猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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独自解釈があります…嫌いな人は、そこを飛ばしてくれても構いません。
なお、最終話のネタバレ有り!!


戦い

 

通路を横切るジークアクス、しかしそのコックピット中は少し窮屈であった。 

 

「済まない、正直危なかった。あのまま行けば、あの私は死んでいたろうし、私もこう見えて丸腰でね。」

 

「ライブ感で生きてるんですか?それよりも、コレからどうするつもりですか?」

 

クワトロをそのコックピットに乗せて、宛もなく彷徨う他無いジークアクスであるが、クワトロが顎に手を当て通路を凝視すると、その青い瞳がマチュを射貫くように見据える。

図らずもドキッとするマチュであるが、自分はオジ専ではないと心に言い聞かせその言葉を待った。

 

「私の指示通りに動いて欲しい、こちらの世界の私は、恐らくはララァの元へと行った筈だ。彼の計画が何であれ、私はそこへ行かなければならないだろう。」

 

「どうしてあの中にいるのがララァだってわかるんですか…。いや、知ってるんですね?」

 

マチュの返しに通路を見据えるクワトロの首は動くことはないが、その瞳は僅かに揺れている。

そのまま、彼の指し示す方向へと向かって行くと行き止まりの筈なのだが、そんなところにモビルスーツがあった。

 

「悪趣味……」

 

「…そうかな?」

 

黄金色の非常に目立つ、ザクのような機体。マチュには見覚えがあったし、ジークアクスもその姿を識別できる。ハイザックと銘打っているそれだが、その色はお世辞にもマチュの感性には合わない。拝金主義だとか、そんな言葉さえ視えてくる。

 

だが、次の瞬間何かが通り過ぎるとそれがそのハイザックに当たったのか、色が塗り替えられてしまった。

薄いピンク色のように見える、そんな色に変えられてしまったそれを見て、何やら安心した様子でクワトロはマチュを見た。

 

「どうやら…、彼女は私の知る彼女で間違いない様だな。ありがとうマチュ君。」

 

「え…?あ、はい。」

 

自然とジークアクスのコックピットが開かれると、クワトロはそこから飛び出して、その赤いハイザックへと乗り移る。

 

『先に行ってくれ、私も後から追いつく!それまで、ララァの事は頼む!』

 

「了解!!」

 

起動されたばかりのハイザックの調整をしているクワトロは、そう言ってマチュを先に行かせると、スーツ姿のままに髪を手で梳くとオールバックを辞める。

 

「さて……見せてもらおうかキャスバル、貴様の選択とやらを。」

 

その機体は動き出す。ただ1人、愛した人のその姿に出会う為に。

 

 

 

ニャアンは、コックピットのキシリアを座乗艦へと移し終えると、その護衛に就けという命令に従って周囲を警戒していた。

キシリアに向かう殺意、それが遠方から向けられている事に冷や汗を流しながら、自分の置かれているこの状況に嫌気が指していた。

 

「なんでこんな事になっちゃったんだろう……。」

 

自分でやった選択であるから、それは重くのしかかる重圧となりそうなものだが、彼女は何処か清々しいものだった。

寧ろ、行ったことに対するある種の開き直りとも言うべきが、もう…どうなっても良いという、そんな感覚だろう。

 

そんな彼女が見つめる先では、幾つかの気配がぶつかり合い誰かの生命が消えていかんとしている。

その一つ一つが、今のニャアンにとってはとても苦しい事のように、そう感じていた。

だが、そんな彼女の苦しみを知ってか知らずか、それは戦いに割り込んできた。

 

シャリアは内心動揺していた。目の前にあるギャンの部隊、それを討ち取る事は決して容易な事ではないのだが、覚悟を持っているからこそ、それを安安と実行する決意はあった。

だが、そんな彼にも重大な問題となる出来事がある。

 

それは、彼の駆るモビルアーマー・キケロガ、そのメガ粒子砲攻撃を行う時になって必ず割り込んでくる者がいる事だった。

 

「貴方はどちらの味方だ!!キシリア・ザビが生きている事が、どれだけ不味い状況となっているのか、分からないのか!!」

 

「そう言う貴方こそ、自らを贄とするその行為。その後の責任をどう取るつもりだ!!」

 

ビット兵器の1種だと思われる、コの字型のその物体が放つメガ粒子砲が、キケロガのビームを相殺しギャンに一度たりともかする事もない。

どれほど強烈な機動を行い、進行方向を欺瞞しようとも、それは必ず撃ってくる。

 

逆に、そんなシャリアの動揺とは裏腹にギャンの部隊、とりわけエグザベに張り付くように1枚のビットが展開し、シャリアの隙を突こうとするその行動を阻害するように、それは牽制射を行なってくる。

 

なまじ殺意というものが逆に無い分、終始エグザベはそれを回避する事に躍起になっていた。

 

「どうしてこちらの動きがわかる!こっちだって視えているんだぞ!!」

 

本来、無線式のオールレンジ兵器はその構造上人の思念を読み取る、所謂ニュータイプと呼ばれているパイロット達には案外読みやすい代物である。

寧ろ有線式の方が、外部に思念が流れない為に読まれ辛いのだが、どういう訳かこのビットは彼の動きにピタリと着いてくることによって、彼の動きを制限していた。

 

その間にも、キシリア隷下のニュータイプ部隊は、そのビットの本体とも言える謎のモビルスーツによって、蹂躙され戦闘能力を徐々に削がれていた。

それは屈辱的な事でもあり、生命維持に最低限必要な物だけを残すなどという、非人道的なものでもあり正直褒められたものではない。

 

また一騎後ろから斬りかかるギャンが、後背を晒している筈の敵が半身で交わすと、盾の内側から現れたビームの刃がその突撃に合わせるように、まるで居合の要理で両腕を切断される。

そうして、一瞬の間のあとに思い切り蹴り上げられ足だけとなったギャンの中で、急激な振動で気絶する者もいた。

 

たった一人で戦場を支配する。

恐らくはその機体性能が高いのもあるのだろうが、それよりもそれを使いこなすパイロットが、どれだけ恐ろしいものか。

 

ただ一つ確かな事は、このパイロットは決して殺し合いをしに来た訳では無いと言うことだろう。

 

 

そしてその状況に振り回されているのは、当事者の中でも割と傍観者に近い人間たちもそうであった。

 

「まったく……!誰が敵で誰が味方だ!!なんなんだこれはいったい!!」

 

ソドンの艦長であるラシット中佐は、現状の把握を積極的に行おうとしていたが、戦局の混乱はそれの想定を遥かに上回っていた。

 

キケロガの奇妙な動き、どう考えてもその行動は背信行為であって、決して許容できるものではない。

であるから、シャリアの腹心とも言えるシムスにも強く詰問するが、それから帰ってくるのは開き直った暗殺を示唆する言葉だけ。

それには呆れて言葉も途切れる。

 

ただ、乱入者の影響だろうか?ギャンは戦闘能力を損失するばかりで、未だに撃墜される者はない。ニュータイプ同士の殺し合い、その中に割り込んでいる者もやはりニュータイプなのだろう。常人には説明の付かない戦い方、そんな物をコモリは冷静に見ていた。

 

「ニュータイプは殺し合いの道具じゃない、そんな選択肢を…見せたいだけ…なんだよね。」

 

1人小さくその言葉を紡ぐ彼女の視線の先には、戦場の只中にありながら傷一つ負うこと無く、戦場の混乱を支配している1機のモビルスーツがあった。

恐らくは単独犯と言う意味合いで言えば、この中で尤も多くの生命を自らの手で刈り取って来た男である。

 

そんな彼がどうしてこんな事をしているのか……?殺し合いに嫌気がさしたのか?いや違う、この戦場にいるパイロット、その殆どはニュータイプ、或いはその予備軍と言えるものである。

ニュータイプ同士の殺し合いを視る、それはとても哀しいことだと彼は思っていた。

 

人よりも少しだけ勘が鋭いと言うだけで、こんな戦場で兵器のように消耗させられ、結果すり潰される。

そんな存在がニュータイプで有るなどと、誰も信じるわけがない。結果、その形は歪んで行きニュータイプと言う意味すら、有名無実化していく……、そんな事彼等が可哀想ではないか。

 

結局は同じ人間であるにも関わらず、少し違うだけでその態度だ。

だからこそ、今ここで戦っている者たちを如何に生かし、次の世代に活かすのか、それがアムロとして導き出した結果である。

コレは今この時代にあって、νガンダムが有るからこその方法では有るが、それをやらないと言う選択肢が無かった。

 

「シャリア・ブル、あの時俺は貴方からの声を無視し戦うことだけを見ていた。だが、今は違う。俺は…貴方の諸行を止めてみせる。」

 

迫りくる攻撃を最小限に回避し、牽制射を放てばギャンが別の方へと避けようとする。それの中心線、未来位置から僅かに軌道をずらしながら射撃を行うと、見事なまでにその武装と同時にマニピュレーターを破壊していく。

 

そんな光景を目の当たりにしながら、シャリアは舌を巻いた。

 

「いったい…向こう側の世界では何があったのか!」

 

そして、その空間に漂うのはギャンであったものの成れの果て。しかし、自力航行には支障なくメインのスラスターと其れ等は破壊されず、逃げる時間を稼がれ戦線を離脱していく姿。

 

それを見送りながら、その元凶のモビルスーツの背面に翼のように集結していくビットユニットのようなフィン・ファンネル。

エグザベとシャリアにはわかっていた。目の前のこの機体を落とさなければ、何も始まらないのだと。

 

敵同士が手を取り合い、壁のようなプレッシャーに立ち向かう。

 

 

そんな一方でイオマグヌッソ内部では、ガンダムに搭乗したキャスバルが、目の前にある特別なモビルアーマーに対して一つの試みを試そうとしていた。

それは、その機体を破壊する事と同義であり彼の手によって、そのパイロットを殺す事を意味する。

 

それを止めようとするマチュとの間で、戦いが繰り広げられるかと思われた時、それは起こった。

シュウジが姿を現すと、同時にキャスバルは彼の語り掛けを無視する事はしなかった。

が、同時に前にも増して目の前の少年が何者であったのかと、実感したくもないものに直面する。

 

彼は、世渡りをする者。とある人物の代替を目的として創られた存在。

ララァは彼の事を知らないが、同時に彼の元となった者の事は良く知っていた。

 

シュウジは、オリジナルの事を知らずただ目の前にいる少女を救おうとする。例え彼女が彼を見ていなくとも。

そう彼女が愛した人は彼ではない、だがそれでも良いのだ愛というものは、そういうものだろう?

 

彼は彼ではないが、同時に彼でも有る。だからこそ、シュウジはララァを愛し同時にその願いを利き続けてきた。何度も何度も…何度も何度も。だから今回も、この旅を終わらせる為に、彼はこの世界に姿を現す。夢を終わらせる為に。

 

モビルアーマーを中心にゼクノヴァが発生し、内部から何かが顔を出す。

それは象徴だ。世界の理を創り出した存在、その象徴だ。

 

それがあったからこそ世界は創り出され、彼女は何度も繰り返す。それが彼女が生み出したこの世界の始まりの分岐点、何が起こったとしても必ず現れるその姿は、この舞台にはうってつけとも言えた。

 

宇宙の彼方へと飛び出していくかのように、それは宇宙を駆ける。それを見たマチュは想うのだ…、彼を止めなければならないと。

 

この世界を創り出した彼女は、同時に有る世界のことを無意識に知っていた。

それは、彼女が死に彼等が生き残るせかい。

その世界の場合、誰が彼女に手をかけそしてどうして二人が生き残るのか…。

 

だからこそ、今回もそれを模倣する。故にシュウジはトリガーなのだ、彼でなければ彼女を止められないのだろう。

と言う。

 

マチュはそんな小難しい事はどうでも良かったが、同時に一つの願いを叶えたいとそう思っていた。

それは彼女の選択だ、彼女が自分で決めたのだ。

ジークアクスは苦しんでいる、彼女を殺めたくないのだと。

 

そんな光景を、まるで自分は関係ないかのように傍観しようとする者がいる。

それはキャスバルだ。イオマグヌッソから飛び出した、トリコロールのモビルスーツに紛れるように、彼の乗機であるガンダムは宇宙を駆ける。

 

狙いは単純明快、キシリアの首だろう。

その後どうするのか?等ということは何も考えていないし、そもそもイオマグヌッソの設計を手伝った時から、その後の事など考えてすらいない。彼の言動は一貫しないのだ。

 

武装もサーベルとバルカンだけとなったその機体に、キシリアの最後の護衛となったニャアンが立ち向かうには、少々練度が足りないだろう。

それでもニャアンは立ち向かおうと前に出て……、ふと目尻に何かを見つけた。

 

それは赤い尾を引いて、徐々に近づいてくる。

途轍もなく速い、そう例えばジフレドを纏ったニャアンのその機動に対して、大凡3倍の速度でガンダムへと突撃していくその機体は……赤くそしてC・Dと言う黄金の意匠を彫り込まれ、ある種の機能美を魅せる美しい機体。

 

それが、ガンダムへと突撃していく……。

そしてニャアンは何を思ったのか、その姿を一瞥すると足を止めてその機体に誰が乗っているのかを分かったように頷いた。

 

『ニャアン……お願い手伝って…。』

 

何処からかそんな声が聞こえた気がした。だから、彼女は口にした。

 

「キシリア様…ちょっと行ってきます!!」

 

「待て!ニャアン、何処へ行く!!」

 

「キシリア様!!どうかなされたのですか!?」

 

その言葉は強烈なミノフスキー粒子の波に飲まれ、無線が通じるはずもない中キシリアにはきちんと届いていたが…周囲の者達には、一層不信感を抱く者が多かった。

 

 




ジークアクス世界はララァの夢、ではそのララァはいったい誰の夢であるかと言えば…シャアとアムロその二人の願いの具現化ではないか?と、一つの考察。

正史→ララァ生存(シャア死)世界→色々な世界→ジークアクス

なお、ララァ生存ルートは比較的簡単。アムロがシャアを殺害し、シャアが己が撃たれるのが簡単だと認識していれば。
二人は自分自身を過小評価すると言う共通点が有るからね。

誤字、感想、評価等よろしくお願いします。
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