まぁ中村さんが最強キャラ声優として定着したの割と最近だししょうがないね。
え?趙金雲?あれは例外の中の例外。
サッカーとは基本的に足を用いて勝敗を競うスポーツである。それならば当然練習中に鳴り響く環境音の主役は足によって地面を駆け、足によって革で構成された球体を蹴り合う音こそが相応しいだろう。
しかし今回だけは違った。重々しい筋力トレ用の機材で埋め尽くされた部屋の中に響くのは何かを殴り続ける音と鎖が激しく揺れる音のみ。殴られ続ける者の正体はこれまたサッカーには似つかわしくないサンドバッグだ。
砂の塊を一心不乱に殴り続けるのは帝国学園の正GKにして“
一心不乱にサンドバッグを殴り続ける源田の姿はまるでプロボクサーを思わせるほどに鬼気迫る迫力だ。
円堂は振り子運動をする大型タイヤを用いた特訓を日課にしているがこれに関しては源田のストレス発散の手段でしかない。
「フンッ…!!!」
最後の一撃が致命的となり、耐久の限界を迎えたサンドバッグは人間でいう所の腹部に当たる場所に大きな穴を開けて内蔵をぶちまける。
我に返った源田は息が落ち着くと近くのロッカーから箒と塵取りを取り出し黙々と片付けを始める。
「サンドバッグが壊れるまで殴り続ける癖は相変わらずだな。」
「鬼道…!」
トレーニングルームに現れたのは彼らのキャプテンである鬼道だ。鬼道はスポーツドリンクが入ったスクイズボトルを源田に渡し休息を取る。
「お前の悩みは理解している。円堂の事だろう?」
「ッ!…やはり気づいていたか…。」
「当然だ。サンドバッグを殴る時はいつも悩みがある時だからな。」
円堂守…。言わずと知れた雷門サッカー部のキャプテンであり圧倒的なカリスマで烏合の衆であった雷門イレブンをまとめ上げFFの優勝を今やサッカーをする者ならば知らぬ者はいない日本最強のGKとなった男だ。
「いつからだろうな…円堂と差がついたのは…。」
初めて雷門との連中試合をした日…その時点では間違いなく源田は円堂よりも格上だった。
だが2度目の試合となったFF予選決勝戦にて円堂は完全に自分を超えた。“ゴッドハンドD”は自分でさえ完璧には止められない“皇帝ペンギン2号”を軽々と止め、あまつさえ“2号”を超える“皇帝ペンギンOG”すらも土壇場で完成させた“マジン・ザ・ハンド”で止めてみせた。
急激に成長していく円堂を見た源田は本戦に当たる時に彼を超えられるように1から鍛え直す決意を固めた。
…だがその思いは呆気なく砕け散る事となる。
『無駄な事を…“神”に抗う愚かさを知るがいい。』
『ふざけるな!!何が“神”だ…!?帝国を舐めるなァ!!!』
影山が新たに作り出したチーム世宇子によって帝国は負けた…。それも完膚なきまでに。
最終的に自分達の仇は鬼道と雷門によって討たれたものの
「だからこそ俺は不動の提案に乗ってしまったんだろうな…。」
真・帝国学園…。名前からお察しの通りエイリア学園の協力を得た影山が愛媛で結成した学園である。
一丁前に学園の名を冠しているもののその実態は帝国、世宇子に続く第3の傀儡のサッカーチームでしかなく、不動の非道な策により雷門を大いに苦しめた。その一員に源田と佐久間も加わっていた。
『感じるかぁ!?俺の鼓動!?俺の熱い血の叫びをぉ!強くなりたい…もっともっともっともっとぉ!テメェらにも流れているだろう?この世の誰よりも強くなりたいって思いがなぁ!!!』
突如自分の前に現れた不動の言葉は今でもハッキリ覚えている。そして彼に洗脳されてしまった源田と佐久間は禁断の技である“ビーストファング”と“皇帝ペンギン1号”を習得し雷門へ牙を向いたのだ。
「だがそれは全て不動と影山のせいだ。お前が責任を感じる事じゃない。」
「…俺に真・帝国での記憶が残っていると言ったら?」
「ッ…!」
あの試合で最もダメージが大きかった佐久間は不動と会ってからの記憶が全て消えている。
彼だけじゃない。他の真・帝国学園のメンバーも潜水艦に集められて以降の記憶は消えてはいないがかなり曖昧となっているとの事だ。
だが源田だけは違った。真・帝国での試合、発言、思想…全ての出来事を鮮明に覚えているのだ。
これは源田の洗脳のみ不完全だったという証拠に他ならない。
「俺の洗脳だけが不完全だったのは影山の策略なのかは分からない…。それでも俺は自分を止められなかった…!力を求める事を…
源田は自分への怒りで拳を強く握り締めるあまり床に血が滴り落ちる。
「皆は俺の事を“天才”と呼んでくれた…でも今になって思う…結局俺はただ他人より“早熟”だけだったんだと…!」
帝国学園に入学する前から県内でも有名なキーパーだった彼を周囲は“天才”だと讃えた。本人は幼いながらもその評価に満足する事はなくその上を目指して努力を怠らなかった。
そして中学に上がり更に力を伸ばした源田は弱冠1年にしてスタメンに選ばれ全試合無失点でFF優勝を果たした。
彼の偉業を目撃した世間は彼を“天才”から
それでも源田は努力を止めなかった。そんなある日…“彼”に出会ってしまった。
「雷門との練習試合で初めて円堂の“ゴッドハンド”を見た時に確信したんだ。あいつは必ず俺を超えるGKになるってな…。」
そして源田の予感は的中した。
「本当は円堂こそがこのチームのゴールを守るべき人間なんだ…!影山の手に堕ち、俺がこの場にいる事自体がおこがましいんだ!!!」
源田の本音に対して鬼道は頷くのでも言葉を掛けるのでもなくただ腕を組んで聞いているだけだ。
「…言いたい事はそれだけか?」
「…ああ。」
ようやく口を開いた鬼道はやや声を低くして源田へ問いかける。何も知らない人からすれば弱音を吐く源田に対して怒っているように思うだろうが源田は知っている。
鬼道は怒っているのではなく自分のことを考えてくれているのだと。
「…俺は今も昔もお前が天才だと思った事は一度もない、だが“K・O・G”の称号に相応しい人間はお前だけだと思っている。試合までに一度自分を見つめ直せ、そうすれば自ずと道が開ける筈だ。」
そう言うと鬼道は部屋から立ち去り再び源田は1人になってしまう。
「自分を見つめ直すか…。」
無意識に発せられた源田の独り言は静寂によって掻き消された。
♢side円堂
「こっちだ円堂!」
「任せた佐久間!!」
プロミネンスとの決戦まで明日に迫った俺たちは最後の調整をしている。
東京に帰ってからずっとフィールドプレイヤーの練習してきてやっと感覚が掴めてきた。
本当に最初は大変だったからなぁ…。飛んで来たパスをうっかり手でキャッチしちゃったり…パンチングしちゃったり…。最終的にタイヤで上半身を固定して練習する事でなんとかキーパーの癖を直す事に成功したんだ。
「フッ、ようやく手を使わずにサッカーができるようになったか。」
あははは…そう嫌味を言わないでくれよ鬼道…。
でもフィールドプレイヤーになって改めて初めから前線にいるのとゴールを飛び出して行くのとじゃ意識が全然違うって事に気づいた。
そう考えるとキーパーもできる雷牙って意外と凄いんだなぁ…。
「じゃもじッ!!!」
「稲魂テメェ!!!俺の頭に鼻水をかけやがったなぁ!!!てかなんだ今のくしゃみは!?」
「いや〜悪ぃ悪ぃアッキー。多分天国にいるライトあたりが偉人たちに俺の凄さを喋って回ってるんだろなぁ〜。まったく人気者は大変だぜ。」
「だからアッキーって呼ぶなぁ!!!クソナルシ野郎が!!」
「こらこらそんな言葉使いをしちゃ駄目じゃないか不動クン。ナルシはいいけどクソはよくないよ〜クソは。」
…なんか一瞬雷門で練習してる筈の雷牙の様子が頭の中に浮かんだような…。いやいや…流石に気のせいか!
「そこまで!今日の練習は以上だ。明日に備えて各自身体を休めるように。」
ふぅ…今日の練習は終わりか。まだ昼前だしイナビカリ修練場で自主練してから帰ろうかな。
「…円堂、少しいいか?」
あれ源田?珍しいな俺に頼みがあるなんて。
「いいぜ!俺にできる事ならなんでも言ってくれよ!」
「ありがとう。なら…
俺とPKをしてくれ。」
♢
源田の頼みでPK対決をする事になった俺たちは河川敷にあるグラウンドに移動した。
別に帝国でやってもよかったけど源田の希望でここでする事になった。
「準備はいいか?源田!」
「あぁ!いつでも来い!!」
へへ!河川敷でのPKってなんか響木監督とPK対決した時の事を思い出すな!あの時と違って俺がシュートを蹴る側だけど。
とりあえず一発目!雷牙流に言えばズババ〜ンと行くぞぉ!!
「どりゃあぁぁぁぁあ!!!」
「“フルパワーシールドZ”!!!」
おぉ!!源田の“フルパワーシールド”がまた進化してる!!昨日までV4だったのにもう進化するなんて俺もうかうかしてられないな!!
「あちゃ〜止められたか…。よーし2本目は決めてやる!!」
「…円堂。次のシュートは化身で打ってくれないか?」
えっ?化身を?そういえば練習でも化身を出してシュートを打った事はなかったなぁ…。
2nd雷門で化身を使えるのは俺だけだし万が一に備えて練習をしておくのもいいか。
「分かった!はあぁぁぁぁあ…!“魔神 グレイト”!!!」
そういえば前々から思っていたけど“グレイト”の見た目って“マジン”に似ているよなぁ。…いや“グレイト”が“マジン”に似ているのか?天馬曰く化身は今から10年後の技術らしいし…。
「来い円堂!!!」
「行くぜ源田!!でりゃあぁぁあ!!!」
初めて化身でシュートを打ったけど凄いなこれ。ただのシュートでも
「“フルパワーシールドZ”!!!」
源田はもう一度“フルパワーシールド”で対抗するけど数秒くらい拮抗した後に破られた。これで1対1の同点だ。
「へっへー!これで同点だな!…あれ?大丈夫か源田?」
「問題ない…!最後の一本を打ってくれ…!!!」
なんだろうこの違和感…。これはあくまで練習の筈なのに源田からは試合と同じくらいの緊張感を感じる。
「…なんだかよくわからないけどわかった!!!源田のその想いに俺も応える!!!」
「円堂…!」
だとしたら俺が打つべき技はこれ1つ…!まずは頭に気を溜めて…!
すると円堂の頭部から巨大な拳が出現しまるで“正義の鉄拳”のようにボールを弾き飛ばす。
これが“正義の鉄拳”の応用技…!その名も…!
「“メガトンヘッド”!!!」
想定じゃ拳そのものが飛んで行くつもりだったけど今の俺じゃヘディングまでが限界だ。それでもシュートブロックには十分すぎる威力を誇る技だしプロミネンスとの試合には十分だ。
「はあああああ…!!!」
なんだ!?急に身体を大きく捻ったぞ!?これってまるで…!
「“ハイビーストファング”!!!」
ビーストファングだって!?あれって禁断の技なんじゃ…い、いや違う!あの時ほど嫌な感じはしない…まるで“皇帝ペンギン2号”を見てるみたいだ…。
源田の新技“ハイビーストファング”によって俺の“メガトンヘッド”は止められてしまった。
「スゲェよ源田!!こんな短期間で“ビーストファング”を改良するなんて!!」
「…なぁ円堂。この技はプロミネンス相手に通用すると思うか?」
…どうだろう。少なくともFFでのアフロディのシュートなら止めれそうな威力はあるだろうけど、プロミネンスのシュートを止められるかって聞かれたら…
「ごめん…まだわからないとしか言えない…。でも俺は一度バーンのシュートを受けた事はある。その経験から言えばまったく通用しないって事はないと思う。」
「そうか…。」
こんなに元気のない源田を見たのは初めてだ…。もしかして…
「もしかして…明日の試合が不安なのか?」
「…情けない事だがその通りだ。俺は明日の試合が怖い、いや…試合に出る事自体は怖くない…だが俺のせいで皆んなに迷惑をかけてしまう事が怖いんだ。」
「……。」
「恐らくバーンもガゼル同様に化身を習得しているだろう…。そしてバーンは円堂でさえも破るほどの実力者なんだ…他のメンバーのシュートは止められてもバーンのシュートを止められる気がしない…。」
違う…違うぞ源田…
「たとえ“ビーストファング”を使っても止めれる確率は5割ほど…ハハハ…笑えるよな、俺のサッカー人生を賭けても初めてエイリアの奴らと同じ土俵に上がれるんだ…、皆は俺の事を“K・O・G”と呼ばれていたが所詮俺は井の中の蛙だっ「そんなことはない!!!」円堂…?」
言わせない。絶対に井の中の蛙だったなんて言わせてたまるか。だって俺は…
「俺はお前の強さを1番知ってる!!!」
「そんな事…!」
「分かるさ。だって俺の最初のライバルはお前なんだぞ?」
「俺が…お前の最初のライバル…?」
今年の春に初めて帝国と練習試合をした時…俺が1番衝撃を受けたのは帝国の連携でも“皇帝ペンギン2号”でもなく源田の圧倒的な強さだった。
“K・O・G”って呼ばれる凄いキーパーが帝国にいるのは知ってたけど実際に雷牙や染岡のシュートを止める姿を見て俺は初めて自分が井の中の蛙だって思った。全国にはまだまだ強い選手がたくさんいるんだって思い知らされた。
それから必死に特訓してようやく源田に追い付けたと思ったけど俺は1つだけまだ源田に勝てないところがある。
「俺は今から1年前あるチームと試合をしたんだ。んでその時初めて“ゴッドハンド”を成功させたけどすぐに破られたんだ。」
「あの“ゴッドハンド”を…?」
あのチーム…未来から来たっていう“プロトコル・オメガ”との試合は一度も忘れた事はない。
エイリアとの戦いが激化した今でもあいつらの実力は見劣りしない。
多分土偶のなんちゃら現象ってやつがなかったら負けてたと思う。
「ずっと最強の技だと思ってたじいちゃんの“ゴッドハンド”が通用しなかった時はすんごくショックを受けたよ。俺は雷牙に発破をかけられるまで立ち直れなかった。それは今も変わってない。」
俺の弱点はメンタルの弱さだって自覚してる。プロトコル・オメガしかり白恋や世宇子の時だって自分の技が通用しなくなるとそう簡単に立ち上がれないし周りが見れなくなる。
「でも源田、お前は違う。どんなに転んでも自分で立ち上がれる強さを持ってるんだ!雷牙や豪炎寺に技が破られたってその度に弱点を改善して俺たちの前に立ちはだかっただろ!お前のハートは誰よりも強いはずなんだよ!!!」
「俺のハートは誰よりも強い…。」
少なくとも俺はそう信じてる。そして明日の試合も源田は自分の限界を破ってくれる事も。
(…少しだけわかった気がする。鬼道…何故お前が帝国よりも雷門の方が自分を出せているのかが…。俺達にとっての太陽がお前だったように、お前にとっての太陽は円堂なんだな…。)
…どうしたんだろう。急に俺を見つめたまま動かなくなっちゃったぞ。
う〜ん…話しかけるべきかそっとしておいてやるべきか…こんな時、秋か夏美がいてくれたらなぁ…。
俺もうんうん悩んでいると先に動いたのは源田の方だった。
「…少し背負いすぎだったのかもな。ありがとう円堂、お前のおかげで自分を見つめ直せた。」
「そうか!ならよかったよ!!」
源田が吹っ切れてくれたようで何よりだ!よーーし!!明日の試合は絶対に勝つぞぉ!!!
♢
「来た!!!」
時計の針が正午を指し示した直後、11人の生命体達がグラウンドに現れる。
先日死闘を繰り広げたダイヤモンドダストと比べると筋肉質かつ長身の選手が目立つ。彼らこそがプロミネンスの精鋭部隊だ。
「さてと…最後に俺様の慈悲を与えてやる。俺に燃やされたくねぇ奴は尻尾を巻いて逃げな!!!」
「逃げるもんか!!!絶対にお前らに勝って雷牙に繋げるんだ!!」
雷門と帝国の
読者の皆さんがオリキャラのボイスを誰で再生しているのかちょっぴり気になる今日この頃。