このソシャゲ世界で、俺を嫌ってくれるヒト募集   作:高々鷹々

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思いつきのまま書きました。
奏章Ⅳ、楽しみですね。


ゴチャゴチャうるせぇザコ共だろ。あとオマエな?

(・・・・・・疲れた)

 

 人類最後のマスターである彼は、心の中でそう呟いた。ストームボーダーの廊下は無人に見えるが、サーヴァントが霊体化してその辺りに居る可能性があるし、今も自分を守ろうと忍びのサーヴァントが見えない位置に控えてくれているだろう。気配的に、今日は望月千代女だろうか。

 

 であるならば、自分が疲労を口にする訳にはいかない。どこからか他のサーヴァントたちにも伝わって、気を遣われてしまう。相手がただの一般人ならともかく、偉大なる英雄たちであるというのが、どうにも気が引ける。

 

(──いけない。今のは『藤丸立香』の思考じゃなかったな)

 

 『藤丸立香』はサーヴァントをただの人と同じように接する。相手がどんな英霊であれ、そこに敬意はあれど、あくまで対等に接する。もし(へりくだ)った姿勢を見せれば、それだけで愛想を尽かされかねない。いや、それも考え過ぎか。

 

 (がん)()(がら)めになりそうな思考を打ち切って、自室へと向かう。今日の分の日課(周回)は済ませたし、ライブラリで英雄たちについての知識も深めた。後は、休息を取るだけだ。

 

(さて。今日は誰が居るかな)

 

 彼の部屋には、ほぼ常にサーヴァントが滞在している。それは人類最後のマスターである自分を守るためであったり、ただ駄弁りに来ただけだったり──あるいは、自分への好意を示すためであったり。

 

(・・・・・・気持ち悪い)

 

 浮かび上がった思考を、反射的に飲み込んだ。いけない。もしこの感情を誰かに知られれば、それだけでカルデアは崩壊しかねない。今は人類の瀬戸際なのだ、最後の戦いまでもう少しだと言うのに、いらぬ問題を起こしてはならない。

 

 憂鬱な気分のまま、マイルームの扉を通る。目に入ってきたのは、まるで自室かのようにベッドに寝転がり、雑誌を読んでいる赤髪のサーヴァントだ。

 

「──ようザコ。邪魔してるぜ」

 

「・・・・・・バーヴァン・シー」

 

 妖精国──ブリテン異聞帯の出身である、妖精騎士のひとり。モルガンの配下にして娘、赤い踵のバーヴァン・シー。部屋に居るのが彼女だった事に、彼は酷く安堵した。

 

「勝手にベッド使わないでよ。俺も休みたいんだけど」

 

「ハァ? お前、アタシに指図できるような立場か?

 それに、こういうのは早い者勝ちでしょう? わかったら黙ってその汗臭い身体を流してきたら」

 

 開口一番に、辛辣な物言い。それを心地よく感じて、思わず笑ってしまう。

 それが気味悪かったのだろう。靴を扱ったその雑誌から顔を上げ、バーヴァン・シーは顔を歪める。

 

「なに笑ってるんだよザコ。なぁに、罵倒されて悦ぶヘンタイなの?」

 

「ごめんごめん。そうじゃなくって」

 

 本気でこちらを訝しんでいる瞳。吐き出される言葉はどれもストレートで飾り気がなく、どれも本音であると自分にも分かる。

 いつだったか、アルトリア・キャスターは『トリ子ってすっごく素直だよね』と言っていたが、彼はそれに深く同意していた。

 

「謝罪ついでに、バーヴァ・シー。一つ、訊いてもいいかな」

 

「ハァ? なんで私が・・・・・・」

 

「嫌いなモノって、ある?」

 

 その質問に、バーヴァン・シーは呆れたように溜め息をついて、雑誌を閉じた。身体を起こし、マスターである彼の瞳を正面から見つめる。

 

「ゴチャゴチャうるせぇザコに決まってんだろ。つまりオマエだな。

 これで満足した?」

 

「・・・・・・うん、ありがとう。シャワー入ってくる」

 

 彼女の返答に、心から──今となってはあまり見せなくなった笑顔をして、彼は備え付けのシャワールームへと入っていった。

 

 

「・・・・・・ホント、面倒なヤツ」

 

 マスターである彼の背中を見送って、水音が流れ始めたのを確認してから、バーヴァン・シーは呟いた。再び、彼のベッドへと寝転がる。

 

 いつからだったか彼女にとっても定かでは無いが──気付けば、彼は自分が嫌われる事に、安心するようになっていた。きっと、色んな英霊から好かれているのが、怖くなったのだろう。それか、あまりに多くの好意を向けられて、精神のバランスを保つために自らを嫌ってくれる相手を求めたのかもしれない。

 

(お母様も、『我が夫』とか呼んでるしな・・・・・・)

 

 それに異を唱えられる筈も無いが、少しだけ、気の毒に思う。あれだけの魔術の使い手であり、異聞帯の王でもあった母に、『夫』と呼ばれる事が──重くない訳がない。

 

 母の意図を察する事は出来ないが、きっと自分では及ばないような深い考えがあるのだろうと、バーヴァン・シーは結論づけている。受け入れると、自分が彼の娘のような立ち位置になるので、そこには触れないようにしているが。

 

「ふぅ、すっきりした」

 

「おいザコ、まだ水分残ってるじゃねぇか。この本ふやけさせたらタダじゃ済まないからな」

 

 シャワーを済ませてきた彼に、バーヴァン・シーは態と辛辣な態度を取った。それが、彼の求める振る舞いであるから。

 

「えー。じゃあ、ドライヤー手伝ってよ。自分でやると、上手くいかなくて」

 

「そーゆーのは他のヤツに頼め。いくらでも居んだろ、あのイカレ女とか」

 

「頼光さん? 確かにやってくれそうだけど・・・・・・」

 

 こちらが思い浮かべた相手を、彼もまた察したらしい。それが通じ合っているような、擽ったい気持ちにさせてくるが──それを表に出しては、マスターは困るだろう。自分が『困らせる』のは良いが、それはダメだ。

 

「あ、そうだ。バーヴァン・シーの魔術に、髪の毛乾かすのってない?」

 

「オメーの水分をまるごと枯らす魔術ならあるぜ。試してみっか♪」

 

「やめて、それは俺が()たないから」

 

「ハッ、冗談に決まってるでしょう。・・・・・・今のところは」

 

「安心できないなぁ。大人しくドライヤー使うよ」

 

 心地いいやり取りだ。バーヴァン・シーにとっては、愛しさすら感じる時間。でも、本心を見せる事は、口にする事は出来ない。これまで、ずっと彼を嫌っている態度を取ってきた。水着を纏い、霊基を変えてもその姿勢を貫いたのは、何のためだ。自分の悪逆さを、こんな自分に心を許してくれた彼のためだろう。

 

「そうだ、バーヴァン・シー。良かったら一緒に寝ない?」

 

「オマエみたいなザコと一緒に寝る訳ないだろ。

 私はベッド、貴方は床。毛布くらいは分けてあげます」

 

「俺の部屋なんだけどなぁ・・・・・・」

 

 そう苦笑する彼は、どこか嬉しそうだ。全く、露骨な顔しやがって。バーヴァン・シーは内心で毒づいた。うっかり頷きかけたのを我慢した自分を褒めてやりたい。お母様なら褒めて──いや、どうなるかわからないから()めておこう。

 

「おやすみ、バーヴァン・シー」

 

「さっさと寝ろ、ザコ」

 

 どうか、彼が悪夢を見ませんように。もし悪夢を見たとしても、それを忘れられるくらい、明日の自分が悪逆でありますように。

 バーヴァン・シーは、祈るように目を瞑った。




人類最後のマスター
周りからの好意に辟易しちゃった一般転生マスター。
自分を嫌ってくれる鯖が好き。身も蓋もない言い方をするとそういう性癖。
最近、弓の英雄王とか麻婆の神父の視線が気になっている。

バーヴァン・シー
彼を嫌っている。少なくとも言動と態度と行動でそう示している。
最近、悪辣に振る舞う理由が増えた。


続くかどうかは知りません。でもマリーオルタとかオベロンとか出したい。オベロンを描ける自信はありませんが。
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