イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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南国の地に襲来せし来訪者 後編

前半も終了し、ハーフタイムに入ったテンマーズは“化身アームド”を解禁したアルファの対抗策を練っていた。

 

「…ど〜するよ?アルファを抑えなきゃテンマーズに勝ち目は無ェーぜ?」

 

「俺と先生の2人でアルファのマークに着くというのはどうですか?流石のアルファでも化身を発動した俺たちのディフェンスを簡単に突破出来るとは思えませんし。」

 

「いや、やめておいたほうがいい。確かに君達が全力でマークすれば突破出来ないかもしれないけど、“化身アームド”は化身の完成系…体力の消耗も普通に化身を発動するより軽いからね。恐らく先に潰れるのはこっちの方だ。」

 

ハーフタイム終了まで数分を切っているというのに効果的なアルファの対策を練る事が出来ないテンマーズの主要メンバー達。

 

雷牙はこんな時、鬼道か或葉がいればなんとかなったんだろうなと初めて司令塔がいるありがたさを噛み締めていた。

 

「そう暗い顔をしないでよ。僕に1つ考えがある、ワンダバ!例のアレ(・・・・)を頼むよ!」

 

「おお!遂にアレ(・・)を使うのだな!感謝しろよ〜!捕まえるのに何度も食べられそうになったからな!」 

 

フェイからの指示を得たワンダバは何処からかメカメカしいリュックを取り出し背中に背負った。

それを見た雷牙はフェイがやろうとする事を察する。

 

「あぁ!アレかぁ〜!」

 

「アレってなんですか先生?」

 

「まぁまぁ、答えは試合が始まってからのお楽しみだよ!」

 

1人だけ意図が理解出来ない天馬だったが結局誰にも教えてもらえずに後半戦に突入するのだった。

 

_____________

ピッピー!

 

遂に始まった後半戦。泣いても笑ってもこれで天馬と雷牙の未来が決定する。

 

「“天空の支配者 鳳凰”。アームド…!」

 

試合開始早々、アルファは無慈悲に“化身アームド”を発動する。どうやら後半戦終了まで天馬達を生かすつもりはないらしい。

 

「さぁワンダバ!“ミキシマックス(・・・・・・・)”だ!」

 

「OK!ミキシマックスガン装着!少〜しビリッとするぞぉーーフェイ!!!」

 

後ろのリュックから+と−の刻印が刻まれた銃を取り出すと、最初に−の方の引き金を引く。すると発射先から数mはあろう巨大を持ったティラノサウルスのオーラが姿を現した。

 

「な、なんだあれ〜〜⁉︎」

 

「おぉ〜、ティラノじゃん!やっぱモノホンはカッコいいなぁ〜!」

 

突然現れたティラノサウルスに驚く天馬とは対照的に既にミキシマックスを体験済みである雷牙は呑気な反応だ。

 

「さ〜ら〜に〜!受け取れフェイ!」

 

今度は+の引き金をフェイの方に向けて撃つとティラノサウルスのオーラがフェイに吸収されていく。兎を思わせる温和な顔立ちをしていたフェイの表情が次第に恐竜を思わせる荒々しいものへと変化していく。

 

ティラノサウルスのオーラが完全に消え去ると、フェイの姿は完全に変わっていた。

 

「ミキシマックスコンプリーーート!!!」

 

「フェイの姿が…変わった…⁉︎」

 

「アレは“ミキシマックス”。どっから持ってきたオーラを別のヤツに注入する事で新たな個性が合わさってパワーアップする未来の技術…らしいぜ?」

 

実際に1年前に円堂とのミキシマックスを体験した雷牙は体験談を踏まえて天馬に説明する。

 

「…さぁ始めよっか。」

 

フェイの持つ俊敏さにティラノサウルスの如しパワーが加わった事により、“化身アームド”を発動したアルファにも匹敵する身体能力を得たフェイは彼からボールを奪う事に成功する。

 

「さぁーて、まずは1点を取り返そうか!“古代の牙”!」

 

太古の自然界の頂点に立っていた暴君の牙がザノウに襲いかかる。それに対しザノウは咆哮によって抵抗しようとしたが、暴君の牙には敵わなかった。

 

『ゴーール!!!後半開始から僅か5分!先ほどの失点を取り返したのはイメチェンしたフェイ・ルーンだぁ!!!』

 

「やったねフェイ!」

 

「ありがとう天馬。でも勝負はこれからだよ、気を引き締めていこう!」

 

「「ああ!」」

 

「くっ…!すまないアルファ…。」

 

「気にするなザノウ。フェイ・ルーンの実力を侮っていた我々にも問題がある。恐らく奴はこの瞬間の為にあえて前半は大人しくしていたのだろう。」

 

点を取られた事に責任を覚えるザノウをアルファは宥め、フェイの脅威を改める。

 

_______

 

ピッピー!

 

「オマエらアルファが何かしてきそうな雰囲気だ!警戒しろ!!」

 

ボールを受け取ったもその場から動く気配のないアルファを見た雷牙は嫌な予感がした為指示を飛ばす。

しかしアルファが取った行動は実にシンプルなものだった。

 

「“シュートコマンド01”。」『“スピニングトランザム”』

 

アルファが取った行動はキックオフからボールを受け取った瞬間にシュートを放つただそれだけだった。当然その場から動いていない為、ハーフラインからシュートを打つ事になる。

しかし一向にシュートの威力は落ちる事なくテンマーズ達を吹き飛ばしながらゴールへ向かった。

 

「“エクセレ…ぐわぁぁぁぁぁあ⁉︎」

 

フェイが追加点を取ってから僅か10秒、プロトコル・オメガ2点目を達成。

 

『な、なんとぉ⁉︎まさかの開始から僅か10秒で再びアルファがゴールを奪ったぁぁぁぁあーー!!!』

 

「ご、誤算だったぜ…、まさかまだ力を隠していたなんてな…!」

 

「これで2対2のイーブン…。残り時間はお前達を甚振る時間に使おうか。」

 

今までの活躍を見たアルファは遊びを捨て本気を出した。ここからがテンマーズにとっては地獄である…。

 

__________

 

「邪魔だ。」

 

「ぐはッ…!」

 

既に後半が始まって15分を経過していた。アルファの宣言通りプロトコル・オメガは得点ではなく、雷牙達を傷付ける事に集中している。

 

雷牙と天馬はもとより、先ほどアルファを圧倒した筈のフェイすらも蹂躙されボロボロとなっている。

 

「ぐはッ…!」

 

「フェイ!」

 

「だ、大丈夫さ…!このくらい…なんでもないよ…!」

 

「強がりはよせフェイ・ルーン。お前は我々の動き相手に8体ものデュプリを操作しているんだ。気力・体力の消耗はかなり激しい筈だが?」

 

「さぁて…それはどうかな…?」

 

なんとか強がりを言うフェイだがアルファには通用せずに再び痛めつけられる。

 

「フェイ…、もうやめろ!!オマエがそれ以上傷付く必要は無ェだろ⁉︎」

 

あそこまでボロボロになって自分達の為にあそこまで身体を張るフェイを放っておけなくなった雷牙は必死に彼を静止する。

本来彼は雷牙にも天馬にも関係のない人物の筈である。それにも関わらず、彼は文字通り命を張ってプロトコル・オメガから自分達を守ろうと必死になってくれている。

見ず知らずの自分達にそこまでしてくれるフェイになんとも言えない違和感を抱いたのだ。

 

「お答えしましょう稲魂様。マスターの過去…そして彼がそこまでしてサッカーを守ろうとしている理由を…。」

 

雷牙の独り言を近くで聞いていたデュプリの1人であるマントが彼の疑問に答える。

 

「マスターはずっと1人ぼっちでした…。物心ついた時には既に親も友人もおらず、残ったのはただ1つ…それがサッカーでした。…もしかすると我々デュプリもマスターの孤独の中から生まれた存在かもしれません。」

 

親も友もいなかった…。フェイの過去を聞いた雷牙は何度もアルファに立ち向かうフェイの姿に幼い頃の自分の姿を重ねる。

 

「(…そうか。オマエもなんだなフェイ…。)」

 

当のフェイ本人は何とかフラフラのまま立ち上がる。だが誰の目にももう限界を迎えているのは明らかだ。

 

「サッカーは…、僕にとって…、かけがえのないものなんだッ!!!だから絶対にサッカーを守ってみせるんだぁぁぁぁあ!!!」

 

最後の力を振り絞り、アルファからボールを奪おうとするが呆気なく避けられる。

 

「無駄だ。サッカーが消える事が未来の為になる。未来人にも関わらずエルドラドに反抗するお前には消えてもらおうか。」

 

「ぐぁあッ!!!」

 

アルファの一撃により体力の限界に達したフェイはミキシマックスが解除されデュプリも消滅してしまった。

動きかなくなったフェイを見下すアルファは淡々と現実を突きつける。

 

「これが現実だ。サッカーはお前達には微笑まない。なんとかなどならないんだ、いい加減諦めるんだな。」

 

「大丈夫かフェ…… な、なんだこの気迫は⁉︎」

 

地面に臥したまま動けなくなったフェイをテンマーズのキャプテンとして見ていられなかった天馬は彼を助けに行こうとする。その瞬間、何処からかシードとは比較にならない程強い気迫を感じる。

 

「先生…⁉︎」

 

気迫の発生源となっていたのは静かに“レグルス”を顕現させている雷牙だった。

 

「俺はやるぜ天馬…!“化身アームド”を成功させて絶対ェプロトコル・オメガをぶっ倒す…!!!」

 

「無駄だお前には何も出来ない。未来との壁は越えられない。」

 

「はッ!俺を誰だと思ってやがる⁉︎俺の名前は稲魂雷牙!!!偉大なる稲魂ステラの意志を継ぎ、新たな“サッカーモンスター”となる男だァ!!!200年ぽっちの時間差なんざ余裕のよっちゃんで飛び越してやらぁ!!!」

 

自身の原点を語り闘志を震わせる雷牙は今までとは比較にならない程、気を高める。

 

「顔を上げろフェイ!俺もオマエの気持ちはよく分かる!俺もずっと1人だった…!大切な家族は死んで、心から分かり合える友達もいなかった…、全てに絶望した俺はサッカーすらも捨てようとした…!」

 

「フン、それは残念だな。そのままサッカーを捨てていればこんな思いをしなくてすんだだろうに。」

 

「だがなぁ…!サッカーは俺を捨てなかった…!そして俺もサッカーを捨てなかった…、だってサッカーが大好きだから!!!」

 

「先生…!」

 

「だから諦めんな!どんなに挫けそうになっても…周りが見えなくなっても…、ひたすら前を見続けろ!!!そうすりゃいつか…信頼し合える仲間が手を差し伸べてくれる…!そうだろ天馬!!!」

 

「はい!だから一緒に守ろうフェイ!!かけがえのない俺たちのサッカーを!!!」

 

「うおぉおぉおぉーー!!!」

 

天馬の覚悟に呼応するかのように“レグルス”は本体と一体化するように身体中にまとわりつく。不安定なオーラは次第に“レグルス”の意匠が施された鎧へと姿を変え、雷牙に更なる力を齎す。

 

「ようやく出来たぜ…!これが俺の“化身アームド”だ…!」

 

「ありえない…!200年の差がここまで容易く乗り越えられる筈がない…!」

 

「時空共鳴現象キターーーーーー!!!」

 

「雷牙さん…!」

 

「凄いや先生!」

 

流石のアルファも雷牙が“化身アームド”に覚醒した事には驚きを隠せないが、すぐに落ち着きを取り戻す。覚醒したばかりの雷牙と使い慣れた自分とでは技術の精度に差がある筈である。ならばまだ自分の有利は揺るがない筈だからだ。

 

だがアルファは忘れていた。目の前で対峙している男は常識の範囲外に住んでいる生物である事を…。

 

「オマケに、も一つ…。はぁぁぁぁぁあ!!!」

 

突如雷牙の身体から黄金の気が溢れ出る。あまりに異常な光景にその場にいた全員の動きが止まってしまう。

 

「“獅風迅雷”……“限界突破(オーバーハンドレッド)”だぁぁぁぁあ!!!」

 

強化された身体は通常時よりも遥かに早く限界を超える事に成功する。これこそが雷牙の奥の中の奥の手、“化身アームド”と“獅風迅雷”の重ねがけである。土壇場で一か八かの賭けに勝った雷牙は“レグルス”の鎧と共に空に立ち昇る金色のオーラを纏っている。

 

「出来たぜ…!“化身アームド”と“獅風迅雷”の重ねがけ…!さぁ、決着をつけようぜ!アルファ!!!」

 

好戦的な笑みを浮かべながらアルファへと近づく雷牙。

だがアルファは彼の言葉に答える事が出来ない。200年という時間の差すらも軽々と越えて行く雷牙の姿を見たアルファは以前エルドラドのデータベースにて閲覧したある情報を思い出していたからだ。

 

__________

 

“怪物”…、それは人智の理解を超えた存在に贈られる最上級の称号。

そしてサッカー界において、歴史上初めてこの称号を冠した人間は小さなイタリアの雑貨店から産まれた伝説のサッカー選手…ステラ・オーロであった。

 

170cmにも満たない身長からは考えられない程のパワー、見る者を魅了する圧倒的なテクニック、プロの陸上選手も顔負けの爆発力のあるスピード…、まさに人類の限界を超えた身体能力を持つ彼は出場した試合全てに勝利を齎した。

 

円堂大介以来の新たな伝説を生み出した彼をいつしか世間はこう呼ぶようになった。

 

怪物(サッカーモンスター)”と…。

 

その後ステラは若くして不幸な事故により死去。彼の死後200年が経った未来でも、“怪物”の名を冠した人間は歴史上僅か3名しかいない。

 

1人目は“ステラの意志を継ぐ者”稲魂雷牙。“雷鳴のサッカーモンスター”と呼ばれた彼はイナズマイレブンの仲間達と共にステラを超える伝説を作り上げた。

 

2人目は“ステラの能力を継ぐ者”円堂ハル。“神域のサッカーモンスター”と呼ばれた彼は円堂守の息子でありながら“サッカーモンスター”の名を冠するほどの活躍を見せつけた。

 

そして3人目は……

 

__________

 

「おいおい!何ボケーッとしてんだよ!負けた時の捨て台詞でも考えてんのか⁉︎」

 

雷牙の覇気によりアルファは現実に戻される。目の前の“怪物”に立ち向かう覚悟を決めたアルファは全力を尽くして彼を排除しようと試みる。

 

しかし限界を超えた雷牙の前では如何にアルファといえど圧倒されるだけだった。

 

「なんだこの馬鹿げたパワーは…!貴様は本当に人間なのか…⁉︎」

 

「酷ッでェ事言うねぇ。残念だが俺ちゃんは正真正銘のジャパニーズだぜ?…いやオメーたちと違いが1つだけあったわ、俺の身体には染み込んでいるんだよ…、どんな時でも絶対ェに諦めない“イナズマ魂”がなぁ!!!」

 

『な、な、な、なんとぉぉぉおーー!!!遂に稲魂がアルファを打ち取ったぁぁぁぁあ!!!』

 

「ハッハッハー!!!俺の勝ち…いや!俺が“KING”で“王者”じゃーい!!!」

 

アルファからボールを奪い取る事に成功した雷牙だったが、流石の彼でも“化身アームド”と“獅風迅雷”の併用は負担が大きかったようで抜き去った瞬間、強制的に変身が解除されてしまった。

 

「絶対に稲魂雷牙をゴール前に行かせるな…!私が復帰するまで死守しろ…!!!」

 

「へいへ〜い…!オメーは1つ忘れてんぜ…?俺は1人でサッカーをしてるわけじゃねぇんだよ…!そうだよなぁ…⁉︎」

 

「はい先生!俺がついてます!」

 

雷牙に気を取られている隙に前線まで上がっていた天馬が雷牙からボールを受け取る。プロトコル・オメガは急いで天馬からボールを奪おうとするが、師匠譲りの突破力を持つ天馬の前にはなす術もなく抜かれてしまう。

 

「ナイスだ天馬!一緒に決めるぞ!!!」

 

少しだけ体力が回復した雷牙は天馬と合流する。

 

「見せてやるアルファ!これが俺たち…雷門イレブンの“魂”だ!」

 

互いにアイコンタクトを交わした2人は左右対称で天馬は“マッハウィンド”、雷牙は“イナビカリブレイカー”を放つ体制に入る。蒼き疾風と黄金の雷は互いに調和し合い、時を超えた必殺技を生み出す。

 

「「“ランペイジツイスター”!!!」」

 

時空共鳴現象の影響か、はたまた彼らの胸に秘められた“イナズマ魂:”が奇跡を起こしたのか、土壇場で生み出した連携技は化身技を遥かに超える威力となる。暴風を纏ったボールはプロトコル・オメガメンバーを吹き飛ばす。それは“化身アームド”を発動したアルファでさえも例外ではない。

 

「くっ…!”キーパーコマンド03”!!!」『“ドーンシャウト”』

 

アルファでさえも通用しなかった光景を見てもゴールから逃げ出さなかったザノウの根性は褒めたいところだが、彼らが好きな現実は実に残酷である事を分からされてしまった。

 

「ぐわぁぁぁぁあ!!!」

 

『ゴーール!とここでタイムアップだーー!!!互いに譲らない攻防の末に勝利を手にしたのは“テンマーズ”だぁぁぁぁあ!!!」

 

「よっしゃぁぁぁあーー!!!」

 

「やりましたね先生!!!」

 

なんとか勝利を納め、互いに喜び合う天馬と雷牙。まさか200年前の人間に自分達が敗北するなどと思っていなかったプロトコル・オメガの面々は唖然としている。

その時アルファのインカムから彼らの主人であるトウドウから連絡が入った。

 

『退却だアルファ。今すぐ本部へ帰還しろ。』

 

「…YESマスター。プロトコル・オメガ…退却だ…!」

 

トウドウから新たな指令が入ったプロトコル・オメガは天馬のインタラプト修正を諦め、退却する。

 

「消えた…!」

 

「恐らく体制を整える為に未来に戻ったんだろうね…。でもマズいな…、天馬のインタラプトは何とか阻止出来たけど肝心の雷門サッカー部のインタラプトがまだだ…せめてアルファ達の目的地が分かれば…。」

 

云々と頭を悩ませるフェイだったが、雷牙には彼らが行った先が分かっていた。

 

「多分奴らが行った先は俺が雷門中に入学した日だ。俺は1年前…そこでオマエたちと一緒に試合をした。」

 

「そういえば言ってましたね…。」

 

「そうか…!きっとエルドラドはサッカー部を作る前の円堂守と稲魂雷牙を潰す気だ!そうと決まれば急がなきゃ!」

 

フェイはスマホを操作すると空からイナズマキャラバンに似た乗り物が現れた。どうやらこれがフェイ達が使うタイムマシンのようだ。ワンダバ、フェイ、天馬の順番に続き雷牙も乗り込もうとしたが、フェイから未来ならまだしも過去の自分と深く接触した場合歴史への影響が計り知れないと警告され仕方なく同乗を諦める。

 

「頼んだぞ天馬。1年前の俺と守を助けてやってくれ。」

 

「はい!絶対に雷門サッカー部を守ってみせます!」

 

天馬はイナズマキャラバンに乗り込み扉が閉まると、次第に浮上し始める。雷牙は未来の弟子の旅立ちを静かに見守っていた。すると突然キャラバンの扉が開き、天馬が顔を出した。

 

「先生ーー!俺を助けてくれてありがとうございました!これからの未来…あなたには色々な困難があると思いますが…あなたならきっとなんとかなりまーーす!だから頑張ってくださーーい!!!」

 

「おーーーう!!!天馬もズババ〜ンと頑張ってくれよ〜〜〜!!!いつかまたサッカーしようぜーーー!!!」

 

「はーーい!!!」

 

天馬が乗ったイナズマキャラバンは完全に姿を消す。海のさざめきだけが鳴り響く砂浜に1人きりになった雷牙は約束を守る為にある場所へ歩みを進めた。

 

___________

 

雷牙が歩みを止めた先は件の木材置き場だった。先ほどまでいた筈のフードの男の姿は既になく、ボロボロのサッカーボールだけが残されている。

相変わらず自分達の前に姿を現してくれない事に残念に思うが、気持ちを切り替え、粉々になった木材の下で眠る男の子の方に足を進める。

 

「お〜い坊主〜、大丈夫か〜?そんな所で寝てたら風邪引くぞ〜。」

 

異常に既視感のあるパーマの少年を雷牙は男の子を起こす為にプニプニのほっぺを伸び縮みさせる。数秒後、ようやく目を覚ましたがどうやら状況を飲み込めていない様子だ。

 

「あれ…おれいきてる…?サスケとあそんでたらきゅうにでっかいのがおちてきたはずじゃ…?」

 

「良かったなぁ坊主。このボールがオメーを助けてくれたんだぜ?」

 

「…? もしかしてにいちゃんが助けてくれたの?」

 

「い〜や違うねぇ。オメーを助けたのは俺の仲間さ、でもソイツは恥ずかしがり屋なんでな、すぐに立ち去ったよ。んで、俺が代わりに起こしたってわけ。」

 

「そっか…でもすごかったな、あのほのおのシュート…。」

 

「だったら俺がオメーに教えてやろうか?自慢だが俺もアイツに負けてねぇ〜ぜ?あれよりもスゲーシュートを教えてやんよ。」

 

「ほんと⁉︎あっ…でももうすぐゆうはんの時間だしかえらないとおかあさんにおこられる…。」

 

「だったら明日ここでまた会おうぜ!そうだな〜、明日の12時でどうだ?」

 

「うん!いいよ!じゃあねおにいちゃん!」

 

「おう!またな!天馬(・・)!」

 

明日また再開する事を約束し、男の子と雷牙は別れる。無邪気な足取りで家に帰る少年の後ろ姿を見た雷牙は彼に先ほどまで共に戦った少年の面影を見出していた。

 

「あれ?おれ、あのお兄ちゃんになまえおしえたっけ…?まっいっか!あしたがたのしみだな〜!」

 

少年は何故か初めて会った中学生が自分の名を知っていた事に違和感を覚えつつも初めて出会ったサッカーへの好奇心が勝った事ですぐに忘れ去った。

遂にこの世界でも遭遇した稲魂雷牙と松風天馬。彼ら師弟は10年後の未来で支配されたサッカー界に革命を起こす風穴となるだろう…。




神が“怪物”達に与えなかったモノ

ステラ:“寿命”
ハル:“情熱”
雷牙:“性格”
???:“愛情”
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