プラント・クエタで1人の女性がタブレットを見つめている。
プロスペラ。彼女はエアリアルのプログラムを操作した後、学園を立ち去り、プラント・クエタに来ていた。
『ぐおおおおおおお!?』
タブレットからウェイドの叫び声が聞こえる。
エランとウェイドの決闘。
あの時のデータログがプロスペラの元に届くように、プロスペラはエアリアルのプログラムに手を加えていた。
そして、更にもう一つ。
「素晴らしい…素晴らしいわウェイドさん…」
プロスペラが画面を見て言葉を零す。
「エアリアルに自動的にパーメットスコア6を発動させるように設定…更にそのパーメットが通常通りパイロットに流入され、負荷を与えるようにしたというのに…」
プロスペラの画面に、ファラクトのコックピットに移るウェイドの姿が見える。
「貴方は突然のパーメットスコア6の負荷にも耐えて再生してみせた…そして…機体の運用方法も…」
プロスペラが映像を巻き戻す。
エアリアルが高速機動でファラクトのコラキを回避しながらビームサーベルでコラキを切り落とす場面が映し出される。
「スレッタにはできない運用方法…自身の再生能力にものを言わせた高速機動を用いた接近戦主体の戦い方…逆にGUNDビットの操作はお粗末みたいですけど」
プロスペラは機体を収める格納庫に目を向ける。
「彼に必要な機体はエアリアルではない…急いで準備しないといけないわ…」
プロスペラの前に一体のモビルスーツの姿が現れる。
「彼に…"神”に相応しい機体を」
目の前に現れた機体はガンダム・キャリバーン。
かつてオックス・アース・コーポレーションとヴァナディース機関が開発した試作機。
記録の全てを抹消し、封印されたはずの機体の姿があった。
舞台は変わり、アスティカシア学園。
デッドプールことウェイド・ウィルソンがミオリネの温室の前でグエルとラウダの二人と集まっていた。
ラウダがウェイドが用意したコマのような物を摘み上げる。
「これは?」
「これはドランダガー3-60HT。ヘルズチェインデッキセットとドランダガーデッキセットを組み合わせることで攻撃時間を増やしてオーバーフィニッシュを狙う機体だ」
「???……じゃあ、これは?」
「こっちはヘルズチェイン4-60R。さっきの2つのデッキセットを別に組み合わせたスピンフィニッシュを狙う機体だ」
「色の違いしか分からねえ…」
グエルがウェイドの用意したコマのような物を眺めながら呟く。
すると温室からミオリネが呆れた顔で現れる。
「アンタら人の温室の前で何やってんの…」
「いや、この若い世代二人をこれから起こるかもしれないホビー展開に巻き込もうかなって…」
「絶対起こらないから片付けて」
その時、一同の端末から着信音が鳴り響く。
グエルが画面を見る。
「ベネリットグループのコンべーション・パーティの招待状か」
「兄さんは参加するのかい?」
ラウダの問いにグエルは首を振る。
「今の俺は決闘に2回も負けて親父の信用を損ねてる。とてもパーティに出る気にはなれねえよ」
「そうか。でも、父さんもきっと兄さんの事を分かってくれるはずだ」
「そうだといいけどな」
グエルが自嘲気味に笑う。
ミオリネがそんなグエルの様子を見てると、温室からスレッタが出てくる。
「ミオリネさん。トマト、結構収穫できましたよ」
「ありがと。でもチョット多いわね。アンタらも食べる?」
ミオリネがグエル達に声をかける。
「いいのか?」
「アンタ達も最近嫌がらせとかしてこないし。トマトくらいなら食べさせてもいいわよ。無許可は駄目だけど」
「あ、アハハ…」
未だに勝手にトマト取られた事を根に持つミオリネに思わずスレッタが苦笑する。
そして、その勝手にトマトを取ったウェイドはというと
「いいね、パーティ」
『ん?』
「俺ちゃん行く!このパーティ!事業開発する!!」
『え?』
周りの反応をよそに一大決心していた。
後日、スレッタとミオリネはドレス姿でコンべーションパーティに参加していた。
「まさかアイツの付き添いになるなんて…」
「あ、アハハ…」
ミオリネはウェイドの事業開発の助手を任されて参加していた。
ウェイドの事業開発の目的が借金返済のため、更にその借金がエランの治療費だった事を知っているミオリネは断る事ができなかった。
スレッタもウェイドがエランを助けてくれた事には感謝しており、パーティに参加を希望したところ、ミオリネにドレスを着せられた。
「それで、ウェイドの奴はどこに…」
「あ、あそこ…!」
スレッタが指さした方向にはバーテンダーとウェイドがいた。
赤いコスチュームが完全に浮いており、周りのパーティ参加者がヒソヒソと声を上げる。
しかし、ウェイドはそんなことを気にせずにバーテンダーにカクテルを頼んでいた。
「オレンジジュースとパイナップルジュース、ピンクグレープフルーツジュースとグレナデンシロップでカクテルを作ってくれ」
「ふざけるな。絶対作らないぞ。アンタがカクテル名を大声で言えるなら作ってやる」
「くそっ!ピンク・プッシーとか間違えても言えるかよ!」
ミオリネの顔が引き攣る。
「あの空間に入りたくないわ…」
「でもウェイドさんと打ち合わせしないと…」
「知り合いだと思われたくないのだけど…」
ミオリネがため息を吐いた時に声がかかる。
「おや?君たちも参加してたんだね」
金髪で色黒肌の男性。スレッタも何度か決闘の際に見かけた人物。
シャディク・ゼネリ。
決闘委員会の筆頭で、グループ内御三家グラスレー社CEOの養子の人物だった。
「新事業に興味がお有りで?」
「別に。向こうにいる男の付き添いよ」
ミオリネが軽くシャディクをあしらう。
二人は昔からの腐れ縁であり、多少は口を開ける仲だった。
しかし、シャディクはミオリネがウェイドの方を指した途端、目を険しくする。
「変わったね、ミオリネ」
「は?」
「以前の君は他人のために動くことはなかった。君を変えたのは、その水星ちゃんかな?それともウェイド・ウィルソンかな?」
「さあ?でも、貴方も話してみれば分かるんじゃない?丁度グラスも空いたから、バーテンダーにグラス返しにいけるわよ?」
ミオリネが空になったグラスをシャディクに渡し、スレッタとその場を去る。
「ウェイド・ウィルソン…か」
シャディクは自分のグラスの飲み物を飲みながら一人呟いた。
一方、ウェイドは未だにバーテンダーとカクテルについて話していた。
「カルーアとベイリーズ、ホイップクリームって組み合わせだけは素晴らしいと思うんだよ、俺」
「出来上がるカクテルは下ネタだけどな。挑戦してみるか?」
「いや、やめておこう。こんなパーティ会場でブロウジョブはレベルが高すぎる」
そんなウェイドに一人の人物が近づく。
「バーテンダーと何をくだらない話をしてるんだ、君は?」
「は?トニー?」
ウェイドの目の前に現れたのはトニー・スターク。
軍事企業であるスターク・インダストリーの社長であり、天才的な発明家でもある。
ヒーロー、「アイアンマン」として活躍しており、現在、ウェイドに頼まれてエランの治療を担っているはずの人物だった。
「なんでアンタがここにいんの?エランくんは?」
「現在、経過観察中だ。君にどうしても話したい用があってね。それにこちらの企業形態も知りたかったところだったから、一事業家として参加させてもらった。」
「そこら辺、ガバガバ設定のSSだから融通効くよね。それで俺ちゃんに話したい事って?」
「君の提供したデータとエランの身体データを見て気づいた事がある。通常なら過剰なパーメットの流入は肉体が負荷に耐えきれず崩壊し、死亡する。だが例外の場合、つまり君のような再生能力などで肉体の許容量を超えるパーメットを流入された場合、身体に別の影響が出る事がわかった。」
「へ?それ、どういうこと?」
「肉体にある程度のパーメット流入への耐性ができるんだ。これは肉体の許容量を超えるパーメットを流入しないと得られない。つまり現状、君が唯一パーメットの流入に耐性を持った身体を有している事になる」
「それは素晴らしいお話ですわ」
突然、トニーの背後から女性の声が聞こえる。
声の方に振り向くと、そこにはヘッドギアを頭に装着した女性、プロスペラが佇んでいた。
トニーが柔らかな雰囲気で話しかける。
「これはすまない、レディ。貴女の存在に気付かず、つまらない話を聞かせてしまったようだ」
「どうも、ミスター。つまらないなんてとんでもありませんわ。大変興味深い話です。私、ウェイドさんには期待しておりますもの」
「ねえ、ちょっと。俺ちゃんに過剰な期待と勝手な設定入ったけど大丈夫?作者風呂敷たためる?」
三者三様の反応をしたところで、突然会場が暗くなり、ステージにライトが照らされ始める。
そのステージの中央にはスレッタがいた。
会場内に音声が響き渡る。
『これで確定しました。エアリアルは、ガンダムです!』
思った以上に長くなったので次回に続きます。