを見ている。その時、バーン達を静止する声が部屋中に響いた。

 

『やめなさいお前達。』

 

声の主は彼らの主である“エイリア皇帝”こと“父さん”だった。薄暗い部屋を照らすように巨大なホログラムに映し出された“父さん”に向かって無礼である事は承知の上でガゼルが反論する。

 

「“父さん”⁉︎何故ですか!アケボシの正体が稲魂雷牙でなかった以上、我々は奴を信用する事は出来ません!

 

『お前達は信用出来なくても私は信用しているのです。そもそも私は彼が稲魂雷牙だと一度でも言った事がありますか?バーン、ガゼル…お前達が勝手に稲魂雷牙だと決めつけていただけでしょう?』

 

「そ、それは…。」

 

確かに“父さん”はアケボシの事を稲魂雷牙だと言った事は一度もない。だが、彼が自分達の前に姿を現したのは丁度稲魂雷牙が意識を失って数日経った頃だ。彼を稲魂雷牙だと思うなという方が無理がある。

 

『ですが…ここ最近アケボシの単独行動が多すぎるのも事実です。これからは事前に私に連絡を入れて行動しなさい。』

 

アケボシは特に言葉を発する事なくコクコクと首を縦に振り“父さん”に返事をする。バーンとガゼルからすればあり得ない行為だが“父さん”は特に彼を咎める事なくホログラムから姿を消す。

 

「さて…もういいかなバーン、ガゼル?父さんの言葉を聞かずに変に早とちりする君達と違って俺も暇じゃないんだ。“ジェネシス”の称号を承った以上不甲斐ない戦いをした部下達を鍛え直さなくちゃならないからね。またねアケボシ。」

 

最初から結末を予測していたグランはこれ以上は時間の無駄だと言わんばかりにバーン達に皮肉を飛ばしその場から立ち去った。アケボシも同じく自身の用事を終わらせる為に部屋を退出する。

その場に残ったのはバードとガゼルの2人だけだった。

 

「納得がいかねぇ…!“父さん”はあそこまでグランに甘すぎる…!あんな簡単に“ジェネシス”の称号をガイアに預けるなんてよぉ…!!それだけじゃねぇ!何処の馬の骨とも分からねぇ“新入り”にもあそこまで肩入れをしやがる!」

 

「今回ばかりは貴様と同感だバーン。だがどうする?“父さん”が正式に“ジェネシス”をチームガイアに任命した以上、あの人の決断を覆すのは簡単ではないと思うが?」

 

数分の沈黙が部屋を包むとバーンは何やらいいことを思いつき、部屋を退出しようとする。その行動の意図を理解出来なかったガゼルは彼を呼び止める。

 

「おいバーン!貴様、何処へ行く気だ!」

 

「何処へ行くって?決まってんだろ、目障りな雷門をぶっ倒しに行くんだよ!!!」

 

そう言うとバーンは部下に連絡を入れ、()が潜伏しているであろう沖縄にある噂(・・・)を流すように命令した。

 

「待っていろよ雷門イレブン…!テメェらをぶっ潰して俺が“ジェネシス”の称号をいただく…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

雷牙が雷門イレブンに復帰して早数日、ここのところエイリア学園に動きがなかった為、雷門イレブンは陽花戸イレブンに滞在していた。

 

「よしこい雷牙!」

 

「はッ!勝負だ守!“イナビカリブレイカー”!!!」

 

今日も今日とて円堂は祖父が残した最強のパンチング技である“正義の鉄拳”の特訓をしている。

ジェネシスとの試合が終わった後、ノート内容を一通り雷牙が翻訳したが“正義の鉄拳”の説明だけは彼の感性を持ってしても完全に翻訳する事が出来なかった。

 

「うぉぉぉぉお!!!“正義の鉄拳”!!ぐわぁぁぁぁあ!」

 

「おいおい大丈夫かよ守?モロに顔面に食らったぞ?」

 

「だ、大丈夫だ雷牙…、も、もう一回頼む…。」ガク

 

円堂がダウンしてしまった為、特訓を一時中断させる。円堂達が特訓している中、フィールドプレイヤー達は雷牙が“神鳴り島”にて行った特訓を元に瞳子が新たに調整したトレーニングメニューをこなしていた。

 

「もっと全身の感覚を尖らせろ!思考するよりも前に行動に移すんだ!」

 

既に感覚を掴んでいる鬼道の怒声が飛び交う中、雷牙は休憩がてらに彼らの様子を遠くから見つめていた。

 

「いや〜流石は鬼道だね〜、俺があれだけ苦労して得た感覚をもう掴んでら。」

 

「あら、たった1人でジェネシスのメンバーを圧倒した貴方も大概人間離れしていると思うけどね。はい、昼食のおにぎり。」

 

夏未から手渡された不揃いな形のおにぎりをバリバリ言わせながら美味しそうに頬張る雷牙。

すると今まで姿を消していた瞳子が雷牙達の前に現れた。

 

「皆、練習は一旦休憩よ。響木さんから新たな情報が届いたわ。」

 

「いよいよですか、次はどこにエイリア学園が現れたんですか?」

 

「…いえ今回はエイリア学園の情報じゃない。なんでも沖縄に“炎のストライカー”と呼ばれる人がいるそうよ。」

 

「へ〜炎のストライカー…ってええ⁉︎そ、それってまさか豪炎寺の事なんじゃ⁉︎」

 

“豪炎寺が沖縄にいるかもしれない”。新たな希望を見出した雷門イレブンは騒つく。しかし瞳子は大人としてあえて彼らの希望を否定した。

 

「待ちなさい。そのストライカーが豪炎寺君だという確証は無いのよ?」

 

「ふむ…それも一理あるな…。なぁ稲魂、お前は鬼瓦刑事辺りから何か豪炎寺の事について聞いていないか?」

 

「残念だけど俺は知んない。けど可能性は高いんじゃね?俺が復帰した今、監督が俺たちと無関係な情報を渡すとは考えにくいし。」

 

「絶対に豪炎寺の筈なんだ!あいつがいる場所なら例え地球の裏側でも行きます!だから監督、お願いします!俺たちを沖縄に行かせてください!」

 

「…分かったわ。1時間後にキャラバンを出発させます、各自荷物の準備をしてきなさい。」

 

円堂に根負けした瞳子は次の目的地を沖縄に決定する。そんな中、その場に残っていた立向居は何かを言いたげにモジモジしていた。それを見た雷牙は溜め息を吐き、立向居にヘッドロックをしながら瞳子に提案する。

 

「ねぇ監督!立向居(コイツ)もキャラバンに加えてさせてもらえないっすか?ほら、この先エイリアとの戦いも激化していくでしょ?それなのにキーパーが円堂だけってのは少〜し物足りないんじゃないかな〜って。」

 

「稲魂さん…!」

 

「確かに稲魂君の言う通りだわ。立向居君、私からもお願いするわイナズマキャラバンに参加してもらえないかしら?」

 

「お、俺が円堂さん達と一緒に戦える…?こ、こちらこそよろしくお願いします!俺…皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!」

 

新たに雷門イレブンの一員となった立向居を皆歓迎する。そんな中、鬼道は雷牙にあそこまで言わせる立向居の才能に興味を示していた。

 

「そこまで買っているんだなあの立向居勇気というキーパーの才能を。じゃなきゃいくら正体を隠していたとしても、お前が円堂以外のキーパーに背中を預けるとは思えないからな。」

 

「さぁ〜てね、だけど今のところ俺が100%背中を任せられるのはまだ2人だけさ。立向居(アイツ)が3人目になれるかはアイツ次第さ。」

 

「フッ、素直じゃない奴め。」

 

___________

 

「豪炎寺に絶対会うぞぉ〜!!!」

 

『おお!!!』

 

キャラバンが福岡を出発して数日後、現在雷門イレブンは船を使って沖縄に向かっていた。瞳子は先に沖縄に赴き豪炎寺を探しているらしいが特に連絡はない。

 

「暑っちぃ〜…。」

 

まだ沖縄には着いていないものの既に気温は東京よりも遥かに高くなっている。雪国育ちで暑さに弱い熱也は既にダウンしている。

 

「…そんなに暑いならマフラーを脱げばいいであろう。別に誰かの形見でもあるまい…。」

 

「うっせーな、マフラーは俺のトレードマークなんだよ。鬼道だってゴーグルにマントだろーが。」

 

「フッ、マントはセーフだ。」

 

「どういう理論だよそれ…。」

 

「稲魂さん!俺、豪炎寺さんに会ったら本家の“ファイアトルネード”を受けてみたいです!」

 

「ほぉ?言っとくが豪炎寺の“ファイアトルネード”は俺ちゃんの100倍熱いぜ?そう簡単には止められね〜と思うけどな〜?」

 

「たとえ今は及ばなくても必死に努力していつか止められるようになってみせます!それが俺の“イナズマ魂”です!」

 

「よく言った立向居!沖縄に着いたら早速俺と一緒に特訓だ!」

 

「はい!」

 

雷牙が雷門に戻って以降、何処か雷門イレブンに余裕が生まれた気がする。今までレギュラーが脱落してから余裕のない状況が続いている中で、地獄の特訓により更なるパワーアップを果たした雷牙が帰還しエイリア最強チームである“ジェネシス”を圧倒したのだ、彼らにも希望の光が見え始めてきたのだろう。

 

「うぎゃぁぁぁあ!」

 

そんな中あと少しでフェリーが到着するという所で目金の情けない叫び声が聞こえた。

 

「どうしたんだ?まさかまた木暮にフィギュアが落書きでもされたのか?」

 

「ええ⁉︎お、俺まだ何もしてないぞ!いや、本当だって或葉さん!そんな目で俺を見ないでくれよ!」

 

「じゃあどうして…?」

 

「た、大変っス〜!」

 

日陰のある場所で待機していた壁山が脂肪をぶるんぶるんと揺らしながら走ってくる。いつもはのんびりしている壁山のあの焦り様は余程の緊急事態である事が分かる。

 

「どうしたんだ壁山⁉︎」

 

「め、目金さんが海に落ちたっスよ〜!」

 

『ええ!?』

 

壁山に案内された先に行くと確かに目金が溺れていた。別に本人は泳げないわけではないが、あまりのパニックにより正常な判断を失っているようだ。

 

「早く助けないと!」

 

「待てよ守!今オマエまで飛び込んでも意味が無ェだろ!ここは係員の人を読んで来るのが先だ!」

 

雷牙が係員を呼ぼうとすると近くの港の方向から誰かが飛び込む音が聞こえてきた。目金以外にも溺れた人がいるのかと心配すると凄いスピードで目金に向かって泳いでくる人影が見えた。

 

「なんだあいつ⁉︎あんなに速く泳げる奴は初めて見た!」

 

謎の人物は目金を救助し、元いた港の方まで彼を移動させた。雷門イレブンが港に降りると目金は毛布を借りて包まっていた。

 

「まったく瞳子監督からも何度も言われただろ?あまり海に顔を出しすぎるなって…。」

 

「い、いや〜…、あまりにサンゴが美しすぎて…つい。」

 

「死んだら元も子もねぇだろーが…。」

 

あまり反省の色が見えない目金を見て皆呆れている。円堂はキャプテンとして仲間の命を救ってくれた少年に礼を言う。

 

「ありがとうな!君は目金の恩人だ!」

 

「へっ、よせやい!礼を言われる程じゃねーて。」

 

「そ、そうですよ!僕だって泳げるですか「馬鹿野郎!海を甘く見んな!」

 

目金の軽率な発言に少年の雷が落ちる。

 

「海はな命が産まれる所なんだ!命を落とされちゃたまんねーよ!」

 

「は、はい…。」

 

流石の目金も自分の発言が軽率だった事を自覚したようで素直に謝罪する。その様子を見た少年は再びニカッと笑い目金の無事を喜んだ。

 

__________

 

『次の船は明日〜〜⁉︎』

 

褐色の少年と別れてから沖縄に向かおうとする雷門イレブンだったが、なんと本土へと向かう船は1日1便しかないと知り途方にくれる。

 

「こんな小さな島に泊まるっスか〜⁉︎」

 

「そうがっかりすんな壁山。雷牙さんが“神鳴り島”で鍛えたサバイバル術を教えてやる。まずは偶々釣れた革靴の調理の仕方からだな。」

 

「一体島でどんな生活を送っていたんだ…?」

 

本気なのかふざけているのか分からない雷牙の発言に風丸は思わずツッコミを入れる。そんな中、円堂は砂浜を見てある事を思いついた。

 

「よーし!練習するぞ!やる気さえあればそこがフィールドだ!」

 

〜数十分後〜

 

海に落ちていた廃材を使用し簡易ゴールを組み立てた雷門イレブンは紅白戦を行っていた。

 

「へいへい!俺を止められなきゃジェネシスの奴らには勝てねぇぞ!」

 

ボールを確保した雷牙は普段より歩きにくい砂浜すらもものともせずにガンガン攻める。陽花戸中で特訓したとはいえまだまだ雷牙の実力は頭一つ抜けている。

 

「だったらこれならどうだ!“フレイムダンス”!」

 

最近新たに覚えた一之瀬の“フレイムダンス”が雷牙に襲いかかる。しかし雷牙は不敵な笑みを浮かべると炎を自身の身体に巻き込みながら飛翔する。

 

「これは⁉︎」

 

「“ファイアトルネード”!!!」

 

“フレイムダンス”の炎を利用する事で従来の“ファイアトルネード”よりも大きい威力を出す事に成功する。

 

「”パッと開かず、グッと握って…ダン!ギューン!ドカーン!”」

 

大介からの教えに従い“正義の鉄拳”を放つ円堂。文字通り拳を握った“ゴッドハンド”が出現し“ファイアトルネード”を弾いてみせるが本人は浮かない顔をしている。

 

「うーん…やっぱり中途半端な威力しか出ないな…。一体何が駄目なんだ…?」

 

円堂は今の“正義の鉄拳”が“マジン・ザ・ハンド”よりも遥かに威力が劣っている事を理解していた。

 

「前々から思ってたけど円堂の爺さんは“究極奥義”ってのは覚えられなかったんだろ?だったら実際の“正義の鉄拳”の威力は本人が想定していたよりも劣っているって事も考えられないか?」

 

「いや…実際に放っているからこそ、よく分かる。まだ俺は完全な“正義の鉄拳”を習得出来ていないんだ。きっと爺ちゃんが残した“究極奥義”はまだまだこんなもんじゃない!よし、もっと俺に撃ち込んでくれ!必ず“正義の鉄拳”を完成させてやるぞ!」

 

尊敬する祖父すらも完成させる事が出来なかったまだ見ぬ“究極奥義”をモノにしてみせると奮起した円堂は試合を再開させた。そんな中、雷牙は試合そっちのけである違和感について考えていた。

 

「“ギューン”ねぇ…。」

 

「何か引っかかるのか稲魂?」

 

「なんなんだろうな…、“ギューン”って言葉だけ何かサッカーとは違う雰囲気を感じるんだよなぁ…。」

 

「サッカーとは違う雰囲気?」

 

「あぁ、これはオノマトペ語界隈では有名な話なんだけどさ「それはお前だけだろ…。」こほん、“ギューン”と言葉は複数の意味を持つ事で有名なんだよ。素早い動きを表す為の“ギューン”、意味もなく叫ぶ為の“ギューン”…、今までの大介さんの言葉には何かしら重要なニュアンスがあったが、これだけはどうしても解読出来ねぇ。つまりこの”ギューン”ってのは普段サッカーでは使わねぇ動作を指す言葉なんじゃねぇか?」

 

「凄いな理性的に日本語を話している事は分かるのに、話の内容は1mmも頭に入ってこないぞ。まるで脳が理解することを諦めているみたいだ。」

 

「…つまり“正義の鉄拳”を完成させる為にはサッカー以外の動きを取り入れる必要があるという事だろう?」

 

「まっ、そゆ事。」

 

何か雷牙が核心めいた事を言ったものの本人でさえも“+α”の正体を見つける事が出来ずに紅白戦は終わってしまった。

 

__________

 

「いくで塔子!」

「ああ!」

 

「「“バタフライドリーム”!!!」

 

現在、雷門イレブンは各々自主練に励んでいる。そんな中、FWのリカはMFである塔子を強引に参加させ新たな連携技を習得しようとしているようだ。

 

「って何処に蹴ってんねん!」

 

「あはは、悪い悪い…。」

 

まだ息を揃える事が出来ていないようであらぬ方向にボールが飛んで行ってしまう。するとサーフボートを日陰に砂浜で寝ていた男にボールがぶつかってしまった。

 

「大丈夫か⁉︎」

 

「テテテ…、あれ?お前ら確かさっきの…?」

 

砂浜で寝ていた男の正体は先ほど出会った綱海だった。

 

「ごめんな、ここに人がいるって気づかなかったんだ…。怪我は無いか?」

 

「へへ!そんな申し訳なさそうにすんな!丁度いい波が来る時間帯なんだ、起こしてくれてありがとよ!」

 

そう言うと綱海はサーフボートを手に抱え海へ走って行った。

_____________

 

「「“バタフライドリーム”!!!」

 

あれから何度も“バタフライドリーム”に挑戦している塔子達だったが一向に完成する気配が見えない。しかも今回は海に向けて方向転換していってしまった。

 

「あっ、マズイ!このままじゃ、また綱海にぶつかる!」

 

塔子の言う通り、“バタフライドリーム”のなり損ないはサーフィン中の綱海

目掛けて飛んで行っている。ここまでくるともはや神の意志さえ感じられてしまう。

 

「ん?あらよっと!」

 

あわやボールに激突しかけた綱海はその場で一回転しオーバーヘッドキックを繰り出す。凄まじいスピードで放たれたシュートに立向居は反応する事が出来ず、手作りのゴールが粉砕されてしまった。

 

「す、凄いスピードだ…!」

 

「ふー、ビックリしたぜ。急にボールが飛んできたからよー。」

 

何事もなかったかのように綱海は涼しい顔をしている。彼のシュートを見た円堂は興奮しながら少年に話しかける。

 

「ねぇ君!サッカーやってるのか⁉︎」

 

「サッカー?んなもん一度もやった事ねぇけど。」

 

「初めてであのシュートか…!なぁ、俺たちとサッカーをやってみないか?」

 

「ハハハハ!冗談はよせよ、俺はサーファーだぜ?サッカーには興味は無ェよ。」

 

あまりサッカーに興味がない少年はその場から立ち去ろうとするが、彼の才能を惜しんだ円堂は一回だけでもやってみないかと食い下がる。そんな彼らの様子を見た雷牙は鬼道に耳打ちをし一芝居うつ事にした。

 

「やめとけ守。無理にドがつく素人を誘っても怪我するだけだぜ〜?」

 

「何ィ?お前はさっきの俺のシュートを見てなかったのか?」

 

「んなもん俺でも出来るつ〜の。一度打ち返したくれぇでサッカーを知った気になられちゃ困るなぁ。」

 

「稲魂の言う通りだ。いくら優れた身体能力があったとしても、やった事のない者が簡単に出来る程サッカーは甘くない。」

 

「お兄ちゃん…。」

 

「なんだとぉ…!よーし、だったらやってやろうじゃねぇか!お前らをギャフンと言わせてやるぜ!」

 

見事に雷牙と鬼道の挑発に乗った少年はすぐに着替えて練習に参加する。

 

「よろしくな!俺は円堂守。君の名前は?」

 

「俺の名は綱海、綱海条介だ!」

 

自身を馬鹿にした雷牙と鬼道を見返す為に意気込む少年こと綱海。だが、今日初めてサッカーに触れた彼では上手くボールを扱う事が出来ずに思うようにプレーが出来ていない。すると…

 

「ああもう!しゃらくせぇ!どっちみちゴールに入ればいいんだろ⁉︎だったらどんな場所からシュートを打っても同じだろ!」

 

いつまでもシュートを打てない事に苛立った綱海はボールを貰った途端、周囲に海のオーラを発生させるとサーフィンをするような動きでオーバーヘッドシュートを決めた。

DFの位置からシュートを蹴ったのにも関わらず一向に威力の落ちない彼のシュートの威力とスピードはあの円堂でさえも一瞬反応が遅れてしまう程だった。

 

「させるか!“正義の鉄拳”!」

 

円堂は未完成の“正義の鉄拳”を繰り出すが明らかに溜まっている気が足りていない事が遠目からでもよく分かる。

 

「あちゃ〜、ありゃ駄目だな不意を突かれて満足に気を溜めれてねぇ。」

 

「…! いや見ろ!今までのとは様子が違うぞ!」

 

今の円堂の拳はまるで稲妻のような光を発生させていた。今までにない変化に円堂は驚くものの、光はすぐに消えてしまいゴールに叩き込まれてしまった。

 

「…見たか鬼道?明らかに1番威力が出てたよな?」

 

「あぁ、どうやら綱海を誘ったのは間違いじゃなかったようだな。」

 

「へっへーん!どーよ、俺の“ツナミブースト”は!」

 

「必殺技の名前を付けるのは僕の役目なのに…。」

 

“正義の鉄拳”の完成が見えた円堂は試合を続行しようとしたが、先ほどの“ツナミブースト”により手作りのゴールが粉砕されてしまった為、今日の練習は終了する事になった。

 

_________

 

「ヒットだ。」

 

「俺も!」

 

「う〜ん俺はパスかな〜…。」

 

「君たちは甘いねぇ〜、俺ちゃんは当然ダブルダウンでいかせてもらうぜ!」

 

「…22。バーストだ、稲魂。」

 

「もぎゃぁぁぁぁあ⁉︎」

 

瞳子の手回しにより宿泊先を確保した雷門イレブンは自由時間を過ごしている。といっても大半はトランプをしているのだが。

 

ゴンゴン

 

突然扉の戸を叩く音が聞こえる。不思議に思った円堂は部屋中を見回すも全員その場にいる。

 

「よぉお前ら!たまたまデケェカジキマグロ釣れたからよ、一緒に食おうぜ!」

 

なんとそこには見たことがない程巨大なカジキマグロを抱えた綱海が立っていた。流石は海よりも広い心を持つ男、綱海は手慣れた手つきでカジキマグロを捌き、雷門イレブンに振る舞った。

 

「美味いっス〜!!!俺、今日ここに泊まれて本当に良かったっス〜!!!」

 

「ハッハッハ!遠慮すんなどんどん食え!」

 

そんなこんなで夜が明け、朝日が昇る時間となった。

雷門イレブンは朝イチに出航する船に乗って島を出発した。最後まで綱海に見送られながら目的地の沖縄に向かう円堂。

彼はそこにいる筈の豪炎寺と再会する事を胸に誓い新天地を目指した。




余談ですが雷牙が復帰した事により何人かのベンチのメンバーは“バックアップチーム”送りとなり福岡で別れています。
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