いつもより長めです。
決闘当日、戦術区画に2機分のコンテナが現れる。
その中から出てきた機体はガンダム・ファラクト。
ペイル社が開発したGUNDアーム。
空間戦闘を重視した細身の体型が特徴的な機体だ。
その機体の搭乗者はエラン・ケレス。
「KP002、エラン・ケレス。ファラクト、出る」
ガンダム・ファラクトがコンテナから降り立つ。
そしてもう片方のコンテナが開く。
その中から出てきたのはエアリアル。
今回のフロント外宙域の戦闘を踏まえ、地球寮の生徒たちが開発したフライト・ユニットを装備している。
その機体の搭乗者はウェイド・ウィルソン。
「MP563、デップー、エアリアルいきまーす!」
ウェイドが陽気な態度でエアリアルとコンテナから降り立つ。
しかし、その口から発された学籍番号に次々と通信機から声が出る。
『は?MP?アンタ1年なの?』
『563って、そんなに1年がいる訳ねえだろ』
『というか、ウェイドさん、学園の登録名と違うんですけど…』
上からミオリネ、グエル(決闘の様子を見に来た)、スレッタから声が上がる。
その様子を見て満足気に笑うウェイド。
「いーねー、ギャラリーいっぱいで俺ちゃんイキリ立ちそう。張り切っちゃうもんね」
しかし、コンテナから降りたウェイドの機体を見てエランの目が見開く。
「エアリアル…ウェイド・ウィルソン…君がその機体に乗るのか…!」
「え?うん。俺ちゃんモビルスーツ持ってなかったんだけど、そしたらスレッタちゃんがなんか貸してくれるって話になっちゃって」
エランの呼吸が乱れる。
ウェイド・ウィルソン。エアリアル。
今のエランを否定するかのような存在が一つとなってエランの前に立つ。
呼吸を荒らげ、震えていたエランだが、やがて笑いながら顔をあげる。
「鬱陶しいよ…スレッタ・マーキュリーも!君も!その機体も!」
「あー、それスレッタちゃん聞いたら泣くね。俺ちゃんと同列に扱われるとヒス起こすんだよあの子」
実際、ウェイドのコックピットから甲高い抗議の声が響いてきたので、ウェイドは音量を小さくする。
「決闘の報酬はもう変更できない。君に勝ててもエアリアルは貰えない。でも、この決闘だけは勝つ!」
決闘委員会のシャディクから通信が入る。
『それでは二人とも口上を述べてくれ』
「えーっと、"勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず”だよな?」
「"操縦者の技のみで決まらず”」
「「"ただ、結果のみが真実”」」
『フィックス・リリース』
決闘が始まった。
エランはライフルを撃ちながら、GUNDビットであるコラキを展開し、エアリアルを取り囲むが、ウェイドが操縦するエアリアルはビームサーベルを展開し、体を回転させながら回避、そのままコラキをビームサーベルで切りつける。
その動きにスレッタはおろか、エランも目を見開く。
しかし、自分の身体の負荷をまるで考えない機動。
あのように高速で動き続けたらGの負荷が強大なのは目に見えている。
恐らく、コックピット内のウェイドはかなり消耗した状態になると推測した所でエランは気づく。
「違う!再生するのか…!」
ウェイド自身が持つ自己再生能力。
ウェイドはその能力にものを言わせて強引に機体を動かしていた。
「なんだよそれ…!なんなんだよ…!」
エランの口から言葉が漏れる。
「君は何でも持っている!友達も!家族も!過去も未来も!希望だって!」
目の前にいるパイロットは不死身で、自分の身を顧みず、死を恐れることなく戦うことができる。
目の前にいる機体は特別で、自分の機体と同じ力を持ちながら、自分を死に追いやる呪いをパイロットに与えることなく戦うことができる。
自分の全てが否定された気がする悪夢のような組み合わせ。
こんな存在をどうして容認できるのか。
「だったら勝利くらい僕にくれよ!」
エアリアルとファラクトはビームサーベル同士の激しい接近戦を行いながら、戦いの舞台を宇宙に移す。
スレッタ達にフロント外宙域の様子が映し出され、二人の激しいせめぎあいが続く。
「じゃなければ!不公平過ぎる!!」
エランがパーメットスコアを上げる。
パーメットスコア…GUNDフォーマットはGUNDフォーマットリンクでパイロットに機体を身体の延長として制御させるため、従来のモビルスーツとは一線を画した機動力、GUNDビットによる武装の遠隔操作を実現している一方、機体性能を引き出すためにはMSとの高い交感を必要とし、その段階を『パーメットスコア』と表記してナンバリングしている。
しかし、パイロットは10倍の情報量が乗った大量のパーメットが流入することで身体に「データストーム」という負荷が発生する。パーメットスコアが上がるほど人体への負荷は大きくなり、最悪の場合、そのまま死に至る。
「パーメットスコア…4!」
先ほどまで3で展開していたパーメットスコアを引き上げる。
負荷が大きくなり、機体の制御も難しくなる。
エランは限界に近い自分の体を必死に動かし、ウェイドとエアリアルを睨んだ。
ウェイドのコックピットにも、エランの叫びは届いていた。
ファラクトが先程よりも速い速度で迫り、エアリアルの足が切り飛ばされる。
「俺ちゃんの治癒能力を羨ましがる気持ちも分かるけど…」
ウェイドの操縦桿を握る手に力が入る。
ファラクトが展開するコラキに不慣れなGUNDビットと無理やりな機動で必死に躱す。
「死にたくても死ねない体ってのも案外辛いもんだよ?」
しかし、更に速度を増したコラキに対処しきれず、エアリアルの左腕が撃ち抜かれた。
「でもさ…」
その隙に更にコラキが背後に周り、エアリアルの推進ユニットが1つ潰れる。
「なんで、お宅みたいな子供が死ぬ恐怖に怯えなきゃなんないんだ?」
ウェイドがそう呟いたと同時に、エアリアルのコックピット内の計器が光る。
そして…
「ぐおおおおおおお!?」
ウェイドの体をパーメットの流入による多大な負荷が襲った。
「エアリアル!?ウェイドさん!?」
ウェイドの叫びと同時にエアリアルのシェルユニットが青く光り始める。
その様子を見てスレッタが叫んだ。
「どうして!?やめてエアリアル!ウェイドさんが苦しんでる!」
ミオリネが小さく呟く。
「これ…ガンダムの呪い…?」
「違います!エアリアルはガンダムじゃありません!」
ミオリネの呟きに思わずスレッタが食ってかかる。
その時、場面が動いた。
ファラクトの全てのコラキが停止し、エアリアルがGUNDビットを機体に装着する。
そして残りの推進ユニットを使ってファラクトとの距離を詰め、ビームサーベルでブレードアンテナを破壊した。
ウェイドの勝利が確定した瞬間だった。
エランはコックピット内で先程の光景を思い出していた。
周りに浮かぶスレッタ・マーキュリーに似た赤い髪の少女達。
そして、小さい頃に自分を祝ってくれた母の顔。
するとコックピットが開かれ、1人の人物が現れる。
「よっ、元気してる?」
ウェイド・ウィルソンだ。
しかし、ヘルメットから現れたその顔を見てエランが目を見開く。
いつも赤いマスクで隠された顔。
しかし、今、エランの目の前のウェイドはマスクを外した素顔でヘルメットを被っていた。
癌細胞に侵されたドロドロの顔で。
「その…顔は…」
「再生能力を手に入れたツケだ。昔はイケメンだったけど、このケロイド顔になってからは不幸どん底のお先真っ暗な人生を送ってる。仲間に先立たれても俺は死ぬ事ができない。いい事だらけって訳でもないんだよ」
エランは言葉が見つからず、息を飲む。
「でも、お宅も何も持ってないって事もないだろ」
「え?」
「スレッタちゃんがさ、お宅がエアリアルに乗った後、様子がおかしくなったとか、自分のせいだとかめっちゃ自分を責めてたんだよ。アンタの心配もしてた」
「スレッタ・マーキュリーが…」
「アンタには心配してくれる友達がいる。俺ちゃんは誰も心配してくれないけど」
「再生能力があるからね」
エランが微笑む様子を見てウェイドもはにかみ、エランの肩に手を乗せる。
「じゃあ、後始末しといてくれ」
「え?」
「俺、もうボロボロ…」
ウェイドがエランの目の前で倒れた。
傷は治せても疲労は別だったようだ。
数分後、ファラクトがエアリアルを引っ張る形で戦術区画に降り立つ。
ファラクトのコックピットが開かれ、エランとウェイドが降りる。
なお、ウェイドはいつもの赤いマスクを装着している。
「エランさん!ウェイドさん!」
スレッタが二人に駆け寄る。
「悪い、スレッタちゃん。エアリアル壊した」
「いえ、そんな事…それより身体は…」
「あぁ、そっちはマジで大丈夫。心配ないよ」
ウェイドがいつも通りに応え、スレッタが安心した表情を浮かべる。
「それで、今回の決闘でウェイドは私のトマトの賠償金を免除される訳ね」
ミオリネが不満気な声を上げる。
反面、ウェイドは喜びの声を上げた。
「そう!これでトマトの賠償金はチャラ!そして、新メンバー追加だ!」
ウェイドの発言を聞いてスレッタとエランが目を見合わせる。
「そういえばエランさんがウェイドさんのチームに入るって…」
「僕はスポッターもメカニックの経験もないけど」
「違う!エランくんには俺が作ったヒーローチーム、『Xフォース』に入ってもらう!」
『は?』
戦術区画にいた生徒全員が声を上げた。
「ヒーローチーム!?アンタそんなの作ってたの!?」
「ひ、ひひヒーロー!?エランさんがヒーローですか!?」
「赤タイツのコスチュームをエランも着るのか?」
数々の声をウェイドが制す。
「落ち着けって。メンバーは実写映画で一人を残して全滅したし、続編の映画では生き残ったドミノは演者のスケジュールが合わなくて出てこれなくなった代わりに死んだはずのシャッタースターが出たりで、有耶無耶になったけど、俺ちゃんは思ったんだ。この作品、"水星の魔女”なら真の『Xフォース』を集められるんじゃないかって!」
ウェイドの発言に周りの生徒が拒否反応を示す。
「つまりアンタ、そのヒーローチームを作るために何回も決闘を行うと?」
「わ、私は違いますよね!?」
「コイツと決闘したくねー…」
「赤タイツ着るのかな…」
数々の反応が飛び交う中、エランは首を横に振る。
「残念だけど君の要求には応えられない。僕にはもう時間が無い」
エランは今回の決闘で自分の体の限界を悟り、自分の命が長くない事を確信していた。
だがウェイドは指を横に動かし、チッチッチッと舌を鳴らす。
「大丈夫。今から君を俺ちゃんの友達の所に送る。友達の中には元医者の魔法使いや医療の最先端テクノロジー技術を駆使する天才科学者もいる。今回の戦闘データも送れば、君の寿命程度は延ばしてやれるさ」
すると突然空間に穴が開き、赤いマントを羽織った男が現れる。
ドクター・ストレンジ。
マーベル・ユニバース最高の魔術師、ソーサラー・スープリームであり、元天才脳外科の男だ。
「君がデッドプールか。アイアンマンから話は聞いている。彼が患者か?」
ストレンジがエランの方を見る。
事態に追いつけない生徒たちが驚く中、ウェイドはストレンジに記録媒体を渡す。
「これ、今回の戦闘データ。多分これでトニーのGUNDアームの解析データはかなり揃うと思うよ」
「これを抜きにしてもかなり高くつくと思うぞ?」
「料金は前払いしてるから大丈夫」
ストレンジはウェイドからデータを受け取ると、エランの手を取る。
「行こう。治療は早めが肝心だ」
「治せるの…?」
「治すさ」
エランの問いに応えると、ストレンジはエランと共に空間に開いた穴に入り、姿を消した。
突然の出来事に驚く中、ミオリネが気づく。
「ねえ、アンタが借金してたのって…」
「そう、この時のためにトニーに医療費払ってた。俺ちゃん、"水星の魔女”は予習してエランくんの体調について知ってたからね」
「なんで…そこまで…」
「俺ちゃん、子供が死ぬところってあんまり好きじゃないんだよね。これでもヒーローで通ってる方だから。せっかくのクロスオーバーだよ?救える命なら救いたいと思うじゃん?」
「トマトネコババしたくせに…」
「せっかくかっこよく決めたのを台無しにするのやめてくれない?」
こうして、ウェイドとエランの決闘は終わりを告げた。
後日、ミオリネはベンチに座るスレッタを見つける。
「スレッタ、どうしたの?」
「あ、ミオリネさん。なんだか、この前の出来事が信じられなくて…」
「あぁ、空間に開く穴とか、ヒーローチームとかね。そりゃ夢みたいな出来事だったわよね」
「エランさん、また会えますよね?」
「治療が終わったら会えるんじゃない?」
あっけらかんと放つミオリネを見ながらスレッタは笑顔になる。
「そうですよね。治療が終わったら、エランさんにまた会えますよね」
「ウェイドの世界の医療機関がどれほどかにもよるけどね」
「私、エランさんにまた会えたら誕生日を聞いてみたいんです」
「誕生日?」
スレッタの言葉にミオリネが眉を顰める。
「はい。エランさんの誕生日、祝ってあげたいんです」
「ふーん、ハッピバースデートゥーユーって?」
「はい!」
力強く肯定するスレッタ。
少し驚いた後、ミオリネも顔を笑顔にさせる。
「フーン、いいんじゃない。ハッピバースデートゥーユー」
「ハッピバースデートゥーユー」
二人の歌声が重なる。
『ハッピバースデー、ディア、エラン』
『ハッピバースデートゥーユー』
デッドプールとクロスオーバーを考えた時にずっと書きたかった話です。
とんでも展開ですがご了承ください。
エランくんは多分、後の展開に登場しますが、どうなるかは考えてません。