ちなみに妖精國の時、自分は赤文字が全部表示されました。なんででしょうね。
ストーム・ボーダーにおいて、サーヴァントたちは人数を絞って現界している。ボーダーのリソースを節約するためでもあり、そもそもサーヴァント全員が現界していてはボーダーの空間を圧迫する。
しかし、そんな中でもほぼずっと現界しているサーヴァントもいる。キッチンにて料理を担当しているエミヤがそうだ。その他にもタマモキャットや紅閻魔など、ボーダーの厨房を支えるサーヴァントたちは比較的よく見かける。娯楽の少ないボーダー内にて、食事の重要度は高いのだ。
本日の分の
「お疲れ様、エミヤ。今日のオススメある?」
「ああ、マスター。本日はAランチがオススメだ。久々に、ビーフストロガノフを作りたくなってね」
「味はこのキャットが保証するワン! ちょうど良い魔猪の肉が入ったのでな、キャット自らコロコロしてやったのだ。
ちなみにコロコロはブッ
エミヤの後ろから顔を出したのはタマモキャットだ。自前のエプロン姿だが、その発言はいつも通りに意味がわかるようでわからない。そも、食材が魔猪ならビーフではなくポークなのだが。いや、ポークか?
「キャットのオススメはそっちなんだ? じゃあせっかくだし、それも頼めるかな」
「承ったのだワン! ではしばし待たれよ、具体的には三光年ほど」
光年は年月じゃなくて距離──というツッコミは飲み込む事にした。微妙に短いのは、それほど待たせないという意味だろうか。
「ふむ。ではビーフストロガノフは少なめにしておこうか?」
「大丈夫、けっこう動いたし食べられるよ」
「ならデザートも付けておこう。確か、メロンがあったはず・・・・・・」
そう言いながら、厨房に引っ込むエミヤ。手持ち無沙汰になって彼が食堂を見回せば、食堂にやってくる人影があった。アルトリア・キャスターだ。
「あれ、リツカじゃん。今からお昼?」
「ちょうどね。アルキャスも?」
「うん、ちょっと疲れてたし。
そうだ、聞いてよリツカ。バゲ子と戦闘訓練したんだけどさー、アイツ普段はわたしのこと見えないとか言うクセに、戦闘になると全力で狙ってくるんだよ!?」
うがーっと猛獣のように気炎を吐くアルトリア・キャスターの愚痴を、彼は苦笑しながら聞く。やれモルガンが、村正がと流れ出てくる文句。どうやら、かなり鬱憤が溜まっているらしい。
ここのところ、話す機会が無かったのもあるのだろう。絆レベルが最大近いこともあって、あまり戦闘に連れ出していなかった──いや、この世界で絆レベルってどういう扱いなのかわからないが。
「おまちどおさま、マスター。
おや、そちらは・・・・・・・」
ビーフストロガノフとサイコロステーキという、肉々しいラインナップが乗ったトレイを、エミヤから受け取る。彼の厨房の守護者はアルトリア・キャスターの姿を認め、目を見開いた。
「君も何か頼むかね? ご飯は大盛りにしておくが」
「うーん、じゃあマスターと同じこのお肉をお願いします」
アルキャスの視線の先にあるのは、サイコロステーキ──どうやら、気になっているらしい。
「ふむふむ。魔猪同士の共食いとは、正に世紀末。キャットも野生に帰る頃合いのようだワン。
ところでご主人、話は変わらぬが大黒天は
「ネズミ狩りしようとしてる? 流石に仲間割れは困るんだけど・・・・・・」
「というか、誰が魔猪ですか誰が!
もう、みんなして魔猪の氏族とか言ってくるし!」
怒りで目付きが険悪になるアルキャス。マスターである彼は助けを求めるようにエミヤを見たが、彼は笑みと共に肩を竦めるだけだ。
諦めてその場を離れようとしたマスターだったが、ふとトレイに乗っているデザートがプリンであることに気付いた。さっきメロンがどうこうと言っていた気がしたが、切らしていたのだろうか。
「ああ、済まないねマスター。メロンを冷やしておいた筈なんだが、いつの間にやら無くなっていてな。
今回はプリンだ」
「・・・・・・メロン。
俺、心当たりがあるよ」
疑問符を浮かべるエミヤと普段通り何を考えているか分からない顔のキャットの視線を受けながら、彼はアルキャスへと振り返った。
「えっと? ──ああ、そういうこと。
じゃあ、食べ終わったら準備するね!」
妖精眼──普段は自分の内心を悟られたくない彼にとって恐ろしいモノだが、今回はそのお陰で話が早かった。
「メロン食べたの、オベロンだよね」
「うっわ、キモ。それ言うために態々ここに来るか、普通?」
何もない、ただ渦巻いているだけの空間。人類最後のマスターは、黒い姿のオベロンと向き合っていた。
ここはオベロンの精神世界。いつかも訪れた場所だ。
「別に、それだけが理由じゃないよ。オベロンと話したいなって思って」
「そうかい、嬉しいよマスター。俺も君とのおしゃべりは嫌いじゃない。
ところで、出口はそっちだけど?」
オベロンが指を鳴らせば、以前よりも更に汚くなった汚部屋へと世界が様変わりする。その彼が示してるのは、この部屋の出入り口だ。
それを流しながら、彼はゴミを踏まないように避けながらテーブル席へと座る。
「でも、オベロンも好物とかあったんだね。メロン好きとか、ホント虫みたい」
ブランカと一緒に食べたのかな、と思考が逸れる。その瞬間、オベロンが射殺さんばかりの視線を彼へと向けた。しくじったな、と思いつつ、お互いにその事には言及しない。
「最高の皮肉をどうも、お代は強制帰宅で良いよな」
剥き出しの嫌悪をマスターへと向けるオベロンは、再び指を鳴らそうと構えた。慌ててマスターは止めに入った。
「待って待って。来るのけっこう大変だったんだから。
オベロン、
「自分で撒いた種なんだ、自分でどうにかするに決まってるだろ。
・・・・・・ったく、それでも道を作るとか、どうなってんだ」
「ごめん、今日は手鏡忘れてきちゃった。すごいよね、マーリン魔術」
「ハハハハハ黙ってくれないかな。ご機嫌なあまりうっかり手が出そうだ」
苛立ちの笑みを浮かべるオベロン、苦笑で相殺するマスター。端から見れば、喧嘩でもしているように映るかもしれない。
「取り敢えず、食堂のモノを持ち出す時は断りを入れてよ。仮にも王子を名乗ってるんだから、盗むような真似は沽券に関わるんじゃない?」
「嫌だなぁマスター、俺は偶然落ちてるモノを拾っただけだよ。それがキッチンの食材だったとは、知らなかったなぁ」
白々しくそう言ったオベロンに、マスターである彼は半眼を向ける。この元ラスボス、随分とまぁ自堕落に過ごしているようだ。前は、カーマに借金とかしていなかったか。
「・・・・・・そろそろ戻るよ。急にお邪魔してごめんね」
「いやホントに。今度からアポ取ってね、絶対断るから」
椅子から立ち上がれば、にこやかな作り笑いで見送ろうとする。あからさまな態度に、むしろ安心できた。
「最後にさ、オベロン。
嫌いなものってある?」
「・・・・・・あのさぁ。毎度毎度それ訊くの、いい加減
心底疲れたような言い方。だけど、マスターは何も言わない。沈黙したまま、オベロンが
「──なにもかも。この世界も、人理も、妖精も、お前も。
多すぎて挙げきれないくらいだ。なんなら、全部言っていってやろうか?」
「ううん。ありがとう」
怒りすら滲ませた言葉を受けながら、彼は笑っていた。どこか安堵したような笑みだ。
オベロンは大きく舌打ちした。満足したマスターは、部屋の扉へ向かってドアノブを掴む。
その背中に、オベロンは思いつきで声をかけた。
「あぁそうだ、マスター。
いい加減、本音を話せる相手を見つけなよ。俺以外にも」
「・・・・・・前にも言ったけど。
オベロンに本音を話した事なんて、一度もないよ」
「まーだそれ言うんだ? 構わないけどね。そうやって少しずつ、自分の首を自分で絞めるが良いさ。そのまま誰にも頼れずに溺れ死ぬだろうよ」
「そうなったら、溜め息混じりにオベロンのことを呼ぶことにするよ」
「──よく言うよ。そんなつもり、無いクセに」
「言っただろ。オベロンに本音なんて言う訳ないじゃん」
オベロンは心から苛立った笑みを浮かべて、マスターを睨んだ。呼べば悪態をつく癖に、呼ばないと不機嫌になるのか。
コイツ面倒本当にくさいな、とオベロンは思った。
コイツ面倒本当にくさいな、とマスターは思った。
「あっそ。せいぜい苦しみなよ、マスター」
「別れの挨拶も知らないの? オベロン。
こういう時は、『またね』って言うんだよ」
「うるさい。二度と来るなよ、クソヤロウ」
オベロンの罵倒を、マスターである彼は笑って受け流し、汚部屋を後にした。
人類最後のマスター
ログインとデイリー消化を忘れない一般転生マスター。
周回で使う鯖たちの絆はカンストしていたり近かったり。
妖精眼が怖い。どこまで見通してくるかわからなくて。
オベロン
マスターの面倒くささに辟易してる。
何もかもが嫌い。それすらも嘘だけど。
そういやへシアン・ロボも人類を嫌ってくれてるじゃんと思ったらもう居ませんでした。悲しい。