【完結】自己肯定感ゼロのボクっ子陰キャちゃんを全肯定してみたら激重ヤンデレになりました   作:崖の上のジェントルメン

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46.みんなで遊ぼう!(2/2)

 

 

「っよし」

 

西川さんは静かに呟きながら、すっと小さくガッツポーズを決めた。

 

そんな彼女の背中に向かって、千夏さんが「凛ナイスー!」と叫んでいた。

 

ボクたちは今、モール内にあるボーリング場に来ていた。

 

見事ストライクを決めた西川さんへ、ボクたちは拍手を贈った。

 

「あっ、次さっぽんだよー!」

 

「は、はい」

 

ボクは足をガクガクと震わせながら、ボーリングの玉を持ち、レーンの前に立った。

 

「黒影さん、リラックスですよ~」

 

二階堂さんからの気遣いの言葉が、胸に染みる。

 

ボクは何度か深呼吸をしてから、ごくりと唾を飲み、「えいっ!」と玉を投げた。

 

 

ガタンッ!

 

 

ボールは、意図も容易くガーターに落ちた。そして、1本もピンのいない暗闇へと吸い込まれた。

 

「うわーーーー!もうやだよーーー!」

 

ボクの情けない慟哭が、辺りいっぱいに広がった。

 

 

 

 

 

「……ま、まあまあ、ボーリングも得手不得手あるから」

 

西川さんは苦笑混じりに、ボクを慰めようとしてくれた。

 

すべてのゲームが終わり、成績ごとに順位が発表された。

 

一位が西川さん、二位が千夏さん、三位が二階堂さん、四位が小岩瀬さんで、ビリッケツがボク……。

 

「ううう、恥ずかしいです……。みんなの前で醜態を晒してしまって……」

 

「初めの内は、みんな下手なのは当たり前だよ。気にしないで黒影さん」

 

「そーだよ!元気出してさっぽん!」

 

ボーリング場から出ても、ボクへの慰めの言葉は止まなかった。それほどまでに、ボクは落ち込んで見えたのだろう。

 

「“私”、昔っから本当に運動神経なくて……。どうやったらみんなみたいになれるのか、全然分からないんです……」

 

「いいよいいよさっぽん!下手なんて気にせず、一緒に楽しもーよ!」

 

「千夏さん……」

 

ボクは、彼女のあまりに明るい言葉に、思わず目が眩んだ。

 

「ん?さっぽん、どうして目を細めてんの?」

 

「いえ、千夏さんがあまりに明るくて、眩しかったんです」

 

「きゃはははは!なにそれ!さっぽん面白ーい!」

 

「あーし、さっぽんのそういうとこ大好きー!」と言って、彼女はボクを思い切り抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

……ボーリングの次にボクらが訪れたのは、ゲーセンだった。

 

ここでは、二人一組でゾンビを殺すシューティングゲームをやることになり、それぞれの反応を楽しむことができた。

 

「うわっ!きたきたきた!えいえいっ!!」

 

千夏さんは、怖がりながらも楽しそうにゲームをプレイしていた。

 

「ちょ、ちょっと待って、千夏、これどうすればいいの?」

 

「どうって、銃で撃てばいいんだよ凛ー!」

 

「い、いや、そう言われて……うわっ!?い、いきなり出てくるのは反則だって!」

 

凛さんはあまりゲームそのものに慣れていないらしく、おぼつかない操作に苦戦していた。

 

「いやーーーーー!!待って待って!!ムリムリムリ!!ほんとイヤ!イヤイヤ!!あーーーー!!!」

 

小岩瀬さんは、終始発狂していた。

 

ゾンビよりも小岩瀬さんの雄叫びにびっくりすることが多かったくらいだ。

 

目には大粒の涙が浮かんでいて、歯がカチカチと鳴っていた。

 

「こ、小岩瀬さん、大丈夫です。ゾンビゲームって、ある種のパターンがあって、角を曲がる瞬間とかに驚かしてくるのが大半なんです」

 

「ほ、ほんと!?黒影!う、嘘じゃないよね!?」

 

「え、ええ、だから、ちょっと心の準備をして貰えれば、少しはマシになるかと……」

 

ボクはボクで怖かったけれど、隣でボク以上に怯えている彼女を見て、少し冷静になれていた。

 

「か、角、そこの角を曲がると……ゾ、ゾンビ……」

 

「そ、そうです小岩瀬さん。そこの角はきっといますから、銃の準備を……」

 

そうして、ハラハラしながらゆっくりと角を曲がると……。

 

大量のゾンビゴキブリが、ボクたちに襲いかかってきた。

 

「みゃーーーーーーー!!!ゴ!!ゴォキブリーーー!!もう嫌!!帰るーーー!!おうち帰るーーーー!!!」

 

「こ、小岩瀬さーん!落ち着いてーーー!!」

 

泣き叫ぶ小岩瀬さんをなだめながら、なんとかゲームをクリアするのだった。

 

そして、このゲームを最もスマートにクリアしたのは、意外にも二階堂さんだった。

 

穏和でふわふわした雰囲気のある二階堂さんだけど、ゲームを始めた瞬間に、暗殺者みたいな目をしていた。

 

しかも彼女に関しては、二人ではなくソロプレイだった。

 

「ここで今のうちに銃をリロードして……はい」

 

 

ダダダダダダッ!!!

 

 

『命中100点!エクサレント!!』

 

 

終わった後に、ゲーム機から点数が発表される。その時に、ボクたちはみんな拍手していた。

 

「み、みーちゃん凄~い!めちゃくちゃ上手ーい!」

 

「ちょ、ちょっと美緒、あんたなんで怖がんないの!?こういうの苦手そうな顔してるのに!」

 

千夏さんと小岩瀬さんに褒められて、二階堂さんは少し照れていた。

 

「どうやって効率よく倒すか?に集中していたら、あまり怖いとは感じませんでした」

 

「ほえ~!ある意味みーちゃんは、そういうドライなところがあるから、いつも学年トップなのかも」

 

「ふふふ、千夏さんは褒め上手ですね」

 

二階堂さんはいつものように、口に手を当てて上品な微笑みを見せていた。

 

「も、もう怖いのはいや……。なんか、可愛いのがいい……」

 

すっかりトラウマを植え付けられてしまった小岩瀬さんは、救いを求めるように、可愛らしいキャラクターがストラップになっているガチャガチャのところへと移動していた。

 

「あっ、“ちいきゃわ”のストラップ……!ほ、欲しい……」

 

ハイライトが消えていた小岩瀬そんの瞳に、きらりと輝く星が光った。

 

「うーん、これも可愛いなあ。あ、でもこれも捨てがたい……。うーん、何回かガチャ試そうかなあ……」

 

ぶつぶつと独り言に興じている小岩瀬さんの隣に、ボクはすっと音もなく立った。

 

「ちいきゃわのストラップ、ですか?」

 

「うん、そうそう。このガチャ限定のやつもあるから、やるかどうか迷ってるんだよね」

 

「ふふふ、そうなんですね」

 

「………………」

ふと気がつくと、小岩瀬さんはボクの顔をじーっと観察していた。

 

「……え、えっと、どうしました?小岩瀬さん」

 

「いや、黒影って……ちゃんと、笑う時は笑うんだなって」

 

「え?」

 

「別に、それだけ」

 

「………………」

 

小岩瀬さんは頬を赤く染めて、ぷいっとボクから視線を外した。

 

「ふふふ、やっぱり瑠花さんはツンデレですね」

 

そんなボクらの様子を遠くから見ていた二階堂さんが、ニヤニヤしながらこちらへ近づいてきた。

 

「な、なんだよ美緒!べ、別にウチは、デレてなんかいないし!」

 

「あら?今のがデレてるだなんて、誰も言っておりませんが?瑠花さんはさっきのデレていたという自覚があるのでしょうか?」

 

「なっ!?ち、違うって!!もう!この屁理屈女!」

 

「ふふふ、屁理屈も理屈の内ですよ。瑠花さん?」

 

「むーーーー!!腹立つーーーー!!!」

 

小岩瀬さんの頭から湯気が立っているのを見て、ボクはくすくすと小さく笑った。

 

「おーい!みんなー!こっち来てよー!」

 

遠くにいる千夏さんが、ボクたち三人に向かって手を振っていた。

 

三人でそこに向かってみると、そこにはプリクラを撮る機体があった。

 

「5人でプリクラ撮ろーよプリクラー!」

 

「プ、プリクラ、ですか?」

 

「そうそ!ほら、さっぽん!早く早くー!」

 

千夏さんに手を引かれて、ボクはプリクラ機の中に入った。

 

『みんな、ポーズを決めてね!』

 

機体の中いっぱいに、甲高い女の子の声が響き渡った。

 

「みんな!これやってこれ!」

 

千夏さんは親指と人さし指の先を交差させて、小さなハートマークをつくっていた。

 

「プリクラなんて、久しぶりだなあ」

 

西川さんは何か懐かしむようして、右手でハートをつくった。

 

「ふふふ、瑠花さん、そうじゃなくて、指はこうですよ」

 

「え?うーんと、こう?」

 

なかなか上手くできない小岩瀬さんに、二階堂さんが優しく教えていた。

 

「ほらほらさっぽんも!こうやっ てみて!」

 

「あ、は、はい!」

 

千夏さんに肩を寄せられて、ボクはたとたどしいハートをつくった。

おお、な、なんて言うことだ。このボッチ陰キャオタクのボクが、プリクラを友だちと使う時が来るなんて……!

 

(ううう、なんだか……じーんとくるなあ……)

 

今年は、目まぐるしく自分の環境が変化している。それも、間違いなくいい方向に。

 

このまま楽しい時間が過ごせたらいいなと、みんなの顔を見ながらそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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