雷牙side
「見せてやるぜ!これが俺の“ドラゴンクラッシュ”だぁぁあ!」
「止める!“熱血パンチ”!」
帝国との練習試合があと1週間に迫った今日、とうとうFWの染岡が必殺技を覚えた。
俺が部室を出て行った後今までだらけきっていたメンバーは思うところがあったのか積極的に俺たちと練習をするようになり、部員の補充も守の尽力によって2年の影野と松野が入部、陸上部の風丸が助っ人として来てくれたからとりあえず試合はできるようにはなった。
守としては最近転入してきた豪炎寺ってやつをサッカー部にいれたいようだったが、俺には分かる。アイツはサッカーを
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試合当日
試合直前になって壁山が怖気付いて逃走したり、突然目金って生徒が入部するって言いだした挙句エースナンバーを寄越せと要求してくるアクシデントがあったが何とか解決し、あとは帝国が来るのを待つだけだ。
しばらくすると、イタリアでも見たことがない黒塗りのやたら厳つい車…いやバスか?まぁ車が到着し中から帝国学園のメンバーがぞろぞろと現れる。
は?先頭にいるやつゴーグルと赤マント付けてるんだけど。いやルール上問題ないけどさぁ…
改めて帝国メンバーを見回すと眼帯しているやつもいるし帝国じゃアレが普通なんだろう知らんけど、
「天才MFの鬼道に
K・O・Gだと…?おもしれぇ俺がゴールをぶち抜いてやる…!
「雷門中サッカー部キャプテン円堂守です!今日は練習試合の申し込みありがとうございます!」
「…初めてのグラウンドなんでね、ウォーミングアップをしてもいいかな?」
守の握手に応じることなくウォーミングアップに参加するゴーグル野郎。
そのまま帝国のメンバーは練習を開始するがあまりのレベルの差に守と俺以外のメンバーは完全に萎縮している。
すると鬼道がFW陣2人に何か合図を送るといきなりボールをこちらの方いや、俺と守目掛けて蹴る。
先に守に飛んできたシュートは無事に止めることに成功するが、俺へのシュートはまだ届いていない。
後1mにまで距離が迫っているが俺は一歩も動かない。いや、動く必要がない。
俺はシュートを胸でトラップするように受けると次第に回転力が低下し完全に止まった頃を見計らって空中に飛びシュートのお返しをする。
稲妻の如しシュートは源田の横を通り抜けゴールネットを激しく揺らす。
「挨拶が遅れたな帝国の諸君、俺は雷門中副キャプテンの稲魂雷牙。あんたらをぶっ倒す者なんで以後よろしく。」
俺には3つの大嫌いなものがある。1つはセロリ、2つはサッカーを暴力行為に使うやつ、3つ目は…まぁいいや…。
奴らがそれ相応の態度をとるなら俺も手加減はしねぇ、雷門中のサッカーで奴らを倒すそれだけだ。
なんか気づいたらマネージャーの方の人数増えてんだけど。
「では試合を始めます。両キャプテンコイントスをお願いします。」
「必要ない。そちらが好きに決めるがいい。」
「あ、鬼道君!では雷門はどうする?」
「守、先攻で行こう。」
「そうだな。みんな!とりあえず攻めて攻めて、攻めまくるぞ!ゴールは俺に任せとけ!」
「では、雷門の先攻で始めます!全員、整列!」
礼をして各自ポジションにつく。今回のスターティングメンバーは
FW:俺、染岡
MF:松野、少林、半田、宍戸
DF:風丸、壁山、影野、栗松
GK:守
こんな感じだ。目金?動きでわかるアイツは素人だ。当然抗議されたが最終兵器だとか上手いこと言って黙らせといた。
とりあえず俺はいつもの稲魂ステップをして気持ちを高めているうちに審判のホイッスルが鳴った。
…何?帝国の奴らが動いてねぇ。あくまで俺の実力を見極めるつもりか…、ならこっちにも手があるぜ!
「まずはかましてやれ染岡!」
「おう!くらえ!“ドラゴンクラッシュ”!」
染岡から溢れた青龍のオーラがゴールに襲いかかるがキーパーの源田は特に焦ることなく右手を突き出すと一瞬で龍のオーラがかき消される。
「なんだと⁉︎俺のドラゴンクラッシュがあんなにあっさりと止められるだと⁉︎」
「思ったよりもいいシュートだが、俺には及ばない。鬼道、俺の出番はここまでだ!」
そう言い放ち源田は鬼道にボールを渡すために蹴り上げると突如空中でボールが消える。
「釣れないねぇKOG君。俺を無視するなんてな」
「何⁉︎」
さすがに今の染岡の実力じゃ源田からゴールを奪うのは難しかったか。けど念のため構えといてよかったぜ、投げる地点は山勘だったけどドンピシャリだ!
「いくぜ。“キングレオーネ”。」
「ゴールは渡さん!“パワーシールド”!」
獅子の咆哮と帝国の誇りをかけた衝撃波でできたシールドがぶつかり合う。
「さーて、K・O・Gの盾と獅子王の矛。果たして勝つのはどっちかな?」
勝負がついたのはわずか数秒後、源田の盾が打ち砕かれる形で蹴りがつく。
『ゴーール!雷門中の副キャプテン稲魂雷牙!開始僅か5分で早くも先制点をもぎ取ったぁあ!』
なんか知らん間に実況してるやつがいるんだけど誰あいつ?まぁいいか、この調子なら多分いける。
No side
「くそッ!」
開始僅か5分で早くも先制点を奪われた源田は地面に拳を叩き込み自身への不甲斐なさをぶつける。
「落ち着け源田。今のは完全に油断していた俺たちのせいでもある。」
キャプテンの鬼道は悔しがる源田を慰め雷門陣営をじっと見つめる。
「だが今のプレーで奴らの実力は理解した。次からは総帥の指示通り雷門を潰す。ただし稲魂にのみ最低でも2人以上はマークに付け。奴だけを封じれば残りのメンバーは素人ばかりだ恐れることはない。いいな!」
「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」
帝国のキックオフから開始した途端先ほどのウォーミングアップとは比べものにならない速度でフィールドを駆ける帝国FW寺門だが、染岡が先に行かせまいとブロックにつく。
「ボールをよこしやがれ!」
「へっ!そんなにボールが欲しけりゃくれてやるよ!」
「何?」
寺門はそう言うと突然染岡の胸元にボールを渡し、一瞬困惑した染岡だがその答えをすぐに知ることになる。
「ジャッジスルー!」
「ゴハッ!てめぇ…!」
「ぼさっとしてる方が悪いんだよ。そら佐久間ァ!」
「ナイスパスだ寺門!」
ボールを受け取った佐久間の前に今度は雷牙が立ち塞がる。
「そのボール取らせてもらうぜ!“ハンティングセンス”!」
緩急をつけた動きで佐久間を翻弄した後ボールの直前で急加速をして奪おうとした瞬間佐久間の持っているボールが3つに分裂する。
「イリュージョンボール!」
「何⁉︎しまった!」
分身した3つのボールの見分けがつかず混乱している隙を突かれディフェンスを突破されてしまう。
チーム内で唯一ブロック技を持っている雷牙が抜かれてしまっては残りのメンバーは帝国のドリブルを止められるはずがない。むしろただ抜かれるだけならまだ幸せだったまである。
「食らえ!」
「とろいな!」
「もういっちょ!」
シュートと見間違うほどのパス回しに、雷門イレブンは対抗するどころか一方的に蹂躙されるだけであり中にはボールをぶつけられる者もいる。
「ひでぇ…これがオマエらのやり方かよ⁉︎」
「…悪く思うな、コレが帝国のサッカーだ。」
1年前と変わらない光景に怒りの表情を見せキャプテンの鬼道に抗議する雷牙だが鬼道は顔色を一切変えずに返答する。
「風丸!壁山!栗松!影野!」
「これくらいでいいだろう。…デスゾーン開始。」
鬼道の合図と共に佐久間、寺門、洞面がボールを中心に三角形になるように飛び上がり、空中で回転すると紫のオーラがボールに注ぎ込まれる。一定の量まで貯まるのを確認するとそのまま3人同時にボールを蹴り込み円堂のいるゴールに襲いかかる。
これこそが現時点での帝国学園最強のシュート技“デスゾーン”。
今まで数多のキーパーをゴールポストに沈めてきたこのシュートは、全国クラスでも一部のキーパーしか止めることができない。
まさにキーパーにとっても
しかし帝国は知らなかった。
今雷門のゴールを守っている男は文字通り“
「風丸たちの努力は無駄にしない!“ゴッドハンド”!」
怒りの雷を宿した黄金の右手が40年の時を経て再び雷門中のグラウンドに舞い戻る。
『キャプテン円堂!帝国が誇る必殺技“デスゾーン”を止めたぁぁあ!小生、角馬圭太!名実況者角馬王将の息子として数々のサッカー試合を見ておりますが!円堂守が放った必殺技は初めて見ました!これは雷門が帝国に勝つというジャイアントキリングが発生するのかぁあ⁉︎』
「バカな…俺達のデスゾーンが止められただと…」
無敵のはずのデスゾーンが破られたことにショックを受ける帝国メンバーの中でただ1人落ち着いて戦況分析を行っている鬼道。
「(なるほど、深海中に圧勝したという情報はやはり事実だったか。それにあの“ゴッドハンド”という技、今まで俺が見てきた単体のキーパー技の中で最も威力が高いだろう。ちょうどいい、
「いっけぇぇぇ雷牙ぁぁあ!」
円堂のロングスローが無事に雷牙に渡るが、鬼道の指示通りMFの成神と辺見がブロックにつく。
日本一の実力を持つ帝国の本気のディフェンスは雷牙であってもそう簡単に崩せるものではない。しかし雷牙の顔には焦りの表情は一つも見せずに獲物を狩る獣の目をしている。
一瞬雷牙に隙ができたことを察知した1年の成神がボールを奪おうとスライディングを仕掛けようするが、
「消えた⁉︎」
「バカ!後ろだ!」
気づいた時には既に後方にいる雷牙。今度はあの男が前に立ち塞がる。
「不思議だな、貴様のスピードは俺達の標準クラス。なのに帝国随一のスピードを誇る成神でさえ突破を許すとはな、実に興味深い。」
「ぜってぇ抜く……!」
帝国一軍のキャプテンを務めるだけあってテクニックは他のメンバーとは一歩も二歩も上を行っている鬼道にはさすがに雷牙も攻めあぐねていた。その時後方から彼を呼ぶ声が聞こえる。
「稲魂こっちだ!」
青髪を靡かせて駆け寄る風丸の声にいち早く反応した雷牙は即座にパスをだしワンツーでなんとか鬼道を突破する。
「っ!ディフェンス!」
「洒落くせぇ!“イナビカリステップ”!」
グラウンドにイナズママークを描きながら遂に源田と再び相見える。
「ズババーンっと打ち砕け!“キングレオーネ”‼︎」
獅子の咆哮が再度点を奪わんとするが今度の源田の顔は先ほどとは異なり油断した目ではなく雷牙を強敵と認めて全力で立ち向かう目となっている。
「さっきは油断して悪かった。認めよう、お前は俺が全力を出すに値するプレイヤーだ!“フルパワーシールド”!!!」
先ほどの“パワーシールド”のゆうに倍以上の範囲と厚さを持った盾は今度こそ獅子の矛を逆に粉砕することに成功した。
「くそっ!!」
「よくやったぞ源田!
再び帝国のラフプレーに蹂躙される雷門中。
だがメンバー全員は信じている。たとえ自分たちの力が及ばなくても円堂さえいればゴールを守ることができると。
だがその考えは容易く破られることとなる。
「こい!また止めてやる!」
「ふっ…それはどうかな?佐久間、寺門!準備をしろ!」
佐久間と寺門が鬼道の前を走り去ると鬼道が指笛を吹く。
すると鬼道の周囲に5匹のペンギンが地面から出現し佐久間と寺門に向けてシュートを撃つ。
ボールが2人の間に来た瞬間にツインシュートを打つことでボールがさらに加速しペンギンがミサイルの如く飛翔しながら円堂に襲いかかる。
「ゴッドハンド!」
黄金の右手にボールを収めようとするが5匹のペンギン達がゴッドハンドの指先に食らい付くことで段々とヒビが入り始めそこから1秒ももたずに完全に粉砕される。それでもGKの意地として円堂は全身を使い止めようとするが力及ばず吹き飛ばされる。
『ゴーール!帝国学園新技により円堂のゴッドハンドを粉砕したぁぁあ!これで同点です!」
「やったな鬼道!ついに成功したぞ!」
「ああ、プロジェクトEP改め皇帝ペンギン2号完成だ。佐久間、お前もこの技を撃てるようにこの際練習をしておけ。」
そこから先は先ほどの蹂躙が生易しく感じるほど苛烈なものだった。執拗に雷牙にボールを渡させないことを意識し、ひたすら円堂を実験台に皇帝ペンギン2号の完成度を高めるだけの作業としていた。
稀に雷牙がボールを奪うことに成功しシュートを撃つも源田の“フルパワーシールド”を打ち砕くことができずただ時間と体力を消耗するだけだった。
雷門にとって唯一の救いは皇帝ペンギン2号の起点が鬼道からまだ不慣れな佐久間に変わったことで不完全なシュートならなんとかゴッドハンドで止めることができたがそれでもすぐにコツを掴み前半終了時にはすでに3対1になっていた。
3対1 本来の歴史を知っているものからすれば2桁の点数を取られてないだけ大健闘と言えるスコアであるが彼らが生きているのは“今”である。せっかく軌道に乗ってきたサッカー部が負けたら廃部になってしまうという状況の今の雷門イレブンの士気を下げるのには十分すぎる点差だった。
「やっぱり帝国に勝つなんて無理な話だったでやんすよ…。」
「やっとサッカーの楽しさを思い出せたのにこの試合で最後なんて俺嫌っス…。」
1年達が泣き言を溢すが今泣き言を言った所で状況が変わるわけがない。なのでこの男が口を開く。
「オマエら、後半は俺、染岡、風丸が上がって点を取りに行く。それ以外のメンバーは全員ディフェンスに集中してくれ。」
「そんなの無理に決まってますよ!稲魂さんでさえ点を奪えなかったのに染岡さんと風丸さんが加わった所で止められるのがオチですって!」
雷牙が提案した作戦に少林が反対するが雷牙の目はまだ死んでいない。
「染岡と風丸には悪いがシュートを撃つのは俺だけだ、2人には俺のフォローに入ってもらう。前半の最後にシュートを撃った時少しだが源田のシールドにヒビが入ったのが見えた。このまま撃ち続ければいつかは破れるかもしれねぇ…。いいかオマエら!今俺たちは本当に崖っぷちなんだ!やれるやれないを考えるじゃねぇ、やるしかないんだよ!最後に俺たちのイナズマ魂ってやつを帝国と他の生徒に見せてやろうぜ!」
「稲魂…。」
「副キャプテン…。」
「雷牙…。そうだ雷牙の言う通りだ!俺たちのサッカーは必殺技でもない、プレーでもない、
円堂が右手を前に出し、察した雷牙は左手を円堂の手の上に置く。今度は風丸、染岡、半田と次々に手を重ねていき最後に円堂が言葉を送る。
「みんな!サッカーしようぜ!」
「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」
「何故だ…?何故
他のイナイレ二次創作だったらオリ主と鬼道は顔馴染みって展開が多いですけど、こっち主人公は長年イタリアにいたから鬼道のことは全く知りません。ただ鬼道の方は雷牙と会ったことがあります。そこらへんはいつか書くであろう雷牙の過去編で多分伏線回収しますのでお待ちください。
(追記)作者がド忘れしたため幼少期の鬼道との遭遇はなかった事になりました。