突然ビックリ♀蜥蜴人ちゃん生活!?   作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)

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勝利と殺人

 

 

 

 

 

 静かに歩み寄るブーツの音、機嫌良さげな鼻歌。おおかた剥いだ俺の皮をいくらで売るかとでも考えているのだろう。

 

 まさに取らぬ狸の皮算用ではないか。

 

 反骨心と野心に溢れる彼女は、既に逆転勝利を確信し、内心ほくそ笑んでいた。

 

 

 時に、この蜥蜴人の恰好になってから、彼女の視界に常に入っている体の部位があった。

 

 それは、肉食の爬虫類らしく、恐竜的に顔の前に張り出した口吻のことだ。

 

 目の下から鼻の先までの、顔の前端部分と言ってもよいそれには、ちょっとした鼻と、臼歯が無いために丸呑みしかできない構造の、少々凶悪な風貌の口が付いている。

 

 要するに、彼女はまだ自分に残されている最もプライマルな武器である、己の牙という存在のことを思い出したのだ。

 

 その威力は既に保証済みで、先ほど腹が減った時にいつもの樹皮のように硬い乾燥肉を齧ってみると、まるで紙でも裂いたかのように簡単に千切ることができた。

 

 人間であった時より、明らかに口の力が強くなっていたのだ。

 

 

 正直まだ全然痛いが、彼女は心臓の痛みに苦しみ続けるフリを行い、冷たく湿った石の床の上で仰向けに転がった。

 

 そして、蜥蜴人とはいえ一応それなりの大きさはあるため、男に少しでも長く隙を作る為にも、ギャンベゾン(パッド入りジャケット)の前を閉じるボタンを力一杯引きちぎり、自身の黄緑色の柔肌と乳房を露出させる。

 

 すると目論見通り、男は嘲るように口笛を吹きながら、拾い上げた短剣を弄びつつ無防備に近付いてきた。

 

 単純な男だとも思うが、実体験として、迷宮に長く潜っていると大変に欲求を持て余し、もはや何でもよくなってしまうので、気持ちは分かる。

 

 しばらくの間、男は彼女の腰を跨ぐようにしゃがみ、少し鼻息を荒くしながらも、どこから皮を剥ぐか思案しているように見えた。

 

 彼女もいつ襲い掛かろうかとタイミングを図っていたものの、男があまりに動かないせいで、苦痛に喘ぐフリどころか死んだフリに移行しなければならなかった。

 

 たっぷり数分が経った頃、どうするか悩んだのか、いい加減飽きたのか、男が左手に短剣を持ち替えて、彼女の顎を掴んだ瞬間、彼女は電光石火の勢いで上体を起こし、男の無防備な首筋に噛み付いた。

 

 まさしく棺から蘇った吸血鬼のように、彼女は小指ほどもある恐ろしげな牙の峰々をずぶりずぶりと肉に食い込ませてゆく。

 

 男は絶叫しながら抵抗しようとしたが、時すでに遅く、何かしらの重大な神経器官を噛み切られ、体を震わせながら短剣を取り落とした。

 

 

 …徐々に口の周りが冷えてくる頃、彼女はようやく口を離す。

 

 自身の鼻先から鎖骨までをしとどに濡らす男の血は、鉄臭く、ぬるぬるとしていて、少し雄臭くも感じたが、勝利の美酒と思えば至上の悦びにさえ感じられた。

 

 半死半生。というか、九割死んだ男の首の肉は、半円状に千切れかかっており、破れた太い血管が、擦り切れた縄のように飛び出していた。

 

 正直、彼女は以前から戦うことが好きだった。

 

 敵を敵らしく葬るのが楽しかったからだ。

 

 なので、自分をあんなに痛めつけた敵が、このように無様に横たわっているのを見ると、胸がすっとする心持ちだった。

 

 

 彼女は前の閉じなくなったギャンベゾンの袖で口を拭い、石材を少し砕きながら転がっていたメイスを拾う。

 

 勝利に高揚する心のままに、男の遺した戦利品を漁り始める彼女だったが、その間にも室内には濃厚な死の臭いが漂い続けていた。

 

 

 

 

 

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