機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

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第10章 メメの願い

はあ~、まったく大変な目にあったよ!

あのあと、私達の修学旅行は中止になり、直ちに学園への帰路へ着くこととなった。

予定としては、今日農業体験という、めちゃ退屈な日で、明日はラフティングやキャンドル作りといった、修学旅行鉄板の行事があったってのに。

でもまあ、襲撃があったんだ、仕方ないよね。

そうそう、エリやザイリとは、直後に再会した。二人とも無事でホント良かったって、私はとても喜んだんだけど・・・・・・エリもザイリも、複雑な顔をしていた。

何かあったのだろうか。

ともかく、私達は学園に帰るのにあたり、なんとベネリット治安維持部隊の旗艦、ジャッジメントで送り届けられることとなった。行きは普通の輸送船だったのに・・・

ホント、仰々しいったらありゃしない。

私達は、かなり居心地悪い思いをしながら、学園へ帰ることになってしまった。

あ!でも、ママと直接会えたのは良かったかな。

ママは例に漏れず今回も、かなり心配してくれていた。

いつも通り、抱き合って喜び合う。

周りの搭乗員の人達には、だいぶ白い目で見られたけど・・・・・・

 

シャドーアイの母艦、アルデウスのブリッジ。

「はあ~~~」

ディス・マジェスティック大佐は、深くため息をついた。

ザット艦長は尋ねる。

「どうなさいました?」

「いやな、スレッタ・マーキュリー、相当な化け物だったなって思ってな。

・・・・・・あれを討ち取れって、さすがに無茶もいいところだろ。」

「はあ。」

ザットは適当な相槌を打つ。

ディスは続ける。

「まあ、議会連合の本部艦隊を動かす交渉が、順調に進んでいるそうだ。穏健派の議長も、ついに重い腰を上げたとか。

━━いよいよ始まるぞ、全面戦争が。」

この言葉を、奥の廊下で盗み聞きしていたメメははっとする。

(このままじゃ・・・・・・)

 

メメが動く。

彼女はMS格納庫まで駆け足で向い、自身の機体であるルブリス・イブに飛び乗った。

すぐにシステムを起動させる。

近くにいた整備士達はすぐに異変に気づいた。

「おい!イブが勝手に動いている‼」

「発進の命令など、出ていないぞ⁉」

メメは構わず、ビームマシンガンでハッチを破壊する。

このことは、すぐにブリッジに報告がいった。

「何、ミヤシラ少尉のルブリスが動いているだと⁉命令は出していないぞ、おい!すぐに呼び戻せ‼」

ザット艦長は、声を上げるが、ディスはその言葉を制止した。

「いや、行かせてやろう・・・・・・ともすれば、面白いことになるやも。」

ディスはニヤリと笑った。

 

ジャッジメントで突然アラートが鳴る。

CICが状況を報告する。

「艦長!本艦へ急速に接近する熱源あり、数1、これは・・・・・・議会連合アサルト所属、ガンダムルブリス・イブです‼しかし、このスピードは・・・・・・⁉」

ブリッジに動揺が走る。

クラフ艦長が指示を出す。

「第一戦闘配備、モビルスーツ発進準備を━━」

しかし、スレッタがその言葉を遮る。

「緊急回避!機関全速、面舵いっぱい‼」

(このスピードは・・・・・・)

スレッタの頭には、警鐘が鳴り響いていた。

 

一方、ルブリス・イブに乗ったメメは。

「━━くっ!はあ、はあ・・・・・・」

あまりのGとデータストームに襲われていた。

それもそのはず。今のルブリス・イブは、パーメットスコア4、その出力を全てスラスターに回して加速しているのだから。

そこまでしてまで、メメは早くジャッジメントのところへたどり着かねばならなかった。

なぜなら。

「終わらせなきゃ!私が‼」

 

ルブリス・イブが、ジャッジメントのブリッジ前ギリギリまで突っ込み、直前で急停止する。

「グウゥ!」

コックピットには、とてつもない衝撃が届く。

それにもかまわず、メメはビームマシンガンを構える。

そして、ジャッジメントに通信を繋ぐ。

「ベネリットグループ旗艦、ジャッジメント級へ勧告する。私は、宇宙議会連合特殊部隊所属、メメ・ミヤシラ少尉だ。直ちに所属モビルスーツを含む全武装を無力化した上で、投降せよ。この命令に従わない場合は、貴艦を撃破する。」

スレッタは押し黙る。

ブリッジにいるメンバーは全員スレッタの方を見た。

しかし。

ルブリス・イブは突如、右から急速に接近したモビルスーツに押し出された。アイリスだ。

「何ィ?」

ミランダは心配して、ブリッジの方を見る。

「みんなは⁉・・・・・・無事?」

その瞬間、スレッタが指示を出す。

「右60度回頭、主砲及びミサイル装填、私の合図と共に撃て‼」

「「は、はい!」」

操舵手並びに砲撃手が、緊張の顔のまま返事をした。

その間に、アイリスvsルブリス・イブの戦線は開かれている。

その合間を縫って、支援砲撃が行われる。

メメ側が不利な状況に立たされた。

「クッ!」

まずは、アイリスとの戦闘に専念すべく、接近する。ジャッジメントの方は後回しで、攻撃の回避にのみ集中する。

だが、それすらもスレッタの想定内で、ルブリス・イブはジャッジメントの砲撃に翻弄されることとなった。

 

一時はブリッジに銃口が向けられハラハラしたけど・・・・・・

ママ、やっぱりすごい!

先ほど私は、ママからの急な通達を受けて、アイリスを艦後方部から緊急発進させた。

そして、ママの指示通り、前方に回りこみ、敵モビルスーツに体当たりして、ジャッジメントから引き剥がした。

それが、因縁のガンダムルブリス・イブであったのだから驚きだ。

かくして、戦闘が始まったんだけど・・・・・・

いつもより、格段に戦いやすい‼

なぜなら、全てママの指示通りアイリスを動かしているにすぎないのだから。合間を縫って、艦の砲撃やミサイルが、後方から飛んでくる。でも当然、アイリスには当たらず、敵モビルスーツの方へ直撃する。

「くーッ!」

敵パイロットの動揺が、まるで伝わってくるようだ。

「艦ビーム砲、照準敵モビルスーツ右部。

ミランダは距離をとってガンビットを展開して!」

言われた通り行う。

直後、ルブリス・イブの右腕と足が撃ち抜かれた。

「ミサイル2弾、敵機体後方部へ!

アイリスのガンビットは左部を撃ち抜いて。」

全ての攻撃が敵機体に当たる。もうボロボロだ。

しかしママは油断しない。

「今!敵頭部をビームサーベルで切断して、そのままコックピットを回収‼」

なんだこれ、流れ作業か。

こうして、ルブリス・イブは鹵獲された。

 

ルブリス・イブのコックピットから出てきた、メメ・ミヤシラと名乗る人物は、手錠を掛けられ、取り調べ室まで連行された。

私やママ、クラフ艦長がガラス越しにその様子を見る中で、副長のパトラ・キャンベラ少佐が尋問を行う。

「まずは所属と名前を答えて。」

メメは、無表情で淡々と告げた。

「宇宙議会連合特殊部隊所属、メメ・ミヤシラ、階級は少尉。登場機は、ガンダムルブリス・イブ。」

パトラさんが続ける。

「あなた一人で本艦を急襲してきた目的は?指揮官の命令?それとも、あなたの独断かしら?」

ママも部屋の中に入る。

「それは私も聞きたいな。どうしてこんな無謀な真似をしてまで、わざわざやって来た?」

すると、メメの様子が急変した。

ママを睨みながら答える。

「スレッタ・マーキュリー、貴女さえいなければ!貴女が撃たれれば全てが終わる‼」

そして、ママに襲いかかろうとする。私は驚いて、思わず部屋の中に突入しかけた。しかしその前に、メメの後ろに控えていた衛兵に取り押さえられる。

しかし、なおも言い募る。

「議会連合は、エアリアルと、もう一機のガンダム、アイリスをとても危険視している、それを討ち取るためだけに、本隊が動員されるほどだ。大戦となれば、また多くの人命が失われる。そうなる前に!たとえ私が死ぬことになったとしても、二機のガンダムを鹵獲または破壊せねばならない‼」

メメは拘束を振りほどこうと暴れる一方、ママは冷静に問いかける。

「なぜ、お前がそこまでする?とても成し遂げがたいことは、理解できるはずだ。」

するとメメは、さらに顔を歪ませた。

「よくも平然と、そんなことが言える!貴女が、ソフィー姉さんやノレア姉さんを殺したんだ‼」

「な⁉」

何故か、ママが目を見開いた。

「お前がどうして、ソフィーさんやノレアさんの名を・・・・・・」

「私は議会連合にガンダムパイロットとして引き抜かれる以前、『フォルドの夜明け』所属だった。ソフィー姉さん達の姿を直接見たのは、私がまだ幼いころだ。二人は死後も、地球の声を届け、そして散った犠牲者として名を馳せた。同時に、その二人を殺した仇敵・『スレッタ・マーキュリー』の名も、組織内では広がった。」

「私が、二人を・・・・・・」

ママは押し黙って俯く。

メメはもはや、絞り出すような声で言った。

「私はもう、家族が、仲間が、誰一人傷ついてほしくない!

だから私が戦う、なるべく戦線を拡大させずに、早期にベネリットを降伏させて、もとの、議会連合が作る平穏な世界を取り戻す‼」

すると、ママはゆっくりと顔をあげた。

「それでも・・・・・・私は戦い続ける。議会連合の独裁ではなく、皆が平和に暮らせる世界を作るために。」

そして立ち上がる。

「次の大戦、ゼロとはいかないが、ベネリット側はもちろんのこと、敵方からも犠牲者を出さないよう憂慮しよう。」

ママはそのまま部屋を出ようとする。背後からは、未だメメからの罵声が響く。

「何が平和だ‼ベネリットの存在がある限り、地球が救われることはない。

お前の行いは偽善だ。そんなにも世界を支配したいか‼」

ママは、何も答えない。

 

 

ジャッジメントを除く、ベネリット治安維持部隊の全艦は、株式会社ガンダムの本社プラント、サジットの前面に展開した。

そこに、議会連合の艦隊が接近する。

その様子に、ケナンジは思わず目を見開く。

「そんな・・・・・・まさか!」

そう、数が多すぎるのだ。

これが、アサルトのみとは到底思えない。

ケナンジの頭には、最悪の想定が浮かび上がった。

「ついに、議会連合の本隊が動いたのか。そして、その全戦力が、投入された・・・・・・」

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