機動戦士ガンダム 水星の魔女ダークネス   作:零月隼人

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第9章 旅行先での死闘

スレッタとシャディクの会話が続く。

「お久しぶりです、シャディクさん。」

「ふふ、水星ちゃん、雰囲気変わったね。今ではベネリットグループの総裁か。人間みんな、生きていると変化するものだ。」

スレッタが昔を懐かしむように言う。

「17年ぶり、ですか。あなたは、グラスレー寮寮長として学園内での決闘を取り仕切りながら、裏ではフォルドの夜明けや議会連合と繋がり、後にクワイエットゼロ事変と呼ばれる戦線の、最初の火蓋となった事件である、プラント・クエタ襲撃事件を策謀した。

しかし、事変が終結すると、あなたはプラント・クエタのみならず、クワイエットゼロ製造の罪まで、全て一人で被った。あなたのその行動のおかげで、私の母は、罪を問われることなく、今でも静かな余生を過ごせています。

━━かなり遅くなってしまいましたが、あなたの名誉ある行動に、感謝致します。」

シャディクも、当時の思いを口にする。

「全て俺が罪を引き受けてやった、なんてかっこいいことを言うつもりはない。

ただ俺は、シャディク・ゼネリという男の人生の終着点として、そこに一つ見出していたものがあった。俺が成し遂げたかったことは、結果的に君やミオリネが、全て達成させてくれていたから」

「・・・・・・」

スレッタも、ただ切なそうに、シャディクを見つめる。

しばらく時間が経ち、シャディクが本題に入る。

「それで?こんな俺を、わざわざ牢から出したのは、なんでなんだい?」

するとスレッタは、一枚の写真をシャディクに見せた。

そこには、先日スレッタ達の自宅を襲撃したモビルスーツが写っていた。

「元グラスレー社跡目だったあなたなら、何かご存じかと思って。この機種に心当たりはありませんか?」

シャディクは写真をじっと見る。

「なるほど、たしかにこの機体は、グラスレー社のベギルペンデの改修型のようだが・・・・・・」

しばらく考えこんだ後、しかし首を横に振る。

「残念ながら、覚えがない。お役に立てなくてすまないね。」

「そうですか。」

スレッタは特に残念そうな素振りも見せず、すぐ席を立った。

「用件は以上です。それでは。」

立ち去ろうとするスレッタを、シャディクは引き留める。

「そういえば・・・・・・ミオリネは元気かい?」

すると、スレッタは振り向き、一言口にする。

「ええ。17年前と変わらず、私のすぐ隣に。」

一瞬、スレッタとシャディクの間に、電撃が走る。

だがすぐに、シャディクは微笑んだ。

「それなら、良かった。」

 

 

私はアイリスに搭乗し、プラントを飛び出た。

周囲には、アサルト軍の最新鋭機であるエアルが20機展開されており、プラントの周囲を取り囲んでいた。

…いや、多ッ!

こいつら全員、狙いは私のアイリスか。

部隊のうちの一機には、例のガンダム、ルブリス・イブも混じっていた。

一方で、ルブリス・アダムの方はどこにも見当たらないなあ・・・・・・一体どこへ?

しかしそんなことを気にしている場合ではない。

敵モビルスーツ全機が、私の機体を捕捉した。

私は即座に、ガンビットを展開した。

激しい戦闘の━━幕が開けた。

 

ミランダの出撃を見送ったエリとザイリは、自身のジンクオにて待機する。エリの機体は実戦使用だが、ザイリのはいつも通り、決闘用のままだ。

そこへ、ウノ・ハルキが駆る、ルブリス・アダムが侵入してきた。

エリがすぐさま視認する。

「来たわね!」

「クッ」

ザイリも一歩遅れて反応、同時にビームライフルで、アダムを迎撃する。

だが、アダムには攻撃は当たらない。

「オラオラ、ここにはザコ機体しかいねーのか?」

ウノは余裕の表情でエリ達の攻撃を交わす。

「チッ」

エリは忌々しく顔を歪ませるが、結局防戦一方を迫られることになった。

 

アイリスのガンビットが、エアル部隊に対して攻撃を加える。

私はなるべく、敵モビルスーツの四肢を狙い、コックピットにはビームを当てないように応戦する。これは、ママの教えだ。

ママの言葉が脳裏に蘇る。

━ミランダ、たしかにアイリスは、決闘用のレギュレーションを外せば、敵のモビルスーツを撃墜させることができる。でも、たとえ実戦でも、なるべくコックピットを狙うことはしないでほしい。アイリスはあくまで、人を殺す兵器じゃなくて、惑星開発事業の促進を促すために作られた機体だから。だけど、もしミランダ自身や、仲間の身に危険が及ぶことがあれば、その時は・・・・・・━

 

今はその時じゃない!

だから‼私はママの教えを守る。

と、そこに、他とは違い、機体色が黒のエアルが、アイリスに接近する。

「へぇ、さすがはガンダム、そして英雄の娘!雑兵では話にならんか。

━━ならばその機体、私が討ち取る‼」

この機体、他とはスピードが段違いだ‼隊長機か?

私はビームサーベルを抜き、応戦する。

同時に周囲にガンビットを展開、その一機だけを狙う!

しかし、ビームはまったく当たらない‼

さらに・・・・・・

「ふ、そちらがガンビットなら、私も使わせてもらう‼

パーメットスコア、3‼」

な⁉黒エアルの周囲に、ガンビットが展開した!!?

両者、互いにガンビットの撃ち合いになる。

時折、ビームサーベルでの斬り合いにもなる。

と、敵ガンビットのうち一つの攻撃が、アイリスの右足に被弾してしまう。

途端、アイリス右下半身の機能が停止してしまう。

「な、スタン効果の電磁ビーム⁉」

私は少し動揺、そして動きが悪くなるアイリスに対し、黒エアルが迫る。

「もらったッ‼」

クッ

私は咄嗟に、全ガンビットを集合させ、前面にシールドを作る。

「チッ、防がれたか・・・・・・だが!

今だ、やれ、メメ!素人共‼」

アイリスに、ビームの攻撃が集中する。

私は、右足以外の機動力と、ガンビットの防御で、なんとか敵の攻撃を回避しようとする。

だが、目の前はビームの蜂の巣、避けきれない!

ああ、やられる・・・・・・

 

と、その時、包囲網の一角が撃ち落とされる。

このビーム、この射撃は⁉

「ッ⁉」

敵も動揺したのか、一瞬動きを止める。

「スレッタ・マーキュリーか⁉」

エアリアルは、ガンビットを展開、すぐさまエアル部隊を一掃した。

そして、アイリスと黒エアルの間に割って入る。

「大丈夫、ミランダ⁉」

「ママ‼」

絶望から歓喜へと、内心が一瞬で塗り替えられた。

さすがママ、格が違う。

「ミランダは、ルブリス・イブの方を相手して。私はこの特化型エアルを迎え撃つ‼」

「分かった、その特化型、かなり厄介だから、気をつけて‼」

私は注意を促しつつ、ルブリス・イブの方へ矛先を変えた。

同時に、エアリアルと黒エアルの戦闘が開始される。

 

エアリアルと黒エアルのビームサーベルが交わる。

「さすがは英雄、なかなかやるな!」

「くぅ・・・・・・」

ディスはそう言いながらも、ガンビット━━マクロ━━で少しずつエアリアルを追い詰めていく。

『気をつけてスレッタ!この相手、かなり手強い‼』

エリクトも警告を発する。

「分かってる、でもなんとかして押さえ込まないと・・・・・・」

そう言いながら、スレッタもガンビットを展開、黒エアルを攪乱する。

その間、エアリアルはやや距離を取ろうとするが、ディスはガンビットをものともせず、さらに接近、ビームサーベルを切りつけた。

「くッ!」

スレッタは衝撃に揺られながらも、黒エアルの右腕を切断、再び距離を取る。

だがそれでも、ディスは余裕の表情だ。

「さすがじゃないか。だが、まだ終わりではないぞ‼

とくと見るがいい、我が奥義‼━━パーメットスコア、6‼」

ディスの叫びと共に、突如その場に、データストーム空間が現れる。

『な、これは‼』

「エリクト‼」

さすがのエリクトも驚愕する。未だかつて、同様のことができたモビルスーツは、この世にたった一機しか存在しない。そう、ちょうど今自身の意識を移している、愛機・エアリアルだ。

しかし、今この瞬間、その事実は塗り替えられた。相対する黒エアルもまた、データストームを空間化させたのだ。

この状況が何を意味するか。そう、ディス・マジェスティック大佐の能力は、エリクトに迫るものがあるということだ。

 

な⁉データストーム空間が出現??

ルブリス・イブとの交戦を続けていた私であったが、アイリスのアラートが鳴り、思わずエアリアルと黒エアルの方を向いてしまう。

「よそ見なんか!」

咄嗟にルブリス・イブが襲いかかってくる。なんとか避ける。

あっぶね。

だがこの状況、さすがにママの方が気になるよう‼

データストーム空間を作ったのはエリクトさん?・・・・・・いや、違う、え、敵の方⁉

そんな馬鹿な、あり得ない、だってあれは・・・・・・

私は途端に、ママが心配になる。

だが、すぐに思い直す。

いや、ママは英雄と呼ばれし者だ。どんな状況でも、必ず勝利してきた。

だから今回も、絶対になんとかしてくる!

私は、今目の前の戦闘に集中しなきゃ‼

私はそう思い、改めてルブリス・イブの方を注視した。

敵も同様の思いのようだ。

「ガンダム、ここで決着をつける‼」

 

黒エアルが、エアリアルをオーバーライドしようと試みる。

『うわあ‼』

エリクトが思わず悲鳴を上げる。自身の意識に別の拡張意識が侵入し、混濁を起こしたのだ。

「エリクト‼」

スレッタは心配そうに、声をあげる。

だが、エリクトの目は、鋭く光が走っていた。

『こんな・・・・・・こんなところで・・・・・・やられるもんか!このボクが、データストームとの共存を果たしたこのボクが‼』

エリクトが全力で、意識介入を阻害する。

エアリアルは、白い光を放つ。

パーメットスコア、8。

エリクトは強引に、黒エアルのオーバーライドを、さらに上からねじ伏せたのだ。

まさに、最強。エリクト以外では成せない荒技だ。

さすがのディスも驚愕する。

「そんな、この私のパーメットスコアを超えるとは。スレッタ・マーキュリー・・・・・・いや違う、あそこにはもう一人いる‼」

ディスは、エリクトの存在をやや関知し始めた。

それは、エリクトに取って望ましいことではない。

『スレッタ!敵の支配は断ち切った。一気に留めを‼』

「了解‼」

スレッタは合図と共に、エアリアルの周りにガンビットを浮遊させ、黒エアルに照準、ビームライフルと合わせ、同時に放った。

ディスはなんとかその攻撃を避けるも、引き際を誤る人間ではない。

「さすがに分が悪い・・・・・・メメ!ウノ!撤退だ、アルデウスにて合流を‼」

そして自身も、後退した。

 

エリとザイリは変わらず苦戦を強いられていた。

特に、ザイリの方のジンクオは、左足を被弾し、その場を動けなくなっていた。

エリのジンクオ・シグマはまだ善戦するものの、ルブリス・アダムを追い返すことはできず、せいぜい時間稼ぎが精一杯であった。

そして先ほどの、ディスからの撤退命令。

ウノはそれを聞き、不満顔になる。

「はあ~、今いいところだってのに。

ディスのやつ、しくじりやがったな。」

そして、改めて太刀を構え直す。

「すぐに勝負をつけてやる、こいつだけでも墜とす‼」

そう言うと、ザイリのジンクオを目がけて突進する。

「くそッ」

エリはビームライフルを連射する。

しかし、全てかわされる。

「ここまでかッ‼」

ザイリは覚悟を決め、目を閉じる。

コックピットの目の前に、太刀が迫る。

━━しかし‼

寸でのところで、ジンクオとアダムの前に、一機のモビルスーツが割って入る。

そのモビルスーツは、そのまま太刀を両肩の盾で防御した。

「な⁉」

「この機体は・・・・・・!?」

ザイリもエリも、突然の出来事に驚く。

そのモビルスーツの機体色は赤。右手にビームショットライフル、両肩にはシールド型防御用ドローン「ダヤ・アンビカー」を装備していた。

そして機体名は━━『MD0064 ダリルバルデ』

現在のジェターク社の量産型モビルスーツ・ダリルバルの元になった機体で、同時に、ジェターク社前CEO、グエル・ジェタークの愛機であった。

そしてその機体に現在搭乗するのは・・・・・・なんと先ほどの喫茶店の店主こと、ボブ・カマーンであった‼

ボブは複雑そうな顔をする。

「くそ、今更横やり入れて来やがって、誰だテメエ⁉」

ウノは激昂する。しかし当然のことながら、返答はない。

「ええい。ならまずは、お前から殺す!」

アダムの矛先が、ダリルバルデへと向く。

そしてそのまま急速接近、一気に両断しようとする。

しかしダリルバルデは動かない。

「おい!」

「旧式が前面に出て何を⁉」

ザイリとエリがそれぞれ叫ぶ。

だが彼らは知らなかった。ダリルバルデの機動性、スピード、運動性は、全て量産型のダリルバルと同様であるが、ただ一つ、量産型には実装されなかった装備があったことを・・・・・・

それが・・・・・・

突如として、ルブリス・アダムの右腕と左足が切り落とされた。

「な、おのれぇ・・・‼」

そう、これこそがダリルバルデオリジナルの装備、攻撃用ドローン「グスサー・イーシュヴァラ」である。

イーシュヴァラは、アダム攻撃後、さらに周囲を飛び回った。

それを見て、ウノも状況を理解した。

深追いをせず、一目散に後退、プラントを後にした。

「「・・・・・・」」

エリとザイリは、ただ呆然と、ダリルバルデを見つめていた。

 

 

プラント・カオティック。

半日前、スレッタと会った時に見せられた写真に写っていたモビルスーツについて、その時は見覚えがないと言い放ったシャディク・ゼネリであったが、しかし実は少し心当たりがあり、蟠りを解消するため、このプラントに潜入していた。

誰もいない兵器工場の廊下。

そこをシャディクは、おそるおそる進む。

だが。

パンッ!

「うっ」

シャディクは思わずうめき声を上げる。

左肩を確認すると、撃たれていた。

「さすがは元グラスレー社の御曹司。よもやここを突き止められるとは。」

シャディクの背後に、サングラスをかけた、黒装束の男が立つ。その左右には、同じ格好の男達が並ぶ。彼らの服装は、スレッタ達の自宅を襲った襲撃者と同じものだ。

シャディクは後ろを向き、肩を竦める。

「・・・・・・やはり、あなた達でしたか。」

銃を持った中央の男は、鼻で笑う。

「シャディク・ゼネリ、あなたにはここで消えていただく。」

シャディクはやれやれと目を閉じる。

「━━ここが人生の終着点か・・・・・・まあ、悪くないな。」

次の瞬間、銃弾が眉間に撃ち込まれた。

無言で崩れ落ちる。

これが、シャディク・ゼネリの最期であった。

 

銃を懐にしまった男は、そのまま端末で何者かに連絡を取る。

「拝命通り、目標を始末しました。━━はい、証拠を抹消し、直ちにこの場を去ります。」

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