「おい守、しっかりしろ!守ッ!!!」
懐かしい友の声が俺がいる席にまで響き渡る。それもその筈だ、なんせ雷門イレブンの守護神がその場から動かなくなっているのだからな。
俺が同じ立場でもそうするし、実際に円堂が倒れてからグラウンドに飛び出しそうになった回数は今の分を入れて10回目だ。
「ねぇ豪‥シュウジ兄ちゃん…仲間のところにいかなくていいの…?」
無意識のうちに表情に出ていたのだろうか。俺に1番懐いてくれている雷電の弟の雷雲が心配そうに俺に語りかけてくれた。チビの気遣いは嬉しいが俺はまだあいつらの元へ行く事は出来ない。
…いや、仮に俺があそこに行けたとしても暴走したデザーム相手に勝てる保証は無い。…
だがあれはまだ未完成…そもそも沖縄での特訓と研究によって確信だけ出来た机上の空論でしかない。発動出来る確率は良くて4割、皆のコンディション次第では1割に満たない可能性だってある…。それでも奴らに勝つ為にはそれに賭けるしかないのだろう。
現在の雷門で唯一デザームに対抗出来るのは雷牙、お前だけだ。頼む、あと少し…もう少しだけ俺に時間をくれ…!
_____________
デザームのシュートにより円堂が気を失った直後、雷門にとって幸いな事に前半が終了しハーフタイムに突入した。現在円堂はベンチの上で横になっており古株の診断を受けている最中だ。
「どうですか古株さん?円堂君の状態は?」
「幸い骨は折れてないが完全に意識を失っておるのう…。この様子じゃ暫くは目を覚まさんじゃろう…、たとえ目を覚ましたとしてもすぐに試合に復帰出来るコンディションではないだろうなぁ…。」
事実上の円堂のリタイア宣言に瞳子は目を細めてしまう。円堂と交代出来るのは当然立向居だけだが福岡にて彼に眠る可能性を感じたとはいえまだ発展途上…、デザームのシュートどころか他のFWのシュートを止めれるかすら怪しいレベルだ。
だがサッカーはGK無しでは試合が成立しない、ここは立向居を出すしか道は無いのである。
「…そうですか。立向居君。」
「! は、はい!!!」
「円堂君と交代よ。行けるわね?」
「は、はい!お、お、俺皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!!!」
円堂が気絶した時点で薄々察していたとはいえ、いざ交代を言い渡されるとガチガチに緊張してしまう立向居。そんな彼を見かねた風丸は立向居を諭す。
「立向居。そう緊張するな、お前はお前通りのプレーをしろ。俺達DFも出来る限りお前の負担を減らせるようにフォローはする。」
「は、はい!」
風丸は優しく立向居に語りかけ彼の緊張を解す。前半に圧倒されたにも関わらず前向きな発言が出来るようになったあたり彼の成長が読み取れる。
だがちょっと待って欲しい。いつもなら彼の緊張を解すのは雷門の副キャプテンの役割だ。当の副キャプテンは一体何をしているのであろうか?
「随分落ち込んでいるのね。」
「……。」
雷牙は他のメンバーから少し離れた所で体育座りをしながら黄昏ていた。別に自分の実力が通用しなかった事に落ち込んでいる訳ではない、大切な親友を守れなかった事に責任を感じているのだ。
そんな彼を見かねた夏未は円堂の看病を木野に任せ、彼のフォローに入る。
「…何か喋ったらどうなの?今の雷門のキャプテンはあなたなのよ?そんな不甲斐ない顔をした人がキャプテンならこの試合100%負けるわよ。」
「…俺さ“神鳴り島”での特訓で強くなったって思ってたんだよ。」
「あら?まさかあの覚醒したデザームにもう怖気付いたのかしら?」
「…違ェーって。ただアイツを前にした時、俺は一瞬動けなかった…。…もしもあの時俺が動けていたら守があんな事にならなかったんじゃねーかなって思っt「えいっ!」
雷牙の言葉を遮り夏未は手に持っていたスクイズボトルの中身を彼の頭からふちまける。
「冷たッ!!!何すんだよ夏未⁉︎」
「それはこっちの台詞よ。自分が動いていたら円堂君を守れていた?そんなものは結果論でしかないわ!一体いつからあなたはサッカーはあなたと円堂君の2人でするスポーツだと勘違いしていたのかしら?」
夏未の鋭い指摘に雷牙はハッとなる。雷牙は良くも悪くも自由人だ、自由人だからこそポジションに縛られないプレーを得意とし、いつだって自分の思うがままのサッカーをしてきた。
だからこそだろうか、最近の彼はなんでも自分1人でこなそうとしていた、そしてなまじ強くなり過ぎてしまったが故にそれがエイリア学園に通用してしまった。
サッカーは11人のチーム一丸となって初めて勝利を掴み取れるスポーツである、それは亡き父から教わり常に心がけていた事だったがいつの間にか忘れていたようだ。
「…はぁ。な〜んかたまに自分が嫌になんなぁ〜。帝国戦の時といい、ちょっと強くなるとサッカーの本質を見失っちまう…。嫌だねぇ〜強すぎるってのも。」
「フフ、やっといつもの調子が戻ったようね。なら早くグラウンドに戻りなさい?次前半のような不甲斐ないプレーをすれば…分かってるわね?」
「…うっす。」
夏未の脅迫により、雷牙はいそいそと自分のグラウンドに戻って行く。しかし急に動きを止めると後ろを振り返らずに夏未を呼び止めた。
「…夏未。」
「何よ?」
「あんがと。」
柄にもなく素直に礼を言ったのが恥ずかしかったのだろう。雷牙はそのままピュ〜っと音を立ててグラウンドに戻って行った。
「(待っていやがれデザーム!俺がオメーをぶっ倒してやるからよぉ!!!)」
_____________
時は少し遡り、イプシロンのハーフタイムに移る。ハーフタイムと言っても彼らにはマネージャーや監督などいない為本来ならば後半の動きのミーティング時間程度の扱いでしかなかった。しかし今日のハーフタイムはいつもとは違う。
「…どうなっているんだデザーム様は?明らかに雰囲気が違うぞ…!」
メンバーの誰かが独り言を呟く。それもそうだ、自分達ですらも知らない力を発現したばかりか性格も180度異なるものへと変貌を遂げたのだ、混乱しない方が不自然である。
当のデザーム本人…いや“デザームもどき”とでも言おうか‥、当人は他のメンバーとは少し離れた場所で座っているだけなのだが、身体中から発せられる不気味なオーラにより誰も彼に近寄ろうとはしない。
「やっぱり基準値の5倍のチャージはマズかったのか…?」
「俺達もデザーム様のようにおかしくなっちまうのか…?」
デザームの変貌はエイリアエナジーのチャージによる副作用だと結論づけた彼らは自分達とキャプテンと同じ末路を辿るのではないかと不安がる。如何に強大な力を得たとしても彼のようになるのは流石に恐怖を感じるのであろう。
「お前達落ち着け!本当にチャージが原因ならば俺達も既に変化している筈だ!」
彼らに喝を入れたのはイプシロン副キャプテンでありデザームの右腕でもあるゼルだった。デザームがチームで最も信頼する人物というだけあり、こんな状況となってもチームをまとめようと努力している。
「だ、だがゼル…。」
「俺がデザーム様と話をつけてくる!」
「ま、待てよゼル!」
チームメイトの静止を振り切りゼルはデザームの元は赴く。
「で、デザーム様…。お話があります…。」
「……。」
彼の元へ辿り着いたはいいものの、ただ座っているだけにも関わらず冷や汗が止まらない程の威圧感を放つデザームにゼルは圧倒される。
「アア…オマエハソウ‥“ゼル”?…ダッタナ。」
今までずっと一緒にいた筈の自分の名前すらも忘れたかのような反応を見せられ今にも泣き出しそうになるもゼルは涙を堪える。
「こ、後半の指示はいかがなさいましょうか…?」
「“指示”…?奴ノ記憶ニヨレバ…貴様ラハモウ少シ頭脳ハイイ奴ラダト思ワセテイタガ…思ッテ違イダッタヨウダナ…。」
「くッ…!」
「マァヨイ…。私ガ出ス“指示”ハ1ツダケダ…!ワタシガヤツラヲツブシ…キサマラハマモレバイイダケ…。ワカッタナライチハヤクニゲロ…。」
「は、はッ!」
デザームから指示を受け取ったゼルは今の彼が自分の知るデザームとは別人である事を確信する。その瞬間、今まで耐えてきた涙が目から溢れ始め止める事が出来なかった。
「ぜ、ゼル…?」
「デザーム様からの指示だ…。我々は後半‥守りに徹する…。ボールを確保し次第デザーム様にボールを回すのだ…。」
「ほ、本当にいいのゼル⁉︎あなただって分かっているでしょ⁉︎あれはもうデザーム様じゃない!キャプテンの姿をしt「それでもッ!」ッ⁉︎」
「我らは誇り高きエイリア学園ファーストランクチーム“イプシロン”なのだ…!!無様に敗北する事はデザーム様も望んではいない筈だ…!」
涙を流しながら自分達の理念を語るゼルの前では誰も反論する事は出来なかった。結局纏まった結論を出す事が出来ないままハーフタイムを終え、後半に備える事となった。
_____________
『さぁ遂に後半戦が始まります!どうやら雷門イレブンは円堂の代わりに立向居勇気が入ったようです!果たして彼の実力はイプシロン・改に通用するのかぁ⁉︎』
ピッー!
キックオフから始まって早々、速攻を仕掛ける雷門だったがなんと今度はイプシロンが一歩も動かなくなった。
『おおっと⁉︎今度はイプシロンが動かないぞぉ⁉︎これは先ほどの意趣返しなのかぁ⁉︎』
「…ククク。ソウダ…ドンドン攻メテコイ…、コノ“肉体”ガドレダケノチカラヲ使エルカ‥オ試シサセテモラオウカ…。」
「チッ!相変わらず気味悪りぃ奴らだぜ!稲魂、お前が決めてこい!」
「サンキュー熱也!来い“レグルス”!」
まだ後半が始まって5分も経っていないにも関わらず化身を発動する。
「“マキシマム・オブ・レグルス”!!!」
化身技で一気に勝負を決めにかかる。
その時、デザームを起点とし再び深淵の怪獣…10年後の未来にて“ケモノの力”と呼ばれる現象を発動させ、その姿を変える。
「あれはさっき円堂を破った技だ!」
「まさかキーパー技としても使えるのか⁉︎」
風丸の予想通り、“謎の力”を発動させた“デザームもどき”は無数の触手を駆使してボールに殴りかかるとあっという間に“マキシマム・オブ・レグルス”の威力を殺す事に成功した。
「ククク…ドウダ?コノチカラハ…コノ惑星ノ“生命体”ドモノセンスニアワセテ名付ケルトスルナラバ…“ソウル”トイッタトコロカ…。」
「“ソウル”だと…!」
「サァ次々ト攻メテ来イ雷門イレブンヨ…。モット私ノ肥ヤシトナッテモラオウカ…!」
すると“デザームもどき”はボールを雷門に渡しシュートを撃つように要求する。
「チッ!舐めやがって!オメーらいくぞ!」
『おう!』
「「「“皇帝ペンギン2号 featドルフィン”!!!」」」
「「「“トリプルブースト”!」」」
「“エターナルブリザードZ”」
雷門が誇る強力なシュートの技の数々をもってしても“デザームもどき”の鉄壁のディフェンスを破る事が出来ない。
後半開始から15分程経った頃だろうか、雷牙が放った“イナビカリブレイカー”を易々と止めた“デザームもどき”は溜め息を吐き、ボールを自身の足元に置いた。
「ツマラン…。散々ハンデヲ与エタヤッタトイウノニマダ点ヲ決メレントハナ…。モウイイ…今度ハ私ガボールヲ蹴ッテヤル…。」
“デザームもどき”は腰を深く落とし、陸上競技のクラウチングスタートに似た体勢に入ると凄まじい速度で走り始めた。
「お前達!絶対に気を抜くな!今のデザームには俺達全員で対等だと思え!!!」
『おう!』
「マズハ…貴様ラカラダ…!」
「ヘッ!奴さんよっぽど俺たちに興味津々らしいぜ熱也!」
「だったら俺があいつの長鼻を折ってやんよ!」
最も“デザームもどき”に近い位置にいた雷牙と熱也は彼からボールを奪う為にトップスピードで駆け出した。
FWである2人だが必殺技抜きのディフェンス力においては本職のDF顔負けの技術を持つ選手である。
しかし…
「トロイナァ…“シャイニーフェザー”…!!!」
「「ぐあぁぁぁぁぁあ!!!」」
そんな2人を持ってしても“デザームもどき”を止める事は叶わず必殺技に
より吹き飛ばされてしまった。
「今度ハ貴様ラダ…!」
FWのディフェンスを突破し標的をMFに移した“デザームもどき”は彼らを見下しながらトップスピードで突撃する。
「“真フレイムダンス”!」
「“ザ・タワーV3”!!」
「“真 流水君庭”…!」
流石は日本トップレベルのMF達だ。恐らく彼らの必殺技を躱すのはデザームでは少々厳しかっただろう。
「クダラン…!」
なんと“デザームもどき”は必殺技すら使わずに己のフィジカルのみで突破してみせた。
『な、な、なんとぉーーッ!雷門のMF達の必殺技も覚醒したデザームの前では通用しないーーッ!』
「弱イ…弱イナァ…!!!」
必殺技すらも使わずに中盤を突破してみせた事実はDF陣に少なくない衝撃を与えた。
今突破された選手は皆日本トップレベルの名MF達、そんな彼らを力押しだけで突破してみせたのだ。これでショックを受けない方が少数派であろう。
雷門のDFは皆後退のネジを外している為誰1人敵前逃亡するという選択肢を選ぶ者はいなかったがそれでも“デザームもどき”から発せられる威圧感は彼らに足を動かす事を躊躇わせていた。
たった1人を除いて…。
「今度は俺が相手だ!“魔帝 ダークエンペラー”!」
風丸は恐怖心なぞ知らんとばかりに化身を発動しながら“デザームもどき”に向かって走り出す。
そんな彼を見た“デザームもどき”はこの上なく邪悪な笑みを浮かべながらゆっくりと歩き出す。
「面白イ…!貴様モ私ノ肥ヤシトナレ…!」
「減らず口を叩いている場合か⁈喰らえ“魔帝の逆鱗”!」
漆黒の暴風を周囲に発生させる事で“デザームもどき”を暴風の檻に閉じ込める事に成功した。そしてダメ押しと言わんばかりに自身も更に巨大な暴風を纏いながら突進し彼の持つボールを奪おうとする。
その瞬間“デザームもどき”は三度“ソウル”を発動させた。
「時二“カゼマルイチロウタ”ヨ…、貴様ハ“
「“化身”の正体だと?悪いがそんな議論をする暇はない!」
暴風の檻の中で2人きりとなった“デザームもどき”は風丸に対して質問をするが彼はすぐに一喝する。
だが“デザームもどき”はそんな事はお構いなしに自身の仮説を続けた。
「私ハ貴様ラガ使ウ“化身”ノ正体ハ貴様ラガ思イ描ク“理想ノ自分ノ姿”ソノモノダト思ッテイル…。ドウダ…?貴様ニモ覚エガアルダロウ…?」
「ッ…!」
“デザームもどき”の仮説に風丸は反応してしまう。
「それがどうした⁉︎試合と関係の無い会話で俺の気を紛らわせようとしても無駄だぞ!生憎雷門にはお前以上のお喋りな男がいるからな、既に慣れている!」
「ククク…、セッカチナ奴ダ…話ハコレカラダトイウノニ…。」
「何だと⁉︎」
「次ハ私ガ使ウ“ソウル”ニツイテノ話ヲシテヤロウ…。“ソウル”トハイワバ全テノ“生命体”ガモツ生存本能ガ形トナッタモノ…!イワバ“本能”の塊ト言ッテモ過言デハナイ…!」
「…それがどうした?」
「ククク…ニブイ奴メ…。ツマリダナ…」
その瞬間、“デザームもどき”の巨体は突然姿を消す。
「“理想”ハ“本能”ニハ勝テナイノダヨ…!!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁあ!!!」
自身の予想を超える場所から現れた“デザームもどき”によって吹き飛ばされた風丸は自身の暴風に叩きつけられてしまい大ダメージを負ってしまった。
「フン…呆気ナイモノダ…。」
ようやく風丸を下した“デザームもどき”はまだ僅かに残っている邪魔者を粛清する為に歩みを進めようとする。雷門最強のDFである風丸すらも突破してみせた“デザームもどき”に対し、他のDF陣は無意識のうちに後退りをしてしまう。
しかしその瞬間、“デザームもどき”はあり得ない光景を目にしてしまった。
「まだだ…!この程度で諦めてたまるかぁ!!!」
「何…⁉︎」
なんと風丸は再度立ち上がり自身の前に立ち塞がったのだ。
“デザームもどき”にとってこの事実はあまりにも理解し難い事だった。自身がデザームの肉体を乗っ取って既に数十分、彼の前に立った人間は誰1人例外なく地面に這いつくばっている筈だ。
その証拠に雷門のFWとMFは未だに試合に復帰出来ていない。
「愚カナ奴メ…。ソノママ“負ケ犬”トナッテイレバ、コレ以上痛イ目ヲミズ二スンダモノヲ…!」
「悪いな…、俺は決めたんだ…どれだけ不様に転んでも必ず起き上がってみせるってな…!それが俺とあいつとの約束なんだ…!」
先ほどの一撃により既に“化身”を発動出来る程の体力は残っていないがそれでも風丸は“スピニングフェンス”を発動させ“デザームもどき”の退路を断とうとする。
そんな彼の姿が余程気に入らなかったのだろう。“デザームもどき”の表情は激怒に染まっている。
「ソンナニ死ニタイノナラ、オ望ミドオリ“アノ世”ヘ向カウガイイ…!!!」
“デザームもどき”は“ソウル”を発動させ今度こそ風丸を葬ろうと攻撃を加える。その瞬間、彼の前に今まで動けなかったDF達が集まった。
「これ以上風丸さんを傷付けさせないっス!“真ザ・ウォール”!!!」
「お前のその根性心に響いたぜ!“スーパーしこふみ”!!!」
「よっしゃあ!…って俺まだ必殺技持ってないんだった!まぁいいや、でりゃぁぁぁぁぁあ!!!」
風丸の覚悟に心を動かされた仲間が一斉に“デザームもどき”へ襲い掛かる。
自分よりも遥かに弱い虫ケラ同然の者達の抵抗は彼の中にある“地雷”を踏み潰すには十分すぎた。
「何ガ仲間ダ…!何ガ約束ダ…!ソンナモノハ邪魔ダ‥邪魔ダ‥邪魔ダーーッ‥!!!」
突然狼狽しだした“デザームもどき”は半径数mに対して光線を放つ事で邪魔者達を蹂躙する。
「「「ぐわぁぁぁぁあ!!!」」」
「ククク…ハーハッハッハ!!!ドウダ…⁉︎“虫ケラ”ガ束二ナッテモ所詮ハ“虫ケラ”ナノダヨ…!」
“ソウル”を解いた“デザームもどき”は元の姿へと戻り地面に倒れている風丸達に対して勝ち誇る。
その様子を遠くから見ていたイプシロンのメンバー達は自分達が知っているデザームとは遥かにかけ離れた姿に思わず目を逸らしてしまっていた。
「サテ…残リハ貴様1人ダケダナ“小サキ者”よ…。」
「こ、こい…!」
ようやく虫ケラ達を叩き潰した“デザームもどき”は雷門の最後の砦と対峙する。
立向居はなんとか勇気を捻り出し“デザームもどき”の目を見るがその恐怖心は彼の足に如実に現れている。
自分に恐怖を感じていると確信した“デザームもどき”はあえて彼から目を逸らし自分の後ろで不様にも地面の上で寝ている“愚か者”達を見ながら嘲笑う。
「本当ニオ愚カナ“生命体”ドモダ…。私トイウ圧倒的ナ“強者”ヲ前ニシテモ逃ゲルドコロカ無謀ニモ歯向カオウトスル…。」
「愚かだと…!」
チームメイトを”愚か者”と評する“デザームもどき”の発言に我慢する事が出来ず噛み付く立向居。
だが“デザームもどき”は彼の怒りなどお構い無しに侮辱の言葉を続ける。
「ホォ…?マダソコニイタノカ“小サキ者”ヨ…?サッキカラ“足”ガ震エテイルカラナァ…既ニ“負ケ犬”ニナッテイタト思ッテイタゾ…?」
「……!」
立向居は“デザームもどき”の言葉に答えない。…否、怒りのあまりに言葉を発する事が出来ないのだ。
「“愚カ者”トイエバ…先程私ノシュートヲ受ケタ“エンドウマモル”モ同ジダッタナ…。奴ニハ“負ケ犬”ニナル時間ガ存在シタトイウノニ…奴ハソレニハナラナカッタ…。オカシナコトダト思ワナイカネ…?」
「……。」
「オット…ソロソロ“オワリ”ノ時間トシヨウカ…。貴様モ“愚カ者”二ナリタクナイノナラバ、早ク“負ケ犬”トナルガイイ…。」
“デザームもどき”は独特な言葉遣いで立向居に逃げるように忠告すると敢えて“ソウル”を使わずに天高く飛翔した。
「“スターゲイザー”…!」
無数に分かれた流星群が一斉に立向居に目掛けて襲いかかる。その威力はグランの“流星ブレード”を既に超えている。
最早災害と化したこのシュートを立向居がまともに受ければ良くて利き腕の粉砕骨折、下手をすれば今後のサッカー人生を諦めなければならないレベルの大怪我を負うだろう…。
「立向居君逃げなさい!」
「今のあなたではデザームのシュートを止められないわ!」
立向居の身を案じた雷門のマネージャー達はこぞって彼に逃げるように大声で叫ぶ。
だが当の本人は先ほどから俯いたまま動かない。まさか戦意を喪失したのだろうか?
様々な憶測が雷門のベンチを駆け巡る中遂に彼は口を開いた。
「…るな…。」
「ナニ?」
「馬鹿にするな…!」
立向居は怒っていた。
尊敬する円堂を侮辱した“デザームもどき”に。
立向居は怒っていた。
大切な仲間達を嘲笑った“デザームもどき”に。
立向居は激怒していた。
仲間達がここまで傷付く要因となった自身の不甲斐なさに。
「円堂さんを…、雷門イレブンの皆さんを…!」
今まで生きてきた13年間。これほどまでに強い“怒り”を感じた事は一度も無い。
まるでマグマのように煮えたぎった“怒り”の感情は現実世界への進出を拒む堤防を呆気なく崩壊させ自身の感情を爆発させる起爆剤となる。
「馬鹿にするなァァァァッ!!!」
立向居の怒りがピークに達し、青色のオーラは禍々しさすら感じられる紫色のオーラへと変化し、巨大な両腕を形成する。
「あれは⁉︎」
「あのオーラ…、従来の“魔神”のオーラとは明らかに雰囲気が異なります…!」
立向居は両手を上下対称になるように手を構え“スターゲイザー”を受け止める。
「ぐぐぐ…!負けて…たまるかァァァァ!!!」
土壇場で発動した必殺技は恐らく“スターゲイザー”を止められるレベルの威力はあるのだろう。だが今の立向居にはそれを長時間維持出来る程の実力はなかった。
その事実を彼に知らせるかのように両腕は次第に消失していき、遂に技が解除されてしまった。
「ハーハッハッハ…!惜シカッタナァ…!!貴様ガモット強ケレバ我ガ必殺技ヲ止メラレタダロウニ…!」
「雷門を…!イナズマ魂を…!舐めるなァ!!!」
立向居は最後の抵抗に力を振り絞り“ゴッドハンド”を発動する。本来ならば1秒たりとも耐える事の出来ない程の実力差があるのだろうが立向居の執念は勝利の女神の瞳に届き奇跡を起こした。
『なんとぉーーッ!キーパー立向居、デザームのシュートコースを変える事に成功したァーーッ!』
角馬が発言通りシュートコースを変える事には成功した。だが彼にとって不幸はこの後に訪れる。
『だ、だがボールはまだゴールを捉えているーーッ!更に立向居は先ほどの“ゴッドハンド”により体力を使い果たし動けないーーッ!このまま得点が入ってしまうのかーーッ!!!』
そう、シュートコースはまだゴールの枠内にあったのだ。立向居は必死にボールを追おうとするも一連の攻防により体力を使い果たし動く事が出来なかった。
「残念ダッタナァ…!“小サキ者”ヨォ…!!!貴様デハコノ“ステージ”ガ限界ナノダ…!」
「ほーーう?だったら俺ちゃんの“
自身の背後から凄まじい闘気を察知した“デザームもどき”は直様後ろを振り向いたと同時にその闘気は自身の前方に移動していた。
「イナタマライガァ…!!!」
「地球にはこんな言葉があるんだぜ?“油断大敵”ってな!」
『雷門の危機を救ったのはこの男だァーーッ!“サッカーモンスター”稲魂雷牙、この土壇場で復活しデザームのシュートを弾き返したァーーッ!!!』
「ナ、何故ダ…!貴様ハソウ簡単ニ復活出来ナイヨウニ強ク痛メツケタ筈…!」
「お前には分からないだろうな…。」
「ッ…!」
雷牙の復活に驚愕する“デザームもどき”の疑問に答えたのは本人ではなく彼と同じく倒れていた鬼道だった。
「俺達はどんな奴らが相手でも何度も立ち上がってきた…!その事はお前…いや、デザームはよく知っていた筈だ…!」
「鬼道の言う通りだ…!雷門イレブンの“イナズマ魂”は…!この程度で折れやしない…!」
鬼道の復活に呼応するように次々と雷門イレブンが復活していく。
「バ、馬鹿ナ…!何故次々ト立チ上ガル…!何故諦メヨウトシナイ…⁉︎」
「馬鹿だからだよ。デザームも ど き くん?」
「イナタマライガ…!」
「今ここに立っているのはどいつもこいつも頭良さそうに見えてサッカーが絡んだとたんにIQが下がるヤツらばっかなんだよ。知ってっか?馬鹿の辞書には“痛い”と“諦める”って言葉は書いてないんだぜ?」
「フッ、その馬鹿筆頭は間違いなくお前だがな。」
「ハッ!違いねぇや!」
「貴様ラァ…!」
『これで分かっただろう?貴様では絶対に奴らには勝てない理由をな。』
突如自身の脳内に響く消し去った筈の人間の言葉。
「ドイツモコイツモ煩ワシイ奴ラダ…!イイダロウ…今度コソ完膚ナキマデ消シ去ッテヤロウ…!」
口調こそは変わっていないものの先ほどまであった余裕は完全になくなっており、そこにいるのは怒りに狂う
雷門のメンバーが復活しこれから反撃開始だ。
という瞬間、瞳子は審判に選手交代の要請をし試合を中断させた。
『おおっと、どうした雷門イレブン⁉︎当然試合を中断したぞぉ⁉︎おっと!どうやら選手交代の模様です!先ほど交代した立向居勇気に代わって出場するのは…!
円堂守です!』
『円堂(さん)!』
いつのまにか目を覚ましていた円堂はニカッと笑い皆の前に現れる。
「ありがとな立向居!俺の代わりにゴールを守ってくれて。」
「いえ円堂さん…。俺はほんの少ししかあなたの代わりになる事が出来ませんでした…。」
「気にすんな立向居!それにさっきのお前のあの必殺技、俺の心にビリビリきたぜ!ここから俺に任せてくれ!」
「…はい!」
「ククク…ハーハッハッハ!!!今更貴様ガ現レタトコロデナンニナル…?貴様ハ一度、私二負ケタダロウ…?」
「…確かに俺はお前に負けたかもしれない。でも一度負けたからってそれがどうした?今日の負けは明日の勝利への第一歩だ!だから次の勝負は俺が勝ってみせる!」
勇ましく啖呵を切る円堂に対し“デザームもどき”は面白くなさそうにその場から立ち去った。
円堂が復活した事により戦況は五分に戻った試合。果たして雷門イレブンはイプシロン・改…否、“デザームもどき”に勝つ事は出来るのだろうか?
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時は円堂が試合に復帰する数分前に遡る。
雷門イレブンが試合している大海原中グラウンドからやや離れた森の中で数人のスキンヘッドの大男達が鬼瓦刑事を始めとした警察達に捕まっていた。
「ふぅ…やれやれ、やっと尻尾を出してくれたなぁお前ら。」
「クソ…!我々の計画は完璧だった筈!何故貴様らが我々の行動を把握していた⁉︎」
「お前さんらに答える義理は無ェよ。…あ〜もしもし?おう、鬼瓦だ。例の奴らは確保した、これで思う存分暴れられるぞ。ガッハッハ!礼はいらねぇよ!じゃあな!」
鬼瓦から報告を受けたフードの少年は静かに観客席の裏から歩き出し、強敵に苦戦する仲間の元へ向かう。
風に煽られて露出した少年の頭部には炎のように逆立った白髪、そして吊り上がった瞳には誰よりも熱い闘志が燃え上がっていた。
プロミネンス戦やって欲しいって人います?もし見たいって要望があればジェネシス戦前にマスターランクチーム全員と総当たり戦をする形になりますけど…。
-
ほしい!
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ほしくない!