機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

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第8章 修学旅行

地球、凶悪犯罪者収容施設。元・グラスレー社御曹司、シャディク・ゼネリは、その施設に無期限で服役していた。

しかし今日は、シャディクにとって福音の日となる。突如として、仮釈放が決まったのだ。

シャディクは背広を着込み、城門の前に立ち、その時を待つ。

二人の刑務官は門を開け、シャディクに言葉をかける。

「ベネリットグループ総裁の意向により、シャディク・ゼネリ、貴様を一時釈放する。」

 

修学旅行だあ~~~!!!

定期試験が終わり、私達は待ちに待った行事を向かえることとなった。

まあ、実際のところは、前の襲撃からの学園の復興が、まだ3分の2ほど完了していなかったので、学園生活もままならなかったためである。

・・・・・・なのになんで、テストはあるんだよ!

まったく、とことん現実は理不尽だ。

さて、今回の修学旅行は、各寮によって行き先が違う。

ガンダム寮とジェターク寮は、合同で、辺境コロニーでの、農業体験だ。

・・・・・・モビルスーツの操縦まったく関係ないじゃないか‼

なんか今回の修学旅行、とってつけた感があるんだよなあ。

「まあいいじゃない、せっかくの行事だもの、楽しみましょ。」

モチベーションの上がらない私に対して、エリはこう話す。

「・・・・・・まあ、そうだね。」

その意見には同意だ。

面白くない行事ならば、私達で面白くすればいい!

 

ミランダ達、ガンダム社とジェターク社の全生徒の乗せたシャトルが、辺境コロニーへと向う。

その護衛としては、驚くべきことに、ベネリット治安維持部隊の旗艦・ジャッジメントが随行していた。

しかも、ジャッジメントのブリッジの、クラフが座る艦長席のすぐ横の補助席には、なんとスレッタが座り、同行していた。

艦の乗組員は、居心地が悪そうにしていた。

━━この件について、クラフは事前にスレッタの総裁室へ呼ばれていた。

「治安維持部隊が、アスティカシアの生徒の護衛、でありますか?」

スレッタは当然のように頷く。

「ああ。かの学生達は、少し前に学園の襲撃を目の当たりにした者達だ。また何時テロリストに狙われることがあるか、計り知れない。彼らはベネリットの明日を担う若者だ。それを守るのはグループの責務。

ジャッジメントには、我が娘を始めとした、ガンダム寮とジェターク寮の護衛を命ずる。」

「・・・・・・は、はあ。」

スレッタの言葉に疲弊するクラフに対し、さらに驚きの事項が投げかけられる。

「私もジャッジメントに乗艦し、護衛の一員として参加する!」

「な⁉」

時は現在に戻り。

クラフがボソリとつぶやく。

「━━━どんだけ親バカなんですか・・・・・・」

「何か言ったか?」

スレッタはクラフを睨み、圧をかける。

「なんでもございませんッ‼」

 

宇宙議会連合過激派『アサルト』直属特殊部隊・〔シャドーアイ〕

その母艦であるアルデウスでは、指揮官のディス・マジェスティック大佐が、その上司に当たるアジ・マキア理事と通信で会話を行っていた。

「━━であるからして、諸君らには、修学旅行でうつつを抜かしているミランダ・マーキュリーと、愚かにもその護衛とほざいてわざわざ前線に赴いてきたスレッタ・マーキュリーを襲撃し、アイリス及びエアリアルを討ち取ってもらいたい。」

「・・・・・・だいぶ無茶言ってません?」

ディスは、かなり困難な任務内容に、思わず不満を漏らす。

アジは続ける。

「今回の作戦のために、アルデウスには、我がアサルトの最新鋭機、エアルを20機送った。データストームを発生しない、かつガンダム社のエアリアルと同等の出力を出せるよう模索された機体だ。それと、先般の試作機、アダムとイブを活用すれば、まあなんとかなるだろ。」

(・・・・・・そういう問題じゃないんだよな~)

アジは、さらに、吉報を告げるように言う。

「エアル20機のうち一機は、ディス、お前専用に改造してある。パーメットスコアのストッパーを外し、自在に使用できるようにしたガンダムだ。」

しかし、その言葉は、ディスの逆鱗に触れた。

「は?何言ってんだお前?

俺はザウォートしか乗らねえっつってんだろ。」

上官に対して論外な口の利き方だが、ディスは気にも止めない。

すると、アジの言葉にも熱が入る。

「いや、お前はもう二度とザウォートに乗るな。」

「は?おい、俺がこの部隊の指揮官をやる契約の最重要事項、機体は自由に選択できるって条件だったよなあ??」

ディスはモニター越しで詰め寄る。

するとアジは、切実な願いを口にするように、ほぼ涙声で語りかけた。

「いや、マジで、頼むから・・・・・・

お前の部下の苦情の山が、私の元に届くんだ!大佐は、部下の助言に耳を傾けず、いつまでもザウォートを乗り回すと、そのくせ戦績だけはいつも好調にあげるから、部下は自信を喪失し、ほぼノイローゼになっていると。

だから、マジでちゃんと、現代の機体に乗ってくれ。これはフリじゃないぞ、マジだからな!」

それだけ言うと、アジは強制的に通信を切断した。そして、

「はああああああ~~~~~~」

大きなため息を吐いた。

一方のディスは。

「これは意地でも、ザウォート乗ったろ。」

改めて決意するのであった・・・・・・

 

うわ~疲れた。

私達は、農業体験の名の元、一日中休憩ナシで、地元の人達にこき使われた。

エリやザイリは、珍しい経験だったのか、かなり興味を持って頑張っていたが。

私は正直慣れているんだよね~

もともと、学園に入学するまでは、お母さんのトマト温室の管理は、私の仕事だったし、それにママが作った学校には、校庭に畑があったので、しょっちゅうその面倒を見なきゃいけなかった。

だから私にとって、今回の農業体験、なんの新鮮さもない。

ま、普段プラントで暮らす学生達にとっては、なかなか貴重な経験なのだろうけど。

ようやく一日の仕事が終わり、地元のおじいちゃんおばあちゃんが私達を労ってくれた。

「今日はありがとうね~とても助かったわ。

お礼にいい場所を教えてあげる。ここからしばらく歩くと、店主が一人でやってる小さな喫茶店があってねえ、ぜひそこで疲れを癒やすといい。」

喫茶店?

そんなのが、この辺境コロニーにあるのか?

まあ、このまま今日はもうやることがないので、私、エリ、ザイリの三人で行ってみることにした。

 

地元の方々に教えてもらった喫茶店は、農園から約1kmのところのポツンと一軒の建物の中にあった。

こんなところに喫茶店を作って・・・・・・訪れる客はいるのだろうか。

私は、エリやザイリの方に顔を向け、共に首を傾げる。

ともかく、中に入ってみないと実態は分からない。

私は、ドアノブに手をかける。

 

「!いらっしゃい‼」

扉の向こうには、思いの外若めの店主がカウンターにいた。髪はピンク、体格はかなり大柄で、眼鏡をかけた中年男性だった。年齢はママと同じくらいだろうか。

「飲み物はコーヒーでいいか?すまんな、それしかメニューなくて。」

それはいいのだが。

ほんとに中には、誰もお客さんがいなかった。

これじゃあまともな経営状況ではないだろう。

とりあえず私達は、カウンターの席へ座った。

そして、コーヒーができるのを待つ間、改めて店主の姿を観察する。

・・・・・・う~ん、どことなく、ザイリに似ている、か?

いや、気のせいか。

私がなんとも戸惑っていると、早くもコーヒーが出来上がったようだ、私達に出してくれた。

同時に、話しかけてくる。

「その制服、アスティカシアの学生か?どうして、こんな辺鄙なプラントに?」

私が代表して答える。

「ここへは修学旅行に来たんです。このお店は、地元の方々の紹介で。」

店主さんは、フッと笑う。

「ま、せいぜい楽しんでおけよ。俺達の時には、そんな行事はなかったからな。」

ん?この店主さん、元アスティカシアの学生なのか?

私が聞いてみるも、その質問ははぐらかされた。

すると、しばらく黙っていたザイリが口を開いた。

「あんた・・・・・・前に俺とどこかで会ったことがあるか?」

「・・・・・・」

店主さんは何も答えない。

「あんたのその雰囲気、俺のよく知っている人と似ている。だが、その人は数年前に死んじまった・・・・・・」

店主さんは肩をすくめて反応する。

「まさか、俺がその人だと?残念ながら勘違いだ。俺はお前とは今日が初対面だよ。」

「・・・・・・そうか。」

その後はザイリも口を閉ざした。

私は気を利かせて話題を変える。

「このお店、始めてから長いんですか?」

「ああ、もう五年以上になる。」

「・・・・・・失礼ながら、お客さんってちゃんと入ってるんですか?」

店主さんは苦笑する。

「それが、全然なんだよな・・・・・・客はお前達で数ヶ月ぶりだ。」

・・・・・・だよな。

まったく、どうやって稼いでいるんだろう?

ザイリも気を取り直して会話に入ってくる。

「それにしても・・・・・・なんたって親父は、ガンダム寮と共にジェターク寮の旅行先をこんな辺境プラントにしたんだろーな?気が知れねーぜ。」

すると、店主さんが肩をすくめる。

「おいおい、父親は大切にしとけよ~・・・・・・本当に大事な人ってのは、失ってから、気づくものだから・・・・・・」

あれ、この人もしかして・・・・・・両親を早くに亡くしているのか・・・・・・?

またしても、店の空気が重くなる。

と、その時!

地面が大きく揺れ、私達は思わず立ち上がった。

・・・・・・何、一体?

ッ‼まさか⁉

 

辺境プラント北西部。

そこに、アルデウスが陣取っていた。

CICが報告する。

「ミサイル全弾命中。」

すると、通信上で、ディス大佐が言い放つ。

「よし!あとを頼むぞ。」

「了解しました。

モビルスーツ発進後、本艦は回頭30、プラントの影へ潜伏する。」

ザット艦長が頷き、指示を出した。

そしてディス大佐は、専用エアルのコックピット内にいた。

「それでは、作戦通り、俺とメメでアイリスを叩く。ウノはそれ以外のモビルスーツを殲滅しろ。」

「・・・・・・チッ」

「了解‼」

ウノは不満そうに舌打ちするも、メメは敬礼した。

そして、ディス大佐から発進する。

「ディス・マジェスティック、ザウォート、出るぞ!」

『エアルです。』

CICから訂正が入る。

「ウノ・ハルキ、ルブリス・アダム、発進する!」

「メメ・ミヤシラ、ルブリス・イブ、出ます!」

ウノとメメのガンダムも発進した。

 

ジャッジメント内でアラートが鳴り響く。

「プラント付近にて、モビルスーツ多数出現!数22、形式照合、エアル20、それと、例の2機のガンダムです‼」

クラフが命ずる。

「総員、第一戦闘配備!」

「敵母艦の位置は⁉」

スレッタが確認する。

「待ってください!敵艦、プラントの影に隠れて・・・・・・位置特定不能‼」

クラフが顔を歪ませる。

スレッタも危機感を共有した。

 

私達は思わず、喫茶店を飛び出した。

「おい、ちょ、待ッ⁉代金は⁉」

店主が何か叫んでいる気がするが、聞こえない。

それにしても、この揺れ・・・・・・間違いない‼

「外からの攻撃だ!

エリ、ザイリ、急いでモビルスーツの元へ向かうよ‼」

私は、エリとザイリの方を見る。

二人とも頷いている。

私達は、修学旅行で、自衛のために自身のMSを持ってきていた。

しかしまさか、本当に使用することになるとは・・・・・・

私は走りながら、二人に指示を出す。

「機体の元に到着後、私は港を出て、敵モビルスーツに対処する。二人は港の防衛をお願い‼」

「おい待て、ミランダ、お前一人で行くのか・・・・・・⁉」

ザイリから待ったがかかる、だが・・・・・・

「私は何度も実戦を経験してる!私が出るのが一番合理的でしょ‼」

「しかし・・・・・・ッ!」

エリはしばらく思案した後、口を開く。

「ザイリ、ここはミランダの言うとおりにしましょう。確かにそれが一番合理的よ。」

「クッ」

ザイリは悔しげな顔をするが、しぶしぶ頷いた。

 

 

辺境プラントが襲撃される数時間前。

スレッタも、実は一度ジャッジメントを離艦しており、隣接する別のプラントへ足を運んでいた。

そして、スレッタもまた、━━別のではあるが━━喫茶店を訪れた。もっとも、サングラスをかけ、最低限の変装はしているが。

そこで人と会う約束をしていたのだ。

その人物とは・・・・・・

スレッタは、喫茶店のドアを開け、目的の人物を探す。

彼はすでに先に来ており、カウンターの方へ座っていた。

背広を着込んだ、黄髪で、長身の男性。

スレッタは声をかける。

「シャディクさん。」

その男性━━シャディク・ゼネリは反応する。

「久しぶりだね、水星ちゃん。」

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