「さあ…!決着をつけようぜ!!!」
「こい!雷牙!そして…豪炎寺君!!!」
雷牙と豪炎寺は“ファイアトルネードDD”の要領で左右対称に回転しながら天高く飛翔する。
最高到達点に達すると2人は完璧にタイミングを合わせツインシュートを放つ。
同時に背後に鎮座する“ロンギヌス”も屈強な右腕に携えた神槍を力強くライトに向かって投げつける。
「「“
放たれたシュートは爆炎とも豪雷とも異なる神々しい光の槍と化し見る者全てを魅了しながら目の前の野獣を狩らんと襲い掛かる。
先ほどの足し算の化身シュートとは比較にならない威力を前に流石のライトも軽い恐怖を感じたのだろうか。
ライトは0.1秒だけ目を瞑り一息を深呼吸をすると高らかに宣言する。
「ボクの左手が黄金に輝く!勝利を掴めた轟き叫ぶ!!!」
「何言ってるんだ?あいつ?」
突然意味の分からない台詞を言い出したライトにギャラリーは困惑していたがそれに答えたのは意外にも目金だった。
「あれは“平成ガッツ仮面シリーズ”の第11作目“スターダスト仮面”の決め台詞ですね。」
「“ガッツ仮面シリーズ”?」
「ええ、日本を代表する特撮ドラマですよ。もしかして知らないんですか?」
「…何か小さい頃に見たことあるような…。」
「特に“スターダスト仮面”は名作中の名作ですよ。化身技の名前が主人公の必殺技と同じ時点で薄々察していましたがどうやら稲魂君のお兄さんはかなりの特オタのようですね。」
『へー…。』
得意げに語る目金だったが、雷門イレブンのサッカーバカ共は余程特撮ドラマに興味がないのか気の抜けた返事を返す。
…取り敢えず話を雷牙とライトの決戦に戻そう。
「“スターダストブレイカァァァァァァァァ”!!!!」
“レグルス”はライトの動きにシンクロし黄金の毛で覆われた左拳を神槍に殴り掛かる。
“レグルス”の拳はまさに
元の化身達から数十倍にも強化された“ロンギヌス”の槍と対峙してもなお“レグルス”の拳は拮抗している。
「ぶち抜けェェェェェ!!!」
「グギギギ…!負けて…たまるかァァァァァ!!!」
雷門の“想い”そのものである“
ライトの“意地”そのものである“
それぞれ“矛盾”した矛と盾が織りなす攻防はまるで永遠のように感じられた。
だがこの世に永遠なんてものは存在しない。物語には必ず終わりが訪れるだからこそ美しいのだ。
バシュ
そして彼らの物語にエンドマークを打ったのは“拳”ではなく“神槍”だった。
「入った…。…いよっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
いち早く状況を理解した雷牙は雷鳴の如き声で自分と相棒の勝利を宣言する。
彼に続いて残りのチームメイトも歓喜の声をあげ雷牙と豪炎寺をもみくちゃにする。
「アケボシが破れただと…!」
「信じられない…!」
チームレグルスの選手達は2人がかりとはいえライトが真正面から破られた事に唖然としている。
彼らにとってライトはネロすら足元にも及ばないエイリア学園最強のGKなのだ。
その彼が点を許し逆転されてしまった。しかも今のレグルスには相手のキーパーを破れる必殺技は持っていない。
つまりもう逆転するチャンスはない。
希望の裏返しは絶望だとはよく言ったものだ。チームレグルスのメンバーは自分達に待ち受ける運命を想像し顔が血の気のない蒼白となっている。
「終わりだ…。俺達は…エイリア学園を追放される…。」
「…だる。」
「何、下を向いているんだよ?まだ試合は終わってないだろ?」
絶望に打ちひしがれるレグルス達に声を掛けたのは彼らのキャプテンであるライトだった。
皆の表情が死んでゆく中彼だけはまだ生き生きとしている。
「…お言葉ですがアケボシ…。もう我々に逆転は不可能です…。貴方の“スターダストレオーネ”すら雷門のキーパーには通用しない…。そんな状態でどうしろというのですか…?」
「そもそもだ…何故お前は平然としているのだ…!敗北した同胞達がどのような末路を送ったのか知らないわけがないだろう…!」
余程あっけらかんとしたライトの態度が気に入らなかったのだろう。クウルは青筋を立てながら上司でもあるライトに荒っぽく問いかけた。
だがライトはクウルの問いかけにさも当然かのようにこう答えた。
「え?だってまだ試合は終わってないじゃん。つまり相手はまだ“勝って”ないんだよ?それなのに“負けた”時のことを考えるなんてサッカーに対して失礼じゃない?」
「……は?」
ライトの答えにクウルは言葉を失ってしまう。…いや彼だけじゃない。他のレグルスメンバーもライトの言葉に唖然と何人かはドン引きしている。
「…つまり貴方はこう言いたいのですか?我々はまだ勝つチャンスがあると…?」
「まっ、そゆこと。」
「だが“スターダストレオーネ”は立向居勇気には…!」
「誰も“スターダストレオーネ”で点を取り返すなんて言ってないよ。」
「じゃあどうやって…!?」
「そりゃあ〜もう新必殺技しかないでしょ!」
『新必殺技…?』
「イエース!ほら!前々からジェネシスが完成させようとしてた
「まあ…噂くらいは…。」
ジェネシスが対雷門のために特訓しているという噂の必殺技…。その全貌は同ランクのレグルスにも知らされていないが3人で放つ連携技だと情報は彼らの耳に入っていた。
「それのチームレグルスバージョンをやるんだよ!そうすればきっと立向居君からゴールを奪えるはずだよ!」
「待て待て待て!つまり貴様はこう言いたいのか…!?この土壇場で3人での連携技を完成させると…!」
「無理ですアケボシ…!それはあまりにも大博打すぎます…!」
「できるさ。だってボクはそのために色々準備してきたんだから。」
「準備…?」
「ケイワク、クウルその鍵は君たちにある。」
「俺達に…。…! まさか…
クウルの脳裏に浮かんだのは3rd雷門との決戦1週間前にアケボシから指示された謎の練習メニューだった。
当時はその練習の意図は分からなかったが今のこの瞬間、全ての謎が点と点で繋がった。
「アケボシ…貴方って人は…一体どこまで
「…“一流は10手先の未来を想定しておくものだ。”パパがよく言ってた言葉。まあボクもここまで追い詰められるとは思ってなかったけどね。」
ライトは舌を出してテヘッ!と笑う。その態度と笑い方は若干腹が立つが今はその笑顔に救われる。
「…さてと行こうかみんな。雷牙に…雷門に勝とう!そして…みんなで
『応ッ!!』
今ここにチームレグルスのココロは1つになった。彼ら表情は雷門と試合をする前と比べると冷徹だった瞳に光が入り、笑み1つこぼさなかった表情は幾分か柔らかくなっている。
彼らに相対する雷門イレブン達はその変化を肌で感じ取っていた。
「気をつけろ!奴らは何かを仕掛けてくるつもりだ!」
『はい!』
レグルスはキックオフ早々全速力で走る。その姿にはもう余力1つ残さないという意地を感じられた。
「行かせない!“超アイスグランド”!」
一番槍に吹雪のアイスグランドがクウルを捉えるがクウルは身体が凍る直前にボールをヒールリフトする事で後ろで控えていたフリーズにパスを繋げる事に成功する。
「ケイワク!」
「ヴィーナ!」
「ユニバ!」
雷門の必殺技に対してレグルスは巧みなパス回しで対処していく。
互いに体力の限界が見えているが現時点でのチームの総合力は僅かにレグルスが上回っている。
その原因はやはり豪炎寺の事実上のリタイアが大きいだろう。なんとか化身合体に成功した豪炎寺だがその代償は大きくもうノーマルシュートを打つ事すら難しいほど消耗していた。
それでも雷門は持ち前の根性でなんとか対応する。
「…今です!アケボシ!」
だがレグルスの方が1枚上手だったようだ。ゴールから飛び出したライトにボールが回ってしまう。どうやらライトはギリギリタイミングを見計らい不動の意識が緩む瞬間を狙っていたようだ。
「これ以上先には行かせねぇぞライト!」
「悪いけど通してもらうよ雷牙!」
雷牙は最後の力を振り絞りライトからボールを奪おうとするがライトは雷牙の一瞬の隙を突くと地面に稲光を描いた。
「んだと…!」
「“イナビカリステップ”!」
まさかの掟破りの“イナビカリステップ”により遂に雷牙すらも突破されてしまった。
しかも雷牙は今ので体力が切れライトを追いかけられない。
「“超 ザ・ウォール”!」
「“スピニングカットV3”!」
「“真 旋風陣”!」
終盤の砦であるDF達の必殺技が次々とライトに襲い掛かる。その時ライトの身体から大量のオーラが放出され英雄の姿を形成する。
「邪魔だよ!」
『グァァァァァァァ!!!』
ライトは化身を発動し強引にDF達を吹き飛ばした。しかし今の化身は最後の力を振り絞って発動したようでDFを吹き飛ばした後は形を保つ事ができず一瞬で飛散していった。
「今だよ!ケイワク、クウル!」
「「応ッ!」」
序盤に脱落する事で雷門のマークから外れていたケイワクとクウルはライトの側に駆け寄り最後の賭けに出る。
「ハァ!」
初めにライトがケイワクに向かってシュートを放ちケイワクはそれをクウルのいる方向へ蹴り返す。
「ウォォォォォ!!!」
クウルは全力でボールを更に上空へ上げ自身も飛翔する。
「これがボクたちがジェネシスに対抗して作り出した必殺技!」
最後にケイワク、ライト、クウルの3人がトリプルシュートを放つとボールに凄まじいエネルギーが放出されまるで巨大な隕石の如き様相と化す。
「「「“ビックバン”!!!」」」
宇宙誕生の大爆発の名を冠した必殺技が立向居へ襲い掛かる。最早その光景はサッカーという枠組みを超えて世界の終焉さえも思わせる厳かなものとなっていた。
世界の終焉に対し我らが
答えはもう決まっている。
「“ムゲン・ザ・ハンドG4”!!!」
更に自身の壁を破った立向居の技は神々しさを増し8本の黄金の腕がビックバンに立ち向かう。
だがその威力は進化した“ムゲン・ザ・ハンド”を持ってしても簡単には止めれない。
「グッ…!ウォォォォォ!!!」
立向居は天に向かって雄叫びをあげる。すると彼の背後から更に4本の腕が伸びボールを鷲掴みにする。
「…立向居君、キミは本当に凄いよ。たった1人で…ここまで頑張るなんてね…。きっとキミならいつか必ずボクや円堂君を超えるキーパーになれるだろうね…。でも…」
刹那“ムゲン・ザ・ハンド”の腕に亀裂が入る。世界で最も硬い鉱物であるダイアモンドであって1度亀裂が入れば容易く粉砕される。それは神の手であっても同じだ。
「その
「グァァァァァァァ!!!」
“ムゲン・ザ・ハンド”を粉砕した“ビックバン”はゴールネットを激しく揺らす。
『ご、ゴーール!!!な、なんということでしょう…!雷門が逆転したのも束の間、アケボシの新必殺技により再び同点へと戻ってしまったァァァァ!!!互いに満身創痍の今、雷門に逆転できる手段は残っているのでしょうかァ!?』
「クソ…!!!あと少し…!あと少しで勝てたのに…!」
雷牙と豪炎寺がとってくれたリードをフイにしてしまった立向居は悔しさのあまり腫れ上がった拳を何度も地面に叩きつける。
「やめろ立向居!」
「ッ!稲魂さん…。」
「苛立つ気持ちは分かるが取られたもんはしょうがねぇ!地面に叩きつける力は残り時間にとっとけ!」
「は、はい…!」
立向居を叱責した雷牙は時計に目をやる。残り時間はあと3分、両チームとも満身創痍ではあるが自分は化身を使えず、豪炎寺は動けない今得点は不可能だ。
となると雷門に与えられた選択肢は引き分けに持ち込む為に後方でボールを回し試合を終えるだけだ。
「……。」
そうすれば武力による侵略は回避できるし何よりここまでの頑張りは皆が認めている。たとえこの選択をしても雷牙達を非難する者は誰1人いない。
それが最も合理的な判断なのだ。
…本当にそうか?
確かに未来を守る為なら躊躇なく合理性を選ぶべきだ。
この試合には何億という人の未来がかかっている。
だが俺は一体何なんだ?
お国のために命を懸ける軍人か?
街の犯罪から市民を守る警察か?
それとも弱きを守り悪を挫く
違うだろーが。
俺はサッカープレイヤーなんだぜ?
俺はいつだって“勝つ”ためのサッカーをしてきた。こんな熱い試合を引き分け…ましてやしょうもねぇやり方で終わらせるなんて絶対に嫌だ。
世間は俺のことをエゴイストだと非難するだろう。
それがどうした?
命と誇りを懸けて戦ったこともねぇヤツの言葉を投げつけられてもそれが何になる?
まあ色々言っちまったが要するにだ。
俺はまだ“勝つ”ためのサッカーをする。それは…オマエもだろ?ライト?
雷牙の想いが届いたのか、それともライトも同じ想いに至ったのかは定かではない。だがこれだけは事実である。
ライトはキックオフと同時に全てのフィールドプレイヤーをフィールドのサイドに移動させたのだ。
このフォーメーションが意味するのはただ1つ。
ライトは望んでいるのだ。最愛にして最高の弟と1対1で決着をつける事を。
「ククク…ハーハッハッハッ!!!本っ当に最っ高だぜぇライトォ!!!さァ…!始めようぜ…!決戦を超えた決戦…超最終決戦をよォ!!!」
♢
『今日から家族の一員になるステラだ。仲良くしろよ?』
『よろしくねー。』
“なんだこの鈍臭そうなヤツは?”
これが私が初めてステラを見た時の第一印象だ。
人を見た目で判断してはいけないとはよく言うがヤツに関してはその次元を超えていた。
少女を思わせる可憐な顔、到底サッカーができるとは思えない華奢な身体つき、そして見てるコッチの調子が乱れる温厚な雰囲気。
以前父が近所で凄い才能を持つヤツを見つけたと興奮して私に語っていたが、それがこんなサッカーに向いてなさそうな人間とは夢にも思わなかった。
だが私はすぐに分からされた。父の言葉は本当だと言う事に。
私とステラが初めて共に地元の強豪サッカークラブと試合をした日、私は目の前の光景が現実だと受け入れられなかった。
数百年前に確立された“気”の概念とサッカーを融合させた超次元サッカーは出鱈目なプレーが連発されるがステラのプレーはそんな次元ではなかった。
ヨーロッパでも有名なクラブチームの一軍選手でさえも彼には歯が立たなかった。
まだ13歳にもかかわらず大人と見間違う体格の選手に力勝ちする圧倒的なパワー、私が机上の空論とバカにしていたタクティクスをいとも容易く実現させる身体能力、まるで空から盤面を見ているのかと錯覚するほどの空間把握能力。
世界最強だと思っていた父を超える能力を持った人間がここにいたのだ。
それからの活躍は…もう語るまでもないだろう。
ヤツはまるで宇宙が膨張する如きスピードで急成長を重ね瞬く間にヨーロッパ最強の少年サッカープレイヤーとなった。
16の時、私達は日本に帰国するとその年にステラは無名のサッカー部を高校サッカー界の頂点にまで押し上げた。
そしてプロ入り後は止まらない活躍を続け遂にはサッカー協会から“最強”の二文字を授かるまでになった。
…だが“怪物”の最期はあまりに呆気ないものだった。
『“怪物”死す!?イタリア行きの旅客機山間部に墜落!』
あの時の衝撃は今でも忘れない。ある可能性が脳裏をよぎった私は急いで影山さんやオーナーに事故の関与を問い詰めたが彼らは関与を否定。
その後の調査でもステラ一家の命を奪った事故は偶然だったとの結果が出た。
あの日雷牙が熱を出して生きながらえていた事は私にとっても不幸中の幸いだったがそれでも“怪物”の血が途絶えた事は残念でしかたがなかった。
だからこそ。研崎クンから連絡を受けた時は驚いた。
まさかステラの息子があの事故から生きていたとは思いもしなかったから。
しかしその代償は大きかったようだ。
アレだけステラそっくりだった容姿は事故の火災により見る影もなかった、おまけに記憶も失っており事故以前の事は何1つ覚えていない様子だった。
特にサッカーに対しては強い忌避感を持っていたようであの瞬間、私は“怪物”の血筋は全滅したのだと悟った。
だが何故か彼は雷牙の前に現れた。それも
私は直感した。これはメッセージなのだと。私を表舞台に引きずり出すための無言のメッセージだと。
ここで無視をしてもよかったが恐らく私の中にはまだ微かに残っていたのだろう。“怪物”の血がまだ途絶えていない希望が。
そして今日確信した。
喜べステラ。あの子達は間違いなくオマエの息子だ。
♢
「“オーバーサイクロン”!!!」
「“ゴッドハンド・レオーネ”!!!」
雷牙は手始めに速度に優れる“オーバーサイクロン”での得点を試みるが“ゴッドハンド・レオーネ”に呆気なく弾かれる。
それでもチームレグルスにはこぼれ球を拾う選手はいない。もうこの場は雷牙とライトだけのステージなのだ。
「ボクはずっとキミに憧れていたんだ!強くて!優しくて!いつどんな時でもボクを守ってくれる…そんな
ライトはずっと閉じ込めてきた雷牙への想いをぶちまける。彼の瞳にはほんのり涙が浮かんでいる。
「ああそうかよ!だったらさっさとそのヒーローのためにさっさとゴールを開けてくんねぇかなぁ!!!」
雷牙は“イナビカリブレイカー”を放ち今度は正面からの突破を試みるが“マジン”の左手にあっさりとボールが収まる。
「…でもボクは…!ずっと弱くて…!泣き虫で…!せめてキミのお兄ちゃんとしてふるまおうとしたけどそれもできなくて…!」
ライトは涙を流しながら自身の後悔を語る。
だがそれが雷牙の地雷だったのだろう。
アレだけ笑顔で満ちていた雷牙の表情は“怒り”によって埋め尽くされる。
「…っざけんな!!!何が弱いだ!何が泣き虫だ!何がお兄ちゃんになれなれなかっただ!一体…テメェの優しさが何度も俺のココロを救ってくれたと思ってやがる…!」
雷牙にとってライトは“弱虫”でも“泣き虫”でも…ましてや“兄失格”でもなかった。
「…えっ?」
雷牙は初めて涙を見せた。家族との別れ以降味方にも敵にも見せなかった涙をだ。
「俺が親父に連れられて稲魂家に行く時…俺は心細かった…!血の繋がってねぇ家族に馴染めるのかってな…!だが親父…お袋…そしてライト…オメーは俺を本当の家族のように接してくれた…!それがどんなに救われたか分かってねぇのか…!?」
そのまま“怒り”をぶつけるがごとく最大級の“カイザーレオーネ”を放つ。
だがその一撃すらも
「ねぇ雷牙。」
「…んだよ?」
「“稲魂雷斗”はキミにとって最高のお兄ちゃんになれたかな…?」
「…ああ。最っ高の兄貴だった…!」
「…そっか、…本当に良かった。」
彼の言葉を聞いた兄は涙を拭い弟にボールを渡す。ボールを足元に置いた弟は大きな深呼吸をすると力強い眼差しで兄に宣言する。
「これで最後だライトォォォォォォ!!!」
「勝負だ!雷牙ァァァァァ!!!」
正真正銘最後の決戦。
雷牙は走る。彼の肉体に気高き王者の魂を宿しながら。
目にも止まらぬスピードでボールに二連撃を叩き込むと高らかにその名を叫ぶ。
「“神 キングレオーネ”ェェェェェェェェ!!!」
“神”の領域へと達した“王者”の獅子は虹色の光を浴びながらボールを追いかけ咆哮をあげる。
その姿はまるで何かを祝福しているかのように感じられた。
「“雷・トーガ”!!!」
ライトは背後に2人の“マジン”を呼び出す。片方は最愛の
2人のマジンは互いの左手・右手を重ね獅子の咆哮を止めんとする。
如何に“神”の領域に到達した“キングレオーネ”でも元の技の威力は“カイザーレオーネ”にも劣る。
“カイザーレオーネ”すらも止めてみせた“雷・トーガ”ならば十分に止められる筈だ。
しかし…
「グギギギ…!」
一向に威力が弱まる兆しが見えない。それどころか時間が経つ度に威力が増している。
「ボクは勝ちたい…!雷牙に…!ボクが憧れた…ヒーローに…!勝ちたいんだァァァァァ!!!」
その時だった。
ライトは雷牙を見た。
何故彼を見た理由はライト自身も定かではない。
だが確かに彼は見たのだ。
雷牙の姿が父の面影を宿す瞬間を。
「パパ…?」
その瞬間、マジン達の肉体は崩壊する。それでもライトは諦めずにノーマルキャッチでシュートを止めようとするもののそれすら叶わずに吹き飛ばされた。
「ハハハ…やっぱり…本当に凄いよ…、雷牙は…。」
ピッ!ピッ!ピッーーッ!!!
ボールがゴールラインを割ったと同時に審判ホイッスルが三度鳴る。その笛が示す意味は試合の終了。
そしてスコアボードに表示されている点数は4対3。
どちらが勝ったのかは言うまでもないだろう。
「勝った…!俺たち…!勝ったんですね…!」
『いよっしゃぁぁぁぁぁぁあ!!!』
ギャラリーがチームメイトが実況が。各々が勝利の喜びに沸く中、雷牙は静かにそして力強く呟く。
「…あばよ。俺のマイベストパートナー…。」
全ての力を使い切った雷牙はその場で寝転がる。冗談抜きで鼻くそを穿る元気すらない。
だが細胞全てで感じる勝利の充実感は今まで感じた事のないまるで一度死んで生まれ変わったような感覚だった。
「随分くたびれたようだな。」
「ヘッ、オメーも人の事言えねーだろーが豪炎寺。」
豪炎寺は雷牙に向けてサムズアップを行う。それを見た雷牙はやれやれと微笑み言葉ではなくサムズアップで返す。
長きに渡って繰り広げられた兄弟の戦いはここに終結した。
ライトの初期設定って性自認♂のお兄ちゃん(♀)だったんですよね。けどイナイレってシスコンめっちゃいるけどブラコンはあんまりいないよねってなったんで設定変更して弟大好きの男の娘になりました。