猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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真実

U.C.0079.12.31

 

ルナツー〜グラナダ中間宙域

 

虚空のように何も無い、そんな殺風景な宇宙(そら)に3隻の宇宙船が駆けていた。

ジオンがその技術の粋を集めて建造したチベ級宇宙巡洋艦、その一隻と共に2隻のムサイ級宇宙軽巡洋艦が、単縦陣を形成して目標であるグラナダへと進んでいた。

 

「えぇい!急げ!ドズル閣下の名誉の為にも、アレをグラナダに落とす訳には行かないのだ!!」

 

その艦隊の目的はただ1つ、ジオンの生命線でありこの戦争での勝利を決定づける為の最重要拠点、月面基地グラナダ。

そこへと移動を開始した、嘗てはソロモンと呼ばれた宇宙要塞の落着を防ぐためであった。

 

現状、ジオンの宇宙艦隊主力はその尽くが地球連邦軍宇宙基地が置かれている、ルナツーと呼ばれる巨大小惑星。

それへの攻略に付きっ切りであり、艦隊戦力を割く余裕は殆ど無いに等しかった。

 

そこで、ザビ家からの信頼厚く、また忠誠心の高い男であるコンスコン少将。

彼を筆頭に、一部の志願者のみが小規模な艦隊を率いてそれの阻止を目的に進んでいた。

 

現状、グラナダの戦力は強襲揚陸艦ソドンとムサイ級ファルメル

を含んだ僅か4隻の物しか存在しておらず、その防衛の要となるのは、シャア・アズナブル大佐率いるキャメル艦隊だけである。

 

しかしながら、それだけで落下を阻止することは難しいと判断された為に、急ぎ急行しているコンスコン隊はこの時、丁度この目的地であるグラナダへの中間点へと到達していた。

 

始まりは突然であった。

 

ビリ…ビリビリと宇宙空間に紫電が放出されている。

 

何も無い筈のそこに、高濃度のミノフスキー粒子が滞留しまるで一個の意思のようにそれが迸る。

 

その空間を通り過ぎようとしていたコンスコン隊は、偶然にもそれを目撃するに至った。

 

「なんだ!いったい何が起こっているか!!」

 

「わかりません!ですが、ミノフスキー粒子の濃度が異常値に達しています!!」

 

急がなければならないという焦りと、見たこともない現象に呆気にとられるコンスコンであるが、それが収まるのは時間の問題であった。

 

強烈な緑の美しい光が発せられると、次第にそれは尻すぼみに小さくなって、一つのモビルスーツがそこに姿を現した。

 

白い機体、誰もが見たこともないヒロイックな見た目のそれは、赤く丸い何かを片手に持ちながら、横たわるように浮かんでいる。

 

「ええい!そんなもの邪魔だ、サッサと処分し航路を開けろ!!」

 

コンスコンのその号令とともに、一挙に戦闘配置へと切り替わる艦内、その機敏な動きはその艦隊の練度を現している。非常に高い練度を持ってして、即座にミサイル発射の号令が飛び交い、発射管が開くとそこからミサイルが怒涛とともに発射される。

 

「……ここは、何処だ?」

 

アムロ・レイは、自らがいったい何処にいるのか分かっていなかった。

まあ、それは当然の事だろう。

大気圏に突入するアクシズ、それを意地でもってして押し返そうというその所業、正直に言えば馬鹿野郎ものだが、意気込みは周囲に奇跡を見せるという結果に終わった。

 

だが、本人はその結果に気がついていない。気がつく前に、何処へとも知らない宇宙空間にνガンダムのコックピットの中で浮かんでいたのだから。

 

頭を振りつつ現状を把握しようと、そう思っていたのも束の間、自らに向かっている敵意に気が付くと

 

ビビビビ

 

と数秒遅れて高い音と共にロックオンアラートが鳴り響く。

 

どちらの方向から攻撃が来るのか、いったいどの様な集団で来るのか、そんなものを考える間もなく実行し向かってくるミサイルを次々にそらし、時にはミサイル同士を誤爆させる。

 

急激な機体の制動、そして全てを逸らし終わった後ふとあることに気が付いた。

 

「ネオ・ジオンの援軍か?だが、俺たちが把握しているものよりも、旧すぎる。シャアはどこに?」

 

そして気がついたのか、シャアの乗っているはずのコックピットブロックが何処にあるのかという、そんな思考があって直ぐにそれを見つける。

流石にネオ・ジオンに奴を再び利用させるつもりもなく、彼は目の前の艦隊の殲滅を決意して、敵の攻撃に対して反撃を開始した。

 

武装無き機体、どうすれば敵に致命傷を追わせることが出来るのか?だが、彼にはその最適解が視えている。ニュータイプ能力ではない、戦士としての経験がそれを為す。

記憶よりも幾分か見窄らしい、そんなチベとムサイ。まず最初に、艦橋を狙うことを決めた。

 

そんな彼に対して、コンスコンは直ぐに別の指令を各艦に出す。

 

「モビルスーツ隊全機突撃!各艦は援護に終始しろ!相手はかなりの練度だ!臆するなよ。」

 

彼の言葉によって艦隊の士気は高い、彼に対する信頼と自らの自信とが両立するコンスコン隊。

彼等はとても強い、とても強いのだが…相手が悪かった。

 

次々と破壊されるリック・ドム、ザク等歯牙にもかけず最初の1機だけがそれを記録する。戦う意思すらなくなってしまう、そんな圧倒的な力。

そんな風景を見て、コンスコンは…いやどの様な態度をとったのかは言うまい。

 

狩人は狩られる立場となり、そして生命を落としたとだけ書いておこう。

爆発の中、奇跡的に無傷の姿で1機敵に鹵獲されるザクをすら記録する。

 

その強さは筆舌し難く。

 

戦いの終わりに、アムロはシャアのコックピットに近付くと接触回線を開いた。

 

「貴様は残党に顔が広いんだな。こんな旧式の寄せ集めを寄越すとは、ふざけているのか?」

 

「何のことかさっぱりだ…それに、私に戦う意思があるとでも?」

 

完全に折れている、そして現状の把握を出来ていない。早々に現実に絶望し、何もかもが馬鹿らしくなっているのだろう。もう…、戦いなど無意味だとそう思っているのだ。

 

「ヘルメットを着けろ、妙だ。腹は立つが、貴様にも機体をやる。推進剤も心もとないからな。」

 

その言葉に渋々と言った態度でハッチを開くシャアは、目の前によこされたザクを見て困惑するとともに、アムロの言ったことを理解する。流石に不味いだろうと、そう想い一時的な休戦を受け入れた。

 

この時、コックピットブロックはザクが手に持ち、後ろからマシンガンを片手に持ったνガンダムに護送されるように、彼等は勘を頼りに人の意志のある方へと動き出した。

 

 

それから時は進んだ

 

戦いは記録となり、誰もがそれを忘れて行く。

しかし、そんな時の摩耗の中でその記録は再び鎌首を擡げ、現実へと姿を現す。

 

 

……

 

キシリアのギレンに対する謀反よりも少し前、ニャアンは自らの行おうとしていることに対して、今一度考える時間を得ていた。

 

キシリアの語る二人の出自、それは大凡の予想ではあるものの二人が向こう側からやって来たという、まあSFチックな内容に内心信じたくはなかった。

 

一緒にご飯を食べ、話し学びそして一つ屋根の下眠りにつく。そんな2人に対して、特別な感情が無いわけもなく。

どちらも家族として愛していた。

 

そんな二人が自分とは別の世界から来ただとか、そんな荒唐無稽な話をされてニャアンの頭は混乱している。

それでも、もしという事もある。実際、彼女の目の前で赤いガンダムは光とともに姿を消した。

 

あんな事だって、この世界では起こり得るのならば何処からともなく、誰かがこちらに渡ってきたっておかしな事ではない。

だが、ニャアンには専門的な事は分からないし、何より決断が出せずにいた。

 

想い悩みながらも、彼女は選択を迫られている。今ここで逃げてしまっても構わないのではないか?二人に会いに行っても良いのではないか?

だが、今の自分の身の上は正直に言って良いものではない。

 

テロリストとして国際的に指名手配されているのだから、それを匿っているキシリアがいてこそ、彼女の生活は担保されている。

2人のところへと返ったところで、また迷惑をかけるだけだろうと、そう想いながらモンモンとしている。

 

と、そこに現れたのは飲み物を片手に、いつも何故か呑気にしている男、エグザベであった。

 

「どうしたんだ?そんな顔で悩んだりして。悩みがあったら聞くぞ?」

 

「……、貴方には関係ありません。それに、飲みながら喋らないでください、中身溢れますよ?」

 

ニャアンはエグザベと言う男が、何処か苦手であった。いつも何故がノホホンとしながら、時折見せる真面目な態度。

頭はかなりキレるし、性格も悪くはないのだがいつもデリカシーもなく、他人のパーソナルエリアにズカズカと入ってくるのだ。

 

分け隔てなく、誰に対しても良い顔をして尚且つ悪い人間ではないことを、完全な善意で振りかざしてくる。

馬鹿らしいほどに真っ直ぐなその性格に、イライラとしてくるのだ。勿論、気持ちの悪いものでもないが、そんな彼が嫌いだった。

 

そんな事を分かっていてやっているのか、エグザベは容赦なく近づいてくる。

 

「ごめん、まあ張り詰めるのも仕方ないよ。僕だって緊張してるからね。

君も、誰かに恩を返したいってそう思ってるのかな?まあ、どちらでも良いんだけど。

僕は、キシリア様に恩がある。だから、あの人の夢を叶えてあげたい、その為なら何だって出来る。

君はどうなんだい?」

 

ニャアンは困り顔でそれを聞いた。キシリアに手渡された封筒、その中身もその意味も全てキシリアに聞いた事だ。

自分でその引き金を引いたとき、自分は大量殺戮者となってしまう。

そうなったらどうなるのか?それは分からないし、その後どうなるのだろうか?

 

それでも、誰かの為に何かを為すのならそれだけの犠牲が必要なら、それをやらなければならないのか?

自問自答、それに明確な答えなどは無い。ただ、エグザベのその悪意無き言葉は一つの後押しになる事は確かだった。

 

 

「ニャアン出ちゃいます。」

 

その声とともに、ジフレドから出撃する彼女は眼下に映る美しい水を讃える惑星、地球を目にしながら今も尚決心に曇りがあった。

キシリアの号令とともに、エグザベ率いるニュータイプ部隊はビグ・ザムとの交戦を初め、ニャアンもまた初陣ではあるものの、その高い素養を持ってして戦場をかける。

 

雑念と霞の中の思考との中であっても、彼女は力強く宇宙を駆けジフレドと一つの練られた対策で、ビグ・ザムを圧倒する。

そんな最中、彼女はキシリアから言い渡されたそれを手に取り、深く深呼吸をする。

 

エグザベが急に速度を減速させた彼女に対して注意を喚起すると、キシリアから言い渡された極秘の任務があると告げ、彼女はイオマグヌッソの中へと入っていく。

 

ここまで来てしまった…現状に流され、決心もなくただ命令に従うだけ。

そんなとき、何かが彼女に問いかける。

 

『辞めなさい…』

 

誰かが彼女に問いかける。

だが、その言葉を幻聴だととらえ彼女は前に進んでいく。

邪魔をするもの、気持ちの悪い感覚を彼女は払い除けるように、ジフレドを操りながら其れ等を破壊していく。

 

そして、目の前にある巨大な機体に対して近付くと、ジフレドの真なる姿を使いそれを起動した。

 

キシリアから渡されたそれには、この物体を使用して敵を撃つ事のみ書かれている。

ただ、目の前にあるそれは彼女にとっては大きな決断だった。だからだろうか、言葉が口に出た。

 

「2人を…2人を元の世界に返さなくちゃならないから…」

 

『駄目よ…、貴女はその選択をしてはいけない。』

 

女の声が聞こえる、聞いたこともない声が2人の事を何故か知った風に、彼女を止めるように言う。

 

「お前には関係無い!!私は、私はあの二人に幸せになって欲しいから!!」

 

素早くキーボードを叩きシステムを起動する。

彼女の選択の果てに、イオマグヌッソはその巨大をゆっくりと動き出し、指示された場所へとその砲口を向ける。

 

『馬鹿な子、あの二人が貴女を残して戻る理由は無いというのに。』

 

消えゆくように、その言葉は宇宙に溶けていく。エネルギーが発せられると、その膨大な力の奔流は砲口の方へと集中し、今か今かと力の解放を望む。

ニャアンの指が引き金に触れ、後はそれを握りしめるだけと言ったとき…それは起こった。

 

『辞めろ!ニャアン!!』

 

聞き慣れたあの人のアムロ(ユウキ・コスモ)のそんな声が響いたように、彼女の頭に木霊する。と同時に

 

ズズズズ

 

その地響きにも似た音が、内部にまで浸透し逃げ場のない力がその巨体を僅かにずらす。

その一瞬が全てを分けたとも言えるだろう。

 

解き放たれたゼクノヴァは、目標を僅かに逸れるとその射線上にあった、ジオンの艦隊を飲み込む。

しかし、目標としていた巨大な要塞は僅かに逸れたことによって、その下半分を削り取られるだけとなり、その威力の名残を世界に残す。

 

雑念の少ない、人々の魂と引き摺られた怨念が彼女の脳裏を駆け巡る。

その意思が人々の断末魔であることを知って尚、ニャアンはそれに苦しめられた。

 

その光景に吐き気を催しながら、一つの事柄を思い出す。

 

それは、サイド2での光景。

逃げ回る人々、手を繋ぎ一緒に逃げていた両親。しかし、手は群衆の中で外れ、一人場所も分からずがむしゃらに逃げたあの日の出来事。

それがまるで、走馬燈のように彼女の脳裏を駆ける。

 

そして、思い出したのだ…あの日プチモビで見た光景を。捻じれ、崩壊していく多くのコロニー達。それとともに拡がる、人々の叫びを!!

 

彼女は頭を抱え、嗚咽に苦しみ蝕まれグリンと眼球が白眼を剥くと…意識を手放した。

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

感想にIフィールドの効果がない描写について分かりづらい部分があるというご指摘がありまして、少し解説。

Iフィールドは勿論のことメガ粒子砲も、ミノフスキー粒子の産物なんですが、Iフィールドの内側からメガ粒子砲を射撃すると、Iフィールドに穴が出来るんですね。(ほぼ一瞬、体感できないレベルで)
そこが閉じる前に、ビームを撃ちますとその穴を抜けてビームが到達することが出来るんですね!



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