機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

2 / 12
第2章 突然の襲撃

アスティカシアの学園があるコロニーフロントに、所属不明の戦艦が接近していた。

どうやらジャミングを施しているようで、未だフロント管理社には気付かれていない。

その艦の指揮官は仮面を被った男であり、ディス・マジェスティック大佐といった。彼は艦のブリッジにて、アイリスとジンクオの決闘を観戦していた。

「ガンダム、か・・・・・・」

その様子には、どうやら覚えがあるらしく、感慨深そうに呟いた。

決闘の決着がつく。

それを確認したディスは、砲撃手に指示を出した。

「主砲、照準。目標、アスティカシア学園フロント中央部。」

ディスの隣に座っていたこの艦の艦長が、合図を送る。

「撃て!!」

その言葉通り、艦主砲が学園フロントに向かって放たれた。

 

 

決闘が終わったばかりの戦術試験区域で、ザイリは無念に呟いた。

「やはりガンダムには勝てないのか・・・・・・ごめんなさい、父さん。」

その時、コロニーの空から高火力のビームが降り注いだ。

え、何!?

私のアイリスとザイリのジンクオの間を、そのビームは通り抜け、そのまま地面を貫通した。

は!!?

同時に、学園内に警報が流れる。

『緊急事態警報B1発令。コロニー内にいる学生はすぐさま退避してください。』

B1!?てことは・・・・・・

私が考えるまでもなく、その答え合わせはすぐに行われた。

突如、先ほど空いたコロニーの間から、モビルスーツが二機侵入してくる。

・・・・・・って、これは、ガンダム!?

一機の機体色は緑で、大型スナイパーライフルと大剣を装備、もう一機は濃茶で両腰にビームマシンガン、両手には双剣を装備していた。

見るからに、量産機ではない、特化型仕様だ!

ここまで揃うともはや疑いようもない。

相手は・・・・・・テロリストだ。

 

ふと、ザイリの方が心配になる。

しばらく呆然とした表情だったザイリだが、我に返り叫び声を上げる。

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」

ジェターク社の御曹司で、幾度となく決闘をくぐり抜けたザイリであっても、実戦用のモビルスーツを見るのは初めてだったみたいだ。

ジンクオは私が壊したから動かないため、ザイリは機体を捨て、あたふたと走って逃げていく。

━━ッと、私がわき見した隙を逃さず、濃茶の方のMSが双剣を振り下ろしてきたー!!

攻撃してくる、ってことは、狙いは私かッ!!

フロント管理社もまだ来ない。

てことは現状・・・学園の皆を守れるのは私しかいないッ!!

私は改めて、敵二機のガンダムを相手に戦う覚悟を決めた。

 

フロント管理社。

ジャミングによって、テロリストの母艦の接近を許したが、学園フロントに主砲を撃たれたことによって事態を把握し、その後は迅速な対応が行われていた。

「敵母艦は現在、当方距離3000。こちらに前進してきています。」

「敵艦より、MS二機の発進を確認。所属不明、未確認の新型と思われます!両機とも、コロニーへの侵入を確認しました!!」

管理社トップは、直ちに指示を出す。

「警備の機体をフロント内に向かわせろ!なんとしても学生を守るんだ!!」

しかしオペレーターが、止めに入る。

「待ってください、敵艦より新たにMS3、これは・・・量産型のルブリス機です!!

全機こちらに向かってきています!」

その報告を聞き、指揮官は叫ぶ。

「議会連合なのか!?」

20年前、宇宙議会連合が、ヴァナディース事変で壊滅させられたはずのオックス・アース社を工作組織として復活させていた事実は、戦後、議会連合との和平の際に公表され、世界が知る事実となっていた。ただし当然、議会連合が隠し持っていた量産型ルブリスは、全て廃棄されたはずなのだが・・・

指揮官は唸る。

「クッ、このままでは真っ先にここを落とされるか・・・やむを得ん!まずはフロント外のMSを迎撃、敵の旗艦を捕らえろ。」

そして指揮官は、学園フロントを見て呟く。

「学園にはミランダ嬢がおられる。どうか、持ちこたえてくれ・・・」

警備用のMSも、現在はジェターク社の機体が運用されていた。しかし、当然新型であるジンクオは配備が間に合っておらず、それ以前の一般機であった、ダリルバルが配備されていた。

ダイルバルは、16年前、グエル・ジェタークに与えられた試作機、ダイルバルデの量産型だ。意志拡張AI、並びに攻撃用ドローン「イーシュヴァラ」は廃止されたが、それ以外の装備はダリルバルも同様である。10年ほど前より、各所への配備が開始された。

そんなダリルバルが二機と、さらにその前の旧式・ディランザ・ソルが一機、テロリスト鎮圧に投入された。

二機の量産型ルブリスⅡと、戦闘を開始する。

 

アイリスと敵ガンダム二機の戦闘が続く。

双剣の方が前衛で、果敢にアイリスを攻めてくる。スナイパーライフルを持った方が、要所要所で支援砲撃をしてくるため、そちらへの対応にも、意識が削がれる。

一機だけならまだなんとかなったかもしれないけど、二機同時に相手では、まったく活路が開けない。なんとか持ちこたえるだけで精一杯だ。

「ウノ!命令は捕獲だよ?なんでコックピッドを狙うの!?」

「だがコイツ、かなり厄介だぞ。捕獲などと考えず、撃墜を狙うべきじゃねーか、メメ。」

どうやら相手は、何か話しながら連携を取っているみたいだが、会話の内容は聞こえてこない。

とにかく、このままではまずい、それだけは分かってる!

しかし、相手は緑の方が大剣に持ち替え、アイリスに接近して振りかぶる。反対に茶色の方は一度距離を取ったあと、私の背後に回りこみ、ビームマシンガンで攻撃してくる。

なんとか大剣はバルムンクで受け止め、マシンガンはガンビットでガードするも、緑側の攻撃が止まない。

いけない、挟み撃ちだッ!!

・・・と、別方向からのビームが、緑の機体に当たった。

援軍?

私がメインカメラで確認すると、そこには、ジンクオの実戦用装備型である、グレーカラーの、ジンクオ・シグマが映っていた。

フロント管理社が来てくれた!?

私は最初そう思った。

しかし、その予想は外れていた。

「ミランダ、無事!?」

味方機からの通信で聞こえてきた声は、エリのものだった。

私は驚いて、問い詰める。

「エリ!?なんでここに!?私のことはいいから、早く避難しなさいッ!!」

「できないよ、ミランダは私を救ってくれた、ならば今度は、私がミランダの助けにならないと!」

決闘で勝ったこと、そのように思っててくれたんだ。ちょっと嬉しい。

エリがさらに続ける。

「こっちの緑のガンダムの相手は任せて。あなたはそっちの茶色の方を頼むわ。」

「分かった!絶対に生き残ろうね!!」

「ええ!」

こうして、私のアイリスと双剣のガンダム、エリのジンクオ・シグマと大剣のガンダムの戦闘が、幕を開けた。

 

フロント外側の戦闘は、管理社側も犠牲を出しつつも、なんとか量産型ルブリスⅡ二機は撃墜された。

それを確認したフロントの指揮官は、MS隊に指示を出す。

「よし、残った機体はそのまま一気に、敵艦を包囲せよ。」

五機ほどのダリルバルが、テロリストの戦艦へ向かう。

一方その戦艦内でも、戦況が把握され、報告が行われていた。

「敵MS接近!!」

艦長が指示を出す。

「迎撃システム、全方位に展開。一機たりとも艦に取り付かせるな!!」

そんな中、ディスは戦況を快く思わず、不満を口にする。

「ガンダムに乗っておきなら、こんな易々と撃墜されるとは、誠に遺憾、恥を知れ。」

それを聞いた艦長は腹を立て、むきになる。

「ルブリス全機発進させろ!なんとしても管理社施設を墜とすのだ!!」

しかし、ディスはその指示を制止した。

「やめておけ。いくら出しても、犠牲が増えるだけだ。」

「しかし!」

「私が出よう。ザウォートの準備を。」

それを聞き、艦長は首を傾げる。

「大佐が自ら出られると・・・?ですがそれなら、ルブリスの方がよろしいかと。」

「私はザウォートにしか乗らない、知ってるはずだ。いいから早く準備をするんだ!!」

それだけ言うと、ディスはブリッジから出て行った。

 

艦捕縛へ、フロント警備のMSが動いている中、黒塗装のザウォートが一機、発進した。

ザウォートは、20年前、当時〈御三家〉と呼ばれた、ベネディットグループ有力企業のうちの、ペイル社が開発したモビルスーツだ。しかしクワイエットゼロ事変においてグループを裏切る背信行為を行ったペイル社は、資産を全て売却され、そのまま自然消滅した。

それから20年の月日がたったため、現在ではそもそも性能自体がジンクオなどより大きく劣るので、ザウォートはまず使いものにならない。

・・・否。たった一人、この男が駆るザウォート以外は。

管理社ブリッジに報告が上がる。

「敵艦、MS一機発進を確認、ですがこれは・・・ザウォートです!」

指揮官はそれを聞き、困惑する。

「ザウォートだと!?旧式のモビルスーツで、一体何を。」

彼がそう思うのも当然だ。

しかし、ディスのザウォートは、スペックの約二倍の速度を叩き出していた。

当然ガンダムではないため、パーメットスコアを上げることもできず、コックピット中の人間には、自身の体重の何倍もの重力が、負荷としてかかる。

だがそれでも、ディスはまったく狼狽することもなく、平然と機体を乗りこなしている。

あまりに速度が速すぎるため、ダリルバルのパイロット達は、ザウォートの姿を捕らえることが出来ない。その間に、ザウォートのビームライフルによって、二機が撃墜される。

そしてそのまま一度その宙域を通りすぎ、すぐまた反転して、もう二機撃墜される。

最後に残ったダリルバル一機は、すれ違いざまに抜かれたビームサーベルによって、切り捨てられた。

「ダリルバル全機、消滅・・・」

「そんなバカな、たかがザウォート一機に・・・」

あまりにあり得ない結果を前にして、指揮官は狼狽する。

「警備MSを全て投入、なんとしてもあのMSと戦艦を撃墜させるんだ!!」

これにて、管理社構内にあったダリルバル全機が、戦線に投入されるが、瞬く間にディスのザウォートに撃ち落とされた。

そしてディスは、そのまま管理社の港に入り、ブリッジの正面に立つ。

「ま、待て!!」

指揮官の叫びも空しく、ブリッジはザウォートのビームライフルに撃ち落とされた。

 

フロント管理社の掃討が完了すると、ディスは学園の方に目を向けた。

「さてと。新型ガンダム捕縛の方は、どうなっているだろうか。」

そして、二機のガンダム―ルブリス・アダムとルブリス・イブに付けた、小型カメラの映像を確認する。

「ふん、量産型のヤツらよりはマシとはいえ、所詮はこの程度か。それならば!」

ディスは、ルブリス・アダムとイブのパイロット、ウノ・ハルキとメメ・ミヤシラに通信を繋げ、命令を下す。

「ウノ、メメ、目標をフロント外におびき寄せろ!!ガンダムは私がやる。」

『copy!』

 

アイリスとルブリス・イブ、ジンクオ・シグマとルブリス・イブの戦闘は、相変わらず続いていた。

私は、接近戦ではもはや勝負が付かないと見切り、バルムンクを捨て、ビームライフルに持ち替える。すると相手も、ビームマシンガンを持ち、両者射撃戦となった。

私は戦闘に集中しつつも、エリの方も心配なので、チラチラそちらの様子を動く。すると驚いたことに、エリのジンクオ・シグマは、ちゃんと敵機体と互角の戦闘に持ち込んでいた。

思っていた以上に、エリの実力は見事であった。もしかしたら、ザイリより上かもしれない。

今も、ルブリス・アダムの大剣を、サーベルによって受け止めていた。

「よそ見なんかッ!」

チッ、こっちも決して油断ならない。

ルブリス・イブの双剣は、ガンビットを結合したシールドで防御する。

━━っと、相手機体の動きが止まった?

それは、エリが相手をしていた方も同様だった。

しばらく制止をしていたかと思うと、突然こちらには背を向け、自分達が開けたフロントの穴から脱出した。

・・・・・・撤退した?

私はこのあとどう動くべきか、しばらく考え込む。

「はあ、はあ、なんとか追い返せたみたいね。大丈夫、ミランダ?」

ふと、フロント全体を見回す。

ボロボロになった建物、壊された学生寮、瓦礫の下敷きになった人達・・・

戦闘の時には集中しすぎて見えていなかったが、改めて目の当たりをすると、フツフツと怒りが湧いてきた。

よくも、よくも私達の学園を!!

私はアイリスのエンジンを機動させ、同じく敵の開けた穴からフロントの外に出ようとする。

「待ってミランダ、やみくもに出たら危険よ!」

エリの制止する言葉も耳に入らない。

私のアイリスは学園フロントを出て、そのまま宇宙空間に飛び出した。

 

フロント外に出ると、先ほどの二機をまずは探す。

しかし、すでに離れたのか、それらしき機体は見当たらない。

さて、どうするか。

私が思案していると、突然レーダーに反応がある。

って、これは・・・ザウォート!?

「さあ、おとなしくその機体、引き渡してもらおうか!」

なんとか私は、アイリスのビームサーベルで、相手のビームサーベルを受け止める。

このザウォート・・・・・・装備は一般機と同様だが、パワーとスピードが桁違いだ!!

私はガンビットを展開するが、ビームはまったく相手に当たらない。

ザウォートなんて・・・・・・20年前の機体で、とうに旧式のはずなのに・・・

「ザウォートで最新型のガンダムに勝利する、その時、ザウォートの有用性は世界中に証明される!!」

「ミランダ!!」

エリのジンクオ・シグマが、戦線に駆けつけてくれる。

「エリ!このザウォート、厄介よ。旧式のくせにあり得ない動きをしてる。」

「分かってる。すでに、フロント管理社のモビルスーツが全滅している現場に遭遇した。こいつ一人でやったことは明白よ。」

え、管理社のMSが全滅!?

じゃあ当分は、援軍はこない・・・・・・

まずい、このままじゃ!!

「いくら足掻いても無駄だ、勝利は私のザウォートが頂く!!」

「クッ」

エリと私で、同時攻撃を仕掛けるが、相手は難なくそれをかわす。

相当の手練れであることは、疑いようもない。

二人ともやられるのも、時間の問題だ・・・・・・

「ミランダ、敵の狙いはあなたよ!だから、ここは私が抑えておくから、早く逃げて!」

「そんな、ここでエリを置いてくことなんてできないよ!」

「いいから早く!」

エリが無茶を言ってくるが、そんな言葉がのめるはずがない。

フロント管理社は全滅・・・・・・

じゃああと唯一希望があるとしたら・・・・・・ママがこの事態に気付いて、軍を派遣してくれているかくらいだ・・・・・・

 

と、その時。

タイミングよく、戦艦の主砲が、戦場に放たれた。

私はその撃ってきた方角を見る。

「あ、あれは!」

グループ直属の、治安維持部隊だ!

ママが、しっかり対応してくれたんだ!!

同時に、エリのジンクオ・シグマがザウォートに迫る。

「ちっ、このままではじり貧か。」

ザウォートは、エリの攻撃をはねのけ、そのまま撤退していった。

ああ、なんとか助かった・・・・・・

 

ベネディットグループ直属治安維持部隊旗艦、ジャッジメント。

オペレーターが報告する。

「テロリストの戦艦、MSを収容し、撤退していく模様です。」

「どうします、追いますか?」

艦長のクラフ・デバースは否定する。

「いや、まずはミランダ嬢の安全を確保することが最優先だ。アイリスともう一機のMSの収容を急げ。」

副官のパトラ・キャンベラがアイリスに通信を繋げる。

「ミランダ殿、聞こえるか。本艦は総裁閣下より、学生の救出を第一にと命令を受けている。本艦へのアイリス収容をお願いしたい。」

ミランダは、その言葉に従い、アイリスをジャッジメントへ着艦させる。

それを見て、エリも同様に、艦に降り立った。

 

 

ベネディットグループ緊急総会。

アスティカシアの襲撃を受け、グループ直系の企業のCEOは全員、グループ本部フロントの本会議場に集められていた。

それぞれCEOは、各人の子女も通う学園の襲撃であったため衝撃も強く、議場は喧騒と化していた。

落ち着いた様子であったのは、グループの中の最有力幹部・〈真・御三家〉のCEOである二人のみであった。

まず一人目が、ラウダ・ニール。現ジェターク社CEOで、ザイリの父親でもある。

ジェターク社CEOは、クワイエットゼロ戦役以後、ラウダの兄であるグエル・ジェタークが担っていた。しかし数年前、とある民間企業のコロニーを視察中、何者かの襲撃に遭い、そのまま行方不明となった。グエルの遺体は見つかっていないため、死亡したとも断定できないが、以後音沙汰はない。そのため現在は、弟のラウダが、CEOを勤めていた。

ラウダは騒ぐことなく、現在は誰も座っていない、総裁席をジッと睨んでいた。

そしてもう一人が、セセリア・ドート。現ブリオン社のCEOである。

もともとは、別企業のエラン・ケレスという人物の元で秘書をやっていたが、数年前に父の後を継いだ。となりには、ブリオン社の幹部である、ロウジ・チャンテも控えている。

セセリアは、こんな状況でもいつもと変わらず、うっすら笑みを浮かべていた。

 

と、喧騒を沈めるが如く、突然けたたましく鐘が鳴った。

「総裁閣下、ご到着!!」

総裁の護衛部隊長となった、ゴドイ・ハイマノが、声を上げた。

一気にその場が沈黙する。

同時に、総裁席の後ろにある巨大な扉が神々しく解放された。

そこからやってくるのは三人。

まず前中央にいるのは、言わずもがな、ベネディットグループの絶対権力者にして、“英雄”と称えられている、総裁兼株式会社ガンダム統括代表━━スレッタ・マーキュリーである。クワイエットゼロ事変以後、その存在は全世界から尊ばれるようになった、生ける伝説である。そして、ミランダのママだ。現在は、20年前の自信なさげな様子は見る影もなく、落ち着いた厳格な雰囲気を纏っている。

そして、その両背後に続く二人。そのうちの一人は、ミオリネ・レンブラン。ベネディットグループ副総裁兼株式会社ガンダム副代表だ。ミランダの母であり、スレッタがベネディットグループ全体の業務に重心を置く一方、ミオリネは株式会社ガンダムの業務が中心など、上手く分担している。

そしてもう一人は、ケナンジ・アベリー。ベネディットグループ参謀にして、元ドミニコスの名であった、現在の直属治安維持部隊の最高司令官である。なお、体型は20年前のさらに二倍に膨れ上がっている。

ミオリネが文官のトップ、ケナンジが武官のトップ、その上に君臨するのがスレッタだ。現在この三人は、〈真・御三家〉をも凌ぐ、〈三卿〉として、傘下組織から恐れられている。

 

スレッタの顔が見えると、全CEOは一斉に頭を90度下げる。御三家である、ラウダ、セセリアであっても、この儀式には一応従う。

スレッタが着席すると、決して大きくなく、しかし威厳に満ちた声を、その場にいる全員にかける。

「表をあげよ。」

この一声で、全CEOは顔を上げる。

「これより、緊急総会を始める。要件のあるものは、私の前に出よ。」

こう言われても、普通のCEOはまず動けない。

その場で発言が実質許されるのは、御三家、ラウダとセセリアのみであった。

そこでラウダがスレッタの前に出て、発言を行う。

「スレッタ総裁、アスティカシア襲撃について、いくつか問いただしたく思います。」

そう言うと、ラウダはスレッタをキリっと睨む。

「襲撃の行われる直前、学園では、決闘が行われていました。ご存じの通り、私の子息とあなたのご息女の決闘です。そこでご息女は、“ガンダム”を持ち出しましたね。ご息女は決闘に勝利し、その直後に襲撃が行われていた。襲撃の原因が、ご息女の“ガンダム”にあると思われますが、釈明をいただきたい。」

続いてセセリアが、軽い口調で同調する。

「ミランダ嬢が襲撃の原因であるとしたら、総裁、並びに株式会社ガンダムの責任問題ですよねぇ~?どうなんですかぁ~?」

スレッタはため息をつき、静かに答える。

「現在、ガンダムの製造について、グループ内での禁止規定は存在しない。我が社がそれを行ったとして、責めを負う立場にはないと思われるが?」

スレッタの言葉に、ミオリネが補足する。

「総裁のおっしゃる通り、我が社は今年より、新型のガンダムを製品として導入し、運用テストも兼ねて、学園に試作機をロールアウトしました。当然のことながら、データストームが発生しないよう、パーメットスコアにストッパーを設け、人体に被害を与えないように調整しております。この新型ガンダム“アイリス”の製造は、我が社が中心となって進めている、惑星開発事業にも多大なる貢献をし、グループ全体の利益になることを保証します。」

ラウダは憎々しげに反論した。

「だが結果として、学園の襲撃に繋がった。襲撃を行ったテロリストの正体については、現在調査中ですが、量産型のルブリスを使用していたことから、議会連合が関与している可能性が高いと見られます。グループと議会連合は、グループ再結成以後、良好な関係を築けていました。それが今回のガンダムの一件によって、議会連合に不信を与えたのではありませんか?」

ラウダとしても、ガンダムの存在は面白くない。アイリスに自社製モビルスーツ〈ジンクオ〉を倒されたのだ。ここで再び、ガンダムへのタブー認識を広げることができなければ、自社ブランドに大きなダメージとなってしまう。

しかしスレッタは取り乱すことなく、逆にラウダに問う。

「ニールCEO、貴殿は襲撃の原因を我が社に押しつけようとしているが、何かそうである確証があるのか?また、結果として襲撃が行われた以上、その後の対応が問題となってくると思われるが、貴社のMSを使用したフロント管理社は、全滅したと聞く。一方我が社のアイリスは、パイロットが学生であるにもかかわらず奮戦し、敵部隊を撤退させるに至った。これは結果的に、ガンダムが学生達の命を守ることができた、貴社では守ることができなかったという証明になると思うが、いかがだろうか?」

これを言われると、ラウダとしても言い返すことはできない。

もちろん、フロント管理社の対応の問題など、決してジェターク社ではどうにもならなかった部分も大きい。

だが、ガンダムが学園を救ったという事実は、覆すことができないのである。

議論の推移を見て、セセリアは責める矛先をラウダに移行する。

「ニールCEO、MS開発のグループトップである貴社にとって、決闘での敗北、並びにMSの損失は、大きな失態となるんじゃないですかぁ~?」

「クッ」

ラウダは怒りをむき出しにして、セセリアを睨みつける。

スレッタがそこに割って入る。

「ニールCEO、ドートCEO、今は責任の所在について議論するよりも、学園の復興と、テロリストの追跡及び身元洗い出しを最優先で行うべきだ。惑星開発事業も一時中断、ベネディットグループの総力をあげて、今回の件に当たることとする。」

スレッタは威風堂々と言葉をつみかさねる。

「異論がある者はいるか?」

そこにいる全員がいつものように沈黙する。こうなっては御三家のトップの意見でも聞き入れられることはない。

「決まりだ。治安維持部隊を派遣し、テロリストを検挙する。その他の企業にも、必要があれば要請に従ってもらう。以上だ。」

スレッタはそう言うと、反論は認めないと念押しするかのように、前触れなく席を立った。

ラウダはスレッタを呼び止めようとするも、それは叶わない。

セセリアは相変わらず、ニヤニヤと笑っている。

スレッタは議場を出る直前、ケナンジの方を見やる。ケナンジは何も言わず、黙ったまま頷いた。

 

治安維持部隊旗艦、ジャッジメントにアイリスを収容後。

私とエリは、船内の一室をそれぞれ与えられ、目的地に着くまで休息を取るよう言われた。

今、この艦が向かっているのは、グループの本部があるフロント。

学園もまだ安全が確保されてないため、そこが最善だろうという、ママの判断だ。

しかも今日は、ママもそのフロントを訪れているらしい。ってことは!運が良ければママに会えるかも!

ママと私は家族としては仲が良すぎるくらいの、大の仲良しではあるが、そもそもママが多忙なため、なかなか直接会って話せる機会は少ない。

だから、今回、学園が襲撃されるという辛い出来事はあったけど、ママに会えるってだけで、私は満足だ!

っと、私の部屋の扉が開く。誰かと思ったら、エリだった。

「大丈夫?ちょっとは休めた?」

「うん、私はもう落ち着いた。それよりエリの方こそ。」

「私は今回が初めての戦闘だったってわけでもないから。それに、ミランダがいたからこそ、安心して戦えた。」

そっか、エリは過酷な環境で生まれたんだね・・・・・・

しばらく沈黙が流れたあと、私は強引に話題を変えた。

「そういえば・・・・・・今回のゴタゴタで、遅くなってしまったけど。

改めて、ガンダム寮への入寮、おめでとう。これからよろしくね。」

「ええ、よろしく。」

私とエリは、手を握り合った。

 

ジャッジメントが、グループ本部フロントに到着した。

艦長のクラフ大佐の先導の元、私とエリは、フロント内の廊下を歩く。

━━っと、前方に、ママの姿が見えた!

私は思わず、クラフ大佐を追い越しママの方へ走っていってしまう。

ママも、私を見て、駆け寄ってくる。

「ママァ――!!」

「ミランダ!」

そのままママと私は、抱き合った。

「無事で良かった、本当に・・・」

ママは安堵したように、声を漏らす。

こんなに心配してくれてたなんて、改めて嬉しく感じる。

っと、完全に二人の世界で、回りが見えてなかったけど、ママの後ろには、何人か人がいた。

「・・・・・・あ、ゴドイさんも、ケナンジおじさんも、お久しぶりです。」

ゴドイさんは黙って会釈してくる。

ケナンジおじさんは、ため息をつきながら、呟く。

「・・・・・・やれやれ、議場とは大違いだ。」

ママのことかな?そういえばママは、優しいのは私とお母さんにだけで、他の人には厳しいってのを、聞いたことがある。

「ちょっと、私もいるんだけど?」

あ、忘れてた、お母さん・・・・・・

お母さんは、一瞬呆れたように私を見やり、フッと笑って安堵したように言う。

「元気そうで良かったわ。」

ここでママが、我に返ったように、周りを見た。

さすがに取り乱したことに気がついたのか、ようやく私から離れ、一つ咳払いをしてから、今度はエリの前に立った。

「君がミランダを助けてくれたのだな、総裁として心から感謝する。」

「いえ、むしろ私こそ、ミランダに助けられましたわ。」

エリが手を差し出し、ママも握手しようと手を伸ばす。

その時一瞬、ママの顔に陰りが見えた。

あれ、どうしたんだろう?

けど、ママはすぐに表情を戻し、エリと握手を交わした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。