マキナ・ファンタズマ   作:阿久間嬉嬉(新)

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募集場所を貼りだしておきます。

なお前書きで貼りだすのはここが最後です。あしからず。


再開の味は……?

 心当たりがあるか否かで言えば、割とあろう。そもそもコロニー追放の実質的処罰を受けた【機怪蛮能(イヴィルマキナ)】の扱いは悪い、と少し前に改めて思い返したばかりでもある。もっと言えば、どうして今は危うくきな臭い南東部外れを指定したのかという、武装を確認するまでもなく一般的なキャラバンの範疇を超えていた謎もあった。

 

 その結末が依頼に見せかけた“これ”とは、事前に計画書でも渡されぬ限り予想しえなかったであろう。そんな状況下でなお、表面上は特に驚きもせず、焦りも見せず、されどほんの少しだけ気だるそうにスマイリーは目を細める。ただ、言葉は頑なに発さない。

 

 断っておくなら彼女とて、突如敵意と牙をむいたキャラバンに聞きたいことはあるのだが、1言でも喋れば一斉射撃が始まりそうな雰囲気を湛えているゆえに、口を動かす程度でも迂闊な動きなど出来ないのだ。包囲陣形も彼女の後方斜めまでという、どう見ても『同士討ちを避ける』ことを前提にしたもの。単純に慣れているのか、事前に入念な話し合いでもしたのかは不明だが、少なくとも十分警戒に値する。

 

 だから今スマイリーがすべきは、この場をどう切り抜けるか―――では、ない。 

 実のところ、包囲陣形を突破するだけならさっさと【機怪蛮能】を使えば、厳密には発動しながら跳躍でもしてぶっ放せば良いだけであり、簡単と言えばとても簡単なのだ。彼女の保持する蛮能は集団戦における無差別攻撃や広範囲に長けているので、強化された力を頼りに振り回せば本当にそれで済む。

 

(さてどこから崩して逃げるか……いいえ、ここはいっそ取り押さえましょうか?)

 

 ……もうお分かりだろう。つまり動けない理由は実力差や数的不利如何では無く、彼らに対してどう被害を抑えるか(・・・・・・・・・・)。どうやって手加減をしようかということなのだ。

 

(別段、暴れても良いと言えば良いのですが、そちらの方が多大な問題が残りそうなのが懸念……また面倒な)

 

 理由自体はキャラバンへの慈悲でもなんでもなく。

 やろうと思えばやれるんだから可能ならそうしたかった、ただしワタシやフォボスが余計な迷惑をこうむるから止めよう、という優しさのやの字も無い考えがスマイリーにある様子。

 

 まあ理由自体は良く分かるものを掲げ、しかしてよく分からないままこの状況を作り出されているのだから、自己保身だとしても相対的には優しい方なのかもしれないが。

 

 向こうも一応警戒はしているのか迂闊に、速攻で動こうとはしておらず、まだ猶予はありそうだった。

 

(僥倖と言えば僥倖でしょうか)

 

 幸いにして背に武器はつったまま、なのでそれを即席の盾には出来る。ただ単に、避けるだけならそれでも良い。だから考えるべきは実質的に、集ったキャラバンメンバーの元一般人・現襲撃者への手加減方法の模索のみ。

 

 

 彼らがこちらを敵視した理由の解明、そんなものは後で良い。今にも状況は動こうとしているのだから。

 

 

「無様に撒き散らしちまえ」

 

 リーダーらしき元依頼人の無慈悲な宣言。

 それと共にいよいよ射撃が始まる……ことは無く、不気味なまでの静寂が支配する。1秒、5秒、10秒と、何ひとつとして動きが無いまま一方的な“睨めつけ”が繰り広げられて。

 

 あまりに中途半端なタイミングで、あっという間もなく銃口が火をふき、スマイリーに殺到した。

 

 フォボスの得物とも違う、見た目だけ正規の改造品らしいリュミエールウェポンの銃弾は、もしバリアー装置を持っているのならば(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)数発で削り切るに違いない。

 

「な」

 

 弾かれたような早さと滑らかさで、半身になり屈み、捻りつつ刀剣類を盾に回避しなければ。

 

「…………」

 

 一瞬の攻防を制され僅かながら空白が開いた、その隙にスマイリーは腰に下げたまま銃口を引き上げ、銃身上下逆さまな状態で強引に散弾銃を発砲する。

 躊躇い一切見られず。だが湧き上がる疑問……彼女は、手加減を模索していたのではないのか? 否、実はこれこそが、模索したからこそ出せた反撃の狼煙なのだ。

 

 ――その答えの根源はリュミエールウェポンの出自にある。

 

 そも【幻獣鬼】は謎こそ多いものの何も明らかになっていない訳では無く、その一つが奴らがいずると言われた【幻造領域】と呼ばれる、狭間の領域。それ自体は実のところまだ謎が多い方なのだが、研究を重ねたことで『まるで恐怖のイメージを具現化したような力と姿』に通づるものをそこから汲み出すことに成功した。

 

 それこそがリュミエールウェポン。そしてそう言った経緯で開発・研究を重ねられたがゆえに、これら武器群には《使い手のイメージにある程度ながら影響される》という性質も持つ。剣ならば切れ味上昇や斬撃飛ばし、銃ならば追尾弾、付与された属性があれば炎も氷も出せ、力を引き上げるのも範疇であり……もうお分かりだろう。

 

「ぐわっ!?」

「うお!」

「きゃあ!」

 

 すなわち、銃による威力の手加減と言う、武器本体や手足といった部位狙い以外での縛り行為すらも可能とするのである。元の破壊力がすさまじいのかバリアー装置を付けていてなおキャラバンメンバーの多くは体を後方へ投げだし、武器を弾き飛ばされてしまった。

 

「しくったな? 終わりだっ!」

「くたばれぇ!!」

 

 されど全員とはいかない。射線から逃れた者たちの内2人が左右から同時に射撃……したと同時に、片方の弾丸はナイフとかち合ってはじけ飛ぶ。もう片方は側面に掠めて軌道を変えるのみにとどまる。

 果たして―――スマイリーの肩口すれすれを通りすぎ、彼女のナイフは逆にクリティカルの軌道で男へと飛来。それを慌てて避けたか、避けないかの内に仲間のものと異なる銃声が轟いたと思えば、もう一人も先の者達と同様に吹き飛ばされていた。

 

「ちくしょゔ!?

「お静かに」

 

 悪態をついて構え直した時にはもう遅く、膝裏を蹴られ、剣鉈のみねで叩き伏せられ踏み付けられる。離れた位置で、元依頼人は苦々しい顔で彼女を見つめるも、銃は構えない。いいや構えられないのだ。……早業で投げ直されていたナイフにより、瞬く間に銃が破壊されたのだから。

 

 これもまたリュミエールウェポンの特性により威力や速度、破砕力を上げるつもりで投げた結果なのだろう。それを目立った改造無しで使いこなすスマイリーと彼らの差は歴然と言える。

 

「人質も確保いたしましたので、改めて質問をしても?」

「卑怯者の蛮能保持者(くそおんな)が!」

「そうですね、とても耳が痛い。……では質問いたします」

 

 見て分かるほどに怒り滾ったまま悪罵を飛ばしても、スマイリーはとんと堪えず。

 

「ワタシが蛮能保持者(イヴィル)だと何時見抜いたのでしょうか? 陣形も武装も、昨日今日の気付きで準備できる代物のようには見えませんが」

「はっ! 白々しいんだよ、コロニー追放を隠してこそこそあくどい事やってやがる不良騎士が! 随分なことを宣うんだな!」

 

 答えこそ明確には言わなかったが、少なくともスマイリーは確信には至った。――ああなるほど、ドミニア機関時代に見かけられた事があったか―――と。【機怪蛮能】も制御されているという建前、遠慮なくぶっ放していたのでそりゃあ分かる。

 

 分かるのだがまさかここまで恨まれていたとは、流石の彼女にとっても予想外であった。

 

「さて、ワタシは誰かを巻き込んだのでしょうか? 生憎と存じあげませんが」

「ここまできて白を切るのか、全ての元凶の分際でえっ!」

「……?」

 

 いや、本当に何を言っている?

 一方的に知られていた相手に白々しいだの元凶だのと言われても、スマイリーに言えることは、本当に何もない。フォボスへ言った『足掻き足掻かれ』こそ好めども、彼女がそれ目当てに事件を起こす気は毛頭ない。

 

「まさか先刻の巨漢や、件の事件の黒幕がワタシだとでも?」

「だとでもだぉ!? 追放された蛮能保持者以外に他に誰が居ると言うんだ!」

「…………」

 

 スマイリーは今、自分がとんでもなく乾いた、それこそ絵にも言われぬ顔をしているという自覚があった。

 

(……そう言えば先ほど天の恵みがどうと、“協会”所属の者のような事を口走っている奴が居ましたね。恵天派のさらに過激派、なのでしょうかね……ううむ)

 

 このご時世でも、むしろこのご時世だからこそ宗教も形を変えつつ継続しており、明確な宗教の名前こそないものの、まとめる組織は存在する。それこそが彼女が胸中にで呟いた“協会”。中でも恵天派は最大規模で《リュミエールウェポンは天から与えられし恵みである》と捉えており……それゆえに【機怪蛮能】を嫌悪する者も多いのだ。

 いや多いというのも烏滸(おこ)がましく、嫌う者達で集まりそれによって1大派閥が出来ているほど、と言った方が正しいのかもしれない。

 

(まあ順当と言えば順当な理由ではありますが、どうにも引っ掛かりを覚えてしまいますね。なんでしょう……真実であれども、それが全てを占めるわけで無いような……演技もあるような……)

 

 踏み付けは緩めず、武器もそらさず、言語化できる分の違和感をまとめていくスマイリー。

 

「……はぁ」

 

 元依頼人の発言だけをあえて愚直に受け止めて判断するなら。

 つまり総括すれば【蛮能保持者の追放者だから全ての元凶だと思って襲った】というとんだ思い違いの傍迷惑に他ならない。

 多くの要素が不透明なまま、辛うじて明確になった事実はゲンナリするしかないもので、さしものスマイリーの顔にも微妙に疲れの色が浮かんでいた。

 

 だがこのまま1人を盾に、というより台にしたまま動きを封じて睨みあっていても埒が明かない。また自分が不利にはなりそうだが、ひとまず周辺の者達が来てから逃げるなりなんなりする他無いだろうか、などと考えていて……もう一つの違和感に気付く。

 

(おかしい、どうしてここまで静かな……)

 

 そもそもキャラバンが辿り着いたここは人のいない停留所では無く、小さなジャンク・シティを改造したいわゆる“道の駅”。なので少なからず住人はいる筈なのだが、人の息づかいすらなくひたすらに閑散とし続けている。

 もしや……! そう考えてもう一方の脚へ重心を傾けた―――刹那。

 

「っ!!」

 

 ほぼ無挙動で鋭く低く跳躍すれば、先まで彼女が居た地点へ銃弾が殺到。地形で跳ねて、火花が踊り狂った。

 

「ぎゃぁあああああ!?」

「な、なな……おっ、おい! 何を!!」

 

 当然ながら踏み付けられていた男は避けられる筈もなく、バリアーの発動する音と共に血をまいて、再び地へと倒れ伏す。幸いにして息はあるようだがこの事は予定に無かったのか、元依頼人が抗議の怒声を上げるも、向こうからは複数人の嘲笑うような声しか聞こえない。

 

「おいおいおい、仕方ねぇだろぉ? 蛮能保持者相手に普通の奴と同じやり方は無理があるってよぉ」

 

 陰になって見えづらく、一見すると服装からしてキャラバンメンバーにも思えるが、どうにも様子がおかしい。裏切ったのか? それにしては、互いに負の感情こそ向けていてもそれ止まりだ。ならば本心なのだろうが、それにしたってやり方があまりにもいい加減に過ぎた。

 

(これは、どうも……厄介ごとの種が軒を連ねていたようですね)

 

 一応仲間なのは、事実なのだろう。ただし、仲間ではあるだけ、それだけのようにも見える。ならばこの勢い任せっぷりは……もしやレイダーなのか? そうなると中堅コロニー関連のあれはあながち的外れな(いさか)いでも無いのか?

 

 スマイリーが内心で舌打ちをするのに、まるで合わせたかの如く影からさらに多くの人間が現れる。吹き飛ばしたキャラバンメンバーも、劣化版だが新たな武器を構え直してしまっている。この状況でもなおどうでにもなる(・・・・・・・)からかスマイリーに焦りの色はない。

 

 とは言えそれはあくまで切り抜けられるだけ、状況自体は劣勢だ。しかもこの場を切り抜けても要らない問題を押し付けられ、挙句の果てに逃げるための“脚”すら借りられないと来た。

 

(ああもう、ふざけな……くださ…………ふざっっっけんな……!

 

 いつもの丁寧語はどこへやら、そちらが本性なのか違うのか荒げた語調で内心ドスをきかせると力強く小型ナイフを、そして散弾銃(ショットガン)を握りこむ。

 これでもまだ【機怪蛮能】を抜くことを迷っていた彼女は、さりとて無為に薄っぺらい慈悲もどきを見せている場合かと、まずはレイダーだろう者達を片付けるためにそちらへ意識を強く向ける。

 

 決着の時まであと僅か。

 込められし怒気、弾けるがまま放たれるまでの、誰も知り得ぬカウントダウンが始まって。

 

 そして……!

 

 

 

「「ちょっと待ったぁあああーーーっ!!!」」

 

 それを劈き、引き裂くような大声と共に1台の小さな車が、猛烈な勢いで飛び込んで来た。

 

「な、なんだぁ!?」

「構うか! 撃て撃て! 撃っちまぇえ!」

 

 とんでもない乱入を受けてキャラバンメンバーとその助っ人(?)の間に驚愕の波紋が広がるも、荒い号令のお陰で多少ながら平静を取り戻したのか、次から次へと弾丸を送り込み無謀な来客へ集中させる。スマイリーはそれを迎撃しているようだが、それでも数は彼らの方が多かろう。

 

 ―――バカが。どこの誰だか知らないが、格好付けしいは無様にくたばるのがお似合いなんだよ―――

 

 ……そんな彼らこそ、予想が及ばないおバカだったと、その闖入者である2人に気付かされることとなる。

 

「甘い!」

 

 まず前に出たのは白き影。2刀を閃かせた少女らしきその陰は弾丸をなんと全て弾き飛ばし、当たらないと見切った分は放置してさらに前へ跳んできたではないか。彼らは焦燥のままに迎撃しようとするが、それは一瞬ばかり影の薄れていたスマイリーが投げたナイフと、発砲した散弾銃の弾幕(ペレット)により実にあっけなく阻止され。

 

「やっ!!」

 

 息つく間もなく少女の刀が翻る。リュミエールウェポンの機能により“手加減”はしたらしいが、そんな事実を忘れるほど美しい一閃によってあっと言う間に1人、斬り伏せられてしまった。

 

「のこのこと! 袋のネズミだ小娘っ!」

 

 しかしなまじ近寄ったからか敵が多い。スマイリーは武器が武器ゆえに援護は難しく、使える物もギリギリ間に合わない。だからか勝利を確信した1人が、遅れて数人が銃を構えて遠慮なく撃ち込む。

 

 まずは小娘を獲ったと、そう思ったのは……浅はかで。

 

「あれ」

「はあっ!」

 

 銃弾を受け流して同士討ちさせるのとほぼ同時に2人へ剣線が走って崩れ落ち。

 

「ぐお……!?」

「ぎゃ!?」

「え、ちょ、はぁ!?」

 

 続けて撃つことが出来たのは奇跡だと言わんばかりに今度は3人、一気に持って行かれた……うえで下手に偏って密集したことが仇となり、スマイリーの次なる1射の方が命中すると言う有様。まるで彼らが1度行動する間に、先んじて3度行動をしているかのような、異様なまでの敏捷速度。

 

 彼女の行動の軌跡には淡く《輝》く結晶が舞い散り、まるで桜吹雪のよう。血生臭いこの場において、場違いなほどに華やかであった。

 

「疾風迅雷。悪いけど、ささっとやっちゃうから」

 

 見て驚き……その少女こそ、先ほど『鈍牙の黝騎士』を探していたあのツインテールの少女だったのだ。どうやらもう1人の来客に手を借りてここまで来たらしい。

 

「あ、こ、このガキの白い髪……桜色のリボン……まさかぁ?!」

 

 そして。

 どうやら少女は髪色とアクセサリーでふと思い出すほどに、コロニー間や【歓楽街】、ジャンク・シティでもかなり名のしれた音に聞こえし強者でもある様子。

 見ていたキャラバンもとい敵対者の誰かが震える声でそうこぼしたのを、別の誰かが聞き返そうとした。

 

 の、だが。

 

こらぁああっ!! 懲罰ですよぉおっ!!!

 

 その疑問もろともに掻き消すような巨大な怒りのひと声と、それを倍してなお足りないほどの《嵐》が突如として巻き起こり、キャラバンなのかレイダーなのか最早ごっちゃな彼らを巻き込んで吹き飛ばしたではないか。

 

「「「うぎゃぁああああああああー!?」」」

 

 必死に弾丸を放とうと、なけなしの刃物で立ち向かおうと、このレベルの暴風相手にはどうにもならず1/3近くが巻き込まれ、内数人が最寄りの建物と盛大にハグをかわす羽目となる。

 

「連携先の他コロニーを、信者の皆さんもいっぱい居るコロニーを巻き込むどころか! ドミニアの誉れである『騎士』の称号を持つ方へ不躾に刃を向けますかっ!! 恥を知りなさい、恥をっ!!!」

 

 先程の運転と言い、矢鱈と喧しさに富んだ登場。さぞや豪快な人物なのだろう……と思って顔を上げて見れば、その美しさに度肝を抜かれる事だろう。

 

 先の白髪の少女が無邪気で天真爛漫、しかして鋭くも可憐であるのなら―――こちらは砂金のように煌びやかなロングヘアで、青き瞳は美しく、しかしてスマイリーを超える長身の、美女と言うべきか。目算190㎝(・・・・)はあろう背丈にも拘らず体は少女に負けず劣らず引き締まっており、“スタイル”もまた少女に負けぬ見事なもの。

 

 されども1番目を引くのはその服装。

 ありていに言えば『修道服』なのだが、かぶっているウィンプルはともかくとして、衣服本体は腰までスリットが入っており中々にセクシー。首に巻かれた黒いチョーカーには銀の十字架が静かにぶら下がり、時折陽光を反射する。そんな服装にミスマッチな……リュミエールウェポンだろうシンプルな造りのガントレットが腕に、手にした剣の鞘だろうものが腰に、それぞれ装備されていた。

 

(出来れば顔を合わせたくなかった稀代の天才、麒麟児たる彼女だけでなく……まさかこの方まで来訪するとは。……いや、派閥を改革してしまった働き狂いならば、これこそが必然なのでしょうか)

 

 スマイリーには少女と女性、双方に覚えがあるようで、元依頼人に喚き散らかされた時とは異なる何とも言えない表情を浮かべている。

 

 そして知っているのは何も彼女だけでなく……。

 

「し、ししっ、しっ、シスター・ラプチァ!?」

「おおおい! 『闘聖』様はまだこちらにいらっしゃらない筈……!」

 

 彼女の、ラプチァの名を口にした途端、動揺が一気に広がって、元依頼人を含めてにわかに慌てだす。

 

「そうだ思い出したっ! あの小娘! 護刃の衆のユウカじゃねえかぁ!?」

「あの『桜姫』だと……ば、馬鹿野郎なんでそれを早く……」

 

 こちらも同様に少女、ユウカの名前を聞いて、今度は別の者達が震えと戦慄を覚えだした。

 

「何よ! ギリ赤銅の味噌っかすな『鈍牙の黝騎士』を倒す話じゃないのかい!?」

「勝てっこねえじゃねえかよぉ!!!」

「半端に強い奴が落ち着いてると思ったらあのクソ女、どこまでもっ……!」

 

 いつしか恐怖にまで変わった彼らは最早包囲網や襲撃どころじゃなくなってしまい、我先にと逃げ出すものまで出る始末。だがしかし、スマイリーは当然として、ユウカやラプチァに彼ら彼女らを見逃す気など、毛ほども無いようだ。

 

「げふぅ!?」

「さっきから小娘だガキだとバカにしてるの? ……逃がさないから」

「え。まま待ってよ!? いつ斬ったのよこれぇ!?」

 

 何故か刀で斬らずスピードとおみ足を活かして蹴り飛ばしに行くユウカは、悪あがきで構えられた銃をいつの間にか寸断しており、にっちもさっちも行かずまごついている奴らが追加で蹴られる。逃げようにも“速い”ユウカから逃れることは敵わず、追いつかれては高らかに音鳴り、人々が次々宙を舞う。

 刀も振るってはいるのだろうが、スマイリーの“早さ”と異なるあまりにも瞬間的な斬閃から、誰も逃れらていない。

 

「聞いて下さいシスター・ラプチァ! あのクソ女は」

「懺悔は後でいくらでも聞きます! 今は物理的処罰の執行ですっ!!」

「ぎぃぁああああ!!?」

 

 振りぬいた細い片刃の変わった西洋剣から、飛び出す先ほど同様の《嵐》にまたもや人が宙を舞い、仕方がないと影に隠れていた方のキャラバン(?)が武器を構えるも……やはりガントレットにも仕込みがあったようで、暴風が彼女を守る防壁と化す。

 明らかに大雑把な力であるのに、まるで動きを知っているかの如く、的確に芯で相手をとらえているのは研鑽のお陰なのか。

 

「こうなったらお前だけでぇ゛も゛」

「…………」

 

 何を思ったかスマイリーに殺到していく者も居はするのだが、敵うはずもなく無挙動のまま動く怪奇ステップで惑わされ、滑らか過ぎて見えているのに反応できない1撃などで、徐々に追い詰められていく。

 

(実に嫌な予感を覚えますね)

 

 そんな頼もしい助っ人? にもかかわらずスマイリーの心には暗雲が漂っていた。

 

「一旦逃げるぞ! 最終手段はあるんだっ!」

 

 彼女の心に悪い方で答えたのか、かなり遠間に居た元依頼人が何かのスイッチを押したと思うと―――なんと次の瞬間、大爆発。連鎖的に煙幕が起こり、加えてそれにつられたのか今度はアルマジロ型の幻獣鬼(ファンタズマ)まで寄ってきてしまい、この場は最早大混乱。

 

「『鈍牙の黝騎士』様! すみません、彼らを追うよりこの場を切り抜けますよ! 話はそれからで!」

「私も聞きたい事があるからよろしくね! じゃあ……ユウカ、推して参るっ」

「…………」

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げるキャラバン(?)たちを追うよりも、こちらに対処する方が先だと判断して、まずは協力して切り抜けるにし、金属音を鳴き散らす鋼アルマジロに向かい合う。

 

 とんでもない巻き込まれは、とんでもない形で、とりあえずの終息を見るのだった。

 

 

 ……地味に、分かりましたとは頑なに言わなかった、スマイリーのことは置いておこう。




いよいよ参加者様お2人のキャラが本格登場! 次回から基本的に出ずっぱりですのでお楽しみに。
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