猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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続いた


猫とクランと白い奴

合い鍵は持っている。

西暦20世紀だとか21世紀初頭の街をモデルに創られた、このコロニーの中の建物はカードキーやダイヤルキー、果ては普通のアナログキーまで、多種多様な鍵に溢れている。

 

この事務所、源平の鍵はアナログキー。つまり鉄製の錠前なのだ。だから、キーを手で回さなければならない。

 

ガチャっ……

 

と小気味の良い、手入れの行き届いている音がシーンと静まり帰っていた事務室に響くのだ。

もう、誰が聞いても鍵を開けたのだというのが丸わかりなのだが、そんな状況でもゆっくりと扉を開いてソロリソロリと中へと入る。

 

泥棒か?はたまた誰かが忘れ物を取りに来たのか?

と、その時だ。

 

パチリと、タンブラスイッチの入る音が聞こえたと思えば、部屋中に明かりが灯り、その侵入者の姿を露わにした。

ジメジメとした顔をして、実に申し訳なさそうな感じにしている女の子。

背丈に合っていない何処からか買ってきた制服を着込んでいる彼女、ニャアンはゔっと唸った。

 

「またぞろ仕事かい?遅くなるならなると、連絡ぐらい入れてくれれば良いものを…。

それとも何か理由があったのか?」

 

問い詰めてくるのは天パの方、名前は〘コスモ・ユウキ〙だと言うが本人がその名前を聞いた時、振り向く速度が若干遅い事などは、誰にも分からない。

ニャアンはそれを微塵も疑ってはいない。

 

「ごめんなさい……。」

 

ションボリ、シオシオとする彼女であるが、彼女からすればこの状況は非常にありがたいことでもあった。

両親と生き別れ、互いに連絡することも出来ず生存すら確認出来ない…。

 

そんな難民の子供がマトモな生活を送るには、世間は余りにも厳しすぎた。

そもそもの発端である1年戦争、其れの影響によってこのサイド6以外のコロニーはサイド3が悉く破壊し尽くし、地球にすらコロニー落としが敢行され、総人口の半数以上が死に絶えた。

 

そんな環境でたった一人の子供に気を遣うなどという芸当が、果たして普通の人に出来るだろうか?出来ないだろう。

難民というのは自分勝手に動くことが多い、其れも自分の住んでいた場所以外での振る舞いは特に。

 

このイズマコロニーでも同様に、難民問題が顕著に現れているという。

ジオンが戦争に勝って、コロニーの住人は果たして居心地が良くなったのだろうか?

残念ながら良くなると言うこともない、寧ろ悪化したとすら言える。

 

コロニー住人の者達は互いに啀み合い、罵り合いながら半永久的に続く負のスパイラル。

もしも、地球連邦が勝っていれば最低でも難民用の入れ物くらい創ってくれるだろうに……と。

 

閑話休題

 

 

しょぼくれるニャアンの頭には、ぺったりとした耳などは無いが…

 

「そんなに落ち込まないでくれよ。君の考えも理解できるさ、自立した生活をしたいんだろう?俺たちの迷惑になるんじゃないかって…。だが心配は心配さ、アレの事もあるしな。」

 

イズマコロニーの中央シャフトに鎮座する船、ジオン船籍の軍艦である。それを見る彼の視線は非常に鋭い。

 

帰れるところになろうとしている…。この目の前の男にはそんな物が実は見えているのかと言う風に、彼女の思った事を敏感に感じ取って応対するのだ。

コレにニャアンはどれだけ救われるだろうか?両親を無くした子供が、そんな情を向けられて果たしてどう思うか?

 

「君の雇い主……、違法な事をやっているんだってね。調べたよ、君は何を運んでいるのか理解できているんだろう?」

 

「出来てる、でもそれが一番割が良いし……。難民の子供が出来る仕事なんて、そんな仕事しか無いから……。」

 

今やれることはそれしか出来ない、難民の大人達が好き勝手に自分達の良いように土地を使って建物のを建てて、生活をし始めたばっかりに子供が割りを食う。

身から出た錆だとか、そんな事を言われて本来斡旋されるべき仕事すら無くなってしまう。

だから、違法な物しかやれることが無い…。

 

「そうだろうな、サイド6だって中立であった頃からそうだが、限界は有る。その限界に直面して頭を抱えているのはサイド6もそうだからな。」

 

物事の本質を見極めることが出来る人間は果たしてどれだけいるのか、そしてそれを受け入れられる器量がどれだけあるのか?

 

「だが、約束は約束だ。守れとは言わない、だけど最低限連絡くらいはしてくれよ?」

 

優しく言う彼は、ニャアンにはとても眩しく映った。

 

「さて…、話は変わるんだが…。」

 

「君は赤いガンダムを観たことがあるかい?」

 

いつの間にか、金髪の人クワトロ・バジーナとか言うのがそこに立っていた。神出鬼没である。

 

何枚かのペーパーを取り出す。何故それなのか、今の時代タブレットで事足りるのに、彼等は頑なにそれを使って説明する。理由は安価であるということだが、最悪の事態も想定しているのだろう。

 

「これ…、観た事ある。」

 

「そうか……わかったよ、それだけ確認できれば良いさ。」

 

クワトロはそう言うとペーパーをしまい、少し満足気にする。

対して、何か思うような事があるのだろう、ユウキは顎に手を置いて何か考え事をし始めた。

 

「何かあるの?」

 

「何?彼には色々と思う事があるだけだ、さ。早く休むと良いさ。」

 

借りている部屋へと行く、その間も2人は何か雑談をしていた。

 

 

チュンチュン

 

と言う小気味の良い環境音で目が覚めると、今日も日常が始まった。

 

はぁ〜

 

と言う溜息が、今更ながらにでてきてしまう。

其れは呆れか、それとも恥じらいか?

昨日の出来事の発端である、あの女。アマテ・ユズリハとあの謎の多いシュウジとか言うガンダム?のパイロットのせいだ。

 

運び屋をやっていながら、まさかあんなのと出会うなんて不運にも程がある。

特にマチュだ!どうしていつもいつも自分の行く場所にいるのか、まったくと言って良いほどに邪魔であった。

 

まあ…弁償しなくちゃならないから、ポメラニアンズとか言うクランには勝って貰わなくちゃならなかったけども…。そもそも素直にお金が貰えていれば、こんな事にならず直ぐに帰ってこれたのだ!

 

と、内心思っている。

 

そうしてもう一度溜息をつき、ムクリと起きると朝食の支度だ。2人はニャアンの自立のためと言い、作ってくれない。だからせめて恩返しとして、ここで働く皆に何か作ってあげなければと、そう思うニャアンであった。

 

 

……

 

クランバトル…其れは非合法下で行われる。

モビルスーツを用いて、『MAV戦』と称する2対2のタッグマッチを行うものであり、所謂賭け事の一種でもある。

発祥はジャンク屋であり、其れは戦後の動乱の中戦場からあぶれた元軍人の鬱憤を祓うかの如く運営されている。

 

1つのクランにおける最大参加人数は2機と言う規定がされており、それよりも少ない数であれば例え1対2でも可能である。

 

 

その日、カネバン有限公司の面々は先日行われたクランバトルに於いて、所属チームである〘ポメラニアンズ〙の勝利に浮かれていた。図らずも手に入れた最新鋭MSは、彼等のクランバトルに於いてドル箱へと変わるのでは?と言う想いもある。

 

パイロットたる人物の事はさておき、爆弾を抱えながらも今生きる事に光が見えていた。

そんな彼等は、その日も変わらずにクランバトルの情報を仕入れている。

ジャンク屋業をやりつつ。

 

そしてその日の夜、重大な事件が発生した。

 

事の発端は、クランバトルである。

その日も、何気なくクラン同士の試合を観戦しようとパイロットと機体情報を見ていた。

そして、その戦いが問題だった。

 

試合と言うものは、同等レベルのものとがぶつかった時初めて白熱したものを観ることができる。

だからこそ試合と言うものは楽しいのだ。

 

その日の其れはもう…試合というには余りにもなものであった。蹂躙と呼ぶほうが正確である。

 

クラン・ブラックホークは中堅と言っていいほどの実力を持った者達だった。

彼等は連邦崩れのパイロットであり、ベテランと呼ぶに相応しい実力があった。所属していた機体も、改造に改造を重ねたザクであり機動性運動性共に悪いものではない、故に彼等に非はない。

 

対する相手に問題があった。

 

そのクランの名前は木馬(もくば)、そんな名前の安直な者達である。新規参入者と言う物だった。無名のそのクランはそれに相応しく不気味な機体を持ってきた。

それの所属の機体は

 

ハイザック

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

と言う登録名称だった。

 

「あんな機体ジオンが開発したって記録あるのか?」

 

「いや、でも見たところキメラだな。」

 

キメラ、其れは言うところのごちゃ混ぜである。

 

「機体の外観はザクだけど、ドムの技術も混ぜられてる。所々に連邦系の技術系譜も見て取れる。高いレベルの完成度だよ…、設計者は相当な手練だぜ?」

 

その配色は宇宙では非常に目立つ為に、誰もが一目で見れば分かるだろう。

 

「こんな色の機体で良く参加するよ、まるで撃ってくれと言わんばかりだ。」

 

宇宙空間ではひじょ〜に目立つであろう白色が基調とされた機体。肩の盾には見慣れない、ユニコーンのエンブレム。それは何を意味しているのか?

だからか、誰もが思うのだ。

自信過剰な挑戦者が現れたのだと。

しかもだ、しかもルール上最大参加人数を満たさない一機での参加。

 

誰もが思った。

 

コイツは馬鹿だと。

 

武装は取り回しが非常に悪い、戦時中ルウム戦役で使用されたという対艦用135ミリライフル。

それに左手にヒート・ホークを持っていた。

 

大型のデブリが浮かぶ宙域にて、試合が開始される。

だが試合が始まってから4分、それは突如として行われた。

 

最初の4分間、ハイザックは防戦一方に思えた。

2機のザクに追い回されているだけで、一切の反撃を行っていない。ただただ逃げるだけであった。

素人目に見ればそれは常道であろう、数が上の相手に対して正攻法で戦ったとしてそれは勝てる道理はない。

 

どうせ次第に追い詰められて行くのだろうと、そう思われた。だが、それは突如として行われた。時間にして言えば、ちょうど4分が経過した辺りであった。

 

あと少し、あと少しでデブリに激突するだろうと思われたその時、その機体はAMBACを用いて機体を180°回頭すると、デブリを蹴ってすれ違いざまにザクの頭部を一瞬にして破壊する。

 

内部のコックピットはいったいどういう状況になっているだろうか?

想定するGは10Gには達していることは確かであるが、そんな中でも意識を手放さないパイロットは、もはや人間を辞めているのではないか?

 

そして、追随するもう一機が牽制射を開始するもその中を、紙一重の距離で僅かに機体を動かすだけで回避していく。

決してその動きにダイナミックな凄さは無い、故に素人目にはただ突っ込んでいるだけに見えるだろうが…。

 

相対するパイロットには恐怖以外の何物でもない。

一瞬にして縮む距離、そしてすれ違う。

ザクのパイロットは恐怖のあまりその宙域から離脱しようとする。回避機動を取りながら離れていくのを尻目に、ハイザックは片手間にライフルを2発撃つ。

 

一発は避けられたが、その次にはやはり頭部を正確に射貫いた。いや一発目は完全な誘導射だったのかもしれない。対艦ライフルが直撃した頭部は跡形もなく、コックピットをやられなくて良かったと言う類いの話である。

冗談でもなく、それはまるで蹂躙であった。

 

それを一部始終目撃していたポメラニアンズの面々、特にアンキーは驚くように目を見開く。

戦闘時間は4分32秒、しかし実質的な戦闘時間は恐らくは30秒程であった筈である。

あれほどの腕を持つパイロットが、始めから動きを見せていればこのクランバトルは、白熱のしようもなかっただろう。

 

「この機体のパイロットは誰?」

 

自然とそう聞いていた。

 

「レイって登録名だよ、写真とか見たけど旧連邦の士官崩れでもないし、ジオン所属でも無いってさ。」

 

突如として現れた得体の知れない存在に、ただただ圧倒されるしかない。しかし、確かなことは。

 

NTの戦い方か…

 

アンキーにとってはその存在そのものが興味を惹かれるそれであった。

 

 

そして、そのクランバトルを観ていたのは彼女等だけではなく…勿論、ペガサス級強襲揚陸艦であるジオンの船、ソドンの艦橋でもそれを視聴する者がいた。

 

「エグザべ君…感じましたか?」

 

「はい……、とてもではありませんが…同じ人間があんなものを発しているなんて…考えられません。」

 

ソドンの隊長たるシャリア・ブルは、背中にじっとり(・・・・)と冷や汗をかいていた。それは同じくエグザべ・オリベ少尉もまた同様に、いや寧ろもっと強く感じていた。

手の震えが止まらない、戦争に行ったものが誰しも感じる死の恐怖と言う物がそれの影響か、二人を蝕んでいた。

 

シャリアとて、1年戦争を潜り抜けたエースであり英雄でもある。だが、そんな彼にしてもその感覚は初めての経験であった。

 

「ですがコレが事実なのだとしたら、あまり良い気はしませんね。」

 

彼等が感じていたそれは、重圧だった。

それも、押し潰されるような空間を圧迫するようなそんなプレッシャーじみたそれを感じていたのだ。

人の持つ意識とは点と点、線と線を結ぶそれに等しくそれを辿ることによって人の意志を読み取ることができる。

しかし、そんな普通とは違いあの機体のパイロットから感じたそれは

 

 

それも途轍もなく分厚いそれである。

 

そして同時に思うのだ。いったいどれほどの修羅場を潜り抜ければ、それだけの気迫を持つに到れるのかと…

 

「一度話をしてみたいものですね。」

 

もしかしたら…と、シャリアはなんとなく思っていた。その男ならば、大佐の事を知っているのではないか?と…。

 

 

 

 

 

結果として、そのクランバトルは業界全体に新進気鋭の猛者が現れると言う事実を残し、表社会への影響はさほど大きいものではなかった。

だが…、細やかなものであるが1つだけ…。

そう、1つだけ変わったことがあった。

 

それはニャアンの配達の給料が1割増しになった…と言う事ぐらいである。

 

 

 




原作進んでないから、更新頻度は定期では無いです。
それでもよろしければ、連載します。

それと、評価をバシバシと行いつつ出来れば誤字や、感想もお願いします〜。
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