イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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緊張感持たせる為に一度負けたら即終了にしたけど展開モロバレだから普通に総当たり戦でよかったと思う今日この頃。



雷/帝の誇りと灼熱の紅炎 後編

「よくやったぞお前達!作戦通り2得点差で前半を終えた!」

 

 前半の激闘を終えた戦士達を響木は褒め称え、後半戦に向けての作戦を伝える。

 

「といっても後半も前半と同じフォーメーションで行くつもりだ。細かい指示は各自の判断と鬼道の指示に従ってくれ。」

 

『はい!』

 

 次の激戦に備え休息を取る雷門イレブン達。そんな中鬼道の元へ1人の男が近づく。

 

「…ちょっといいか鬼道?」

 

 その男の名は寺門。佐久間に次ぐ帝国のエースストライカーである。だがその顔はどこか苦虫を噛み潰したような表情だ。

 

「点差を埋めるなら俺を下げて円堂をFWに入れるべきじゃないか?悔しいが今の俺じゃ奴らから点を取れやしねぇ。」

 

 確かに“デスゾーン2”が完成した今円堂、鬼道、佐久間を中心に攻めるのが適切だろう。

 だが鬼道はそれだけではプロミネンスに勝つ事は出来ないと確信していた。

 

「それは違うぞ寺門。寧ろ逆だ“デスゾーン2”だけに頼っていればこの試合に勝つ事は出来ない。」

 

「…どういう事だ?」

 

「確かに“デスゾーン2”は強力な技だ。恐らく雷門の連携技の中で最も威力があるだろう。だがこの技には1つ欠点がある…。」

 

「…参加人数の多さか…。」

 

 “デスゾーン2”だけで全ての連携技に共通する弱点は参加メンバーの固定化だ。

 ある程度練度を積めばその弱点も解消されるものの現時点で“デスゾーン2”を撃てるとは円堂、鬼道、佐久間だけだ。

 そして後半戦のプロミネンスは彼らに厚いマークを付けるだろう。

 

 だからこそ…

 

「後半戦、皆に新たな“デスゾーン”を生み出してもらう。」

 

「お、俺達が新しい“デスゾーン”を!?無茶言うなよ鬼道!2ですら完成に1週間以上掛かったんだぞ!?練習もしていない俺達がぶっつけ本番で成功するわけがないだろ!?」

 

 軽々と新しいデスゾーンを生み出せと無茶振りをする鬼道に対して帝国の選手は困惑の声が上げる。

 

「それ違うぞ。実際に撃ってみてようやく理解した。“デスゾーン”に正解なんてものは無かったんだ。“デスゾーン2”ですらも“デスゾーン”の発展系の1つでしかない…俺達はデスゾーンの可能性を見せただけに過ぎないんだ。」

 

「“デスゾーン”の可能性…。」

 

「失敗が怖いなら挑戦しなければいい。だが1つ言っておく、お前達が俺を信じているように俺もお前達を信じている。」

 

「鬼道…。」

 

「なぁ鬼道…それじゃあ源田の“エナジーキングダム”も後半は通用しないのか?多分プロミネンスは大野と五条にもマークを付けるぞ?」

 

「…いや。(バーン)絶対(・・)に源田を完封する事は無い。」

 

『え?』

 

「フッ、意味は後半に分かる。」

 

 休息を終えた雷門は様々な思いを抱きながらポジションへ着いて行く。 

 泣いても笑ってもあと30分で雷牙へバトンが回るか、日本が侵略されるかが決まる。

 

ピッピー!

 

 審判の合図により雷門とプロミネンスの最終決戦が幕を開けた。

 

「プロミネンスは守りが薄い!まずは1点を取り返すぞ!!」

 

『応!!』

 

 キックオフ早々雷門は速攻を仕掛ける。現時点で2点差でリードされている以上多少強引にでも攻めるしかない。

 

「もらい!!」

 

「しまった!?」

 

 だがいくらディフェンスが薄いといっても相手はエイリア学園最高幹部が率いるチーム、純粋な実力による防御力は並大抵のものではない。

 

「バーン様ァ!!」

 

「よくやったヒート!!」

 

 ヒートはボールを上空で待機していた大将の元へ送り小太陽に向けて小太陽が叩き込まれる。

 

「“アトミックフレアA”!!!」

 

 紅炎を纏ったボールが凶星と化しゴールへ向かうが今の源田はひどく落ち着いていた。

 前半ではこの世の終わりとさえ思っていた紅炎だが今となっては雲の隙間から差し込んだ日差しのように感じるほどだ。

 

「行くぞ五条、大野!」

 

 予めゴール近辺に待機させていたDFを呼び寄せ王の背中を支える。

 2人のエネルギーを注ぎ込まれた源田は両手に凄まじい気を溜め地面に向けて一気に放出する。

 

「「「“エナジーキングダム”!!!」」」

 

 王に相応しい荘厳な王国を出現させ紅炎を拒むかのように城門を閉じる。

 永遠に続く王国の前では1000℃を超える熱を帯びた凶星であっても崩壊に導く事は出来なかった。

 

「バーン様の“アトミックフレア”が通用しないなんて…!」

 

 先ほどまで自分達にも苦戦していた者が短時間で大将と渡り合える程に成長した事に驚きを隠せないプロミネンス達。

 だが事実上の最高戦力が通用しない現状でもバーンには焦燥感といった感情は微塵も感じられなかった。

 

 (なるほど…、やはり参加メンバーは固定のようだな…。)

 

 弾かれたボールを目で追いつつも“エナジーキングダム”を分析している。その姿はどことなくライバルだったガゼルを思わせる。

 

 彼をよく知る部下は口を揃えて評する。“矛盾した合理主義者”と…。

 

 普段は脳筋とさえ思われる程に熱しやすい性格だが、最も厄介なのはその先にある。

 

 (となると…。一番効果的なのはDFを奴から引き離す事か…、五条(グラサン)ゴーグル(大野)にマークを付けるとしたらネッパーとボンバが適任か…。)

 

 前半での激闘から1テンポ置いた事で頭が冷めたバーンは前半には無い冷静さを有していた。

 だが“矛盾した合理主義者”の本領はここから発揮される。

 

 (違うよなァ…!俺が求める勝利は妥協の先にあるもんじゃねぇ…、相手を完膚なきまでに叩きのめした先にあるんだよ…!)

 

 “エナジーキングダム”を破る為の合理的な策を自らの意志であっさりと没にする。

 恐らくプロミネンスの力を総動員すれば源田を完封する事は可能だろう。それでも大将は妥協する事を許さない。合理的な策を思いついても言葉にはしない。

 これこそが“矛盾した合理主義者”と言われる所以なのだ。

 

 だが先に試合を動かしたのは雷門の方だった。

 

「見ときや母ちゃん!!これがウチの“通天閣シュート”やで!!」

 

 ボールを受け取った浦部は大阪のシンボル通天閣の幻と共に独特なオーラを纏ったシュートを放つ。

 前々から練習していた必殺技だがその威力はお世辞にも高いとは言えない。

 

「その程度で俺から点を奪えると思う「そいつはどうかなぁ?」ッ何!?」

 

 “通天閣シュート”の軌道上にいたのは佐久間、寺門、洞面の帝国のストライカー達だった。

 通天閣と共に走っていた3人はデスゾーンの要領で横回転をするが彼らの飛翔先は地面に対して垂直ではなく平行だった。

 

「うっわぁ〜こんなに形にするなんて本当に大胆だねぇ寺門さん!」

 

「無駄口叩いている暇があったら技に集中しろ!」

 

「行くぞ!寺門、洞面!」

 

 周囲に紫の三角形(トライアングル)が出現し終点に到達したシュートに全体重を乗せて更に加速させる。

 

「「「“デスクラッシャーゾーン”!!!」」」

 

 “クラッシャー”の名の通り、従来の“デスゾーン”の正解を破壊する事で新たな“デスゾーン”が生み出される。

 創造の前に破壊ありとはよく言ったものだ。

 

「これ以上点はやらん!!!“マグマウォール”!!!」

 

 もう一つの切り札である“マグマウォール”で対抗するものの“破壊者”の名を冠した技の前には溶岩の壁は呆気なく貫かれるだけだ。

 

『ゴーールッ!!!なんという事でしょう!!!帝国のエースストライカー達が唐突に新技を生み出しプロミネンスから3点目を奪ったぞォーーッ!!!これは雷門お得意の逆転の第一歩となるかァーーッ!?』

 

「しゃあ!どうだぁ鬼道!俺達のデスゾーンは!」

 

「いい技だ。ようやくお前もデスゾーンの真髄を掴んできたようだな。」

 

「よーーしッ!ここから逆転だァーーッ!!!」

 

『応ッ!!!』

 

 点差を1点にまで縮めた雷門は更に勢いづく。

 

「なんだこいつら…!前半とは明らか動きのキレが違う…!」

 

「焦るな皆の衆!!!我らはマスターランクチーム!地球人如きに負ける筈がないわ!!!」

 

 ややラフなタックルでボールを奪いネッパーとサイデンはツインシュートを放つ。

 

「「“メルトダウン改”!!!」」

 

 凄まじい威力だが炉心融解の行き先はゴールではなく上空に浮かぶ小太陽だ。

 そこに待ち構えるのは当然…

 

「褒めてやるぜ源田幸次郎…!テメェは強くなった…だからこそ!俺は全力でテメェをぶっ倒す!!!」

 

 核燃料すら溶かす熱量に太陽の紅炎の炎が更に加わる。

 

「“アトミックフレアァァァァァA”!!!」

 

 太陽を思わせる圧倒的な熱量を纏ったボールは幾度も軽い爆発を繰り返しながらゴールへと向かう。

 

『源田ッ…!!!』

 

 炉心融解と紅炎の合わせ技は恐らく“エナジーキングダム”では止められないだろう。

 

 だからこそだ。

 

 王者は再び仲間を呼び寄せ悠然と立つ。

 今の自分で止められないのなら自分が成長すればいい。

 玉座に座るだけが王ではないのだ。

 

「「「“エナジーキングダムG2”!!!」」」

 

 進化した王国は更に発展し、より洗練された意匠を持つ城壁が現れる。城壁はこの世で最も熱い炎にすら屈せずに悠然に栄える。

 

『と、止めたァーーッ!!!“K・O・G”は更に王国を進化させて太陽すらも防いでみせたぞォーーッ!!!そしてボールを確保したのは雷門!ここから彼らのカウンターが始まるゥーーッ!!!』

 

「ディフェンスッ!!!雷門を止めろーーッ!!!」

 

 円堂を起点にカウンターを開始した雷門はお得意の連携を駆使してプロミネンスの薄いディフェンスを次々突破して行く。

 

「“超イリュージョンボール”!!頼む円堂!!!」

 

「任せろ!!」

 

 鬼道からボールを受け取り円堂は更に前線へボールを進めて行く。

 

 (多分“メガトンヘッド”じゃグレントを破れはしない…。“デスゾーン2”だって警戒されてる…。)

 

 初めてキーパー用ではないユニフォームに袖を通した時に鬼道から言われた言葉を思い出す。

 

『いいか円堂、お前のポジションはDFじゃない“自由(リベロ)”だ。だから自身の役割に縛られる必要はない。なぁに色々難しい事を言ったが要するに“円堂守”のサッカーをしろ、それだけだ。』

 

 (そうだ…。俺は“リベロ”なんだ…!もっと発想を自由に…!もっともっと更に高く!!)

 

「フッ、何かを掴んだようだな円堂。悩む事はない!お前は思うがままにプレーしろ!俺達はいくらでも喰らい付いてやる!」

 

「鬼道…。よし!分かった!来てくれ塔子、リカ!!」

 

 円堂、塔子、浦部の3人は横回転をしながら飛翔する。プロミネンスは“デスゾーン2”を警戒するが彼らの高度は空を超え大気圏を超え、遂に宇宙まで到達する。

 

「「「“ラスト・デスゾーン”!!!」」」

 

 円堂由来の“自由”を得た事で更に進化した“デスゾーン”が彼らの故郷を経由して襲い掛かる。

 

「クッ…!“マグマウォール”!!!」

 

 グレントはせめてもの対抗に溶岩の壁を出現させるが、宇宙からエネルギーを得たシュートの前にはなす術もなく消し飛ばされゴールネットを激しく揺らす。

 

『ゴーール!!!遂に…!遂に同点へと追いついたァーーッ!!!後半戦も残り時間僅か…!奇跡の追い上げまであと一歩ですッ!!!』

 

「よっしゃあーーッ!!!みんなあと1点で逆転だ!!!この勢いで勝つぞォーーッ!!!」

 

『おおッ!!!』

 

“デスゾーン”の真髄を掴んだ雷門は前半の苦戦が嘘のように同点に追い付いた。

 ここに来て怒涛の追い上げを見せる雷門にプロミネンスは唖然としている。

 

「ど、同点だと…!?マスターランクチームたる我らがこんな奴らに…!?」

 

「どうしやしょう大将!?…大将?」

 

 追いつかれた事実に焦るプロミネンス達はキャプテンであるバーンに頼ろうとする。

 だが…。

 

「クククク…ハハハ…ハハハハハッ!!!!」

 

 笑っている。バーンが大声をあげて笑っている。

 

「バーン…様…!?」

 

 ずっと疑問だった。

 何故他人に無関心であったグランが円堂守にあそこまで執着するのかが。

 何故常に冷静である事を心がけていたガゼルがあそこまで怒り狂ったのかが。

 何故闘争心で燃え上がる自分のハートに“楽しい”という感情の炎が着き始めているのかが。

 

 この試合を通してその謎をバーンは論理ではなく魂で理解する。

 

「なるほど…あいつらがあそこまで熱くなるわけだぜ…!」

 

 雷門のサッカーはあまりにも純粋だ。

 負ければ日本が侵略されるにもかかわらず純粋にサッカーを楽しみ、悪行を重ねた自分達が相手でも憎しみをボールにぶつける事は無い。

 この戦いに参加している者は皆、その信念を胸に背負ってピッチの上に立っているのだろう。

 

 エイリアにとってタチの悪い事に雷門の信念は他者にも伝播する。

 その証拠に鋼鉄のように硬かったデザームの信念は戦闘狂からサッカー狂へ、氷のように冷たかったガゼルの信念は敵を殲滅するだけの冷徹な戦士から勝利を追い求める熱き選手へと変貌した。

 

 そしてここにまた1人雷門の信念に熱された男がここにいた。

 

「面白れぇ…!!!俺のハートが…肉体が…細胞が…!!心の底から雷門に勝ちてぇと叫んでいやがる…!!」

 

「バーン様…。」

 

「おいテメェら!何シケた面してんだぁ?まだ同点だろうがぁ!!まだ負けたわけじゃねぇ!この試合…絶対に勝つぞォ!!!」

 

『はいッ!!!』

 プロミネンス達はバーンの表情に驚愕せざるを得ない。

 強者と相対した際に好戦的な笑みを浮かべる事はあったが今回のように純粋な笑顔は見た事がなかったからだ。

 だが何故だろうか自分達も主人と同じ感情を抱いている。この試合に勝ちたくてしょうがない。

 

「へへへッ!なんだかプロミネンス達の顔が変わったな!」

 

「フッ、どうやら奴らもお前に毒されたようだな。お前達!残り時間も僅かだ!最後まで気を抜くなよ!!」

 

『あぁッ!!!』

 

 遂に始まる雷門VSプロミネンスのラストプレー。

 どちらかが先にプロミネンスは化身を、雷門は“デスゾーン”をゴールに叩き込んだチームが勝利の栄光を手にするだろう。

 

「“ノヴァカットV2”!!」

 

「“イリュージョンボール改”!!」

 

「“イグナイトスティール”!!」

 

「“たまのりピエロ”!!」

 

 互いに激しい技の応酬を繰り広げボールを奪っては取り返すを反復する。

 

 そして…

 

「「「“トリプルブーストォォォ”!!!」」」

 

 膠着した現状を変える為に雷門は三位一体のロングシュートを放つ。ここに来てロングシュートを撃つとは思っていなかったプロミネンスは反応が一瞬遅れてしまい自軍への侵入を許してしまう。

 

 だがここで終わるエイリアではない。

 

「「“メルトダウン改”!!!」」

 

 いつのまにか後衛まで戻って来ていたネッパーとサイデンが必殺シュートでブロック…否カウンターに入る。

 

「と、トリプルブーストを…!」

『撃ち返したァーーッ!?』

 

 トリプルブーストを撃ち返した事で元のシュートに2つの炉心融解の威力が加わり誰の手にも負えなくなる。

 

 …いや1人だけいた。

 

「これが最後の勝負だァ!!!源田ァーーッ!!!」

 

「! あぁ来いバーン!!お前の本気に俺達も全力で応える!!」

 

 “炎獣”を従える炎の男バーン。彼の脚は究極の炉心融解の熱にも耐えボールを上空へ上げる。

 それに対するのは“玉座”を守る男源田幸次郎。彼のココロは誰にも負ける事なく金色の光を灯す。

 

「「ウォォォォォォォッ!!!」」

 

 雄叫びを上げた2人の戦士は“紅炎(バーン)”は“炎獣”と共に地獄の業火を“(源田)”は仲間と共に永遠に続く王国を出現させる。

 

「“インフェルノフォース”!!!」

「「「“エナジーキングダムG3”!!!」」」

 

「これで…決まる…!」

 

「俺達は信じるしかない…。源田を…。」

 

 周囲のギャラリーは固唾を飲んで見守る。

 

 だが…。

 

「グ…グァァァァァァァ!!!?」

 

 地獄の業火の前には幾度となく凶星から国を守って来た城壁が粉砕される。

 これで勝者はバーン…もといプロミネンスに決した。

 

 

 筈だった…。

 

「まだ終わってないぞォーーッ!!!」

 

 誇りであった王国は滅びた。だからなんだ?

 

 それでも源田は諦めない。守るべき玉座とは王国ではなく自身の誇りなのだから。

 

「いいねェ!!!最後に見せてくれよォ!!!テメェの…源田幸次郎の誇りってやつをよォ!!!」

 

 この試合で幾度となく自分を成長させてくれたライバル(バーン)の言葉に応えるように源田は右腕を地面に衝突させ衝撃波の壁を出現させる。

 

「“パワーシールドォォォォォォ”!!!」

 

 最後の最後に王が選択したのは自身の原点(オリジン)を作り上げた始まりの技だった。

 

「それがテメェの答えかァ!!!俺様の矛とォ!!!テメェの盾ェ!!!勝つのは果たしてどちらかなァ!!!?」

 

 “源田の原点(パワーシールド)”と“地獄の業火(インフェルノフォース)”…どちらの矛と盾が勝るかを確かめる為に最後の勝負を始める。

 

「グヌヌヌ…!!!」

 

 如何に“エナジーキングダム”によって威力を大幅に減らしたといっても化身技は化身技。

 元の自力に圧倒的な差がある以上源田には勝ち目は無かった。

 

「負けてたまるかァァァァァァッ!!!!」

 

 源田は叫んだ。この行為自体に何らかの意味があるわけじゃない。それでも叫ばずにはいられなかった。

 

 そして奇跡は起きた。

 

ゴンッ!

 

「ッ!ヌォォォォォッ!!!」

 

 結論から言おう。勝ったのはバーンの矛だ。源田の盾はよく頑張ったがこの世の何よりも熱い炎の矛に勝つ事はできなかった。

 それでもだ。勝つ事はできなくてもやれる事はある。例えば…

 

『ず、ずらした…!源田の執念が…!バーンのシュートコースをずらす事に成功したぞォォォォォォォ!!!そして今ボールは源田の両手にあるゥゥゥゥッ!!!勝つか負けるかの勝負の結果は互いの勝利で幕を閉じたぞォーーッ!!!これを“矛盾”と言わずに何と言うべきかァーーッ!!!』

 

 最後の執念でシュートコースをずらす事に成功しボールの到着点はゴールポストに変更された。

 炎が消え去ったボールを見逃さなかった源田はすぐにボールを確保し両手にボールを納めている。

 

「こっちだ源田ッ!!!」

 

「任せた鬼道ォ!!!」

 

 最後の最後でカウンターのチャンスを得た雷門は全ての力を振り絞って攻め上がる。

 FW、MFは皆前線に出ている為2人のDFしかいないプロミネンスのディフェンスは一瞬にして崩壊する。

 

「これで終わりだッ!!!行くぞ円堂、塔子!!!」

 

「「応ッ!!!」」

 

 最後にシュートチャンスを得た鬼道は円堂と塔子と共に横回転しながら飛翔する。

 当然放つ技は…。

 

「「「“デスゾーン2”!!!」」」

 

 2nd雷門最強の連携技が炸裂しグレントの守るゴールネットを激しく揺らす。

 

 

 

 

 

 

…その算段だった。

 

「まだ終わってねぇぞォォォォォォォッ!!!!」

 

「ば、バーン!?」

 

 “デスゾーン2”が放たれる直前、紅蓮の炎を纏いながら割り込んだのはバーンだ。

 先ほどの一撃で立っているのもやっとな状態の源田ではここから放たれたシュートも止められないだろう。

 今バーンにシュートを撃たせる事だけは絶対に阻止しなければならない。故に円堂達は威力が不十分になる事を承知の上で放つタイミングを早めるしかなかった。

 

「「「“デスゾーン”!!!」」」

 

 二度目の蹴りを入れる時間を失った事で中途半端な“デスゾーン2”…いわば“デスゾーン1.5”が放たれる。

 

「クソッタレがァ!!!ネッパー、ヒート!シュートを撃ち返せェェェェェッ!!!テメェらならできる筈だァーーッ!!!」

 

 最後まで勝利を諦めないバーンの姿勢は立派なものだが彼の願いは叶う事はなかった。

 打ち損なったデスゾーンの行き先には既に先客がいたからだ。

 

 

 

 

 

そこにいたのは…

 

「決めろ佐久間ァーーッ!!!」

 

 エネルギーを保持したボールに向けて指笛を吹く。

 すると何処からか5匹のペンギンがボールの内部へ入りエネルギーが更に増加した。

 

「これが俺のォ…!!!“皇帝ペンギンOG”だァーーッ!!!」

 

 影山(怨霊)の呪縛から逃れた帝国の新たな誇り(プライド)が炸裂し、5匹のペンギンは1羽の巨大な企鵝(ペンギン)と化す。

 

「“マグマウォー…何!?グァァァァァァァ!!!!」

 

 最早お約束と言わんばかりにグレントの障壁は一瞬にして破れ去り最後の砦すらも崩壊する。

 灼熱の紅炎に勝利した雷門と帝国の誇りは1秒後にゴールラインを割る

 

…筈だった。

 

ピッピッピッー!!

 

「何…!?」

 

「嘘だろ…!?」

 

 審判が吹いた笛が示すのは試合終了の合図…。つまりだ…。

 

『な、なんと…!この場にいる人間はこの結末を予想できたでしょうか…!?最後に佐久間が放った“皇帝ペンギンOG”はグレントを破りゴールラインを割るだけでした…!』

 

 だが雷門のスコアボードは『3』の数字から変化はない。

 

『あと1秒…!あと1秒というところで試合が終了したのです…!つまり最後の得点は無効…!2nd雷門とプロミネンスの決戦は両者引き分けで幕を引きました…!!』

 

「クソッタレが…俺もそっち側かよガゼル…。」

 

 あまりに予想外すぎる幕引きに皆が言葉を失う中バーンのみ小さく呟くのだった…。

 

 遂に激戦が終わりグラウンドにいる選手は誰1人動く事ができない。それほどまでに消耗しているのだ。

 試合の結果こそ引き分けで終わったものの周囲にいる観客は誰も罵声を浴びせる事は無い。

 試合が終わったら敵味方関係無い…この精神が雷門のモットーだからだ。

 

 だが…宇宙からの綺羅星は無情にもグラウンドに落ちてくる。

 

「……。」

 

「…よぉ、アケボシ。相変わらず気色悪ぃ仮面だなぁ…。」

 

 現れたのは当然最後のマスターランクチームのアケボシ…と見知らぬ人物が彼に付き従うように立っていた。

 

「誰だアイツ…?」

 

「初めて見る選手だ…。」

 

 アケボシに付き従っている選手の名はケイワク。チーム“レグルス”の副キャプテンであり彼らのゴールを守る者だ。

 

「……。」

 

「コホン…アケボシのお言葉です。『エイリアの名を背負う以上引き分けは敗北と同義…よってエイリア学園から追放する…。最後に言い残す事はあるか?』との事です。」

 

 ケイワクは無口なアケボシに代わってエイリア皇帝から命じられた勅命を淡々と伝える。

 

「だったらお言葉に甘えて1つ…。断言してやるぜ、次の試合でテメェの素顔は明らかになるだろうッ!楽しみだぜェ!!!その薄気味悪ィ仮面の下がどんな顔になっているかがなァ!!!」

 

「……。」

 

 遺言を聞き終わったアケボシは無言のまま漆黒の球体をプロミネンスに向けて放つ。

 こうして紅炎の名を冠した戦士達は自らの運命を受け入れ消滅した。

 

「さて…やる事も終わりましたし帰りましょうか。」

 

「へいへ〜い。ちょっと待てよ。」

 

 アケボシ達が帰還する直前に呼び止めたのは当然3rd雷門のキャプテン雷牙だ。彼の後方には他のメンバーも揃っている。

 どうやら最後の試合に向けて改めて宣戦布告をしに来たようだ。

 

「なんですか?金髪…モヒカン…宇宙人ヘアー…古今東西の悪人面で構成されたガラの悪そうな人達は?」

 

「ヘッ!悪者で結構!俺ちゃんが用があるのはそこのライオン仮面だけだよ!」

 

「……。」

 

「アケボシ…?どうしたのですか?」

 

 雷牙が宣戦布告をする直前、アケボシは彼との距離をmからmmへと縮め耳元で小さく囁く。

 

「……ッ!?」

 

 囁き終わったアケボシはケイワクと共に本拠地へ帰還する。

 

「雷牙、アケボシはお前に何を伝えた?」

 

「いんや…。別に大した事じゃねーよ…。うん。いんや…。別に大した事じゃねーよ…。うん。いn」

 

「監督ーーッ!稲魂さんが壊れちゃいましたーーッ!!」

 

「ハッハッハッハ!!さぁ、アッキークン!壊れたラジオの脳天斜め45度にバナナシュートを叩き込んでやりなさい!」

 

「チッ、馬鹿共が…、付き合ってらんねーぜ…。」

 

 まるで自分に言い聞かせるように何度も同じ言葉を繰り返す。その様子は壊れたラジオだ。

 その後3rd雷門は練習に入ったが明らかに雷牙は集中できていなかった。




デスゾーンの由来・真価うんぬんは捏造っす。

デスゾーン:影山零治が考案した必殺技と伝えられていたが、実際には大介が原型を作り離反した後影山が現在の形に完成させた。だが選手が自我を出す事を認めない影山のサッカーでは本来の力を出す事ができずにいたが、鬼道の手によってようやく本来の真価を取り戻した。なお大介を忌み嫌う筈の影山がデスゾーンだけを流用した理由は未だに不明。

マグマウォール:火属性のキーパー技。ぶっちゃけ材質がマグマになったツナミウォール。展開の都合上セーブ率0%というクソみたいなセーブ率となってしまった不遇すぎる技。
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