機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

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なんか1000文字以上じゃないと投稿できないみたいなので、プロローグと第一章合体させます。


プロローグ/第1章「英雄の娘」

「おぎゃあー、おぎゃあー、おぎゃあー!!」

燃え上がる爆焔の炎の中、一人の赤子が鳴き声を上げている。

その両隣には、この子の両親だろうか、建物の瓦礫の下敷きとなり、息絶えていた。

そして、この赤子もまた、炎に包まれるところであった。

そこに。

「―ッ!」

グレーのパイロットスーツを着た、赤髪の一人の少女が、火を躊躇わずやってきた。

スーツ姿の白髪少女が後に続く。

「何やってんの!?こんなとこ入ったら、あんたも死ぬわよ!?」

「でも!建物の中から、子供の鳴き声が聞こえるん、です!!」

そしてその赤髪少女は、赤子の前までやって来る。

その両隣の、おそらく両親であろう遺体を見て、彼女は口を抑えて絶句する。

「ちょっと・・・・・・―ッ⁉」

後から来た白髪少女も、その光景を見て言葉を失う。

赤髪少女、我に返ると首を横に振り、赤子の体を抱えてもう一人を見る。

「とにかく、今はこの子を助けましょうッ!」

白髪少女も頷き、この建物からの脱出を試みる。

 

それから16年の月日が経った。

A.S. 141。

一つの戦争が幕を閉じ、その復興に数年間かかったが、今はその見る影もなく、平和な日常が戻ってきていた。

戦火に巻き込まれたアスティカシア高等専門学園も、再建が果たされ、学生数も徐々に戻りつつあった。

その学園は本日、新年度を迎え、新たに数百人が、この学園にやって来ることとなった。

“英雄”の娘━━ミランダ・マーキュリーも、その一人に含まれていた。

彼女は輸送船の中の、自身のMSのコックピット内にて、学園への到着を心待ちにしていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

私の名前はミランダ・マーキュリー。今日からこのアスティカシア高等専門学園に通う、一人の学生だ。

今日は入学式。私の他にも数百人の学生が、新たにこの学園へやって来る。

なじみ深い顔、見知らぬ顔、様々あって、これからの学園の日々を思うと胸がワクワクする。

私は辺りを見渡す。不安そうな横顔、満面の笑み・・・人それぞれで、面白い。

・・・そんな中、私はある少女に目がいく。朱色髪で凛々しい顔つきの少女。この場にいるということは当然私と同い年のはずだが、とてもそうには見えない。

そんな女の子がじっと私のことを見つめていた。

どうしたんだろう?

と思わないでもないが、私を見つめているのは、何も彼女に限った話ではない。

なぜなら私は、今この場で最も目立っていたからだ。

「あれが、英雄の・・・」

「すげえ、貫禄が違う。」

「でも、俺達と同い年らしいぜ。」

そう、私は、かつて世界を救ったとされる、英雄の娘。

小さい時からグループの子供お披露目会などで、たくさんの視線を浴びる経験をしてきているので、こういう状況には慣れている。

 

ところで、私にはママとお母さんがいる。

普通、ママとは母親のことを指す言葉なのだが、我が家では、ママとお母さんは別人だ。

で、そのママっていうのが、先ほどから“英雄”と呼ばれている、その人ご本人である。

名前は、スレッタ・マーキュリー。クワイエットゼロ事変の際、ガンダムに乗って世界を救ったとされ、以来“英雄”と呼ばれ、尊ばれる存在となった。

クワイエットゼロ事変というのは、私が生まれる前にあった戦争のことで、くわしくは知らないのだけど、とあるテロ組織によるフロント襲撃事件から始まり、最終的にママのさらにそのお母さん━━私からするとおばあちゃんになるのかな━━と戦うことになってしまった、とだけ聞いている。

今ママは、ベネリットグループの総裁兼、真・御三家の筆頭・株式会社ガンダムの統括代表を務めている。

もう一人がお母さん、名前はミオリネ・レンブラン。ママとは学園時代の同級生らしく、学園卒業後に結婚、現在はママの副官として、同じく副総裁、ならびに副代表を務めている。

そもそも元々は、お母さんが総裁候補であったらしい。だが、例のクワイエットゼロ事変によって自分や世界を救ってくれた、ママの方をトップに推薦したそうだ。

そして、当然のことながら、私はママとお母さんの実子ではない。養子だ。

幼いころ、地球を訪問していた二人に、火災現場から救出されたと聞かされている。当時は戦争終結数年後で、まだテロ組織の残党が暴れており、その戦火に巻き込まれたとも聞いている。そこで、私の実の両親は命を落としたとも。

ともかく、私はママとお母さんに育てられ、今もここにいる。そして良くも悪くも、“英雄の娘”と呼ばれるようになったのだ。

 

さて、話を戻すと、注目を集めている私だが、朱色髪の少女の視線は、他の者とは少し違った。なんというか、私の様子を伺っているような・・・

ならば。

私はその少女の元へ歩みを進める。

「初めまして。私は、ミランダ・マーキュリー。よろしくね。」

すると彼女も口を開いた。

「有名人、そちらから声をかけてもらえて嬉しいわ。

私はエリ・ナボ。あなたに一つ、お願いがあるのだけど。」

私は続きを話すよう促す。

「何かしら?」

「私を、ぜひともガンダム寮に入れてほしい。」

ガンダム寮―株式会社ガンダムが後ろ盾となっている学園寮だ。

株式会社ガンダム、ジェターク・ヘビー・マシーナリー、ブリオンの三社が、ベネディットグループ内の巨大企業で、通称〈真・御三家〉と呼ばれる。その中でも株式会社ガンダムはその筆頭で、従業員数最大、業績最優秀の会社だ。

私は統括代表の娘ということで、一年生ながら、ガンダム寮の寮長に任命された。“英雄の娘”を差し置いて、誰も上に立つことはできないと言うのだ。

そんなわけで、ガンダム寮に入りたいのなら、私に声をかけるのはよく分かる。

とはいえ、この話をするのに、ここでは間が悪いな。

「分かった、あとでうちの寮の寮長室まで来て。手続きはその時にしましょう。」

それだけ言って、私はエリの元を離れた。

 

入学式が終わり、私はガンダム寮へと足を運んだ。

ガンダム寮の目の前には、2年生・3年生の寮メンバーが勢揃いして、整列していた。

私の姿が見えると、彼らは口を揃えて祝福の言葉を送った。

『ミランダお嬢、ご入学、誠におめでとうございます!!』

いやいや、私は後輩だっての。

上級生にここまで敬仰されると、さすがに歯がゆく感じる。

とはいえ、一応は社長の娘、相応の振る舞いをしなければならない。大変だなあ。

とりあえず、寮長室まで案内してもらった。

 

しばらくすると、寮長室のドアがノックされた。

「ミランダ様、ご友人を名乗る、エリ・ナボという新入生が参りましたが、いかがいたしましょうか。」

「通して。」

ドアが開けられると、先ほど会った、エリが立っていた。

「どうも、先ほどぶりね。」

エリは私に臆することもなく、堂々と中に入ってきた。

私も砕けた口調で、それに応じる。

「ええ。それで、一応うちの寮に入りたい理由を聞いておいてもいい?」

するとエリは、淡々と言葉を口にする。

「まずはもちろん、ガンダム寮が、学園で最も規模と収容人数が多いから、そこに入りたいと思うのは当然でしょう?

そして、もう一つ・・・・・・」

そう言うと、エリは近づいてきて、私の顔を覗きこんだ。

「英雄の娘と言われる、あなたのことをよく知りたかったから。それが理由じゃ、ダメ?」

ドキッ。

そんなこと言われると、照れるじゃないか、まったく。

まあもともとこちらとしても、断る理由もない。

それじゃああっさり、入寮許可していっか━━

「邪魔するぞ、ミランダ・マーキュリー。」

しかしそこに、新たな来客が現れた。

 

現れたのは、ジェターク寮寮長の、ザイリ・ニールだった。

ザイリは、ジェターク社の御曹司で、私とも幼馴染みだ。年は私より一つ上、パイロット科の2年生だ。

ザイリは、昨年まで、この学園の成績最優秀者、いわゆる“ホルダー”であった。しかし今年私が入学するということで、ホルダーの地位は明け渡され、現在は他のみんなと同じ、通常の青緑の制服に戻っていた。

うしろに続くのは、ジェターク寮のメンバー・・・・・・と思いきや、なぜかフロント管理者の大人達であった。

「どうしたの、ザイリ?」

ザイリはエリを一瞥し、私の方を向く。

「俺の用があるのはお前じゃねえ、コイツだ。」

そして、エリの方を指さした。

「エリのこと?彼女は今日、ガンダム寮に入ってきたメンバーだけど・・・・・・」

するとザイリは、声を荒げてエリの方を見た。

「どういうことだ、これは!?」

同時にタブレットの画面をエリに突きつけた。そこには驚きの内容が書かれていた。

「お前の所有機が、我が社の新型MS、しかも実戦用装備とは!?」

 

自身が学園内で使用するモビルスーツは、入学式の際にフロント管理者に預けられ、チェックを受けなければならない。ママ達の学生時代には、そのようなルールはなかったみたいだけど、学生に紛れ込んでテロリストが学園に侵入するという事態が起こったらしく、以後このルールが導入された。

問題だったのは、エリのモビルスーツがジェターク社製の新型であったこと、そして学園仕様でなかったことだ。

ザイリが続ける。

「かつて、ジェターク社のMSがテロに使用され、それが原因の一つとなって会社解体の危機にまで陥ったことがあるらしい。だから、俺としてはこの事案、決して看過できない事態なんだよ!!」

エリは何も言わず黙ったままだ。

管理局の人間がエリを取り囲む。

「エリ・ナボ、この件について話がある。ご同行を願いたい。」

私がそれを制止する。

「ちょっと待ってください、エリがガンダム寮に入ろうとしている以上、私も事情を聞く権利があります!エリ、話してくれるよね。」

するとエリは、ため息をつき、話し始めた。

「どうもこうも、ジェターク社はベネディットグループ最大のMS開発事業者じゃない。別に他企業の人間が貴社のMSを持っていても、おかしくないのでは?」

すると管理局の一人が口を挟む。

「ならば、出身企業名を言え。そこに問い合わせる。」

エリはまた深く息を吐いたあと、自分の出身企業を口にした。

「私の所属は・・・」

そして驚くべき名前が挙がった。

「ヴァナディース機関。」

 

『ヴァナディース機関だと!?』

その場にいた、エリ以外の全員が声をあげた。

ザイリが激昂して、エリに詰め寄る。

「ふざけるの大概にしろッ!ヴァナディース機関は、俺らの親世代が生まれるさらに前に、滅亡した研究機関だぞ!?」

エリは静かに反論した。

「それは存じている。だが、その後我々が、ヴァナディースを再生した。何も不思議なことはないだろう?」

「だが!ベネリットグループの傘下組織にも、その末端にも、そのような組織の登録はないッ!!」

ザイリの怒りに呼応するように、フロント管理局の人達も、エリを取り押さえようとする。

しかしエリに、抵抗する様子はない。

まずい、このままではエリが・・・

そのため私は、その動きに待ったをかけた。

「待ちなさい!現時点を持ってエリ・ナボは、ガンダム寮への入寮を受領した。彼女の身柄は、株式会社ガンダムが引き取らせてもらう。」

「ミランダ!」

ザイリは私に食ってかかるが、私は怯むことなく、冷静に諭した。

「ザイリ、この学園には、物事を決める際、最も適当な方法があったはずよ。」

ザイリは何かを悟ったように、苦々しそうに顔をしかめた。

「・・・決闘か。」

「ええ。ザイリ・ニール、エリの身柄をかけて、あなたに決闘を申し込む!!」

周りにいたフロント管理局の人達は、慌てたように私を止める。

「ミランダ嬢、これはフロントの治安上の問題です!」

「どうかお考え直し頂きたい。」

しかしザイリは、彼らを制止した。

「いや・・・・・・この学園において最も重要な掟━━それは決闘を申し込まれたら、必ず引き受けるということだ。ジェターク社の御曹司である俺が、その掟を破るわけにはいけない。」

そしてザイリは、覚悟を決めて宣言した。

「ミランダ・マーキュリー、その決闘、引き受けよう。」

 

 

ジェターク寮学園艦のハンガーでは整備班の生徒たちがあわただしくモビルスーツの発進準備をしていた。シャッターが開き、ジェターク社の新型MS・ジンクオ、その黄色で塗装されたザイリの専用機が、気密室へ運ばれていく。

「キャリアを2番ゲートに回せ!予備のパックも載せとけよ!」

ジェターク寮のメカニックが指示を出した。

艦橋ではオペレーターが発艦の手続きをすすめる。

「キャリア、2番ゲートへ移動。予備パッケージ搭載完了」

ジンクオがコンテナに収納される。

━━発艦準備フェーズ02。各担当は最終確認。

艦橋には、ザイリの弟・レイジを始めとして、ジェターク寮の面々が揃っていた。

決闘のためにザイリはパイロットスーツに着替え、ジンクオのコックピットに乗り込んだ。

そこへ、ザイリの父でジェターク社CEOのラウダ・ニールから通信が入る。

「ザイリ、分かっているな。何としても決闘に勝利し、被疑者の身柄を確保しろ。捕らえればジェターク社の危機を阻止できるだけでなく、株式会社ガンダムへの牽制にもなる。」

「分かっています、父さん。」

戦術試験区域のゲートが開き、ジンクオを載せたコンテナが地表に現れる。

━━戦術試験区域の環境設定情報、入手。コリオリ補正、問題なし。

オペレーターの声でコンテナのロックが解除され、ハッチが開いた。

━━生体情報、識別完了。パーメットリンク、良好。

「FP001、ザイリ・ニール。━━ジンクオ、出るぞ。」

 

一方のミランダ側。

ジェターク寮と同様にモビルスーツの発進準備が行われ、同じくコンテナが地表に現れる。

かなり堂々と、決闘を申し込んでいたが、当然ながら今日入学してきたミランダにとって、初めての決闘となる。

しかも初っ端から、相手は元ホルダーだ。容易な戦いではない。

ザイリは呟く。

「いくら英雄の娘とはいえ、所詮はひよっ子だ。この学園での決闘というものを教えてやる。」

そしてさらに言葉を続ける。

「さて、使用機はどこの社のものだ?ガンダム寮だから、どこの社のMSでも入手できるだろうが・・・」

しかし、ザイリの予想は大きく外れることになる。

コンテナが開き、ザイリのみならずこの決闘を見学していた学生全員が驚愕の声をあげる。

『ガンダムだと!?』

そう、20年前までは禁忌と呼ばれ、しかし同時に数機作られていた、あのGUND-ARM、通称ガンダムが、その場に姿を現したのだ。

クワイエットゼロ事変終結間際、スレッタが起こした奇跡の代償として、その時世界に存在していたガンダム計・四機が消滅。その後総裁となったスレッタは、ガンダムの製造を禁止していたわけではないが、各社クワイエットゼロのトラウマから、なんとなくガンダムの製造から手を引いており、この20年間、ガンダムが表舞台に現れることはなかった。

その暗黙の了解が、本日、破られたのである。

「GP001、ミランダ・マーキュリー、アイリス、いきます!」

 

決闘を行う際には、口上を言う必要がある。その言葉は、ママが学園にいた時から、変わっていない。

まず、ザイリ。

「勝敗はモビルスーツの性能のみで決まらず。」

私がその言葉を引き継ぐ。

「操縦者の技量のみで決まらず。」

そして両者声をそろえて、

「ただ結果のみが真実!」

「決心(フィックス)、解放(リリース)!」

決闘委員会のメンバーの一人―ブリオン寮寮長・コルネリウス・コーニングスの号令とともに、決闘が始まった。

 

ザイリのジンクオは、接近戦に持ち込むため、距離を詰めてくる。

「いくらガンダムでも、パイロットはひよっ子!勝機は十分にある‼」

対する私は、若干下がりつつ、ジンクオのサーベルの攻撃を、実刀・バルムンクで受け止める。

「クッ」

さすがジェターク社の新型、ジンクオ、やはりパワーがすごい。

クワイエットゼロ事変以後、当時ベネディットグループ最大規模の企業であったグラスレー社は、CEOの息子が事件を起こしたため解体され、ジェターク社に吸収された。

そのため、ジェターク社はもともとパワー自慢のMSを製造していたが、グラスレーの技術を加えることによって、スピードにも意識するようになり、いわゆる高機動型のMSの製造に転換した。

そして完成したのが、このジンクオである。

 

とはいえ、パワー自慢なのは変わらない。アイリスはどちらかというとスピード型の機体だから、接近戦では不利になる。

私は一度距離をとり、ガンビットでの攻撃に切り替えた。

しかし、先述の通りジンクオはスピード戦にも長けており、ガンビットの攻撃を全て避けた。

ザイリは再び距離を詰めようとする。

 

「『逃げたら一つ、進めば二つ』・・・だったよね、ママ!」

私は、距離を取る作戦から、迎え撃つ作戦に変更した。

ガンビットのビームが当たらないのでは意味がない、そのためガンビットは、アイリスの推進力に回す!

そうして再び、ジンクオのサーベルをバルムンクで受け止める。

だけど今度は、パワーが違う‼

「何ィ⁉」

ジンクオのサーベルが折れ、思わずザイリは動揺してしまう。

その隙を見逃さない!

「散開!!」

推進力に回していたガンビットを分離し、ジンクオの四肢を貫かせる。

そして最後に、アイリスに装備されたもう片方のバルムンクで、ジンクオのブレードアンテナを切断した。

 

WINNER MIRANDA MERCURY

 

私は、エリに連絡を入れる。

「勝ったよ、これであなたが、拘束される心配はなくなった。だから・・・エリのこと、もっとよく知りたい。」

エリは微笑みながら答えた。

「もちろん、心ゆくまで。」

そう言ってエリは、通信を切った。

 

ミランダとのやり取りを終えたエリ・ナボは、さきほどとはまた違ったふうに、薄ら笑みを浮かべた。

「これは、面白いことになりそうね。」

 

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