イナズマイレブンHEROS!!!   作:月兎タンク

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日曜に投稿すると宣言しといて数日も遅れる投稿者の屑。


星を喰らう獅子

「やっほー雷牙!久しぶり!…でもないか(・・・・・)。」

 

 素顔を晒したアケボシ…否、稲魂雷斗はまるで天使を彷彿とさせる笑みを浮かべながら最愛の弟との再会を喜ぶ。

 

 しかし弟は兄の目を見る事なく俯いたままだ。

 

「お〜い雷牙〜?もしも〜し聞こえてる〜?久しぶりの再会なんだからもっと喜ぼうよ〜!」

 

「‥ねぇ…。」

 

「えっ?なんtムグッ!?」

 

「俺は絶対ェに認めねぇッ!!!どーせ俺の動揺を誘う為に見ず知らずの誰かがライトの変装をしてんだろッ!!んなこすい真似なんかしないで正体を現しやがれッ!!!」

 

 死んだと思っていた兄が生きていて。

 挙句の果てにテロリストの一員となっていて。

 尊敬する父の形見の技を悪行に使っている。

 

 雷牙は怪物だ。その名に相応しい肉体と身体能力を持っている男だ。だが天は人に二物を与えない。

 怪物にとっての二物は“精神”だった。

 

 如何に常人を超えた肉体を持つ雷牙でも精神は年相応。そんな人間が僅か1分の間に川の氾濫の如く溢れるクソみたいな現実を受け入れる事ができるのか?

 当然答えは“No”だ。

 

 現実を受け入れられなかった怪物は全力で兄を名乗る凌駕者の化けの皮を剥がす為に純白のほっぺを全力で引き伸ばす。

 

 しかし手に伝わる肌の感触は明らかに作り物の類いではなく、正真正銘人間の皮膚のものだった。

 

(いしゃ)いよ雷牙〜!」

『うわ〜ん痛いよ雷牙〜!』

 

「ライ…ト…!」

 

 ほっぺをつねられて痛がるライトの姿が自分の知る兄の姿と重なる。

 もう反論のしようがない。声、反応、プレー…雷牙の目に映る事実の全てが目の前の男がライト本人である事を示している。

 

「やめろ雷牙!それは暴力行為だぞ!」

 

「豪炎寺…?オメー前にいた筈じゃ…?」

 

 前線にいた筈の豪炎寺が自分の前に現れた事で雷牙は初めて試合が中断されている事に気づく。

 ようやく現状を理解した雷牙は弱々しくライトの頬から手を離した。

 

「んもうっ!パパから何度も言われたよね?すぐに手が出る癖は治さなきゃ強くなれないって!」

 

「黙れ…!テメェが親父の言葉を語んじゃねぇ…!」

 

「プークスクス、パパのことを親父だなんてかっこつけちゃって〜!昔みたいにパピーって呼べばいいのに〜!」

 

「野郎…!」

 

「落ち着け雷牙!奴の挑発に乗るんじゃない!退場になってもいいのか!?」

 

「ッ…!」

 

 死んだ義父という最大の地雷を踏まれた雷牙は普段の冷静さが嘘のように怒り狂うが豪炎寺の一言によってなんとか落ち着きを取り戻す。

 

「…悪ぃ豪炎寺、ちょっと頭に血が昇りすぎたわ…。」

 

 雷牙はすぐに兄から背を向け振り返る事なく後衛に戻って行く。

 

「おお〜!やるね〜豪炎寺君!簡単に雷牙を大人しくさせるなんて、流っ石は雷牙の相棒だね〜!でも…」

 

 気性の荒い雷牙を宥める豪炎寺の手腕に賞賛を送るライト。だがその目は笑っておらず、心無しか周囲の湿度が上がっているように感じる。

 

「雷牙の本当の相棒はこのボクだよ。昔も…そしてこれからも。」

 

 ハイライトの無い瞳と同一人物かと疑いたくなるような低い声で弟の相棒は自分だと宣言するライト。

 

 常人ならばその声を聞いただけで気を失ってしまいそうな圧がかかっても豪炎寺は表情1つ変えずに答える。

 

「別に俺は雷牙を相棒とは思っていない、大切な友…そして仲間…ただそれだけだ。」

 

 怪物の相棒達は背を向け元のポジションに戻って行く。

 

『おおっと、ようやく試合が再開しレグルスのフリーキックから始まる模様です。前半戦の残り時間も残り僅か!雷門はこのままリードを保てるのか!?それともレグルスが得点するのか!?これは目が離せません!』

 

 フリーキックを蹴ったのはエースストライカーのクウルだ。ボール行き先は当然彼らのキャプテン、アケボシ…否ライトだ。

 

「“伝説のサッカーモンスター”稲魂ステラの息子か…。ヘッ!相手にとって不足はねぇなぁ!!!」

 

 それを見越していた不動は彼の実力を確かめる為にやや荒いチャージを仕掛ける。

 だが身長、体格共に恵まれていないライトは不動のチャージをまともに喰らっても1mmたりとも動かない。

 

 (チッ…!アフロディ以上に女みてぇな顔と身体つきの癖になんつー馬鹿力だよ…!?)

 

 華奢な身体からは想像も付かないライトのパワーに不動は内心舌を巻く。

 

「どうしたんだい?ボクからボールを奪うんじゃなかったのかな?」

 

「チッ!だったらこれでどうだ!」

 

 不動は“ジャッジスルー2”の要領で連続蹴りをお見舞いしボールを奪おうとする。

 当然直接蹴りが当たれば不動のファールだが彼の狙いはそこではない。増援が来る時間を稼ぐ事が彼の狙いだ。

 

 だが…

 

「ふ〜んその程度?付け焼き刃じゃボクからボールを奪えないよ〜。」

 

 ライトは超スピードを駆使して不動の蹴りを全て捌ききり、突破して見せた。

 そのスピードはアケボシとしてプレーしていた時の比ではない。

 

「チッ!やっぱ手を抜いてやがったな!」

 

「そりゃそうじゃん、最初から本気を出す選手はいないでしよ。」

 

 更に加速するライトの姿は閃光を超えこの世で最も速い粒子と名高い“タキオン”を思わせるものだ。

 その圧倒的なスピードは味方すらも寄せ付けずもはや試合はライトの独壇場となっている。

 

「ディフェンス!奴には絶対に1人で挑むんじゃねぇ!最低でも2人はマークに付け!」

 

 予想以上のライトの実力に流石の不動も焦ったのか珍しく嫌味0%の指示を飛ばす。

 

 しかし…

 

「そのボールを寄越しやがれェェェェェッ!!!アケボシィィィィィッ!!!」

 

 雷牙だけは彼の指示に従わなかった。怒りに燃える雷牙の耳には不動の指示が聞こえる事はなかったのだ。

 

「アケボシじゃなくてライトだよ〜!名前くらい呼んでくれたっていいじゃん!」

 

「やかましいっ!俺はテメーをライトとは認めねぇ!!!さっさとボールを…ッ!?」

 

 その瞬間、雷牙の動きが止まる。別に戦意を喪失したわけじゃない、まるで見えない何かに足を取られたかのように動けなかったのだ。

 

 (んだよコレ…!?動け…動けよ俺の足…!)

 

 雷牙の脳は歩みを止める足に対して何度も命令を送るが肉体はそれを拒否する。

 

『な、なんとォーーッ!?稲魂が突然動かなくなったぞォーーッ!!?これではどうぞ先に行ってくださいと言っているようなものだァァァァッ!!!』

 

 当然そんな調子でまともにディフェンスに入る事は出来ずにあっさりとライトの突破を許す。

 

「どうしちゃったの…稲魂君…?」

 

 ベンチの夏未は脚を止めた怪物を心配するが特段目立った外傷は無い。

 

「う〜ん…こりゃあ少しマズいかもねぇ…。」

 

 この中でただ1人、怪物の異変の正体を察した“雷帝”は珍しく冷や汗をかいていた。

 

 それでも雷牙が稼いだ時間は無駄ではなかった。ライトの前に残りのDFが集結し一斉に必殺技を発動する。

 

「これ以上先には行かせないっス!“超 ザ・ウォール”!!!」

 

「こうなったら破れかぶれだ!“旋風陣”!!!」

 

「二階堂さん直伝の“スピニングカットV2”でやんす!!!」

 

 一堂に集まった雷門のDFは青色の衝撃波でライトの視界を塞ぐ、当然ライトには通用する筈がないが、そこがDFの狙い。

 壁の先にいる木暮によってボールを奪うのが目的なのだ。たとえ彼らを避けてパスを出そうとしても壁山が出した岩壁によって完全にパスコースが塞がれている。

 彼らの連携はまさに“完璧”と呼ぶに相応しい。

 

「立向居の元には辿り着かせないっスよ!」

 

「うん!いい連携だね!でも惜しいなぁ…、平面的な思考じゃ“怪物”を抑えることはできないよ。こんな風にね!!」

 

 …そう確かに彼らの連携は完璧だった。

 だが1つだけ足りていないものがあったのだ。それは…

 

「なんて高さだ…!」

 

「ジャンプ力はバーン以上だぞ…!」

 

 彼らの連携の弱点、それは空中に逃げられるとDFにはなす術がない事だった。

 バーン以上のジャンプ力を見せつけたライトは下界にいる弟に向けて微笑みながら宣言する。

 

「見てなよ雷牙、ボクの…ボクだけの…ボクのための“レオーネ(・・・・)”を!」

 

 ライトは“カイザーレオーネ”を思わせる空中移動で幾度もボールを蹴り上げると昼間の青空に“獅子座”の軌跡が描かれる。

 そしてライトはある一定の位置まで移動すると獅子座の中で最も明るい星…“レグルス”を思わせる光を放ちながらボールを叩きつけた。

 

「“スターダストレオーネ”!!!」

 

 “星屑”の名を冠した獅子は宙を喰らいながら雄叫びをあげる。

 

「くっ…!“ムゲン・ザ・ハンドG2ッ”!!!」

 

 肌から感じる衝撃波により“スターダストレオーネ”の威力はシュートチェインをした“キングレオーネ”とは比較にならないものだと理解させられる。

 それでもゴールを守る立向居には“逃げる”という選択肢は無かった。

 

 6本の黄金の腕は星を喰らう獅子に怯む事なく力強くボールを捉える。

 

「グギギギギ…!」

 

 獅子の歩みは一向に止まる気配を見せず、次第に黄金の腕にヒビが入っていく。

 

「負ける…もんか…!」

 

「…流石は雷牙が背中を預けたキーパーだね、最後まで諦めないでその姿勢…雷牙が気に入ったのもわかるよ。でもね…」

 

 ダメ押しと言わんばかりにシュートの威力が増幅し黄金の腕は完全に粉砕され立向居の身体ごとゴールに叩き込まれた。

 

「まだまだボクには及ばないよ。」

 

 円堂大介が残した最強のキーパー技を完膚なきまで叩き潰したライトは敗者に興味はないと言わんばかりに背を向ける。

 

「へっへ〜ん!いい技でしょ雷牙!パパと君の“キングレオーネ”に憧れてずっと練習してたんだ〜!」

 

 立向居にかけた低い声とは対照的に明るい声色で弟に感想を求めるライト。だが兄の期待に弟が応える事はなかった。

 

 何故なら…

 

「雷牙…?」

 

 兄を前にした怪物は顔面から血の気が引き、息が荒くなり過呼吸となる。

 すると糸の切れた人形のように背中から地面に倒れた。

 

「ど、どうしたんでやんすか稲魂さん!?」

 

「た、担架…!担架をお願いするっス〜〜!!!」

 

 様々な混乱を引き起こした前半戦は怪物の眠りにより幕を閉じた。




ライトのキャラクターはスタレの三月なのかを意識してます。

〜オリ技紹介〜

スターダストレオーネ
属性:山
使用者:稲魂雷斗
概要:モーションは使用者が天高く飛び上がり獅子座の軌跡を描くと白金の獅子が出現し“キングレオーネ”を思わせる咆哮と共にシュートを放つといったもの。
その威力は“カイザーレオーネ”を優に凌ぐ。
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