「遂に始まるぞ…!マスターランクチームとの最終決戦が…!」
「大丈夫だ。稲魂達なら絶対に勝ってくれる。」
戦士達が己がポジションに着いて行く光景を周囲のギャラリーは固唾を飲んで見守っている。
今まで幾度となくこのような緊張感を味わってきたが現在彼らを襲っている緊張感はこれまでの比ではない。
ピーッ!!
「始まった!雷牙ァーーッ!絶対勝ってくれよなァーーッ!!!」
円堂は最高の友に自分達の希望を託し鼓舞を送る。
親友の声を聞いた怪物は言葉で答える事はなく、
「さぁて…サッカーやろうぜみんなァ!!!」
『応ッ!!!』
友の名言を
3rd雷門のフォーメーションはスタンダードな『4-4-2』を採用している。相対する“レグルス”の情報が少ない中バランスの取れた陣形で挑むのは理に叶っている。
受け身の姿勢で勝負に挑む雷門に対して“レグルス”の陣形は…
FW:フリーズ、クウル
MF: ユニバ、ヴィーナ、アケボシ、プルートー
DF:プレアデス、ディッパー、サザン、スターバ
GK:ケイワク
彼らも雷門と同じ『4-4-2』で挑む。何度も言うが『4-4-2』はスタンダードなフォーメーション…つまり被る事はそう珍しくない。
だが…
「妙だな…。」
「妙?何がだ鬼道?」
鬼道は彼らの陣形に違和感を覚えずにはいられなかった。彼が覚えた違和感は陣形にあるのではない、配置された選手にあるのだ。
「各ポジションに着いている“レグルス”の選手達の傾向が3rd雷門と瓜二つだ…。これは偶然なのか…?」
雷牙のポジションにはアケボシが、豪炎寺のポジションにはクウルが、壁山のポジションにはサザンが…といったようにレグルスの選手達の特徴はまるで3rd雷門の鏡写しのように似通っている。
フォーメーションのみならず選手の傾向も似ている…ここまで偶然が重なればもはや不気味さすらも感じてしまう。
「…あーだこーだ考えていても仕方ないさ。今は雷門を信じよう。」
「そうだな…。」
佐久間の発言を受けて鬼道は思考を打ち切る。
最初に試合の主導権を握ったのは“レグルス”だった。
「オーホッホッホ!我ら“レグルス”の恐ろしさを貴方方に思い知らせてさしあげますわ!」
「ならばお前には漆黒に燃える炎の熱さを教えてやる…!」
何故かお嬢様言葉を使いながら攻め上がるフリーズに対しちょっと何を言っているか分からないシャドウが立ち塞がる。
シャドウの実力は豪炎寺や吹雪兄弟と比べるとまだ荒削りだがマスターランクチームに対抗できる実力は十分にある。
「くっ…!ならば…お兄様!」
想像以上のシャドウの実力に驚いたフリーズは単独での突破を諦め同じポジションに身を置く兄にボールを回す。
「フン、最初から俺に頼っていればいいものを!」
ボールを受け取ったクウルは妹の強情さに高圧的な態度で呆れながらも彼女の意志を継ぎ敵陣へ向けて攻め上がる。
「行かせない!」
「ほぉ…貴様は豪炎寺修也か。面白い!貴様のパワーと俺のパワーのどちらが優れているか勝負だ!」
豪炎寺と並行に並んだクウルは好戦的な笑みを浮かべるとどちらの力が優れているかを試すようにチャージ合戦が始まる。
しかし2人のパワーは全く同じであり完全に勝負は膠着状態に陥る。
「フッ、やるな豪炎寺修也!」
「悪いがお喋りをしている暇は無い!“バーニングカットV2”!!」
炎の刃がクウルの身体を捉えた瞬間、彼は躊躇せずにボールを上空へ上げる。
豪炎寺はすぐに体勢を立て直し飛翔するも彼の前に閃光が走る。
「何…!?」
『見ましたでしょうか皆様ッ!!!グラウンドに一筋の閃光が走る姿をッ!!!光が晴れた先にいたのは無機質なる一等星…アケボシですッ!!!』
ボールを受け取ったアケボシは流星を思わせる超スピードで攻め上がる。
「“超アイスグランド”!」
「“クイックドロウV2”!!!」
吹雪が周囲を凍らせ摩擦係数が限りなく0に近くなった地面をマックスが器用に滑る事で超加速した“クイックドロウ”でボールを奪おうとする。
前方にはマックスが後方には吹雪が待機する中、彼らのディフェンスを突破するのは容易ではないだろう。
するとアケボシの身体から超新星爆発を思わせるほどに眩い光が発せられる。
「“スターライトロード”…。」
強力な閃光により目が眩んだマックスと吹雪はアケボシの姿を見失い、鉄壁の守りが崩壊する。
『な、な、な、なんとォーーッ!!!絶対絶命の状況に陥ったアケボシだったがその名の通りの閃光を発する事で頭容易くディフェンスを突破したァーーッ!!!かく言う私もサングラスの機能を兼ね備えたこの眼鏡が無ければアケボシの動きを捉える事ができませんでしたァーーッ!!!』
3rd雷門のMFは合計4人。吹雪とマックスが抜かれた今、ボールを奪う役目は残る雷牙と不動に託された。
筈だった…。
「……。」
「……。」
『一体どうした稲魂ァァァァッ!!!?まるでアケボシが視界に入っていない無いように彼を素通りさせたぞォォォォォォ!?もしや未だに視力が回復していないのかァァァァァ!?』
何を考えているか分からない不動は元より誰よりも彼との決着に固執していた雷牙もアケボシをスルーした事にギャラリーは驚きを隠せない。
「最後の忠告だアケボシ。次“キンレオ”を撃ってみろ、俺は絶対にオメーを許されねぇぞ。」
アケボシが通り過ぎる直前、雷牙は最後の忠告をする。
アケボシは彼の忠告に答える事はなかったが、既に答えを予測したいた雷牙は軽くジャンプを繰り返しこれから来るであろう激情に備える。
中盤を突破したアケボシは一切加速を緩める事は無くDF陣と対峙する。アケボシは最も厄介な壁山塀五郎との衝突は避け、最も防御力の低い綱海との対決を望む。
「おっ?俺との勝負をお望みって訳か?いいぜ!初心者だからって舐めるなよ!」
意気揚々とアケボシのボールを奪いに行く綱海だったが彼の本職はDFとは名ばかりのロングシューターなのだ。まだテクニックに難のある綱海では止められる筈がなくあっさりと突破されてしまった。
「くっそ〜!ノリの悪ぃ奴だな〜!もうちょっと駆け引きを楽しもうぜ!」
容赦なく自分を抜き去ったアケボシに対して綱海は不満を漏らすがアケボシが答える事はなかった。
「こいっ!!!」
「……。」
たった1人で雷門のディフェンスを突破して見せたアケボシは立向居と対峙する。
アケボシは身体に獅子の魂を憑依させると荒々しい動きで二連撃を放った。
「“キングレオーネ”…!」
“怪物”と呼ばれた者にのみ使う事を許される獅子の咆哮がグラウンド全域に響き渡る。
本家本元である雷牙を超えるスピードと威力を兼ね備えた“キングレオーネ”は立向居を喰らわんとする勢いでゴールへ向かう。
常人なら恐怖に支配され動けなくなる程の威圧感の前でも立向居は微かに笑っていた。
そして軽く深呼吸をすると静かに両腕を天に掲げる。
「“ムゲン・ザ・ハンドッ”!!!」
千手菩薩を思わせる神々しい光と共に4本の黄金の腕が現れる。黄金の腕は怒り狂う獅子に怯む事なく、凄まじい握力を用いてボールを捉える。
“
『止めたァァァァァッ!!!アケボシ渾身の“キングレオーネ”をッ!立向居の新技“ムゲン・ザ・ハンド”によって完璧に止めてみせたァァァァァッ!!!』
「あれがじいちゃんが残した最強のキーパー技…!」
「凄いな…“正義の鉄拳”以上のインパクトだ…!」
遂に日の目を見た最強のキーパー技“ムゲン・ザ・ハンド”。それを見たギャラリーは皆ざわめき合い、立向居の才能を褒め称えている。
特に円堂は自分ですら完成させる事ができなかった祖父の技を見られた事に感動している様子だ。
「カモ〜ン、立向居。」
「ハイッ!!決めてください…稲魂さんッ!!!」
ボールを右手で持ち替えた立向居は細い腕からは想像も付かない肩の力で数m先にいる雷牙の元へボールを投げ飛ばす。
天高く上げられたボールは綺麗な弧を描きながら雷牙の足元へと吸い込まれていった。
「ふぅー…さてと…、いっちょ行くぜッ!!!」
金色の染められた髪を靡かせながら雷牙は敵陣へ攻め込む。その姿は“水を得た魚”ならぬ“ボールを得た怪物”だ。
彼と同じく“レグルス”の名を冠した戦士達は肌で怪物の危険性を察知し何としてもこれ以上先に行かせない為に多勢で襲い掛かる。
先鋒として立ち塞がったのはMFのヴィーナとプルートーだ。容姿こそ可憐な少女達だが身体に秘められたパワーは成人男性の比ではない。
「おおっと?こんな美女に囲まれるなんてイケメンは辛いねぇ。」
「あんたがイケメン?冗談キツいわ、野良犬の間違いじゃないの?」
「こらヴィーナ!キャプテンに言われたでしょ!稲魂雷牙の言葉には答えちゃ駄目って!それがあいつの作戦なんだから!」
「そうだった…!じゃあ間髪入れずに行くわよプルートー!」
危うく雷牙の挑発に乗りかけた目の前の怪物を仕留める為に小惑星の雨霰を降り注がせる。
「「“アステロイドベルト”!!!」」
本来は個人で放つものを2人で放つ事で威力が倍増したが雷牙は不敵な笑みを崩さずに流星群に向かって走り出した。
「な…!馬鹿じゃないの!?ワザワザ私達にボールを渡そうとするなん…」
避けるどころか危険地帯に突っ込む雷牙の自殺行為としか思えない行動にヴィーナは困惑する。
その瞬間、彼女達の前に稲光が走る。
「“イナビカリステップV3”!!!」
本来は対個人用の必殺技であるが、持続時間を長くする事で降り注ぐ小惑星の雨霰を全て回避する事に成功する。
「へいへいお嬢さん達〜?自分たちが強ェからって油断しすぎじゃねぇーの?」
「み、見えなかった…!確実に稲魂雷牙の姿を捉えていた筈なのに…!」
「なによ今のスピード…!まるで…
何故か自分がアケボシと比較された事にムッと来た雷牙は彼女達の発言を無視してせっせと先を急ぐ。
MF陣があっさりと突破された事に危機感を覚えたDFの選手は唯一怪物に対抗できるであろうアケボシの帰還の時間を稼ぐ為に最低限の人員を残して一斉に雷牙へ襲い掛かる。
「ハッ!流石の俺ちゃんも多勢に無勢…とか思ってんだろ?駄目だね〜オメーらサッカーを知ってんのか?何も俺は1人でサッカーをしてんじゃねぇ〜んだよ!」
そう言うと雷牙は綺麗なヒールリフトを行いボールを上空へ上げる。そこには…
「そうだ!俺達が…仲間がいるッ!!!」
雷牙の最高の相棒豪炎寺修也が熱風を纏わせながら待機していた。
「“超ファイアトルネェェェェェド”!!!」
極限まで鍛え上げられた豪炎寺の十八番が轟音と共に炸裂する。友との涙の別れを経て進化した爆炎はありとあらゆる物体を溶かすだろう。
そう評してもおかしくない炎を前にしてもケイワクは余裕の笑みを止めなかった。
「出番ですよプレアデス。」
「はぁ…めんど…。」
自身の名を呼ばれたDFプレアデスは溜め息を吐きながら爆炎の直線上へ立つと人差し指から不思議な色合いの球体を出現させる。
人差し指を軽く振ると球体は地面と衝突しビー玉程の大きさから一気に膨張しボールと本体を包み込む。
「“ゼログラビティ”。」
イプシロンの選手が使った“グラビテイション”を思わせる必殺技だが、その性質は真逆だ。摩訶不思議な空間により重力を失った爆炎は一瞬で消え去りプレアデスの足元にボールが転がる。
『な、なんとォォォォッ!?パワーアップした“ファイアトルネード”を止めたのはキーパーではなくDFだァーーッ!!!』
様子見程度の“ファイアトルネード”だったとはいえキーパーに技を使わせる事なくDFに止められた事実に雷門は驚きを隠せない。
「“まさかあの豪炎寺が…”というお顔をなされてますね。教えて差し上げましょう、我ら“レグルス”の防御力はエイリア1なのです。私からゴールを奪えるのはマスターランクチームのキャプテンのみ…と言えば分かるでしょうか?」
「なるへそ…“攻撃は最大の防御”ならぬ“防御は最大の防御”っつーわけか…。」
「雷牙、それはただの防御だ。だが俺のシュートをいとも容易く止められるDFがいるとなると奴らからの得点は容易ではないな…。」
「フッそういう事です。スターバッ!」
ボールを受け取ったスターバはヴィーナ、プルートーの順でボールを回し最終的にユニバにボールが渡る。
「今度こそ行かせない!“超アイスグランド”!!」
氷結の檻に閉じ込められたユニバは身動きが取れなくなり後は吹雪がボールを奪うだけだ。
その瞬間、氷結の檻に収容された筈の囚人は光の粒子と化しいとも容易く脱獄を成功させてしまう。
「“スターフォトン”!!!」
光の粒子と化していた肉体を再構成したユニバは悠々と吹雪の背後を走り去り、ボールを前線へ運ぶ。
『抜いたァーーッ!!!鉄壁のディフェンスを誇る吹雪を見た事も無い必殺技で突破したぞォォォッ!!!どうやらレグルスの強みは防御力だけではないようだァァァァッ!!!』
「フッ、もうちょっと骨があると思っていたけどなぁ!これじゃあウォーミングアップにもならねぇぜ!」
「へぇ?だったら俺と遊んでくれよぉ?」
ユニバの前に現れたのは鷹のように鋭い吊り目にバn…非常に独創的なモヒカン頭が目立つ少年…“孤高の反逆児”不動明王だ。
「誰かと思えばエイリア学園にも入れなかった半端者かぁ?テメェのような二流の相手をしている暇はねぇんだよ!」
「だったら試してみるかぁ?俺とテメェのどっちが強いかをよぉ!」
ユニバの正面に立った不動は彼の動きを的確に読み完璧にユニバの動きを封じる。
「チッ…!鬱陶しい奴だ…!」
不動のしつこさに苛立ったユニバは眩い光を発し全身を光の粒子へ変える。
「“スターフォトン*!!!」
それを待っていたと言わんばかりの笑みを見せると閃光に怯む事なく駆け出した。
そして鋭いスライディングを繰り出すとユニバは反応する事が出来ずにボールが奪われてしまった。
「なんだとッ!?“スターフォトン”は無敵の技の筈だッ!?」
「気づいてねぇのか?その技は発動する一瞬テメェ自身の視界も塞いじまうんだよ!こりゃあ傑作だぜ!馬鹿にしてた二流でも簡単に分かるような欠陥に気づいてねぇとはなぁ!俺が二流ならテメェはド三流だぜ!!!」
二流と言われた事への意趣返しにユニバをドが付く程の三流と評する不動。そのまま彼は単身で敵陣へと攻め込んで行く。
『これは凄いっ!たった1度技を見ただけで本人すらも知らない弱点を見抜くとはなんという洞察力の高さだァーーッ!!流石は鬼道有人にも匹敵すると言われた天才MFだァァァァッ!!!』
性格は最悪とはいえ鋭い観察眼で駆け引きを制した不動を角馬は褒め称える。
そして彼の実況を鬼道は複雑な表情で噛み締めていた。
「…やはり不動の事が気になるか鬼道。」
鬼道の表情に気づいた響木は彼に問いかける。
「…はい。確かに不動の実力は影山が目を掛けただけあって高い…だが真・帝国学園での試合の事を考えると素直に奴を認める事は出来ません…。響木監督…何故貴方は奴を助っ人に呼んだのですか…?」
鬼道の不満も尤もだ。不動は佐久間と源田を洗脳した挙句禁断の技を覚えさせ彼らの体を限界まで酷使させた…。
仲間達の機転によってなんとか救出に成功したがほんの少しでも歯車がずれれば佐久間達は今も病院のベッドにいただろう。
当然響木も彼がやらかした事は把握している。だが彼を試合に参加させたのには
『不動明王の参加。それが就任の条件です。』
“雷帝”と初めて顔を合わせた日。彼は自分も知らないエイリア学園の情報を提供した。
内容の殆どはにわかには信じられない物ばかりだったが内容そのものは筋が通っており寧ろそう考える事で今まで不可解だった謎の数々が腑に落ちた。
だからこそ響木はひとまず目の前の男を信じる事にした。
しかし響木の信任を得た男の第一声が上記の台詞だった。
『…一応確認するが不動明王とは愛媛で行方不明になったあの不動明王の事か?』
『ええ、その不動明王ですよ。ああご安心を、彼は今私の元でアルバイトをしてましてねぇ。許可さえくれれば明日には東京に来てくれますよ。』
『そういう事じゃない…。アンタもあいつがしでかした事を知らない筈が無いだろう?存在そのものが爆弾のような人間を入れればチームがどうなるか簡単に想像が付くだろう!』
だからこそ自分達イナズマイレブンはバラバラになった。奴が持つ底なしの闇を理解していながらも側に置き続けたから。
『2人…。その言葉の意味を貴方は理解していますか?』
『2人…。…!』
『2人』それは雷門が抱えている司令塔の数。それに対し試合を行うチームの数は『3』、ルールの都合上どれか1チームは司令塔無しで侵略者に立ち向かわなければならない。
『貴方も分かっている筈でしょう?どんなに監督が優れていても試合をするのは選手でしかない。チームには彼らに道を示す司令塔が必要なのだと。』
『くっ…。』
“雷帝”の言葉はサッカーの本質を的確に示している。如何に不動が問題児と言えど彼の才に匹敵する選手は全国…いや世界を見渡しても鬼道有人ぐらいだろう。
それを考慮しても不動は危険すぎる。1st雷門に入れれば風丸は彼を扱いきれず、2nd雷門に入れようものなら鬼道は彼への不信感でまともにプレーする事は出来ないだろう。
ならば残るは…。
『稲魂雷牙率いる3rd雷門…といった顔をしてますねぇ。』
『…そうだ。』
幸いと言うべきか3rd雷門には真・帝国学園との試合に出場していない選手が多く在籍している。
恐らく古参メンバーから彼の悪行を知らされているとは思うがそれでも他のチームに比べればマシな筈だ。
『ならば不動クンを入れるのは3rd雷門で結構です。それに…稲魂クンなら不動明王という暴れ馬を乗りこなせる…そう考えているのではありませんか?』
『ハハハ…ハハハハハッ!本当に何から何までお見通しなんだな!まぁいいさアンタの監督就任を認めよう。だが覚悟しておくんだな3rd雷門…特に稲魂雷牙はアンタが考えている以上にじゃじゃ馬小僧だぞ!アンタは怪物のリードを握る覚悟はあるのかい?』
『“怪物”ですか…。フフ…失礼、やはりこの二文字はいつ・どこで・誰から聞いても心地良い言葉です。ならばこれで交渉成立ですっ!共に侵略者達に見せてやろうではありませんか!人間の底力をッ!!!』
交渉成立し夜空に向けて高笑いをする“雷帝”の瞳に響木は強い既視感を感じてしまった。
「…以上が不動を3rd雷門に加入させた経緯だ。」
所々の詳細は伏せつつも加入までの経緯を説明し終えた響木。それを聞いた鬼道はまたしても複雑そうな表情をしていた。
「鬼道、お前の気持ちは良く分かる。俺達イナズマイレブンも影山の危険性を察していながらも放置していたからあのような悲劇が起こった…。だがこれまでの不動のプレーを見て分かった、奴は影山には決してなれない。お前も薄々察しているじゃないか?」
「…それでも俺は奴がしでかした事を許すつもりはありません…。それでも…今この試合だけは俺達の未来を奴に託します。」
それだけ言うと鬼道は黙り込み試合に集中する。その視線には悪魔の如き笑みを浮かべながら颯爽する不動明王が映っていた。
「ユニバに勝ったくらいで調子に乗るなッ!“アステロイド…」
プルートーがブロック技を放つ直前、不動は彼女の小さな胸にボールを渡す。
敵である自分にボールを渡すという前代未聞の行為に一瞬固まってしまうプルートーだがその直後に悪魔の右脚が炸裂する。
「邪魔だぁ!“極ジャッジスルー2”!!!」
ボール越しとはいえ彼女を殺しかねん威力と速度で連撃を喰らわせフィニッシュに彼女を顔面を蹴り飛ばした。
「ゲホッゲホッ…!!!このクソモヒカン…!可憐なレディの肉体を傷付けるなんて…!」
「あん?戦争に男も女も関係あるかぁ?そんなに怪我したくなきゃテメェの部屋でプルプル震えてるんだな!」
雷門には無い反則スレスレのプレーの数々でレグルスのディフェンスを突破して行く不動。
だが不動明王の真骨頂はこんなものではなかった。
「不動!こっちだ!」
プルートーが突破されても平常心を失わないレグルス達は冷静に戦況を分析し、現時点で最も脅威になる雷牙、豪炎寺、吹雪といったストライカー達へのパスコースを完全に塞いだ。
現在の不動に与えられた選択肢は単独での突破かマークが緩い選手へのパスかの2択である。
前者を選べば自分にシュートチャンスが訪れるが前に立ち塞がるのはレグルス1の巨漢DFサザン。プルートーのように“ジャッジスルー2”での突破は難しいだろう。
後者を選べば比較的楽に彼らをゴール前まで運べるだろうが自分よりも実力が劣るシャドウとマックスのシュートではDFの技で止められるのがオチだ。
進む先は茨の道、引いた先は骨折り損のくたびれ儲け。
どちらを選んでも自分の損にしかならない選択肢の中不動が選んだのは…
「そらよッ!!!」
「何ッ!?グワァッ!?」
不動はマックスのパス要求に応える事にした。だが協調性という言葉の対義語である不動が素直にパスを出す筈が無い。
彼が放ったのはパスとは名ばかりのシュートだった。まさかそのようなパスを送られるとは思っていなかったマックスは反応が遅れてしまい、彼の腹部にシュートが激突しボールは宙を舞った。
「ヘッ!隙だらけだぜ木偶の坊ッ!!!」
「な、なんて奴だ…!」
仲間を傷付けるというエイリア学園のチームでさえも禁忌としている行為に唖然としていたサザンは一瞬の隙が出来、不動に突破されてしまった。
『な、なんという事でしょう…!味方である筈のチームメイトすらも平然と傷付けるあまりに暴力的なプレー…!真・帝国学園の時もそうでしたがこの男の辞書には“仲間”の二文字は無いのでしょうかァ!?』
「…正直言ってドン引きですね…。これまで数多くの地球人を見ましたが貴方のような暴力的なサッカーは初めて見ましたよ。」
「暴力的ィ?分かってねぇなぁ…利用してやっただけさ!」
ケイワクの批判を一喝した不動はボールを頭上にあげ、手を左から右に動かす。それと同時に5つに増えたカラフルなボール達を高速回転させ空中で五連撃を放つ。
「“マキシマムサーカス”!!!」
5つのオーラが1つに融合し超加速を行う。不思議な色彩と化したボールは地面をバウンドしながら不規則にゴールへ向かって行った。
「“パラレルディメンション”!」
右手を突き出し世界の色彩を反転させる。ケイワクは真・帝国学園時に碌なシュートの記録が無い不動を侮っていたが、“ファイアトルネード”以上の圧力すら感じるこの技に無意識のうちに一筋の水滴が顔の上を流れた。
「グッ…!」
並行世界に繋がる扉に小さなヒビが入り出すがそこはエイリア最硬を誇るレグルスのGK。
自らの誇りにかけて点をくれてやるわけにはいかなかった。
「フンッ!!」
「チッ!」
『止めたァァァァッ!!!不動の新必殺技“マキシマムサーカス”でもケイワクの鉄壁の防御を破るにはパワーが足りなァァァァい!現時点の得点は互いに0対0ッ!一体どちらが堅固なディフェンスを突破して先制点を奪うのかァァァァッ!!?』
「なんなんだよ今のプレー…!あんなの雷門のサッカーじゃない…!」
仲間を踏み台に使うという傲慢にも程がある不動のプレーに風丸は不満の声を漏らす。
風丸だけじゃない、彼の悪行を知る人間は次々と彼に対する非難の言葉を口にする。
「やめろみんな!!今は俺たちがするのはブーイングなんかじゃない!雷牙たちへの応援の言葉だろ!」
「でも円堂!今の不動のプレーは酷すぎる!今のようなプレーが続いたら先に潰れるのは雷門が先だぞ!鬼道だってそう思うだろ!?」
風丸は鬼道の賛同を求めるが誰よりも不動を憎んでいるであろう鬼道は何故か答えない。
「…少なくとも俺は今のプレーは奴に100%非があるとは思わない。同じ状況なら俺も似たような事をしただろうな…。」
「鬼道…お前まで…!」
「お前達!円堂も言っているだろう!お前らの気持ちも分からんくもないが今俺達にできるのはブーイングでも不動への不満を垂れ流すのでもない、俺達の未来の為に戦っている戦士達への応援だけなんだ!それすらできん奴はこの場から立ち去れ!」
「監督…。すみません、少し頭に血が昇ってました…。」
響木の怒声を聞いた風丸達は幾分か頭が冷え次第に不動のブーイングは収まる。
しかし…
「おい不動!なんだ今のプレーは!?」
「あん?パスを寄越せっつったのはテメェの方だろ?それに応えてやったってのに文句を言われる筋はねぇよ。」
「あんなパスを出す奴がいるか!!!」
至極真っ当な怒りをぶつけるマックスに対し不動は屁理屈で答えマックスの怒りをヒートアップさせる。
元々マックスは不動とあまりソリが良くなかったが先ほどのプレーにより遂に怒りが爆発したようだ。
「やめなさいよ、お2人共。今は試合中であって喧嘩していい時間じゃねぇーんだぜ?」
「稲魂…!でも…!」
「わーてるって、アッキー今みてぇなプレーは他のメンバーには禁止。どうしてもやりたいなら俺にだけやれ。」
「ヘッ!そりゃあいいや!アンタには散々な目にあったからなぁ!ストレス発散のいい機会になるぜ!」
「不動お前…!」
仲間を仲間とも思わない不動の軽率な発言にマックスは怒りを覚えるが雷牙は特に気にしていない様子だ。
「なぁ稲魂…なんで君はそこまで不動の肩を持つんだよ…?」
「俺がアッキーの肩を持つぅ?いやいや冗談キチーぜ、なにが悲しくてあーんなロクデナシバナナモヒカンの肩を持たなきゃなんねーんだ?」
「えっ…?じゃあどうして…?」
「なんかよくわかんねーけどよぉ、アイツのサッカーは俺に新しい刺激を与えてくれる気がすんだよ。あーいや別に仲間を傷付けるのを肯定してる訳じゃねぇのよ?だけど俺ちゃんはいつも面白そうな直感に付いて行く!今回はそれがアッキーだっただけ!do you understand?」
「…なんかもういいや。ボク器用なのがアピールポイントだったけど君の思考だけはどう頑張っても理解できそうにないね…。」
「そりゃどーも。」
雷牙の思考を理解する事を諦めたマックスは頭も冷えた為大人しく試合に戻る。
一連の様子を遠くから観察していたアケボシはある事を思い付くとケイワクを通してチームに指示を飛ばす。
『皆さん、アケボシからの指令です。』
ケイワクはユニフォームに備え付けられた特殊な装置を用いてチーム全体の脳内に指示を送る。
それ以降明らかに試合の流れが変わった。
「任せたぞ豪炎寺!」
「させない!“アステロイドベルトV3”!!!」
「吹雪さん頼むっス!」
「そのボールは我らの物だ!“フォトンフラッシュ”!!」
もうじき前半戦の半分の時間が経過しようとする頃、先ほどまで互角に戦っていた雷門だったが、次第にボールが繋がらなくなる。
パスを出せばカットされ、漸く繋がったと思えば着地狩りされまともにボールを触る機会がなくなる。
たった1人を除いて…。
『不動だッ!!!またしても不動にボールが渡ったぞォーーッ!他のメンバーに一切ボールが渡らない状況で不動のみが繋がるこの異常事態ッ!一体何が起こっているのかァァァァ!?』
「ワザとだ…!奴らはワザと不動にだけボールを渡しているんだ…!」
「だけど不動の実力は奴らも知っている筈だろ?何故不動にだけボールを渡す必要があるんだ?」
普通に考えたらボールを渡す相手は主力より遥かに実力の劣るマックスやシャドウに定めるのが効率的である。
それにも関わらずレグルスは不動を選んだ。彼らの意図は鬼道ですらも把握する事ができなかったがギャラリーはすぐに彼らの意図を理解する事になる。
「…!そこだぁ!!!」
ディフェンスに囲まれた不動は絶体絶命のピンチに陥るが当然主力へのパスコースは塞がれている。
そのような状況でも不動は周囲を観察し大まかな情報と共に最適な行動を出力する。
そして不動は唯一パスコースの空いているシャドウに向けてパスを出したのだ。
『おおーーッと!?不動ここで今試合初めてのパスッ!これは一体どう言う風の吹き回しなのかァァァァッ!!!?』
「当たり前である…。ここでパスを出さねば司令塔とは言えん…。」
皆が不動のパスに驚く中鬼道と或葉だけは彼の意図を理解していた。
確かにこのパスが繋がればレグルスのディフェンスは一気に崩れ雷牙や豪炎寺にパスを回す事が可能になるだろう。
「クッ…!駄目だ…!追いつけない…!」
不動のパス精度はこの上なく正確だった。だが繰り出された速度はあまりに速く今のシャドウでは到底追いつけず、グラウンドの外に出てしまった。
「チッ!ちゃんと取れよ根暗野郎が!」
「お前こそ何処に蹴っているんだ…!」
せっかくのチャンスを不意にされた事に苛立つ不動はシャドウを責めチームに嫌な空気が流れる。
そんな中ギャラリー達は一連のプレーに違和感を覚えていた。
「なぁ鬼道…今のって…。」
「あぁ、シャドウの走力なら十分に追いつけていただろうな。」
「でもどうして…?」
「…。」
円堂達が一連のプレーを疑問に思う中でも試合は進んでいく。レグルススローインで試合が再開するとすぐさま不動はボールを奪い返す。
それを見越していたユニバも即座に不動のマークに付き進路を塞ぐ。
「おおっとここから先には行かせないぜぇ?」
「チッ!なら…!」
再び不動はパスを出すとそのコースにはマックスがいた。だがマックスもシャドウと同様に不動のパスに追い付く事が出来ずまたしてもボールはグラウンドの外に出てしまった。
「何やってんだ馬鹿共が!!!」
「今の乱暴なパスを取れるわけがないだろッ!!!そもそも雷門はお前だけのチームじゃないんだよ!」
先ほどの横暴なプレーに続いて傲慢なパスを連発する不動に対してシャドウとマックスは不満を爆発させ彼と口論になる。
「そうか…!不動は闇雲にパスを出していたんじゃないんだ!敵も味方も全員の動きを分かった上でパスを出していたんだ!でもマックスとシャドウは不動への不信感で普段通りの動きができないんだ!」
「恐らく主力はそれを分かっているんだろう、だがそれすらも見越したレグルスは敢えて不動に不満を抱く松野、闇野のマークを薄くする事で3rd雷門の信頼関係を壊そうと考えているのだろうな…。信頼が切れたチーム程弱いものは無いのだから…。」
完全にレグルスの掌の上で転がされている3rd雷門。まずは不動の問題を解決しなければレグルスに勝つ事など夢のまた夢だろう。
「今の雷門には“風”が必要だ。不信感という雲を晴らす大きな“風”がなければあいつらは勝つ事ができない…!」
「でもどうすれば…。」
ギャラリーにも不安が伝播する中、突如審判が試合を止める。
『おおっと!?3rd雷門、監督の要求によりポジション交代を行うようですッ!』
「ここでポジションの変更だと?」
「交代じゃなくてか?」
どうやら3rd雷門の監督“雷帝”は綱海をMFに上げる事に決めたようだ。それに伴ってMFから誰か1人がDFに下がる事になる。
綱海に変わってDFに下がって選手は…
『な、な、な、なんとォッ!!!まさかまさかの稲魂がDFに入ったぞォォォォォォッ!!!?互いに攻撃力が足りずに膠着状態の中稲魂をDFに入れる意味は果たしてあるのかァァァァッ!!!?』
「前線は頼みますよー綱海パイセン。」
「しゃあ!よくわかんねーけどボールを貰い次第バンバンシュートを撃てばいいんだろ?俺に任せとけ!」
下げられたのは中盤の要である筈の雷牙だった。
「稲魂雷牙をDFに…?一体雷門の監督は何を考えているんだ?」
当然のその衝撃はレグルスにも伝わっていた。だがケイワクによってすぐに沈静化される。
「何も不思議な事ではありませんよ。何もDFは守るだけが仕事ではありません。常に稲魂雷牙に警戒しつつも積極的に攻めに徹しなさい。」
『おおッ!!』
ケイワクの言葉により冷静さを取り戻したレグルスはこれまで以上に攻める。
やはり中盤の要である雷牙が下がったのは大きくいとも容易く突破されてしまう。
雷門のMF陣を突破したヴィーナの前に金色の怪物が現れる。
「天馬!ちょっちオメーの技ァ借りるぜェ!!!」
沖縄にいる弟子の名を叫ぶと緩急のある独特なスピードでヴィーナに接近し、射程範囲に入った瞬間雷牙の姿が消失する。
「“ワンダートラップ”!!!」
“ハンティングセンス”を彷彿とさせる新必殺技を用いてボールの奪取に成功した雷牙は力強い走りで攻め上がる。
単独では怪物を止められない事を理解しているアケボシだがある事を試す為に自身ではなくフリーズとクウルに彼の相手を任せる。
「貴様の相手は我々だ!」
「アケボシの手を煩わせる必要はありませんわ!」
FWでありながらもDF顔負けの防御力を持つ兄妹だが、雷牙は怯むどころか目を閉じた。
「貴様…!俺達を舐めているのか…!」
「その余裕いつまで保つのでしょうね!」
目を瞑りながらプレーするという自分達を舐めているとしか思えない雷牙の蛮行に兄妹は青筋を立てボールを奪わんとする。
何かを感じ取った雷牙は自らの勘に導かれるままにボールを蹴り飛ばす。
「馬鹿め!苦し紛れにシュートを放つとは愚かなり!」
だが兄妹は気づいていなかった。雷牙の行動の真の意味に…。
「DF!今すぐ
司令塔であるケイワクは雷牙の意図を察し指示を飛ばすが時既に遅し。
苦し紛れに放ったと思われていたシュートのコースにはマックスがトップスピードで走り込んでいた。
(速っや!で、でもこれくらいならなんとか取れる…!)
シュートと見間違う威力のパスに対して冷や汗をかきつつもなんとか受け取る事に成功する。
「何だとッ!?」
「通った!初めてパスが通ったぞ!」
ボールを受け取ったマックスは間髪入れずに縦と横に二連撃を入れる事で必殺技を放つ。
「“真クロスドライブ”!!!」
かつて無敗を誇った伝説のイナズマイレブンが使用していた必殺シュートが40年の時を得て復活する。
(ここでシュートだと…!?9番の実力では私からゴールを奪う事は不可能…!いや…まさか…!)
今までパスに徹していたマックスがシュートを放った事に違和感を覚えたケイワクは視線をボールから上空へ映す。
そこには灼熱の魔神と共へ飛翔している豪炎寺修也がいた。
「DFッ!!あれはシュートじゃない!パスです!至急ゴール前を固めなさい!!!」
「気づいたところでもう遅い!!“爆熱ストームG2”!!!」
ケイワクの指示も虚しく豪炎寺最強のシュートが凄まじい轟音と共に炸裂する。
不意を突かれたDFはブロック技を出す前に吹き飛ばされ残された砦はケイワクのみとなる。
「クッ…!“パラレルディメンション”!!!」
自分では止められないと分かっていながらもエイリアの戦士たる自分に“逃走”の二文字は無い。
ケイワクは今自分が出せる最高の技を用いて必死にゴールを死守しようとする。
それでも豪炎寺との力の差は歴然であった。
「グッ…!グァァァァァァァッ!!!」
並行世界に連なる牢獄すらも灼熱の爆炎には通じない。牢獄は一瞬にして砕け散り最後の砦すらも突破されてしまった。
筈だった…。
「何ッ!?」
ケイワクが敗れた直後、最後の砦を破った爆炎の前に現れたのは白金に輝く一番星だった。
『と、止めたァァァァッ!!!?な、なんという事でしょう…!豪炎寺渾身の“爆熱ストーム”がケイワクを破った直後…!今の今まで傍観に徹していたアケボシによってゴールを阻止されてしまったァァァァァッ!!!』
足の力のみで“爆熱ストーム”を止めて見せたアケボシはここからカウンターを始める…と思いきやボールを外へ出し試合を中断させる。
思ってもみなかったチャンスに雷門は一旦集まり次の作戦を練る事にした。
「すまない…。絶好のチャンスだったのに決められなかった…。」
「大丈夫だって豪炎寺!決めらなかったならしょうがねぇさ!次も気張っていこーぜ!」
「それにしても稲魂のパスには驚いたなぁー、目を閉じながらボクの方にパスを出すんだもん。」
「ヘッ!よく言うぜ、稲魂のパスは取っても俺のパスは取らねぇ癖によぉ。」
「なんだと〜!そもそも稲魂と不動のパスは全然スピードが違うじゃないか!」
「…本当にそうなのかな?」
不動の嫌味にムッときたマックスは彼に反論するが、吹雪はマックスの意見に対して反論を行う。
「どういう事なのさ吹雪…?」
「僕はまだ彼らのパスを受けていないけど不動君のパスと稲魂君のパスのスピードは全く同じに見えるんだよ。つまり松野君が稲魂君のパスを受け取れたって事は不動君のパスも取れるって事じゃないのかな?」
「そ、そんな事は…!」
「松野、お前ももう気づいているんだろ?不動のパスは決して取れないものじゃない、不動から来る不審感が邪魔しているだけって事くらいは。」
「くっ…!」
「…みんなちょっち俺の話を聞いてくれ。」
マックスが言葉を失っている様子を見た雷牙はいつになく真面目なトーンで仲間に呼びかける。
「アッキーが佐久間と源田にしでかした事は分かってる。俺だってコイツがしでかした事や乱暴なプレーを肯定してるわけじゃねぇ…だけど俺はそれでもアッキーと一緒にレグルス…そしてアケボシに勝ちてぇ!親父の技を悪ぃ事に使うアイツをぶっ倒してぇんだ!だから頼む!この試合だけはアッキーを信じてくれねぇか!?」
チームメイトは驚愕する。あの雷牙が…雷門1の変人である稲魂雷牙が…真面目な事を言って自分達に頭を下げているからだ。それも90度で。
そんな雷牙のこの試合に賭ける“想い”を火の玉ストレートでぶつけられたら拒否する事が出来るだろうか?いや出来るわけがない。
「〜〜〜!!!あーもう分かったよ!どーせ不動とサッカーをするのも最初で最後なんだ!こうなったら私情なんか捨ててやる!!」
「…俺も信じてやろう。だが不動…最後に言っておく。俺は別に根暗ではない…お前とは感性が違うだけだ…。」
雷牙の“想い”によりバラバラだった雷門の心が1つになる。
雷牙がポジションを変更して僅か1〜2分しか経っていないのにも関わらずあれだけ雷門に渦巻いていた不信感が完全に消え去った様を見ていたケイワクは何故カウンターのチャンスを蹴ってまで試合を中断させた意図を理解する。
「何の考えがあって試合を中断したと思ったら…アケボシ、貴方はこうなる事を予測していたのですか?」
「……。」
アケボシは参謀の質問に答えない。今の彼の視線は軽いジョークを飛ばし無邪気に笑う稲魂雷牙に奪われているからだ。
「ダンマリですか…。まぁいいでしょう、貴方がそうしたいなら私達はそれに従うまでです。」
先に折れたケイワクはチームに指示を飛ばし次のプレーに備える。
『さぁ前半戦も残り半分を切っています!稲魂がDFになった事で全く別物と化した3rd雷門にレグルスはどう対応するのでしょうか!?』
レグルススローインで試合が再開し、本気を出したレグルスはアケボシを中心としまるで閃光の如きスピードで攻め上がる。
それに対し雷門は不動の指示によりカウンターの構えを取り虎視眈々と得点のチャンスを狙う。
「フン、正面突破は無理と見てカウンターを狙っているのだろうがそんな小細工はレグルスには通用せん!!何故ならここで俺達が先制点を奪うからだ!!」
「いきますわよクウル!!」
DF陣を突破した兄妹は息のあったアクロバティックな動きで飛翔するとツインオーバーヘッドキックを放つ。
「「“双飛遊星弾ッ”!!!」」
兄妹のプライドが込められたボールは淡い閃光を浴びながら猛スピードでゴールへと向かう。
「速い…!でも“ムゲ…ッ!」
立向居が“ムゲン・ザ・ハンド”を放つ直前、まるで自身を食い殺さんばかりの殺気を感じ取り動きが一瞬止まってしまう。
その殺気の持ち主は当然…
『またしてもアケボシだァァァ!!!流星の如きスピードで仲間のシュートに追いついたという事はここから導かれる行動はただ1つゥゥゥゥッ!!!シュートチェインだァァァァッ!!!』
「“キングレオーネ”…。」
覇気の籠っていない声とは対照的にこの世のものとは思えない獅子の咆哮がグラウンドに響き渡る。
“双飛遊星弾”のスピードに“キングレオーネ”のパワーが加わった事で“カイザーレオーネ”すらも超える威力にまで跳ね上がる。
「クッ…!“ムゲン・ザ・ハンドォォォォォォッ”!!!!」
それでも立向居は怯まずに黄金の腕を出現させる。
だがパワーアップした“キングレオーネ”のパワーは先ほどの比では4本の腕では受け止めきれなくなる。
「グギギギギ…!!!」
なんとか耐えているがこのままでは先に立向居が潰れるだろう。
しかし雷門のゴールを守る自分はなんとしてもゴールを死守しなければならない。
ならばどうするべきか?答えは簡単だ、今の自分が止められないのならこの場で進化すればいいだけだ。
「ぐぐぐ…!うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
4本の腕が崩壊する寸前、立向居の背後から更に2本の腕が出現しボールを握り締める。
「馬鹿な!この土壇場で進化させただと…!?」
「雷門を…!イナズマ魂を…!舐めるなァァァァァッ!!!!」
土壇場で“ムゲン・ザ・ハンド”を進化させた事で進化した“キングレオーネ”を止める事に成功する。
「こっちだ立向居ッ!!!」
「はいッ!稲魂さん!」
絶好のカウンターチャンスを得た雷門は雷牙を中心に攻め上がる。当然レグルスは彼らの行き先を阻むが、ココロが1つとなった雷門の連携の前には敵ではなかった。
「おいアッキーッ!!!まさかオメーの本気はその程度じゃねぇよなァ!!!」
「だ〜か〜ら〜…俺の事をアッキーって呼ぶんじゃねェェェェェッ!!!!」
自身の黒歴史たる“アッキー”という渾名を誕生させなおかつそれを広めた雷牙に対し“怒り”を爆発させた不動は彼に向けて漆黒のオーラを纏ったパス…否ただのキラーシュートを放った。
ボールに込められた“怒り”の感情は雷牙への殺意と共に地面を抉りながら彼を追尾する。
だが雷牙は笑っていた。その笑顔には不動に対しての“憎悪”や“怒り”といった負の感情は込められておらず、不動とのサッカーを全力で楽しむ純粋な“喜”の感情のみが溢れていた。
「いいねぇ!いいねぇ!最っ高だねぇ!!!だからオメーを弄るのは面白れぇんだよアッキーィィィィィッ!!!!」
雷牙の走力を遥かに超えた不動渾身のキラーパス。
彼の本気に全力で応えるべく雷牙は“獅風迅雷”を発動し、限界を超えたスピードでパスに追い付き雷牙の渾身を付け加える。
「ハーハッハッハ!!!これが俺ちゃんとアッキーの友情パワー!!!」
「“ブラックドーン”じゃぁぁぁぁぁぁい!!!」
不動の“怒り”と雷牙の“喜び”が混ざり合った事で生まれたエネルギーの様子はまさに全てを引き摺り込む超重力の塊ブラックボールだ。
「クッ…!“パラレルディ…グァァァァァァァッ!!!?」
超重力の塊の前には別次元の牢獄も等しく無力でしかない。
『ゴーールッ!!!まるで永遠にも感じられた前半戦…!先に先制点を獲得したのは我らが雷門イレブンだァァァァァッ!!!』
念願の先制点の獲得に周囲ギャラリー、グラウンドのチームメイトは皆大声を上げて喜びと歓声を上げる。
「ナーイスパース、アッキー!!」
「…チッ、気安く話しかけんじゃねーよ。」
「でも楽しかっただろ?」
「さぁーてどうだか。」
雷牙の質問をはぐらし不動はそっぽを向く。しかし雷牙は見逃さなかった、口ではああは言っていても彼の表情がほんの少しだけ柔らかくなっていた事を…。
文字数1万字超えってバカじゃねぇーの?
冗談は置いといてレグルス戦はHEROSを書くにあたって絶対にやりたかった試合なので次回以降も文字数が多くなりそうっす。
〜オリ技紹介〜
パラレルディメンション
林属性のキーパー技。モーションは“時空の壁”と“リバースワールド”を足して2で割った感じ。
威力は“時空の壁”に匹敵するがケイワクの実力がネロに及ばない為豪炎寺レベルのストライカー相手はやや分が悪い。
スターライトロード
山属性のドリブル技。星の光によって相手の目をくらませその隙に突破するシンプルな必殺技。
スターフォトン
風属性のドリブル技。モーションは一星の“ブルー・スターライト”のコンパチ。