猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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なんかなんかやりたいと思った。後悔はない。


猫と2人のおっさん

 

ポツ…ポツ・ポツポツポツポツ

 

ザーザーザー

 

滝のような雨、それに打たれまいと必死に屋根の下へと入る人々。廃虚のような街の中で、傘をささず雨に打たれ続けながらバッグを背負って街中を走る。 

 

パシャパシャ

 

と蹴り上げられた水を足に受けながら、早く早くと逸る気持ちを抑えながら、走る。

今日のコロニーの天気は雨のち晴れ、直ぐに天候は良くなるから逃げやすくもなるはずだ。

 

急がなければならない、早くしなければ荷物の受け取り時間はもう目の前だと言うのに…少女はそんな事を胸に秘めながら艶のある黒髪を靡かせて今日も街を駆けている。

 

それを見かけた警邏が、何やらおかしいものを見たかのように彼女を見るとちょうど休暇中で会ったのだろうが、食べ物を落としてまで彼女を追う。

 

「そこの!止まりなさい!」

 

止まるわけには行かない、そうなればお金が貰えないのだ。自立のため自由を買い取る為に彼女は走り続けるしか無い。

せせこましい道を通り、回り道されないよう使い慣れた道を使い追跡を振り切ろうとする。 

 

目の前にある改札を飛び越えよう…そう想い勢いつけていた時、誰かとぶつかった。

謝る時間など無い…それに、上手く行けば丸儲けだから。

振り返らず一心に走る、大丈夫自分の足は良い方なのだと言い聞かせて。

 

だんだんと息が上がってくるが、それでも急がなければならないと…と思った辺りで

 

「大人しくしろよ…難民が。これだから困るんだよ!!」

 

人員を動員したのだろう、道の先にはもう一人の警邏がいた。

状況は絶望的、正直に言えば今すぐ帰りたいはずである。

 

「おとなしくしてくれれば、手荒な真似はせずに済むんだぞ!!」

 

ビクビクビク

 

元来臆病な性格である彼女は、目を瞑りその事態に目を背けたいと思いながらも、現実は非情である。

身体の汎ゆるところを弄られ、そして何もないとわかれば今度は顔面を殴られた。

殴りたくもなる、警邏がやっているのは仕事なのだ。自分だって生きる為にコレをやっているのだから。

 

 

トボトボと歩く

どうしてか、インストーラー・デバイスの運び屋等やっているのか…。それは全て自由のためなのだ。

ここで暮らす為にも、自分でお金を稼げるようにならないと生きては行けないとそう思っていた。

 

それにしてもと、道中出会った少女アマテの事を思い出す。良く手入れされた髪に、有名そうな学校の制服。きっと何処かのお嬢様なのだろうけれど、それがどういうわけか自分に協力的であった…。

癪に障ったけど……少し有り難かった。引っ込み思案の自分と違って…積極的だから。でも、アウトローに夢を持つなんて言う馬鹿なことをやっている、本当の馬鹿だ。

まあ、もう会うことはないだろう

 

と、自分に言い聞かせて納得させる。

 

雨は止み、水たまりもなく直ぐに乾燥する。

水捌けの良い地面は、都市部の良好な開発具合を物語っているものの自分には無縁のものと切り捨てた。

この創られた大地は、人が住みよい様にプログラムされた環境の中で人を不幸にする。

 

そしていつも思うのだ

 

戦争なんてなければと。

 

 

住まう場所は決まっているものの、どうしてかばつが悪い。自分のやっていることが違法な事くらい分かっているし、自分を匿っている人達に申し訳がなかったからだ。

 

「た……ただいま」

 

一応の住宅。

難民区の直ぐ側に位置するジャンク屋の内の一つ、源平と言う名のジャンク屋がそこにはあった。

それが彼女の家、何の変哲もないはずの修理工場も兼ねている工房を持つちょっとリッチなジャンク屋。

そこに住み込みで家賃無しに暮らしている。

 

今日も忙しいのだろう、騒がしい表側には多くの作業員がいる。

 

「おお、ニャアンちゃん。おかえり……大丈夫かねその顔の痣」

 

「ち、ちょっと…転んだだけだから」

 

ここの人達は自分に優しい、自分が難民で身寄りが無いのだということを知ってなお、ここに留まらせている。

あちこち方々を転々としていた彼女にとっての、今の家だった。

 

「ふ〜ん……直ぐに親方呼んでくるから待ってなさい」

 

まるで飼い猫である。彼等は彼女が一体何をしていたのか等、知る由もない。事務所のソファに腰を掛けイジイジとしながら、その時を待つ。

 

「おかえりニャアン、どこに行ってたんだ?」

 

「…ちょっとした散歩」

 

嘘である。

 

親方と言われた人は、この現場でも充分に若手の人だ。宇宙世紀85年で35歳くらいだと言うのに現役で、アレだけ多くの人を引き連れて作業を行っているのだから。

その言動と態度と喋り方からはとてもではないが、元軍人であった等とは全く分からないものである。

 

「散歩ね…、どこを歩いていたんだ?難民区の方だろう?それに…まだそんな事を続けているのか?」

 

やたらと勘の良い人で、正直この人に嘘は通じないし何より穏和なその人に申し訳なくなってしまう。

天然パーマであるという髪を弄りながら、青い瞳の彼は溜息1つ吐くことなく彼女の事を心配していた。

 

「うう……ごめん…なさい」

 

だからこそ、自立しなければならないのだ。こんな良い人が自分なんかの為に、こんなにいい場所を提供してはいけないのだ。

 

「良いさ、君はまだ若いからね色々と思う事は有るんだろう?ここの生活にも」

 

彼は優しい優しすぎるのだ、だから甘えていてはいつか自分は彼に…

 

「話し中失礼するが、その顔はどうかしたかね?」

 

いつの間にかすぐ近くには、ここの経営者である男がいた。

ニャアンが帰ってきたことに心底嬉しそうな顔をしていて、非常に満足げだ。

その金髪オールバックに黒のサングラス、スーツを着込んでいる。

事務方で一番偉い人、営業担当でありこの会社の社長でもある。

 

この会社は元々はもっと小さなジャンク屋であったそうである。今の社長と親方と言われる人が来てから見違えるように、その会社を大きくしたのだとか…。どういう理屈であるのかは分からないが、ともかく凄い2人で有るのは確かであった。

 

「今はその話は良い、殴り込みに行くつもりだろ?」

 

「どうだろうな、私がどうしたいのか貴様にはわかるのか?」

 

二人がいるといつもピリピリとした空気が流れている。仲が良くないのか、でもとても息が合っている2人なのだから始末が悪い。

だから……居心地が悪いのだ。

 

「あ…ごめんな。まあ、疲れただろうからゆっくり休めば良いさ」

 

「そうだ、君は私たちの娘のようなものだからな」

 

「あ…ありがとうございます」

 

ぶっきらぼうに他人行儀にするしか無い、情が出ないとも限らないから。

だから、あまり家にいたくない。

 

学校には通えていない、自分が難民であると言うだけではなく、あの2人も同じく難民であるというのだ。その割にはかなり羽振りが良いが…。

少なくとも他の人達とは違う。

 

勉強だって教えてくれるけれど、やっぱり居心地が悪い。バツが悪い、2人にあまり迷惑をかけたくない。

自分一人で生きる為に、その為にお金が必要なんだと言い聞かせ今日も…運び屋業に性を出す。

 

ある日、事務所の一室を借りて寝ていると何処からかTVの音が漏れ聞こえてきた。

それは、恐らくは社長室と呼ばれる一室だろうそこから音が漏れてくる。

 

「今の戦………どう思う?」

 

「無…が多すぎる、もっと細かく姿………すれば………の消費を抑えられる」

 

そんな言葉だ。

扉に耳ピタリとそばだてて、薄いそこから声が聞こえてくる。

 

「しかし、動きが鈍いな。これじゃぁ、戦場では使い物にならないぞ?用兵側としてはどうなんだ?こういう兵は何処に配置する?」

 

「後方2線級のパイロットだろうな。補給線に回すな、その方が前線の負担は少なくて済む。何より後方ならば援護が行き届いているからな。尤も、戦争が膠着状態以上の場合が前提であるが」

 

「大佐まで行ったお前が言うんだからそうなんだろうな」

 

楽しげに話をしているが、内容は戦争の話だ。

 

「逆に聞くが、訓練教官としての実績のある貴様ならどう教え導く?」

 

「碌な教え方じゃないさ、まあもっと回避に専念しろと言うだろうな。これじゃすぐに落とされるからな、がむしゃらにでも良いからとね」

 

いつもこうなのだ、クランバトルの日はいつも2人でこうやって話をしながら、パイロットの評価をしている。

いったいどういう関係がこの二人にあるのだろうかと、そう思うことがあるものの深くは詮索しない。

誰しもが秘密を抱えるものだから。

 

「君は参加しないのか?」

 

「誰と組むんだ?まともな機動が出来る奴がいなきゃ意味はないぞ?お前となどごめんだよ」

 

その声には何かの複雑な物が有るのだろうと思いつつ、扉から遠ざかる。きっと自分のことには気が付いていないと、ニャアンはそう思いながら再び眠りにつくのであった。

 

 




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