機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

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第7章 英雄の日常

「何だと⁉これは一体どういうことだ‼」

宇宙議会連合過激派〔アサルト〕の代表者である、アジ・マキヤは、先の戦闘の報告を聞き、力の限り叫んだ。

通信先であった、元・太陽光送電システムの指揮官は、困ったような表情を浮かべる。

「しかし、実際に、ガンダムがレーザー装置のビームを防ぎきり・・・」

「もういい!」

アジは怒りのあまり、強引に通信を切断した。

「スレッタ・マーキュリーめぇ・・・・・・」

 

アジは議会連合本部のフロントに赴き、議長に激しい口調で詰め寄る。

「議長!直ちに総会でベネリットに対する強制介入の採決を取り、軍を派遣してください‼奴らが持ち出した機体、『エアリアル』については、あなた方もよくご存じのはずでしょう。クワイエットゼロ事変を引き起こした、あの『伝説のガンダム』と呼ばれた存在・・・・・・あんなものを野放しにしておけば、いずれベネリットは、またもや『クワイエットゼロ』のようなシステム掌握装置を建造し、全人類の脅威となりましょう‼」

一方の議長は、アジの迫力に圧倒されながら、なんとか言葉を絞り出す。

「しかしながらアジ理事・・・・・・すでに先日の戦闘で、こちら側から大量の犠牲者が出たとのことでしょう?これ以上の損害を被るわけには・・・・・・」

「なにを弱気な!我々は宇宙議会連合!我らに逆らうような企業・国家は、直ちに排除せねばならない。議長、あなたもそのポストにあるのなら、議会連合の利を第一に考えなさい。」

「・・・・・・」

議長はしばらく押し黙る。

そして、話題を変える。

「ところで・・・・・・L5コロニーで建造中であった、惑星間レーザー装置についてですが、どうやら先日の戦闘で使用されたとの報告が、我々の元に届きました。この件について、理事は何かご存じじゃありませんかね?」

アジはそっぽを向いた。

「フン、我々アサルトがそれの使用の指示を出したとでも?そんな証拠がどこに?」

「・・・・・・まあ、今日のところはこれ以上の追及は止めにしましょう。」

訝しみながらも引き下がる議長に対し、アジは忠告する。

「議長、もしその職に長く居座るつもりならば、余計な詮索はせぬことだ。」

 

先日のアサルトとの戦闘を受け、ベネリットグループ幹部は、戦後処理に奔走していた。

スレッタもまた、その一人であったのだが・・・・・・

ケナンジがそれに待ったをかけた。

「総裁、貴女は議会連合との交渉でも、また先日の戦闘でも、見事な活躍を重ねられました。ここしばらく、ろくに休暇も取られていないと聞きます。どうでしょう、この機会に久々の休暇を取られては・・・・・・?戦後処理は我々にお任せください。」

その言葉を聞き、スレッタは戸惑った。

「いやしかし・・・・・・みんなが多忙の中、私だけが休暇を取るわけには・・・・・・」

しかしケナンジは首を横に振る。

「いえいえ、総裁閣下には、常に健康なお身体を保っていただかねばなりません。それに、閣下一人ではありません。ミオリネ副総裁にも、同期間で休暇を取っていただいたらよろしいのでは?

おそらくこれから議会連合との関係は、さらに複雑なことになりましょう。総裁には、また各地を奔走していただくことになります。そうなる前に、これが休暇を取る最後のチャンスでございますぞ。」

ケナンジにそこまで言われ、スレッタは肩を竦める。

「フッ、ならばその言葉に甘えるとしよう。」

ケナンジもやれやれという表情で微笑んだ。

 

スレッタとミオリネは、久方ぶりに自宅のあるL5コロニー・ディエンドに帰ってきていた。

家の扉を開けると、スレッタの振る舞いは、プライベートのそれに変わる。

「ふー、久しぶりのミオリネさんとの二人きりです~♪」

スレッタの満面の笑みに、ミオリネは肩を竦める。

「まったく・・・・・・あんたの性格は学生時代から変わらないわね。」

「?そうですかあ?」

スレッタはキョトンと首を傾げる。

ミオリネは可愛い旦那の仕草を見て、思わず笑顔になる。

護衛のゴドイも微笑んだ。

「それでは総裁、ミオリネ様、私は外で待機しております。ごゆっくりお過ごしください。」

「うん。」/「ええ。」

そう言ってゴドイは、ドアを出た。

瞬間、スレッタの枷は完全に外れ、ミオリネに抱きついた。

「ミオリネさん、大好きです!」

「はいはい、私も愛してるわよ。」

ミオリネは、スレッタの手をとって、奥のベッドまで連れていく。

そしてそのまま押し倒し、二人の唇が交わる━━

と、思われたその時。

 

━━突如その部屋の周囲の窓から、大量の銃弾が放たれ、部屋全体が蜂の巣になった━━

 

そして━━スレッタもミオリネもその時にはすでに、ベッドの影に隠れ、懐からハンドガンを取り出し、構えていた。

殺気を感じ取り、とっさに反応したのだ。

「どこの連中でしょうか?」

「この感じ、久しぶりね。」

両者とも襲撃には慣れっこなのか、表情には余裕が見られる。

遅れてゴドイが部屋の中へ駆け込んできた。

「スレッタ様!ミオリネ様!ご無事ですか‼」

スレッタの口調は公的なものに戻る。

「ああ。私もミオリネさんも無傷だ。

ゴドイ、お前は隠れていろ。私とミオリネさんで襲撃者を殲滅する!」

「え、いや、しかし・・・・・・」

スレッタの驚きの発言に、ゴドイは戸惑いを隠せない。

だが、さらにミオリネの言葉が覆い被さる。

「いいから!あんたは言われた通りにしなさい‼」

ミオリネにまで言われ、ゴドイはすごすごと退散するしかなかった。

(俺、一応二人の護衛なんだけどなあ・・・・・・?)

 

ゴドイが部屋を立ち去るのと入れ替わり立ち替わりに、黒装束の襲撃者が20名ほど、土足で部屋に足を踏み入れた。

━━と、次の瞬間、スレッタとミオリネが同時に飛び出す!

敵側が、二人の動きに対応できる前に、ハンドガンで的確に頭を撃ち抜いていく。

「なんだ!こいつら・・・・・・⁉」

「動きが・・・・・・‼」

襲撃者側は、焦って銃口を向けるが、その弾は避けられる。

その隙を逃さず、スレッタとミオリネは、彼らを一人、また一人と駆逐していく。

二人はもう、学生時代の弱い彼女らではないのだ。スレッタが総裁となってから、狙われるのは日常茶飯事で、最初はオドオドしていたものの、だんだんと自分達でも襲撃者を殲滅できるまでの銃撃戦の腕を身につけていたのだ。

今ではもはや、ゴドイの護衛は形ばかりのもので、実際は自分達でも、自分の身を守れるのだ。

そしてスレッタは、普段なるべく敵味方関係なく人命の犠牲を出さないように、何事も作戦を立てるが、敵で、なおかつ自身や家族を狙うとなると話しは別だ。容赦なく、ためらわず、襲撃者の命を奪う。守るべきものというのを、決して間違えないのだ。

「クソッ、このままでは・・・・・・

一旦引くぞ‼」

黒装束の男達は、一度家から出、撤退する。

生存している襲撃者は、その場にはいなくなった。

しかし・・・・・・!

 

『目標の二名、奴らは化け物だ!白兵戦では勝てん、モビルスーツを出せ‼奴らを人間だと思うな!繰り返す、奴らを人間だと思うな!』

スレッタ達の家に、今度はモビルスーツのビームが飛び交う。

機体は、元グラスレー社のモビルスーツ、ベギルペンデの改修機であった。機体色は赤紫、右手には旧機と同じビームライフル、左手にはミカエリスを思い出させる、それよりはやや小型化したビームブレーザーを装着していた。

さすがのスレッタ達でも、生身の肉体では身に余る。

「これは・・・・・・ちょっとまずいですね・・・・・・」

「そうね。どうする?スレッタ。」

「どうしましょ?」

スレッタはおどけた感じに肩を竦める。

ミオリネは微笑む。

その間も、家の中はビームが飛び交っている。

(なんなんだこの人達・・・・・・)

ゴドイは青ざめ、机の影でガタガタと震えている。

スレッタはため息をつき、ホッツさんのキーホルダーを握りしめ、力の限り叫ぶ。

『来なさい、エアリアル‼』

 

ベネリットグループ本部フロント。

その中のモビルスーツ格納庫にしまわれていたエアリアルが、突然動き出す。

整備士達は、驚愕し、すぐさまケナンジへ通信を繋げる。

 

「何、エアリアルが動いているだと・・・⁉

・・・なるほど、そういうことか。整備班、エアリアルの行く手は妨げず、ハッチを開け。」

ケナンジは状況を瞬時に理解し、指示を出す。

続いて、ジャッジメントに通信を回す。

「クラフ、エマージェンシーだ。直ちに艦を発進させ、プラント・ディエンドの周囲を固めろ。」

「プラント・ディエンド・・・まさか、総裁閣下が⁉

しかし、プラント内に直接救援を送らなくてよろしいのですか!!?」

クラフは驚いて言葉を返すが、ケナンジはフッと息を吐く。

「総裁とミオリネ様だぞ。あんな人達を、誰が殺せるんだ?」

「・・・はあ・・・」

クラフは困惑するも、指示に従った。

 

エアリアルがプラント・ディエンドにたどり着き、スレッタの元へ舞い降り跪く。

スレッタは満足そうな表情で、すぐさまエアリアルのコックピットに乗り込む。

ミオリネは、そんな自分の旦那を、愛おしそうに見つめた。

その間、敵モビルスーツのビームは、ガンビットが防御する。

コックピットに乗ったスレッタは、フゥーと深呼吸をする。

そして、気合いを入れ、操縦桿に力を入れる。

「よし、やるか。」

 

そこからは、エアリアルの蹂躙戦が始まった。

もしそこに、アスティカシア時代のスレッタを知っている者がいれば、それは見慣れた光景であっただろう。

的確に、敵機の四肢を、ビームサーベルとガンビットで切断していく。

敵も抵抗しようとするも、ビームライフルの攻撃でそれを許さない。

気づけば、リーダー機1機を残すのみとなっていた。

「クソッ、このーッ‼」

しかし、襲撃部隊のリーダーは諦めず、果敢にエアリアルへ突撃した。

リーダーは知っていた。ガンダムの動きは、アンチドートで停止することができると。

彼は迷わず、アンチドートを展開した。

エアリアルの動きが、一瞬鈍る。

「伝説の機体といえど、所詮はガンダム・・・ッ!」

リーダーは勝ちを確信するが、

しかし・・・!

『残念だけど、効かないよ。』

エアリアルの間接駆動部が、青く光る。

次の瞬間、アンチドートはオーバーライドされた。

「そんな、馬鹿な・・・!」

『ボクは君を、許さない。』

今回の件に関して、エリクトもまた、かなり激怒していた。大切な妹と義妹を殺そうとしたのだ、当然である。そのため、一切の容赦がない。

そして・・・

「この!」

敵リーダー機は、エアリアルのビームサーベルによって、真っ二つに切断された。

 

エアリアルが、敵モビルスーツ郡を全滅させたのを、ミオリネとゴドイはただ呆然と見つめている。

かつて魔女と呼ばれた機体、そしてパイロット、その真価を改めて目の当たりしたのだ。

コックピットの中のスレッタもまた、やや切なそうに敵MSの残骸を見つめる。その後、今度はエリクトのキーホルダーに目を合わせる。

「・・・帰ろうか。」

 

えー、私達のお家、襲撃されたの⁉

私━━ミランダ・マーキュリーは、衝撃の事実に驚愕する。

それで、ママ達は無事だったの⁉

「それは大丈夫、ママもミオリネさんも、怪我一つないよ。」

通信で、ママは落ち着いた様子で、私に語りかけてくれた。

ふう、それなら一安心だ。

私が安堵しているところで、お母さんが割り込んできた。

「それより、あんた勉強の方は大丈夫なんでしょうね⁉もうすぐ定期試験でしょ、ガンダム社の令嬢のあんたが、赤点なんか取ったら、許さないからね‼」

ひえ、話題がテストのことに移り変わったよ。

私、筆記の試験苦手なんだけどな・・・・・・

「まあまあ、ミランダにとっては初めてのテストなんだし、そこまで厳しく言わなくても・・・・・・」

「私は最低限のことしか言ってないわよ‼」

ママが私を擁護してくれたが、お母さんの感情に油に火を注ぐことになってしまった。

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