突然ビックリ♀蜥蜴人ちゃん生活!? 作:4645 (ケモ系大量生産クリーチャー)
彼女は三十分ほど時間をかけて男の所持品を漁り、衛兵の没収物じみた綺麗さで床に並べてみたものの、正直な所今の彼女にとって有用な物は少なかった。
なぜなら地上で換金することなど当然出来ず、更には換金する必要すらも無いうえに、彼女自身に素材を加工して道具に変えるような技術も無かったからだ。
金銀財宝や素材などの不要品を除いて目に付く物と言えば、ちょっとした生活雑貨や食料品に、男が常に付けていた謎の目隠しぐらいのものだ。
とはいえこの
なんと目隠しの裏面を見ると、目隠し前方の景色が人間の視界と比べてより広い視野角で映されていたのだ。
更には蜥蜴人に変化して以来ずっと鬱陶しかった、視界中央に有り続けている自身の口元がトリミングされて見えている。
要するに、この黒い目隠しで視界を覆うと、見える景色が二つの目によるものではなく、一つの巨大な目による広い視野角の視界になり、視界を確保するのにあたって邪魔なものが見えなくなる。
簡単に言うと、ちょっとした障害物を透視できる擬似的なモノアイを手に入れられるのだ。
自分の首から上のパーツが一切見えない視界というのは中々不安になるものだが、慣れると圧倒的に広い視界の利便性が格別であった。
おそらくあらゆる方向を警戒する必要がある者、特に単独行動をする者が常用するマジックアイテムなのだろう。
なんとなく、彼女はこの道具に込められている意図を察することが出来た。
込められている魔術の雰囲気が、どことなく独り者向けであると主張しているのだ。
青色の表紙の手帳と言えば算術用の手帳であるという感覚と似ている。漂わせているオーラが独り者向けであると言っても良い。
彼女にとって、これはまさしく僥倖であった。
人間であった頃と比べて、蜥蜴人の視界というのは著しく周囲を感じ取りにくいものであり、先ほど持ち主の男を殺した時も大変苦慮したのだ。
蜥蜴人の視界では、正面のごくわずかな範囲に死角があるため、直接正面を捉えることが出来なかった。
なので死んだフリをした時も、わざわざ顔を横向きにして、横目で男を見るような工夫をしていた。
彼女は目隠しの血を拭い、自身の両目を覆うようにさっそく装着する。
少し血の臭いがするが、じきに慣れるだろう。
そうして物色を終えた彼女は、適当に不要品を部屋の隅に蹴り込み、四角く膨れた自身の背嚢を更に戦利品の雑貨で彩った後、よっこいしょと起立して、また当てもなく歩き出した。
新たに手に入れた鉄製の小さなスキレットが、背嚢のフックに吊り下げられた事に抗議するようにガラガラと音を立て、補充したカンテラ用の油壺からは、満足げに液体を揺らす音が聞こえる。
男の服で汚れを拭ったメイスは、金属のにぶい輝きを放ち、次こそは血をと張り切っているようだった。
本音を言えば、彼女は今すぐにでも横になりたかった。
肉体の疲労はそれほどでもないが、たった一日の間に起きたことが多すぎて、気疲れしてしまったようだ。
とはいえ、流石の彼女でも死体と一緒に寝る趣味はない。また新しく休める場所を探さなければならない。
彼女の奇妙なニューゲームは、未だ始まったばかりであった。
活動報告に説明あり