アスカティア高等専門学園には決闘と呼ばれる制度がある。
モビルスーツを用いて行われる、学生同士の私闘。
当事者は金銭、栄誉などお互いに望むものを懸けて戦い、相手モビルスーツのブレードアンテナを折った者が勝者となる。
さらに、ホルダーと呼ばれる称号も与えられる。
決闘の勝者の中でも、最も優秀な生徒にのみ与えられる称号。
ホルダーである生徒は、その証として白を基調とした制服やパイロットスーツを纏う。
そして、そのホルダーの称号を持った生徒は、ミオリネの父親であり、学園の経営者であるベネリットグループの総帥であるデリング・レンブランの意向により、18歳になったミオリネの花婿になれる。
その現ホルダーの資格者はグループ内御三家ジェターク社の御曹司で、パイロット科3年。ジェラーク寮のエースパイロットである、グエル・ジェタークである。
自分の腕に絶対の自信を持つグエルは、花嫁であるミオリネをジェターク寮に住まわせようと考え、後輩であるペトラとフェルシーと共に温室まで足を運んだ。
聞くところによると、ミオリネは今朝、宇宙空間へ脱走を企てようと考えたらしい。
だが失敗し、学園に戻ってきた。これ以上、花嫁に好き勝手にされてはたまらない。
ジェターク寮に住まわせれば脱走も考えなくなるだろうと踏んだのだ。
しかし、温室までやってきたが、何やら様子がおかしい。
赤い髪の女は、先ほど戦術区画でミオリネといる姿を見た。
問題はその隣だ。赤い全身タイツの男がいる。3年生となるグエルだが、学園内であんな姿の男は見たことがない。
あまりにも目立つその男に声をかけようとしたら、ミオリネの怒鳴り声と共に男が急にしゃがみ込み、工具がグエルの顔面に直撃した。
倒れたグエルを見ながら、ペトラとフェルシー、ウェイドが叫ぶ。
「キャー!?グエル先輩ー!?」
「え!マジで!2話目にしてキャラが1人死んだ!?こうやって最後の1人になるまで1人ずつ殺されていくの!?」
「違う!まだ殺してない!そもそもアンタが避けるから…って、グエル!?」
ミオリネが駆け寄り、倒れた男の正体を確認し、驚く。
グエルが痛みに悶絶しながら、ゆっくり起き上がる。『まだ』とはどういう意味だろうか。
「大丈夫ですか、グエル先輩!」「あまり動かない方が…!」
ペトラとフェルシーがグエルを心配する。
だがグエルの瞳は痛みより怒りで燃えていた。
「ミオリネ…俺はお前を花嫁として甘やかしすぎたようだ…」
グエルが怒りの炎を纏いながらミオリネを見る。
「お前は今後、ジェターク寮に住め。そうすれば俺に歯向かう意志などなくなるだろう…!だが!!その前に!!!」
グエルの顔がウェイドの方を向く。その顔は怒りで赤く染まっていた。
「ワオ、俺ちゃんのタイツより赤い」
「この俺に怪我を負わせる原因を作った!!この赤いタイツの変態男を叩き潰さんと、俺のプライドが治まらん!!!」
「アレ、俺ちゃんボコられちゃう感じ?」
「安心しろ!この学園にふさわしいルールで叩きのめしてやる!決闘だ!俺と決闘しろ!このグエル・ジェタークと!!」
「ちょっと落ち着きなさいよグエル!」
思わずグエルの肩を掴むミオリネだったが、グエルに振り払われる。
「ミオリネ、お前は大人しく俺の物になればいいんだよ!余計な口を挟むな!」
ミオリネはグエルの言葉を聞き、唇を噛んだ。
スレッタはトマトを手に持ったまま、成り行きを見守る。
しかし、ウェイドはいつもの調子でグエルに尋ねる。
「それで決闘って何?マリカーとかで勝負するの?」
「マリカー?ふざけるな!モビルスーツを使った真剣勝負だ!」
「あー、なるほどね。ガンダムファイトみたいなものか。見たことあるよ」
「ガンダム、ファイト…?まあ、いい。とにかく演習場に来い。叩き潰して、この学園から追い出してやる!」
グエルがフェルシー達と共に去る。スレッタとミオリネがウェイドに駆け寄った。
「大丈夫ですか、ウェイドさん!」
「アンタ、今すぐ謝ってきなさい!相手は現ホルダーよ!勝てるわけないわ!」
スレッタとミオリネが騒ぎ立てる中、ウェイドはいつも通りの調子だった。
「まあ、なんとかしよう。とりあえず決闘で俺が勝てばいいんでしょ?」
「そうだけど…アンタそもそも何のモビルスーツ持ってるの?」
「え?モビルスーツ?持ってないよ、そんなの」
ミオリネの疑問にウェイドがあっけらかんと答える。その場が凍った。
「え、それじゃあ、どうするんですかウェイドさん!?」
スレッタの疑問には答えず、ウェイドは黙ってスレッタを見つめる。
「な、なんで黙って私を見るんですか、ウェイドさん…」
ウェイドは黙ってマスクの顔でスレッタを見つめる。
「あ、あの、そのマスク怖いです。何をするつもりなんですか、ウェイドさん…」
スレッタは食べ損ねたトマトを思わず落とす。
怯えるスレッタに答えず、ウェイドは黙ってスレッタを見つめたと思ったら、その手がゆっくりとスレッタに伸びる。
その瞬間、スレッタの絶叫が辺りに響いた。
──物語、続く(かもしれない)
また一話で終われなかった。
次から倍の文字数で書くように頑張ります。