猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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1日更新が遅れて申し訳ない…。

因みに、νガンダムは現在Hiν状態でありつつ、それにヘビーウェポンを着ています。


彗星と流星

 

全世界が…固唾を呑んでいた。

 

イオマグヌッソ、その設計思想は表向きの物はコロニー落としの後遺症を引き摺っている地球環境の改善のため、建造された。

というものとなっている。

 

その為、ギレンやキシリアを中心とした建造に関わった者達が、宣伝として大々的にそれを公表する事を良しとされ、当たり前のように世界中にその様子が中継されたのだ。

 

そして、皆も知っての通り。このイオマグヌッソの正体が一体何であったのか、それも残らず中継される事となったのだからそれはもう…パニックが起こるのは当然のことで、勿論サイド6内部でも騒然となっていた。

 

高濃度のミノフスキー粒子の影響化で、レーザー通信も途切れ途切れではあるものの、絶賛生中継されている事の次第は政治的にも、コレに関係した人物に否応無しに批判が殺到した。

 

大統領府にある固定電話は鳴り止まず、大統領府の前には多くの人集りが出来、今にも飛びかかってくるのではないか?と、そう思わせる程の人々の形相…、それを見たペルガミノは戦々恐々の面持ちで、事に当たることとなった。

 

「いったいどうしてこんな事になる…、我々は騙されただけだと言うのに!!」

 

そう口走る彼を観ながら、その側近であるカムランはペルガミノへの同情の眼差しを飛ばしながらも、内心では当然の報いであるとそう愚痴た。

そもそも、難民に対する支援を怠り自らに対する不満を、彼等に矛先を向ける為に仕向け、前政権への批判の材料にもした男が嘆いたところで、それを気にする者など居はしない。

 

ただ、カムランもまた自分がこの騒動に巻き込まれるのは如何ともしがたく、困り果ててはいる。

 

「口を挟むようですが、例の艦隊を派遣してみては?」

 

「なんだと?」

 

実務はかなり優秀な男なのだから、もう少し戦時に耐性を持って欲しいと想いながら、カムランは提案をした。

あの男から譲渡されたその艦隊、決して遊ばせて置くものでもない。

 

「法の秩序の監視者…、そう言った評判もでてくるかも…しれませんよ?」

 

「なに?いや……、なるほどそうだな。いやはや、前政権とは違うところを見せつけてやれば、我が国民も理解を示すか…?船員も元は難民のようなものだ…確かに、喪っても痛くはないか。」

 

こんな事態を想定していたのかと、件の艦隊を彼等に引き渡したあの人物の事を思い出しながら、カムランは目の前の事態に粛々と対応しようとしていた。

 

 

大統領府でも殆どパニック発作のようになっているが、病院でも似たような事が起きていた。

と言っても、暴動が起きているだとかそう言った類いのものではなく、寧ろ…スポーツ中継に群がる群衆の様相を体した。

 

退屈な病院の日々、外の景色を様々な媒体でのニュースでしか知らない人々は、それを観て興奮する。

完全に傍観者としているようで、実際自分達もその影響を受けているとも知らない者が殆どだ。

 

そんな中にあって、その映像に対して比較的冷静に物を観ている患者がいた。小柄で色白で、ここ最近病院食の整った栄養のおかげで少しだけふっくらとしてきたそばかすの少女、ドゥー・ムラサメ。

 

彼女はその光景を見て、少しだけ冷ややかな目をしていた。

かなりの量の人々悲鳴を、その強化された感覚は確かに感じ取っていたが、昔受けた調整よりかはその苦痛は小さかった。

痛みに強い彼女は、その元凶に対してチッ…と言う短い舌打ちをした後、食い入るように物を見ていた。

 

彼女の観ている光景は、他の人々のそれとは若干異なっている。多くの人が、事の次第の全体を観ているのだが彼女だけはその中にある、キラキラとした物を観る。

そう、それはその地で幾つもの選択の果て生命を削り合う、戦士達の軌跡を…。

 

 

 

暗い宇宙を駆ける一筋の光となって、2つの影は交錯し幾つもの光を放つ。流れるように優美なその光景は、まるで一つの舞踊のように人々を魅了することだろうが、そんな物を観ているものなど殆どいない。

いるとすれば、それはその舞台の出演者達にしか見えていないものだろうか?

 

ガタガタガタと震える機体、仮面を被り操縦桿とフットペダルに力が籠もっていく。一瞬の判断、次はどこを狙ってくるのか?それを瞬時に感じ取るも、キャスバルはそれに対して違和感を覚えその判断を途中でやめると構わず直進する。

 

陽動と幻惑の果て、その違和感は直ぐに現実のものとなり、回避していたであろう軌跡の向こうでは、自らが撃墜されていると言うそんな幻が視えている。

そんな光景に冷や汗を流しながら、奥歯を噛むのに力が入る。

 

遠心力と慣性モーメントに皮膚が引っ張られるが、そんな物はもはや関係無い。そんな物を気にしていたら、直ぐに撃墜されることだろう。

そう想いながら自らを追跡する者、自らと同じ赤を基調としたその機体を見据えながら声を発した。

 

「人々にザビ家への復讐心を忘れ、その犬に成り下がれと言うのか!」

 

自らには飛び道具など無い故に、攻撃を回避する合間一方的な戦いの最中にそう嘯いて、相手への心理的動揺を誘おうとする。

勿論その言葉に深い意味など無い、あったとしてその後の事など別に考えていないのだから、この男は空っぽと言われるのだ。

そんな言葉を聞いたシャアは、彼に対して挑戦するように物を申した。

 

「たった一人の願望の為に多くの人々を人身御供とするその浅はかさ、我ながら気に入らんな!」

 

相手は自分であるものの、様々な物を喪った自分とは違い自分で色々なものを捨てている彼を見て、シャアは腹立たしかった。

そもそも、彼がここにいる理由こそこの男に対する意趣返しの意味もあった。

 

数回の交差の後、キャスバルは周囲に落ちていたザクマシンガンを拾うと牽制射を放つと、一撃を見舞う為に近づこうとしていく。

その相対速度はかなりのものであるが、対するシャアもその速度に臆する事なく、サーベル同士が切り結ぶ。

すると、急激な反発によって弾き飛ぶ両機円運動が、∞の螺旋の様に二人の軌道を描く。

 

が、互いにそれだけで終わらず。確かに殺し合う為に、再び接近し、次はサーベルが切り結ぶとそれを円運動として互いに回る。

目を回す事もなく互いに互いを殺す気でぶつかり合う。

 

「貴様の選択が誰を一番に不幸とするのか!」

 

「……!今はアルテイシアは関係の無い事だ!!」

 

キャスバルは、シャアにそう言われて思わずハッとした。最愛であるはずの妹、アルテイシアの事をすっかり忘れていた…ということは無いが、まあ彼らしい無鉄砲なところなのだろう。

結果はどうあれ、妹のことを考えないようにしていたと言われれば反論もできまい。

 

そうしてそれに気がついているから、ほんの一瞬彼は動揺した。ニュータイプのためだとか、新しい時代の為にだとか…そんな上っ面の良い事ばかりを口にする彼にとって、その言葉は致命的だったようだ。

 

その一瞬の動揺が機体の操作にも現れ、サーベル同士の切り結ぶほんの一瞬対応が遅れるとサーベルを持っていた左腕が見事に切り飛ばされる。

 

「なんと!」

 

そう叫ぶと強引にも蹴りを見舞い、ハイザックのサーベルをはたき落とすのだが、残念な事にもう一本持っている。早々に今度は足を切り飛ばされ、片腕片脚をもがれる。

急いでそこから退避しようとするものの、今度こそ万事休すか?キャスバルは完全に袋小路に入った。

 

「これで終わりにするか?それとも続けるか!キャスバル!!」

 

今ここでザビ家の人間を撃てぬまま終わるわけにはいかないと、そう心の何処かで自問自答しているキャスバルであるが、そんな彼を見てシャアは呆れ返っていた。

突発的に行動し、荒らしに荒らした後の事は何も考えていない人間。そんな自分を観ているのだから、溜息が出る。

 

「なぜ、キシリアを生かそうとする!!」

 

「彼女には大きな役割がある。最後の時まで、その舞台の上で舞ってもらわねばならぬのだよ。それに……、貴様には良い見本になる。」

 

コア・ファイターでの脱出も、完全に封じられ彼は万事を休した。

 

 

他方では、キケロガとギャンが共闘し眼前にいるνガンダムを相手に奮戦していた。

勿論、2機からすれば撃ち落とさなければならない相手であるが、シャリアとしては目的を達成したい為の障壁で、エグザベにとっては、シャリアがキシリア暗殺を思いとどまってくれるだろうかという、そんな説得の時間ともいえた。

 

「貴方には分かるはずだ、キシリア様はニュータイプの事を真に理解しようとしていると言うことを!!」

 

「だとして……、これほどの多くの生命を根底から破壊しうる物を創った者が…使ったものが、のうのうと生きて良い訳が無い!!」

 

「であるならば!なぜ、キシリアを討たせてはくれないのか!!」

 

機体限界、その言葉の通りエグザベはマグネットコーティングの無い機体を限界に使用しているがために、次第に自機が崩壊していることに気がついている。

それもコレも、彼の操縦センスがずば抜けて高い故の事だが、如何せん限界と言うものを知らないのは、彼が若いからだろう。

 

そんな彼の操縦を、相対しているとは言え目の前で見せてくれている事に、アムロは導きがいのある良い若者が現れたことに対して嬉しく思う反面、そんな彼がキシリア…と言うよりかは、現状に追従するだけである事に苦言を呈したかった。

 

「キシリア・ザビには全てを背負ってもらう、それが俺たちの決断だ。だから、死んでもらうわけにはいかない!!」

 

「……!」

 

エグザベがその言葉を聞いた瞬間、この目の前にいる男が何を考えて此処まで来たのか…思考が雪崩込んでくる。

ただ、たった一人の愛する者の為に平和を願う、それがどれだけ難しくそしてどれだけ純粋な願いなのだろうか?

そして彼は理解した、その先の未来を…。

 

「まさか……、だとしても生きているだけであの女は危険過ぎる!!」

 

アムロの言葉に対して、シャリアは反論すべく口を開く。自分が見定めなければならない者もいると言うのに、全てを背負う覚悟でここまで来たというのに、そんな事で邪魔をされてはたまったものではないと言うことだろうか?

 

「一人の人間が全てを為し得ることは無い、イオマグヌッソを喪った彼女には、既に力等無いことを気が付け!!シャリア・ブル!!

 

νガンダムの増加装甲がパージされ、機体の全貌が現れる。その装甲だった物がキケロガに突撃するようにぶつかると、その衝撃は確かにコックピットにいたシャリアへと到達する。

その中の幾つかが機体に接触するやいなや、爆縮しキケロガに幾らかの損傷を与えた。

 

そう、νガンダムはヘビーウェポンシステムを応用し、全身に火薬を満載していた。一度被弾すれば、確実に自身が火達磨になる事は確実である。

爆薬量が少ないとは言え、そんな物を身に纏っていた事にシャリアはこのパイロットがどれ程の覚悟があったのかを知り、舌を巻く。

 

キケロガのモビルスーツ形態時の右脚のケーブルが切断され、完全に機能しない物となった。これによって、攻撃力は著しく低下したと言っても良い。

 

そんな隙を……、エグザベは狙っていた。

 

急速に接近するギャンは、その機体性能をフルに活用しキケロガに肉薄する。

 

そして、それを一瞥するかのようにνガンダムは2人から離れていく…。

それを見て、シャリアは追おうとするもののエグザベはそれを見逃さず、被弾した側面からより多くの攻撃を集中させた。

 

「後は頼む…。」

 

アムロのそんな呟きが聞こえたのか、エグザベは僅かに首を縦に振った。

 

 

この時、アムロには一つの言葉が聞こえていた。

 

『シュウちゃんをマチュを助けて』

 

たった一言、だがその言葉を彼は聞き逃さない。

 

 

 

マチュとニャアンは互いに手を取り合い、今目の前にある巨大な敵を見据えて戦っている。

シュウジの乗り込んだ機体、異形のそれは彼女らの記憶にはないが確かにガンダムと呼ばれる機体であった。

 

シュウジの凶行はララァを殺す事にのみ向けられ、彼女の願うところを叶えようとするという、あってはならない誤解を持って行われた。

 

マチュはシュウジのそんな考えを知っていたし、だからこそニャアンと共に彼を止めようとした。

だが、あと一歩と言うところでそのシュウジの乗ったガンダムは、何をもってしてか巨大となり彼女等の前に立ちふさがる。

 

ニャアンの乗ったジフレドは捕まり、その握力でもって粉砕された。何とか脱出したニャアンは願う、マチュとシュウジを助けて欲しいと…。

 

その意志は硬く、正しく白い悪魔とも言える光景であったが、それでもマチュは諦めない。

ジークアクスは言っている……、ララァも彼もどちらも救う手立ては有るのだと。

 

振り下ろされる巨大なビームサーベルは、それを受け止めるジークアクスは悲鳴を上げる。

コレが突きであれば、まだ防ぐ手立ては有る。

物理的な運動量として、はたき落とす様な形となったそれはジークアクスの駆動系に歪みを齎す。

 

ふっ… グゥゥゥ!!

 

マチュはその身に力を入れ、踏ん張るようにそれを支えていた…その時だ…何処かで何かが煌めいた。

光の先から何かが近づいてくると、それは巨大なサーベルを同じく巨大なサーベルをもってして受け止める!!

 

淡い緑色の虹をマントのように身に纏い、羽根のような物を背負う…目の前のシュウジの乗った機体と同じ顔をしたそれが、彼女を護るように抜刀している。

 

行け!!アマテ・ユズリハ!君の願いの為に!!

 

受け止められたサーベルによって力は分散し、巨大なサーベルを突き抜けてジークアクスはそこに向かう…、そうして斧を振り被る。

 

「そう……、世界は自由で満ちている。」

 

その光景を見て、アムロは口ずさむ。彼女こそが……本物のニュータイプであるのだろうと、そう願いながら。

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

もしララァが生きていることをアムロが願ったのなら、ジークアクス世界にはアムロはいないのかもしれない、シュウジがいるから。
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