猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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死闘

 

 

『全部終わったら、2人と一緒にパーティーがやりたいなぁ。』

 

道を歩くニャアンはそう想いながら、やったことも無い事への挑戦を決意していた。

そもそも、友達と言ったものがどういうものであったのか、とかそんな事も朧気である彼女は、その行為自体に微笑ましい想いを抱いていた。

 

あの日、サイド2から生命からがら逃げ延びたあの日から…、友達とかそういう物を創っている余裕を、2人への負担を考えればあまりそういう物に積極的ではなかった。

だが、マチュとの出会いはその要因を払拭するように、彼女にプラスの思考を与えていたと言えるだろう。

 

勿論、大人達も彼女に悪い様にはしていなかったが、子供はやはり子供と一緒に遊ぶのが一番健全で、一番成長に繋がる事だろう。

 

そんな取り戻されつつあった彼女の本来の日常……、それは一瞬にして崩壊していく。

 

 

突発音と共に、コロニーの空気の流れが変わり瞬時に夜から昼の明るさに変更された光量は、避難経路をより鮮明に映し出す。

何かが壊れる音と、何かが爆発するような音が響き渡り街中はパニックに見舞われていた。

 

そんな環境の中で、一番に冷静であったのは皮肉にもこんな出来事が初めてではない、ニャアンの強みでもあった。

 

走る走る走る

 

のべつ幕無く走る

 

避難経路は本能にしがみつく様に覚えた。明日のわが身可愛さに、この難民地区がまだ更地であったときから、彼女は脳裏に地図を描いていた。

だから、何処に避難用のシェルターがあってどの道が一番の近道であるのかとか、それを熟知していた。

 

熟知していた筈だった。

 

「えっ!嘘!!」

 

辿り着くとそこには難民が創り出した雑多な家が立ち、その入り口を塞いでいる。

馬鹿な奴等はどんな世界にもいるが、何の考えもなくただ建物を建てれば良いと言う、そんな思考の中では綿密に創られたものですら無意味と化す。そんな事象の典型例であった。

 

「クソッ!!次は!」

 

ニャアンは駆け抜ける。

急ぐのだ、でなければ死ぬ。

あの日の再来が、彼女の脳の処理速度をグングンと上げつつ現状への理解を上げていく。

目に見えないはずのそれが、次に何が来てどうなってしまうのか?そんな事が、手に取るように脳裏を駆け巡る。

 

と…、そんな中で一度立ち止まり…それが運命を決定づけた。

 

1条の光が、彼女の進行方向に着弾し多くの建物と共に人々を飲み込んでいく。

蒸発する人々、鼻腔をくすぐるその臭い…。

そんな場所へと、1機のザクがゆらゆらと落下し難着した。

 

機体外部へのダメージはそれ程大きくはないだろう…、だが…その後仰向けになってピクリとも動かない。

 

「……すぅ…ん!」

 

彼女はそれを見て直ぐに駆け寄り、ザクのコックピットが有るであろう場所に向かって動き出す。

コックピットハッチの暗証番号等分からないが、勘が冴え渡っている彼女は、分からないながらもその番号を打ち…コックピットを開放する。

 

「ゔっ…、コレじゃあ。」

 

中にいるパイロットの状況を見て、眉を顰める。首があらぬ方向にぐるりと回ったパイロットスーツ。

首にかかった、何かがそれを行わせたのだろう。だからコックピットへの持ち込みは最低限にしなければならない。

 

「ごめんなさい」

 

謝りながら彼女はその遺体を外に出してコックピットシートへと乗り込む。

動かし方は習っている、だから出来なくはない。

問題なのは…コロニーを蹂躙するあの巨大な機体。

 

ニャアンは悔しかった…。だから、堪忍袋の緒が切れるような、そんな気がした。

 

 

……

 

巨大な推進ロケットの加速によって己の身を縛り付ける様なGが身に降り注ぐ中、シャリアはキケロガを駆り真空中を滑走し、戦場となっているであろう場所へと急ぎ急行する。

 

「抜かりましたか…、まあ色々と手の施しようはあります。それよりも…」

 

サイコミュによって強化された彼の研ぎ澄まされた感覚は、1つの気配を感じ取り、意識をその方向へと向かわせている。

キケロガと同様にノズルの光が明滅しイズマへと突き進むそれが、急激に接近していることを彼は良く思った。

 

「敵意はありませんか…しかし…!」

 

ハイザック、シャクルズと言うサブフライトシステムに背乗りしたその姿が露わになると、通信を試みたくなった彼は、光通信によってソレに問い掛けた。

 

「何用でこちらに来るんですか、焦りが見えますよ?」

 

「そちらもな。目標が減ると逆に困るんだろう?」

 

互いに行き場所は同じである事など分かりきっていたが、だとして別に協力しないと言う道理もない。

 

「こちらの情報では、地球の大型MSが内部に確認されています。その機体では俄に荷が重いのでは?」

 

「どうだろうな、だとしてどうする?」

 

並走しながら次第に目的に近づいていく、殆ど会話もなく互いに何がしたいのか理解しているのか、アムロの方が口火を切った。

 

「中は任せた。」

 

「ええ、お願いします。」

 

そう短く言い合うと、シャリアは更に機体を加速させイズマへと直進し、アムロはシャクルズを何かに向けて、まるで下駄を飛ばすように射出するとそれが何かに接触衝突し爆発する。

 

と同時に宇宙空間に煙幕のように何かが現れれば、慌てたようにビームがハイザックへと飛んでくる。

緑色の旧式量産機、ゲルググが複数機…アムロの周囲を取り囲むように展開していた。

 

「ブラウ・ブロか…貴方なら上手くやってくれるだろう?シャリア・ブル。」

 

何かの直感か?はたまた予感か?遠くへと行ったシャリアへとそう言葉を紡ぎながら、弾幕をすり抜けていくその姿はまさに鬼神の如く。

周囲を取り囲んでいるゲルググの動きも悪くなく、戦時中ならばエースと呼ぶに相応しいそれは、間断なくハイザックの速度に追随する。

 

ガンダムから抽出されたデータを下に、本国によってシャアの機動をインプットされた簡易型の戦闘OSは、パイロットを補助しつつ的確な動きでその機体を駆る。

そうして、ハイザックを追い詰めようとするものの、アムロにはその機動は見知ったものであった。

 

「ガンダムが赤かったからどうかと思えば、こういう事か?行けるな?」

 

機体性能はハイザックの方がゲルググよりやや上回るとは言え、それ程の違いはない。

良好な機動を行うゲルググは、しかしハイザックを捉えるにはその力は足りていない。

 

エースパイロットは、その機体への習熟と回避行動に僅かに癖というものが着くという、アムロは自らが射出したビームの動きに対応してみせた機体群を見事に看破し、一機、二機と次々とそれを落とす。

一機、二機と次々とそれを落とす。

 

もしコレがシャリア・ブルが行っていれば、確実に軍事法廷へと招き入れられた事だろう。

未確認とは言え、自軍と同様の識別信号を持つ相手を破壊するという事は、即ち裏切りと同義となるからだ。

 

従って、この一連の流れというものはシャリアとアムロの一瞬の結託である。

回収要員であろう者達を暫し落とし続け、最後の一機となった頃にはそこにはゲルググの残骸が辺りを飛び交っていた。

 

「少し時間を要したか、良い足止めだ。」

 

それを落とし、シャリアを追うようにイズマへと機体を加速させた。

 

 

……

 

地上に舞い降りたサイコガンダムは、まるで遊んでいるかのように周囲の物体を破壊していく。

それに複数の機体、軍警のザクが立ち向かうが歯牙にもかけない一方的な展開に、軍警の威信は失墜していることだろう。

 

そんな最中、ガンダムは、シュウジは自らを狙えと言わんばかりに跳躍しビームライフルを撃ち込むも、それはIフィールドによって阻まれ機体に届かず、更には僚機であるハンブラビが巨体に対する死角を補うように動く。

 

勝てない戦い、シュウジは死を覚悟していたが彼には今守るべき者がいる。

確かに性能差は歴然で、時代遅れの機体には荷が重い。

だが…、時にモビルスーツの性能の差が戦力の決定的な差ではないことがあるのが、また事実であるようにこの時の彼には一つの手段が残されていた。

 

機体ジェネレーターは火を吹きそうなほどにその機体を痛め付けているものの、幸いな事だがマグネットコーティングと、αサイコミュのフィッティングは機体への負荷を軽減している。

 

「ガンダム…やってくれるね?」

 

シュウジは自らの意思でガンダムへと問い掛けると、ガンダムのαサイコミュが律動し…赤い粒子が舞い始める。

周囲一帯に満ち満ちたミノフスキー粒子が呼応するように集結し始め、ガンダムはまるで炎を纏うよう。

 

そこに来て彼は機体を全開に機動し、ただその身を持って突貫する。

それを見たゲーツは何が始まるのか、直感しそれを阻止する為にライフルを構える。

しかし、それを阻止するように一機のザクが彼の意識の外から現れ、ザクマシンガンが轟きライフルを撃ち壊す。

 

サイコガンダムは発光するガンダムを抑え込もうとし、Iフィールドを限界まで駆動させるが…そのIフィールドそのものがその光に呑み込まれ赤い閃光は、その場にいたそれぞれに有るものを思わせた。

 

「まずい、ゼクノヴァか!!」

 

ゲーツはその瞬間を見た。

ガンダムが、サイコガンダムの腕を飲み込みながら姿を消した瞬間を…。

 

「ぐがああぁああーー!」

 

サイコガンダムとリンクしていたドゥーは、腕の消失とともに極限なる痛みをダイレクトに受け、意識を白黒させる。

 

「貴様が余計な邪魔をしなければ!!」

 

肝心要であるサイコガンダム、それが損傷した事を意識したゲーツはその遠因であるザクを機体を急接近させ蹴り上げる。

 

「ぐが……ぁ……!」

 

中に乗っている人間が誰であるかなど知ったことでは無い。だが憂さ晴らしには丁度いいと、ビームサーベルでコックピットを一突きにする………、ところで更に邪魔が入った。

割って入るように現れたのは白磁の機体…

 

「これ以上邪魔されるのは癪なんでね!」

 

エグザベがそれに乱入する。

が…、サイコガンダムが中破したとしてそれでも2対1、戦いになればそれだけエグザべには不利を下す。

だがエグザべ、この男やれる男である。早々に彼は自らを囮とすることにより、無駄な死者を減らすよう動くように、自ら防戦の道を選んだ。

 

 

……

 

暗い暗い密室…1人膝を抱えながら声に恐怖する…。

人々の痛みはダイレクトに、マチュの心へと浸透しそれを蝕んでいく…。

 

彼女は決して、戦士などという人間離れしたような存在ではない。

 

戦争を知らず、戦いを知らず、死を知らず、殺しを知らず、平和を知っている。

そんなちっぽけなハウスの中で育てられた、観葉植物の様なそんな女の子、アマテ・ユズリハである。

 

それ故に非常を憧れ、外れた道に興味を示し此処までやって来た。だが、そんな彼女にとってのコレは、あまりにも強烈な事であった。

 

『マチュ…立って立つんだ。』

 

「シュウジ……?」

 

そんな声が聞こえたと思うと、彼女は伏せていた顔を上げると勝手に止め処なく溢れてくる涙が視界を滲ませている事に気が付き、急いでそれを拭う。

彼を探さなければと、周囲を見て…それを知った。

 

中破した巨大なガンダムに、嘲笑したように動く奇妙な機体とそれに防戦を行う白磁の機体。

だが、そんな姿を見てもガンダムの姿は何処にもない。

何処にもいないのだ。

そして、周囲に転がっているガンダムの装備であったものが散乱し、ガンダムが何処にもない。

 

マチュはその手に力が入っていくのを感じ取ると、ハァハァと息が上がっていくのを感じる。

そして、目の前の惨状を創り出したであろう存在に、怒りを燃やしだした。

 

「お…が、お前が…、お前達がやったのか!!

 

彼女は我を忘れたかのように、機体を機動させその戦いに乱入すると、執拗にサイコガンダムへと攻撃を行う。大地に落ちていたガンダムの装備を、ジークアクスは意識が有るように拾い上げ、攻撃に使用していく。

 

「こんなところに邪魔者か!」

 

ゲーツは突然の乱入に怒りを露わにするも、その一瞬の気の緩みが最悪の選択である。

 

「余所見をして良いのか?」

 

近接した機体から送られてくる思念、そして白磁の巨大な槍が目の前に現れると、それから攻撃が来る事を察知し咄嗟に機体を避ける。が…時は既に遅い。

槍からのビームが避けた方向へと流れて行く…、彼が最後に見たものは綺麗な光だった。

 

片腕を無くしたドゥーは、近接するマチュに一瞬戸惑いを見せるが、片腕を無くしたとてIフィールドが無くなるわけでもなくビームを反射し、サーベルを撃ち落とすように胸部ビームを撃つ。

 

マチュの操縦は決して悪くはないが、この時彼女にとって最も必要なものが欠けていた…。

人を殺すという執念が、今の彼女には無い…。

殺意は力だ、どれほど弱い相手であっても殺意が有るだけでそれは狂ったように動けるものだ。

 

だがマチュは、殺意と言うものの使い方がよくわからない、そう言う生活を送ってきた者ではないからだ。

だからこそ、本来であれば有利であったはずのジークアクスがその装備を活かせぬままに、窮地に立った。

 

「中途半端なんだよお前は!!」

 

それを見て嬉々としてドゥーは叫ぶ、相手の顔がどうなっているのかすら分からずに、だが相手がどんな奴であるのか分かっているかのように。

最も、そんな殊勝な考えも一瞬の内に消えた。

 

コロニー外壁の開放区画が開くと、そこから1機のMAが現れたからだ。名をキケロガと言うそれは、条約に書かれている禁止兵器でも有る。だが、このような有事においてその様な字面は効果を持たず。

 

そんな機体にドゥーは意識を、持っていかれ次に来る攻撃に身構えた。

 

「そちらのお嬢さんは、少しおいたがすぎますね。」

 

有線式ビットがその高出力のメガ粒子砲を放ち、それを受け止めるために、サイコガンダムは自らの装甲をパージする。

装甲そのものもをビットとするが、そんなものでキケロガの攻撃は止まない。

 

次第に削り取られ、後手後手となっていく。

 

「お前等よりも僕達のほうが!!……っは?」

 

一閃、意識を逸らした事によりジークアクスが機体背面から現れドゥーは完全な奇襲を許す。

今や機体を護る大切な装甲もなく、ただ眼前に迫るそれを意識の中で見る事しか出来ないでいた…。

 

 

 




ここからオリチャーが増えていくことでしょう。

ちなみにアムロハイザックには、バイコン訂正(バイオセンサー)とマグコが着いています。

誤字、感想、評価等よろしくお願いします。
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