イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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“インフェルノカット”を“ノヴァカット”に変更しました。理由は本編を見ればわかると思います。


雷/帝の誇りと灼熱の紅炎 中編

 前半戦の残り時間も半分を切った頃、フィールドには『凍える』ように熱き炎を身に包んだ“炎獣”が顕現していた。

 あまりの熱量により周囲の屈折率が歪みシュリーレン現象*1を引き起こしている。

 

「“氷壊炎獣 プロミネンス”!!!」

 

 この世のものとは思えない凶悪な形をした獣は1000度を超える熱量の涎を垂らしながら王を見る。

 

「さてと…言っとくが俺はガゼルとは違って油断はしねぇぜ。ここで確実に1点をもぎ取っておく!!!」

 

 “炎獣”はその場に伏せると主人が後ろを向いたまま頭部へと飛び乗り火山の噴火を思わせる凄まじいパワーで主人とボールを上空へ上げ自身も飛翔する。

 バーンは“アトミックフレア”の要領でオーバヘッドキックを叩き込むと同時に“炎獣”は超新星爆発を思わせる轟音の咆哮を奏でる。

 

「“インフェルノフォース”!!!」

『グルルルルガァァァァァ!!!』

 

 ある者は“アトミックフレア”を巨星だと例えた。ならば地獄の業火の名を冠するこの技はいかなる例えが適切なのだろうか?

 “隕石”?“超新星爆発”?熱を例える言葉は地球上に数多く存在するがどれもこの技を前すれば生温い。

 

「“ハイビースト…ッ!ぐわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 地獄の業火は猛獣が牙を剥く事すらも許さずにゴールを奪った。

 

『ご、ゴーール…!灼熱の暴獣の前には猛獣の牙も通じないーーッ!!!プロミネンスの得点はこれで3点目ですッ!!これにより雷門は更に苦しくなったぞォーーッ!?』

 

「ハァ…ハァ…。な、なんて威力だ…!」

 

「大丈夫か源田!!」

 

「あぁ…!まだやれる…!」

 

 彼の日頃の努力の賜物か、バーンの化身シュートをまともに受けても体力を大きく消耗しただけで再起不能の大怪我を負う事はなかった。

 だがこの一連の攻防により源田はどうあがいてもバーンを止める事が出来ないと証明されてしまったのだ。

 ならばプロミネンスが取る行動はただ一つ。

 

「“フレイムベールV3”!!頼みますバーン様!」

 

「“真バーニングサマー”!!大将!決めてくだせぇ!」

 

 バーン以外の選手は自我を出す事はなく大将にボールを回す為の歯車となる事に徹する事だ。

 流石のプロミネンスも雷門のディフェンスを突破するのは簡単ではないが、個人のスペックが大きく上回っている以上バーンがゴール前に到達するのは時間の問題だ。

 

 (どうしたらいい…?このままでは俺達は確実に負ける…!)

 

 源田にとってここまでのプレッシャーを感じる試合は今日が初めてだった。

 初めてのキーパーを務めた試合の日、1年前のFF決勝戦に感じたプレッシャーも今と比べればあまりに軽い…軽すぎる。

 

「邪魔だド三流!!!」

 

「しまった…!行ったぞ源田ァ!!!」

 

 (角なる上は…!“禁断の技(ビーストファング)”使うしかない!!!)

 

 未だに真・帝国での後遺症が残っている状態でこの技を使えば恐らく最新医療を受けても完治できない程の負担が来るだろう。

 だがこの技の存在自体、自身の過ちの権化のようなもの。その過ちが友の未来を守る盾となるならここで散るのも本望だ。

 

 (すまない鬼道…佐久間…、俺は使うぞ…この技を…!)

 

「逃げるなら今のうちだぜ!“アトミックフレアA”!!!」

 

 源田は凶星に対抗する為にサッカー人生を生贄に猛獣すら超えた暴獣の魂を憑依させる。

 

 

 

 

 筈だった…。

 

「ウォォォォォッ!!!」

 

「なッ…!どうしてお前がここにいる…!?

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼道…!?」

 

 “ビーストファング”を使用する直前、源田とシュートの間に割り込んだのは先ほどまで前線にいた筈の鬼道だった。

 

「やめろ鬼道!!いくらお前でもそのシュートをまともに受けるのは危険だ!!」

 

 源田の言葉通り、あまりのシュートの威力にFW陣にも匹敵するキック力を持つ鬼道の右脚でも打ち返せない。

 

「ぐッ…グァァァァ!!!」

 

 遂に限界を迎え決壊してしまう鬼道だが、彼が稼いだ数秒は無駄ではなかった。

 

「させるか!!“メガトンヘッド”!!!」

 

 直後に円堂も割って入り“正義の鉄拳”の応用技“メガトンヘッド”の拳が紅炎と激突する。まだ未完成の技ではあるがシュートブロックには十分すぎる威力だ。

 

「くそッ!あとは任せたぞ源田!!」

 

「あぁ!!」

 

 撃ち返す事は叶わなかったものの大幅に威力を殺す事に成功しただのシュートと化したボールを確実に受け止める。

 

「ハァ…ハァ…。だ、大丈夫か鬼道…!!!」

 

 なんとか失点の危機を乗り越えたもののブロックに入った鬼道が立ち上がらない。

 彼の身を案じた源田はボールを外に出し試合を中断させ鬼道に駆け寄る。

 

「立てるか鬼道?」

 

「…た。」

 

「何…?」

 

 とりあえず喋れるあたり重大な怪我をしていない事に安堵するものの鬼道の様子がどこかおかしい。

 

「今何をしようとした源田…。」

 

「き、鬼道…?」

 

 ようやく立ち上がった鬼道は突然味方である源田の胸ぐらを掴み怒声を上げる。

 

「何の技を使おうとしたかと聞いているんだ!!!」

 

 ゴーグル越しに見える鬼道の瞳は血走り、息も絶え絶えに送る言葉には普段の知性漂う高貴さが感じられない。

 右腕の佐久間ですらもここまで鬼道がキレている光景を見るのは初めての事だった。

 

「やめろ鬼道!!今は試合中だぞ!」

 

 怒り心頭の鬼道に対し円堂が仲裁に入る事で何とかその場を収める。

 

「どうしたんだよ鬼道…。そんなに怒るなんてお前らしくないじゃないか!」

 

「違うんだ円堂…。鬼道が怒るのも当然だ…俺はさっき…“ビーストファング”を使いかけたんだからな…。」

 

「なんだって…!」

 

「…これだけは言っておく。俺がキャプテンマークを付けている限り禁断の技を使う事だけは絶対に許さん…。次お前が“ビーストファング”を使おうとすれば俺は即座にこの試合を棄権する…。わかったな!!!」

 

 ある程度の冷静さを取り戻した鬼道は前線に帰って行く。

 

 

「どうします大将?今度は鬼道がブロックに入らないように痛めつけておきますか?」

 

「…いや、次のシュートは化身を使う。お前らは必殺技を使って奴らの体力を削れ。」

 

『ハッ!』

 

 前半戦も残り10分。

 雷門を突き放す為に1点を取りに行くプロミネンスと後半に向けて1点を確保したい雷門。

 攻撃VS攻撃と化した試合は壮絶なものだった。

 

「“ヒートタックル改”!!」

 

「“真アースクェイク”!!」

 

「“ラヴァカット”!!」

 

「“超イリュージョンボール”!!」

 

 必殺技の応酬によりフィールドに様々な自然現象が引き起こされる。プロミネンスがボールを取ったと思えばすぐに雷門が奪い返し、またすぐにプロミネンスにボールが渡る…。そんなイタチごっこが永遠と繰り返されていた。

 

 そして遂にその時が来た。

 

「これで終わらせる!!!“氷壊炎獣 プロミネンス”!!!」

 

 無限に続くイタチごっこを制したのはやはりプロミネンスだった。

 ボールを受け取ったバーンは既にペナルティエリア内に侵入している。そしてダメ押しと言わんばかりにすぐさま化身を発動し“インフェルノフォース”の体制へと移った。

 

「来ぉい!!!俺が……ッ!?」

 

 気合いを入れ直す源田だったが周囲の様子がどこかおかしい。

 唐突にギャラリーの応援は止み、敵を含めた前方の選手達の動きがスローになる。

 

「これは…!?」

 

 まるで自分だけ別世界に紛れ込んだかのような感覚に陥るが、その中で唯一何事もないように動く“影”が目に入る。

 

「お、お前は…!」

 

 源田の前に現れた“影”は選手ではない。

 (よわい)は50を過ぎ、180cmあろう長身、瞳が映らない程に強い黒のサングラスを着用しオールバックの男性…。源田はこの男を嫌と言うほど知っている。

 

「影山ァ…!!!」

 

 彼こそは人の形をした悪魔、影山零治だ。

 

「何故お前がここにいる…!!」

 

『何を言うか源田よ。貴様が私をこの場所へ呼んだのだろう?』

 

「そんな筈はない…!!俺はもう貴様の指図は受けないと決めたんだ…!!」

 

『だが実際に私は貴様の目の前に現れた…それは貴様が心のどこかで私の思想に共感しているからだ。違うか?』

 

「ッ……!」

 

 分かっている、これは影山零治であって影山零治ではない。

 目の前の人間、自分がいる不思議な空間…その全てを生み出したのは自分自身である事も…。

 

『以前私はお前に教えたな。“王者の名を冠するキーパーは常に悠然と立っていなければならない”と。だが今の貴様はどうだ?まるで野良犬のようにエリア内を駆け回り、ユニフォームは土まみれ…これが王者の姿か?』

 

「黙れ…。」

 

『ククク…お前の考えている事は分かるぞ。お前は怖いのだろう?目の前にいる炎の男が。』

 

「黙ってろ…!!!」

 

 核心を突かれた事で声を荒げてしまう源田。亡霊は ニヤリと笑う。

 

『“ビーストファング”を使え。勝利を得るにはそれしか方法は無い。』

 

「使えるわけがないだろう…!あれを使おうものなら鬼道はこの試合を棄権するんだぞ…!」

 

『本当に鬼道が棄権をすると思っているのか?これは何億人の命が掛かった試合なのだぞ?一度の敗北で終わりの中、個人の事情で勝負を捨てられる程する程奴は強くない。遠慮なく使うがいい。』

 

 亡霊の言葉は本人が聞けば鼻で笑われそうな何の根拠のない希望的観測でしかない。だが追い詰められた源田にとってこの上なく魅力的であり、今にも受け入れてしまいそうな気分にさせられる。

 

「俺は…俺は…!」

 

 徐々に周囲の動きが早まって行く中で源田は無意識のうちに亡霊の手を取りかける。

 

『俺は今も昔もお前が“天才”だと思った事はない。自分を見失うなよ。』

 

 偉大なるキャプテンは言ってくれた。王の名を持つのに相応しいのは自分であると。

 

『お前の“ハート”は誰よりも強い筈なんだよ!!!』

 

 最強のライバルは言ってくれた。自分のハートは誰よりも強いと。

 

 …なぁ源田幸次郎よ。お前はまだ逃げ続けるのか?

 これだけの人間がお前を信頼してくれてもなお自身を否定し続けるのか?

 

「…だ!」

 

『何?』

 

「もう嫌なんだ…!自分自身を否定し続けるのは…!」

 

 ならば踏み出せ。目の前の亡霊すらも足蹴にし真なる王国の守護神へと生まれ変われ。

 

「俺は変わる…!変わってみせる…!だって俺は帝国のゴールを守る…“K・O・G(キングオブゴールキーパー)”…源田幸次郎だからだァァァァァッ!!!」

 

 突如叫び出したと思うと亡霊の手を振り切り源田はバーンに向かって走り出す。

 

『ほぉ…私に立ち向かって来るか。一度ならず二度も私に屈服した負け犬如きがか?』

 

 先ほど振り切ったばかりの亡霊が再び王の前に現れる。

 

「だったら今度は俺がお前に教えてやる!!この世の王は2つある!1つは緩やかな道に甘んじ傀儡と化す王!そしてもう1つは茨の道を立ち止まる事なく進み続ける真の王!!」

 

 歴史的に見るといつだって王は傀儡と化すもの。真の王と謳われた人間などこの世にそう多くない。だからこそ皆が茨の道を拒み緩やかな道を選択するのだろう。

 だからこそ源田は茨の道を選択する。その道のりはとても長く地獄すらも生温く感じる程に険しい道だろう。

 でも大丈夫。だって自分には共に走ってくれる仲間がいる、いつだって間違った道に進んでも引き返してくれる友がいるのだから。

 

「ならば俺は茨の道でも皆と共に走り、真の王になってみせる!!それが俺の王道だァァァァッ!!!」

 

 過去からの呪縛を振り切るように通過した途端、影山の幻影は初めから存在していなかったかのように消え去った。

 

「源田!?」

 

 影山の問答は体感時間では10分程度のものだったが、現実世界での時間は実にコンマ1秒も経っていない。

 故に周囲から見ればいきなり源田がゴールを放棄して走り出したように見られるだろう。

 

「ウオォォォォォォッ!!!」

 

 源田は飛んだ。灼熱の熱風が舞う上空へと。

 

「よせぇ源田ァ!!その熱量の中を生身で飛び込むのは危険すぎる!!」

 

 佐久間は彼の身を案じて必死に静止の声を送る。だがこの声が源田の耳に入る事はなかった。

 

「源田…!」

 

「信じよう佐久間。源田を…俺達の“K・O・G”を…。」

 

「鬼道…。」

 

 確かに紅炎の中にまともに突っ込めば無傷ではすまないだろう。だからなんだ?そんな事は関係ない、だって今の彼にはボールしか見えていないのだから。

 

「自暴自棄か?それとも恐怖のあまり狂ったか?まっ、俺には関係ねぇか…、テメェごとゴールにぶち込むからなぁ!!!」

 

「ウォォォォォッ!!!」

 

 バーンはエイリア学園の中で最も傲慢な戦士だ。自身の実力に絶対の自信を持ち、他者に見せつける事を憚らない。

 だが彼は決して弱者に対して油断するような人物ではない。その証拠に単身で飛び込む源田に対して無慈悲にも“炎獣”の爪を向かわせている。

 しかしバーンは確かに見た。ほんの一瞬、源田の姿が米獅(ピューマ)そのものになったのを…。

 

「俺がァ…!!!K・O・Gだァァァーーッ!!!」

 

「んだ…と…!?」

 

 結論から言おう、勝ったのは源田幸次郎だ。

 予想外のパワーによって体制を崩されたバーンは地面に向けて落下していくがギリギリのところで受け身を取りなんとか脳震盪を回避する。

 

『と、止めたァァァァーーッ!!!地獄の業火が放たれるその直前!!源田がボールとの間に割り込む事でシュートそのものを阻止したァーーッ!!!“K・O・G”と謳われた彼がこのような行動に出る事は考えられませんでしたが…泥臭くボールに喰らい付くその姿は実に美しいーーッ!!!』

 

 源田の行動に対して思いつく限りの賛辞の言葉を送る角馬。それに呼応するようにギャラリー達も最高潮に湧き上がる。

 

「スゲェぜ源田…!!」

 

「フッ、ようやく吹っ切れたようだな。それでこそ俺達の“K・O・G”だ。」

 

 他の選手は素直に喜ぶのに対し鬼道だけはニヒルに笑うが感情には友の成長への喜びを隠しきれていない。

 

「ハァ…ハァ…どうだエイリアァ!!!これが俺達の力だ!!!」

 

「チッ…!テメェら!雷門のカウンターに注意しろぉ!絶対に警戒を怠るなぁ!!」

 

 自身の渾身のシュートを阻止された事に少なくないショックを受けるものの流石はマスターランク、すぐにカウンターへの警戒を張り最後まで気を引き締める。

 前半も残り僅か。恐らくこれがラストワンプレーだろう。

 カウンターの構えを取る雷門に対して、プロミネンスは攻撃は最大の防御と言わんばかりに攻め上がる。

 DFも攻撃に参加した事でプロミネンスの攻撃の幅が広がり再びディフェンスが突破されてしまう。

 

「これで…最後だ…!“アトミックフレアA”!!!」

 

 流石のバーンも連続で化身は使えないのだろう。地獄の業火ではなく紅炎を選択したが、それでも源田の許容範囲を超えている。

 それでも源田幸次郎に逃亡の選択肢は無い。“王”は悠然とシュートに立ち向かい牙を剥こうする。

 

 だがゴールを守る権利を有するのは彼1人ではない。

 

「あんま1人で背負い過ぎんな源田ァ!!!」

 

「ククク…水臭いじゃあないですか。いくら抜かれすぎて影が薄くても我々の事を忘れないでくださいよぉ…!」

 

「大野…五条…!」

 

 2人の戦友は王を支える為に背中からエネルギーが注入すると身体から感じた事のないエネルギーが溢れて来る。

 

「うおおおおおおおおッ!!!!」

 

 溢れ出る力を両手に集中させ地面に叩きつけた瞬間、地中から巨大な王国(キングダム)が出現し、その中心に源田が城壁の見張り台には五条と大野がそれぞれ腕を組みながら立つ。

 

「「「“エナジーキングダム”!!!」」」

 

「な、何だと…!?」

 

「これが俺達のォ…!!!帝国の誇りだァァァァァ!!!!」

 

 王国の城門が閉まり紅炎と衝突する。如何に全てを溶かす紅炎でもこの世の何よりも硬い帝国の誇りを溶かす事は叶わずに一瞬にして炎は消え去り遥か前方へと弾き鬼道の元へボールが回る。

 

 (ありがとう皆…。)

 

 (そしてすまなかった…。)

 

 (やっと今…追い付けた…。)

 

 気づけば源田はこの場にいる全員に感謝を伝えるかのように頭を下げていた。

 自分を超えてもなお『強い』と言ってくれた円堂に、自分と共に走る事を選んだくれた仲間達に、自分を見つめ直させ更に成長させてくれた敵にすらも。

 ここに真なる“K・O・G(キングオブゴールキーパー)”が誕生したのだ。

 

 そして遂に最大にして最後のチャンスが来た鬼道は最後の切り札(・・・・・・)を完成させようとしていた…!

 

「今なら行ける筈だ!行くぞ佐久間、円堂!!」

 

「「応!!!」」

 

♢1週間前…

 

「何かいい究極奥義かぁ…。」

 

「2nd雷門に化身使いがいない以上、究極奥義の習得は急務だ。そのノートの厚さから見てシュート技も載ってあるだろう?」

 

 鬼道は佐久間と円堂を呼び出しプロミネンスに対抗する為の究極奥義の模索していた。

 

「よーし!ちょっと待ってろよ!」

 

「究極奥義か…。まさか円堂大介が編み出した必殺技を習得する日が来るとはな…。」

 

 あの影山が目の敵にしていた人物という事もあり前々から大介に興味を持っていた佐久間は彼が遺した必殺技を使えるのが嬉しそうだ。

 

「…一応心の準備をしておけよ。」

 

「何をだ?」

 

 そんなこんなで数分後、吟味中の円堂が突如素っ頓狂な声を上げた。

 

「…あれ?これって…?」

 

「何かあったか?」

 

「いやさ…このページの技なんだけど…、技名に“デスゾーン2”って書かれてるんだ…。」

 

 見せられたページに書かれていたあまりに汚いその文字は読み取る事は出来なかったが、僅かに判別出来る想像図であろう絵には3人でボールを蹴る選手が描かれている。

 

「これは…確かに“デスゾーン”だ…。だが何故円堂大介が“デスゾーン”を…?」

 

 元々“デスゾーン”は影山が考案しそれ以降帝国の伝統技として受け継がれて来た技だと教えられていた。それにも関わらず大介の裏ノートに“デスゾーン”の名を冠した必殺技が書かれている矛盾に鬼道達は困惑していた。

 

「もしかして“デスゾーン”って元々じいちゃんが考えた技なんじゃないか?それを影山が帝国の技に改造したとかそんなんじゃないか?」

 

 影山が忌み嫌っていた大介の技を流用するとは考え辛いものの今そんな事を考えていても時間の無駄でしかない。とりあえず円堂に書いてある内容の通訳を頼む。

 

「『まずは3人でギュルギュルしてそれをドギャーンとした瞬間にドギャギャーンと爆発させるそれが”デスゾーン2”だ!!!』」

 

「……。」

 

「なんだこの怪文書は…。」

 

 鬼道は既に慣れているとはいえ初めて大介節を聞いた佐久間はその無茶苦茶な言葉使いとあまりに低い国語力にドン引きしている。

 

「あははは…で、でも大丈夫だ!俺たちには雷牙がいる!今夏未にこの内容を雷牙に訳してもらうようにメールを送ったからちょっとはマシになる筈だ!…多分。」

 

〜数十分後〜

 

「円堂さ〜ん!夏未さんからメールが来ましたよー!」

 

 お待ちかねのメールを受け取った円堂達は音無のスマホに書かれていた文を見ると再び絶句する。

 

『とりま1で覚えた事を忘れて練習に励め。それが2の習得の近道。」

 

「「……。」」

 

「適当だ…あまりに適当すぎる…。」

 

 翻訳家のあまりに杜撰な仕事に3人は頭を抱える。佐久間に至っては背景に宇宙が見えている。

 

「…前々から思っていたが稲魂(こいつ)の翻訳は本当に翻訳になっているのか?言葉が分かると言ってもニュアンスしか分かっていないようだから余計解読が難しくなっているような気がするが…。」

 

「ま、まぁ少なくとも一歩前進なんじゃないかな…?1mmしか進んでない気がするけど…。」

 

 仕事が適当でも翻訳は翻訳、翻訳内容を元に“デスゾーン2”の練習に励むものの1週間経っても完成する気配が見えない。

 

「ハァ…ハァ…まさかここまで苦戦するとはな…。」

 

「まったくだ…俺と鬼道は打ち慣れているからすぐに完成すると思っていたが…今なら稲魂が言っていた事が分かる気がする…この技は“デスゾーン”であって“デスゾーン”じゃない…。」

 

 一応言っておくと苦戦の原因は円堂には無い。寧ろ既に“デスゾーン”自体は完全に習得している。

 現状の問題はその先にあるのだ。いくら“デスゾーン”を撃てても彼らが目標とするのは“デスゾーン2”。だがどんなに一捻りを加えて『2』に相当しそうな変化が生まれる事はなかった。

 

 …今日までは。

 

 (源田の覚醒を見てようやく理解出来た…!“デスゾーン2”の本当の極意を…!)

 

 円堂、鬼道、佐久間の3人が揃った事で“デスゾーン2”の発射準備が整う。

 

「円堂、佐久間!“デスゾーン2”を放つ際は意識を合わせようとするな!各自自由に動け!」

 

「分かった!」

 

「もう俺はツッコマない!やれるだけの事をするだけだ!」

 

 3人は横回転しながら空に向けて飛翔する。

 しかしその光景を見た帝国の選手は皆絶句している。

 

「おいおい!?あんなバラバラな動きじゃまともな“デスゾーン”は撃てないぞ!!」

 

「練習の時のタイミングはどうした!?」

 

 確かに彼らの常識から考えればこれは失敗でしかないのだろう。

 だが常識とは常にアップデートされていくものだ。

 そして今日“デスゾーン”の歴史に新たな1ページ(更新)が入る事になる。

 

「”デスゾーン”が統一意思から生まれた必殺技だとすれば、“デスゾーン2”は個性のぶつかり合い…そしてこれが…!」

 

「「「“デスゾーン2”だァァァァ!!!」」」

 

 遂に炸裂した“デスゾーン2”は初代を遥かに超える質量のエネルギーを纏いながら急降下爆撃を行う。

 

「クッ…!“バーンアウトV3”!!!」

 

 両手に紅蓮の華を咲かせるグレントだが進化した“デスゾーン”の前には小細工無しに枯らされるだけだ。

 

「グアァァァッ!!!!」

ピッピッピー!

 

 ゴールネットが激しく揺れた瞬間に審判の笛が前半戦の終わりを告げる。

 こうして激闘の前半戦は4対2でプロミネンスリードのまま終了した。

*1
真夏の日に外の景色が歪むアレ




これ次回で終わるかな…。

〜オリ技紹介〜
氷壊炎獣 プロミネンス:バーンが使用する火属性の化身。見た目はGO2の“地獄の豪炎 イグニ”をもっと凶悪にした感じ。
技名“インフェルノフォース”の元ネタはガゼル同様Orangestarさんのボカロ曲『Henthforth』から。

エナジーキングダム:源田、大野、五条が放つ火属性のキーパー技(パンチング)。発動には3人揃える事が必須だが純粋な威力はムゲン・ザ・ハンドにも匹敵する。
名前の由来はパワー→力→エナジー/帝国(王国)→キングダムから。
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