DEADPOOL × 水星の魔女   作:田村任三郎

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第11話

会場内に声が響きわたる。

 

『これで確定しました。エアリアルは、ガンダムです!』

 

声の持ち主はニューゲン。

ペイル社は合議制で経営されており、ニューゲンはカル、ネボラ、ゴルネリの4人からなる共同CEOの一人だ。

そして、その4人に囲まれながら中央にいるのはスレッタ・マーキュリーの姿だった。

 

『ご説明します。弊社のモビルスーツ、ファラクトがGUNDフォーマットを使用していたと、決闘委員会、及び弊社監査部門からの調査で発覚しました』

 

「おいおい、スレッタちゃん。赤いキツネとコラボしたからって目立ちすぎだろ」

 

「なんだ、いい大人が寄って集って子供を取り囲んで。スマートじゃないね」

 

ウェイドとトニーが口々に呟く。

ステージ上のスクリーンにエアリアルが映し出される。

そして、

 

『ぐおおおおおおお!?』

 

「へ?」

 

ウェイドの叫び声が会場内に響き渡った。

 

『ご覧の通り、エアリアルはファラクトと共鳴現象を起こしています。これはGUND技術が相互干渉した事によって発現するもの』

 

「いや、ご覧の通りじゃないでしょ、あのバアサン。なんで俺ちゃんの悲鳴をお茶の間にダイレクトで流しちゃうの」

 

『ガンダムに反応するのはガンダムだけ』

 

「しかも出演者である俺ちゃんに断りないし。何故かステージに立ってるのはスレッタちゃんだし」

 

『つまりエアリアルはガンダムに相違ないのです!』

 

「ねえ、トニー。これ俺ちゃん訴えたら勝てるかな」

 

「すまない、少し黙っててくれないか」

 

トニーに手で制され、ようやく口が止まるウェイド。

その間も事態は深刻化していく。

 

「違います!エアリアルはガンダムじゃありません!」

 

「ガンダムの製造、所持はカテドラルの協約違反だ。ペイルはこの責任をどうとる?」

 

スレッタの言葉が一人の男に遮られる。

男の名はヴィム・ジェターク。グエルとラウダの父であり、ジェターク社のCEOである男だ。

ニューゲン達が質疑に応答する。

 

『事の重大さを鑑みて、弊社は機体の破棄と当該開発部門の解体をお約束します』

 

「であれば、シン・セーも同様の処分を受けるべきだな」

 

ヴィムの口元に笑みが浮かぶ。

その様子を見てトニーは呟く。

 

「出来レースだな。実に下らない」

 

「さすがトニー。分かっちゃう?」

 

「十中八九、あのオヤジはペイル社とグルだ。ここでファラクトをガンダムだと公表し、破棄すればペイル社はクリーンな会社だと宣伝できる。ジェターク社からすれば自分の息子を倒した機体を会社ごと潰せる。両者にとって得のある話だ。」

 

「そのためにスレッタちゃんを吊し上げてんだね。開発者である、お袋さんは手強いから。ってか、そのお袋さんマジでどこ行ったの?」

 

ウェイドが周囲を見ると、いつの間にかプロスペラがいなくなっていた。

 

「実に下らないね。子供を相手に魔女狩りとは」

 

必死に人々に訴えるスレッタ。

しかし、周囲の反応は芳しくない。

 

「やはりガンダムだったのか…」

 

「シン・セー開発公社もこれで終わりだな…」

 

「当然だろう…」

 

口々に出る批判の声。

スレッタの心が締め付けられる。

 

「お願いします…!話を聞いてください…!」

 

「トニー。俺ちゃん、このパーティぶち壊すけどゴメンね」

 

銃を取り出そうとするウェイドの腕をトニーが掴む。

 

「待て、ウェイド」

 

「なぜ止める。アンタからぶっ飛ばすぞ」

 

「落ち着け。彼女を見ろ」

 

低い声で睨むウェイドにトニーが顎で方向を示す。

その方向から声が響き渡った。

 

「エアリアルは廃棄させないわ!」

 

一人の女性がスレッタ達のいるステージに近づく。

その姿はミオリネ・レンブラン。スレッタの花嫁でもある彼女の姿だった。

 

「エアリアルはジェターク社にもペイル社にも勝った機体よ!廃棄するのは勿体ないわ!」

 

その言葉に一人の男性が異議を唱える。

サリウス・ゼネリ。グラスレー社のCEOであり、シャディクの父親にあたる男だ。

 

「問題を履き違えていらっしゃるようだ。パイロットの命を奪う非人道兵器を認める訳にはいきません」

 

その言葉にミオリネは笑って答える。

 

「あら?エアリアルは既に二人のパイロットを乗せて戦ってるのよ?スレッタ・マーキュリー、そしてウェイド・ウィルソン。その二人はピンピンしてるわ!そうよね!ウェイド!」

 

ミオリネの呼びかけと同時に会場にウェイドが飛び上がってステージに降り立つ。

 

「フゥー!スーパーヒーロー着地!こんな見せ場があるとは思わなかったよ!危うく他人のプライバシー侵害したミイラのバアサン達を全滅させようかと思ったけどトニーに言われて我慢して正解だったぜ!」

 

スレッタの手を引き、ステージから降ろす。

そのままウェイドはステージの周りにいた4人のペイル社のCEOに視線を向ける。

 

「こんな子供を寄って集って虐めてどうするつもりだったんだアンタら?エアリアルを処分したから、ハイ終わりってする気無かっただろ?」

 

「ウェイドさん…私…」

 

「いいって。スレッタちゃんはミオリネちゃんの側にいな」

 

泣きそうな顔をするスレッタの背中を押して、ミオリネの方に促す。

ミオリネはスレッタの肩を抱きながらウェイドの方を見た。

 

「ウェイド、来てくれてありがとう。それと、もう少し付き合ってもらうわ」

 

ミオリネが端末をスタッフに向ける。

 

「接続、お願いします」

 

しばらくするとスクリーンに文字が映し出される。

それはミオリネが考えた企業プランだった。

 

「過去の決算報告から、ファラクトの機体廃棄と同開発部門の解体に伴うペイル社の損金を1200億と見積もり、その倍の2400億。これを目標金額とした新規事業のプランをご提案させていただきます!」

 

ミオリネが考えた企業プラン。それはシン・セーとペイル社の開発部門をM&Aにより買収し、統合する事で生命の安全を前提とした開発、運営を行う新会社を設立する事だった。

 

「その新会社の社名は…ガンダム!」

 

そのプランを見てウェイドが気づく。

 

「あれ?これ俺ちゃんが作ろうとしたチミチャンガ企業のプランと形が同じ?」

 

ウェイドの呟きにミオリネが小声で答える。

 

「アンタが考えた企業プランを私が編集、構成したもの、でしょうが。それをベースに組み替えたものよ」

 

「え?この場でアドリブで組み替えた訳?マジ?」

 

ウェイドが驚く様子を尻目にミオリネが続ける。

 

「皆さんは今、ベネリットグループの業績を立て直す起爆剤を欲しているはず!協約の縛りや生命倫理問題は私と会社が引き受けます!投資は匿名契約、グループからも独立させればリスクはありません!この話に価値があると思った方は株式会社ガンダムの設立にどうか投資を!」

 

ミオリネが人々に呼びかけ、投資用の画面が表示される。

しかし、その投資金額の表示は0から動かない。

誰も投資のボタンを押さない。

ミオリネから焦りの声が出る。

 

「なんで…」

 

「お前の話には価値がない。皆、そう言っているのだ。」

 

ミオリネに声を告げる一人の男。

デリング・レンブラン。ミオリネの父親。

ベネリットグループ総裁であり、監査組織カテドラルの統括代表。

その男が鋭い眼差しを向ける。

 

「どれだけの大言壮語を言おうとも、それを裏付ける信用がお前にはない。」

 

その言葉と共に立ち上がるデリング。

 

「出ていけ。子供の意地に付き合うつもりは無い」

 

デリングはその言葉と共に会場を後にしようとする。

 

「いいじゃないか。子供の我儘、大いに結構。」

 

そのデリングの言葉に待ったをかけた人物がいた。

ゆっくりステージに降り立つ一人の男。

トニー・スターク。

スターク・インダストリーのCEOの姿があった。

デリングが鋭い視線をトニーに向ける。

 

「貴様は?」

 

「なに、しがない実業家さ。君の娘のプラン、実にユニークだ。気に入ったよ。破壊するだけの兵器を全く新しい別の運用方法を探す。それは僕も目指していた夢だ。」

 

「貴様はそれにたどり着いたのか?」

 

「あぁ。僕の場合は地球を守る事だった。彼女が同じ道に行くかは分からないがね」

 

「……」

 

デリングが鋭い視線を向けたまま沈黙する。

その時、ミオリネが端末を持ってデリングに近づいてきた。

そしてデリングに端末を差し出す。

 

「あなたに投資してほしい!あなたの言う通り、今のままじゃ私の提案に乗る人なんていません!ですからベネリットグループの総裁であるあなたの信用をお借りしたいんです!」

 

ミオリネが頭を下げる。

 

「お願いします!」

 

長い沈黙。

デリングが鋭い視線をミオリネに向ける。

やがて、デリングの口から言葉が紡がれる。

 

「逃げるなよ。貴様らが考えてる以上にガンダムの呪いは重い。あの男が克服したからといって、それに頼れば済むという話ではない。」

 

「えっ…ウェイドがガンダムの…?」

 

ミオリネが驚きの声を上げるが、デリングが何も言わずに立ち去ろうとする。

その時、トニーがデリングにすれ違いざまに呟く。

 

「子供の成長は早いだろう?僕も驚かされる」

 

「まだ未熟者だ」

 

デリングが軽くトニーに返すと、その場から立ち去る。

だがその口元に笑みが浮かんでいるのがトニーには見えていた。

デリングが去る中、ミオリネがハッとなり、端末を確認する。

そこには3%と記された投資額の表示。

しかし、そこから徐々に投資額が増えていく。

トニーも端末を眺めながら告げる。

 

「僕も投資させてもらおう。儲け話には乗らないとね」

 

ミオリネの提示した2400億はあっという間に埋まり、株式会社ガンダムの設立が決定した。

ミオリネが周囲に頭を下げる。

拍手が沸き起こる中、コンべーションパーティが終了した。

 

会場が片付けられる最中、ウェイドがトニーに呟く。

 

「ねえ、さっきの話をまとめるとさ、俺ちゃんがチミチャンガの企業プランを提示しても無理な可能性があったってこと?」

 

「君自身に信用も実績もないからな。誰も金をドブに捨てるような行為はしないさ」

 

「どいつもこいつもチミチャンガに興味を持ちやがらねえ!トニーがシャワルマを映画で広めた時には一時期流行ったのに!」

 

その時、スレッタ達に近づく人物の姿があった。

先程いつの間にか姿を消していたプロスペラである。

 

「スレッタ、ごめんね」

 

「アンタ、自分の娘が大変な時にどこ行ってたの」

 

ウェイドが思わずプロスペラに尋ねる。

 

「ジェターク社から内密のお話を、と場外に出されてました。私を場内に居させたくなかったみたいで」

 

「あのヴィムって親父の会社か。手の込んだ事をする」

 

トニーが首を横に振りながら呆れた顔をする。

その時、スレッタがプロスペラに詰め寄った。

 

「お母さん、エアリアルはガンダムじゃないよね!?」

 

自分がずっと信じてきたエアリアルとプロスペラ。

エアリアルが呪いの機体でないというスレッタの期待は…

 

「いえ、ガンダムよ」

 

「え…」

 

プロスペラ自身によって砕け散る事になる。

スレッタの目が見開かれる。

 

「ごめんね。とうとうバレちゃった。エアリアルはガンダムなの」

 

「ごめんスレッタちゃん。俺ちゃん達、知ってた」

 

「ついでに言うと僕がウェイドに依頼したから僕も知ってた」

 

なんか一気に三人分告白がきた。

思わずスレッタが固まる中、プロスペラがまだ映し出されている投資スクリーンを見て気づく。

 

「あら?ウェイドさん会社を立ち上げたんですね。おめでとうございます」

 

「へ?いや、会社を立ち上げたのはミオリネちゃんだけど」

 

「いえ、だってあそこに…」

 

プロスペラが指を指した箇所。

そこには『代表取締役:ウェイド・ウィルソン』の記載があった。

 

『あーーーーっ!!??』

 

ミオリネとウェイドから驚きの声が上がる。

その声で固まったスレッタも思わず我に返った。

 

「しまった!ウェイドの企業プランから急いで書き直したから修正し忘れてた!」

 

「え、マジ!?俺ちゃんが株式会社ガンダムの社長!?」

 

「ど、どどどどうするんですかミオリネさん!?」

 

トニーが目頭を抑えながら三人に告げる。

 

「急いで書き直せ!間違いに気づかれたら投資の取りやめの可能性もあるぞ!」

 

「あら、なんだか賑やかな会社になりそうね」

 

いきなり大慌てになるミオリネ達を見てプロスペラは穏やかに笑った。

──物語、続く(かもしれない)




長くする気がなかった話が何故か長くなりました。
これでも他のキャラの出番をガッツリ削って短くしてます。
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