あとを任されたケナンジが、陣頭指揮を取る。
「これより、ジャッジメント一隻で、アサルト旗艦・アルデウスを討ち取る!その他の艦隻は、全て敵母艦へ‼」
クラフもそれに続く。
「本艦、右60度回頭、主砲及びミサイル、照準・正面敵艦右翼。
━━撃てェ‼」
ジャッジメントのミサイルが、アルデウスや、その周辺のモビルスーツに着弾する。
「回避、取り舵20!」
アルデウスのザット艦長も負けてはいない。懸命に応戦する。
そこへ、スレッタのエアリアルが迫る。
「一番隊、三番隊、敵モビルスーツに対処。私に続け!」
エアリアルの後ろについたジンクオ・シグマや、ブリオン社のデミ・ガンドゥが、数機のカラゴール、及びガーゴイルを破壊する。
しかし、ガーゴイルのクローで、ジンクオ・シグマが一機撃墜する。
するとスレッタはガンビットで味方機体を守りつつ、ビームライフルでガーゴイルを撃ち落とした。
「左から周りこむ!」
スレッタが意気込むが、しかし。
「ここは通さないぜ‼」
ウノのルブリス・アダムがエアリアルに迫る。
「邪魔だ‼」
エアリアルはビームサーベルを抜く。
そして、直ちにアダムの四肢を切断した。
「な!?」
さすがに格が違う。ウノでは相手にならなかった。
ルブリス・アダム、戦闘不能。
そのままエアリアルは、アルデウスの方へ向って行った。
メメのルブリス・イブを撃墜した後、アイリスは、敵母艦へ駆け出していた。
・・・・・・初めて人を殺した・・・・・・かもしれない。
今更ながら、罪悪感に苛まれる。
それでも、立ち止まるわけにはいかない。
議会連合の宇宙空母・デスペラードは、なおも前進してきているのだ。
あれだ!あれを墜とせば、全て終わる‼
改めて、ママの言葉を思い出す。
逃げたら一つ、進めば二つ━━
私は、迷わず、敵艦に突進した。
「⁉待て、ミランダお嬢‼」
通信で、ケナンジさんが何か言っていた気がする。だが、聞こえない。
こうして私は、デスペラードの右に展開していた、護衛艦の一隻を、バルムンクで斬りつけた。
『総裁、ご息女が‼』
ミランダの動向について、すぐにケナンジから報告が入る。
「何だと⁉」
スレッタは、苦々しい顔をした。
ミランダがこれ以上手を汚さないためには、自身が代わりに手を汚し、戦闘を早期決着させるしかない。そのためには、まず目の前の戦艦を墜とすしかない。
スレッタは、改めて敵艦アルデウスへ向き直る。
覚悟を決め、ビームライフルにガンビットを連結させようとする。
━━その時!
「やっときたか、スレッタ・マーキュリー‼」
「⁉」
エアリアルの元に、ビームがかすめる。
スレッタが顔を向けた先には、ディス・マジェスティック大佐のエアル、その左右には通常の量産型エアルがついていた。
「くそッ、こんな時に!」
スレッタが歯軋りする。
ディス大佐は、最初から全力だ。
「パーメットスコア、6!」
周囲にデータストーム空間を出現させる。
そして、自軍のMS以外を全て、オーバーライドさせた。
二機のエアルがエアリアルに迫る。
『同じ手を二度も‼』
エリクトが、すぐさまパーメットスコア8を機動。自由に動けるようになったエアリアルが、すぐさま二機のエアルを切り刻む。
こうして、早くもエアリアルと黒エアルの一騎打ちとなった。しかし今回のディスは、一歩も引く様子はない。
ガンビットのオールレンジ攻撃が、黒エアルに迫る。
「この程度!」
ディスは全て避ける。
しかし、ビームライフルのビームが、黒エアルの頭部を掠める。
頭部表膜が剥がれ落ち、中身が露わになった。
それを見たスレッタは、驚愕する。
「・・・・・・ザウォート、だと⁉」
そう、ディスの機体は、エアルではなく、ザウォートであったのだ。
ザウォートに、ガンドアームを強引に接続、その外側に、エアルのアウターフレイムをして、敵味方全ての目を欺いていたのだ。
スレッタは呆気に取られる。
その瞬間が油断となった。
『スレッタ‼』
ザウォートがエアリアルに向い、急速特攻した。
スレッタは反射的にビームサーベルで、ザウォートの腰部を切断する。
しかし、ザイリはそれでも加速を止めない。
エアリアルに組みついたのだ。
「英雄の命、このディス・マジェスティックがもらい受ける!
これは、死ではない、ザウォートが再び栄光を取り戻すための‼」
こう言い、ディスはザウォートを自爆させた。
「うわぁ~━━‼」
スレッタは思わず、悲鳴を上げる。
戦場に、大きな花火が打ち上がった。
『スレッタ、大丈夫?』
「・・・・・・はあ。」
スレッタはため息をついた。
エアリアルは、なんとか生き延びた。
しかし、損傷は甚大、もはや戦線に復帰できる状態ではなかった。
『ごめんね、ボクがもっと防御できていれば・・・・・・』
エリクトの言葉をスレッタは否定する。
「ううん。私が不覚を取った。
ジャッジメントに一度帰投する・・・・・・デスペラードは、もはやミランダに任せるしかないか。」
スレッタが、苦痛で顔を歪ませる。
「大佐のエアル、信号消失‼」
アルデウス内では、ディスの戦死が報告されていた。
ザットはすぐさま決断する。
「戦線を離脱する!残存部隊へ帰艦信号‼」
こうしてアサルトは、全艦撤退した。
そして残るは、議会連合本隊のみとなった。
私は、片っ端から議会連合の戦艦をたたき斬っていた。
・・・・・・私の手が、血に染まっていくのを感じる。
それでも、やらなきゃ!私がやらなきゃ、戦争が長引き、より犠牲者が増える。
何よりも、味方にも犠牲が出る!
それだけは、何としても避けなくちゃならないんだ‼
デスペラードのブリッジでも、動揺が走っているのだろう、議会連合の搭乗員が慌ただしく動き回っているのが見えた。
「議長、あなた様はすみやかに脱出艇へ。チヤミ、議長閣下をご案内しろ。
本艦はこれより、敵主力艦・ジャッジメントに向けて、特攻作戦を敢行する。敵艦にぶつけたのち、自爆する。
基幹全速、衝突準備‼」
「し、しかし!」
「議長、これがあなたの導いた結末です。ベネリットへの憎しみはますます募り、いずれどちらかが滅ぶまで、大戦が激化することになりましょう。」
「・・・・・・私、は・・・・・・」
「議長、お早く。」
指揮系統に何かあったのだろうか。
一時戦場が乱れたように感じる。
そして、突然、母艦が進行スピードを加速させた。
・・・・・・まずい!
前方には、ジャッジメント、つまりこれは、特攻か!
させるか‼
アイリスは、デスペラードのブリッジの前に降り立つ。
━━これで、全てが終わる‼
私は迷いなく、バルムンクでブリッジを叩き斬った。
・・・・・・指揮官の、敬礼した姿が、そこには見えた・・・・・・
戦闘が終結し、議会連合側の残存艦隊は撤退していく。
ベネリット側は、それを追撃しない。
私はそれを見て、小さく息を吐く。
全て、終わったのだ。
さあ、私達も学園に帰ろう。
そう思い、エリのジンクオ・シグマの方を向いた。
━━エリからの通信で、呟くような声が聞こえた。
「・・・・・・ごめんね。」
?
突如として、アイリスのように、網状の物が現れる。
え⁉何これ!!?
アイリスは捕獲されていた。
周囲に、黒色のモビルスーツが現れ、アイリスの両脇を抱えた。
私は抵抗しようと藻掻く。
通信が入る。
「動かないで。貴女とアイリスは、ここで連れて行く。」
見ると、エリのジンクオが、アイリスに向けてビームライフルを構えていた。
そんな、どうして⁉
私の抵抗むなしく、アイリスはそのまま、光学迷彩を張った謎の戦艦まで連れ去られた。
「⁉」
真っ先に異変に気がついたのは、スレッタである。
『スレッタ、ミランダちゃんが‼』
続いて、エリクトも状況を把握する。
「ミランダ‼」
しかし、アイリスは、所属不明の戦艦・メドゥークに収容された後だった。
スレッタは、エアリアルを最大加速させ、同時にビームライフルを構える。
エアリアルは満身創痍状態で、全身に電撃・損壊が走るが、構いやしない。
メドゥークのエンジンを撃ち抜き、強引にでも艦を停止させる気だ。
ビームライフルに、全ガンビットを連結させ、最大火力を放つ。
「遅くなったわね。」
メドゥークのブリッジに、エリが入る。
「お待ちしておりました、姫様。」
艦長席に座る、リクローが応対する。
しかしそこに、CICから報告が入る。
「後方に巨大な熱源!本艦に接近します‼」
それを聞き、心当たりがあったエリはすぐに指示を出す。
「回避!面舵一杯、右舷スラスター全開‼」
メドゥークが緊急制動をかける。
直後、艦の右方に、エアリアルのビームが過ぎる。
「クソッ!」
スレッタは、ビームを外したことに憤り、そのままビームライフルとガンビットを連射する。
そのうちの一つが、メドゥークに当たる。
しかし、艦の動きを止めるには至らない。
「主砲及びミサイルで牽制しつつ、煙幕弾発射!
煙幕で姿が隠れた後、光学迷彩再展開、最大凄速で戦線を離脱する‼」
その策が填まり、メドゥークは再び姿を隠してしまった。
スレッタは、思わず絶叫する。
「うわああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
戦場に、スレッタの声と、やみくもに撃たれるエアリアルのビームの音だけが、鳴り響いた。