猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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最終話です。


日常

 

大きな政争の幕が開き、その舞台で踊る者は前任者を糾弾する。しかし、その男は自らの大きな功績を振りかざし、其れ等の糾弾する人々を乗り越えて、選挙を戦おうとしている。

自らの功績、それは大犯罪者であるキシリアを捕縛しジオンに対して裁きを与えたという、そんなお墨付きである。

 

しかし、そんな事実よりもある一つの事実が露呈すると、次第に支持率は低下する。

モビルスーツを利用するクランバトルという違法賭博は、その特異な競技性故に巨額な資金を必要としていた。

 

無論、其れ等の資金の内最初の方だけであったようだが、何処からともなく資金の提供が行われ、秘密裏に裏社会が出来上がっていたという…。

いったいどこからそれが行われていたのか、当時の軍警は其れ等の捜索を行っていたものの、結局は根底に辿り着くことはなく全てが有耶無耶にされていたという。

 

そんな不確定な要素ばかりの事柄が、ある日鍋をひっくり返すように次々と真実が明らかになっていった。

契機は一つの事件だった。

 

キシリア・ザビが裁判の最中、ある供述をしたという。

曰く、『サイド6で起きた事件は、サイド6政府と地球連邦及び旧ジオン政府の間で起きた問題である』と言う供述だった。

 

それはとても大きな波紋となり、サイド6政府にその荒波が押し寄せた。

ただでさえコロニーに穴を開けるような、大きな災害となったクランバトルを、よりにもよって当時の政府がそれを主導する立場であったと言われれば、住民たちは黙っていられない。

 

抗議抗議抗議の連続は、政権を担っていたペルガミノの信頼を失墜させるには充分な能力を発揮し、更に彼のバックにある様々な企業にもその災禍は降り注ぐ。

結果汎ゆる方向からの圧力が、彼の退陣を強く後押ししサイド6 政府は、臨時的に選挙を行わなければならない事態となる。

 

 

そんな情勢であるサイド6にあって、そんな事どうでも良いと想いながら一人の少女が、一つのマンションへと入っていった。

 

テ,テテテテテ

 

と、そんな音が小さく鳴る。手慣れた手付きでキーパッドを操作するのは何時ぶりか?しかし、その手付きには余念なくいつものように、外界と内側を隔てるガラスが小さな音を立てながら開く。

 

いつもの様に、タタタと歩けば直ぐにエントランスを抜けて、エレベーターへと辿り着く。

周囲にある建物の中で一際大きかったりする訳でもなく、一際地味なマンションであるが、それでも少しの愛着はあった。

 

チーン

 

と言う音と共に扉が開き、示されている階を指定してゆっくりとだが身体が下に押し付けるられると、直ぐにそれは消える。

そしてまた音が鳴り響き、その階で降りれば待っているのは何時もの風景だった。

 

そんな場所を感慨も、何もかもなくただ淡々と歩き進めれば見知った角部屋に辿り着く。

 

何時ものように暗証番号を入力すると、何時ものように解錠されそして何時ものようにドアノブを引くと…、そこには見知った玄関があった。

大小二組の靴が並び、一組は女性物。もう一組は男性物の様である。

 

「お父さん帰ってきたんだ。」

 

彼女は口を開くと、戸を閉めて靴を脱ごうとして…あっと何かを思い付くとその動作を辞める。

そして、身なりを少し整えると口を開いてこう言った。

 

「ただいま〜」

 

間の抜けたような、そんな気合のない物の言いようではあるが、それがその家の主である者の耳に届くのは必然であった。

 

バタバタ

 

と、慌ただしく音を立てながらその音の主は玄関を確かめるように、息せき切って走ってくると目尻に涙を貯めながら叫ぶように彼女に抱きつきながら叫んだ。

 

「アマテ!!」

 

と、抱きつくと同時にその少女の名を唱えると、今度はよりキツく抱き締め涙を流しながら彼女の頭を撫でた。

 

「ちょっと…痛いって!」

 

アマテはそういうも、彼女の母親であるタマキはそんな言葉お構いなく泣きじゃくる様に、彼女を抱きしめている。

もう離さない、離したくないとそんな感情がアマテの脳裏に流れてくる。心の底から心配していたと言うことを理解して、アマテはバツが悪そうに眉を潜める。

 

「連絡しなくてごめんね、けど…あんまり出来なかったからさ…。」

 

「良い…良いの!こうやって戻ってきてくれただけで、お母さん嬉しいの!」

 

それでも泣きじゃくりながら、まるで子供のように落ち着かない母親の姿…どれだけ自分を心配していたのか、それだけでわかることだった。

 

「お母さんを許してやってくれないか?」

 

家の奥からそんな言葉を発しながら、見慣れた男性…父親が姿を現す。仕事一辺倒で殆ど家に帰ってきたことが無い、そんな父。そんな人が家にいることが、どれだけ異例な事なのか、二人がどれだけアマテを心配していたのか…。

 

「守秘義務とかなんとあるけど、取り敢えずただいま。」

 

「おかえり…、取り敢えずご飯食べよう?」

 

能天気にそういう姿が、何処か珍しくそれだけに普通にしようという事なのだと、アマテにはそれだけで嬉しかった。

確かに刺激的な毎日であったけれど、それでも時には休養が必要なんだと何となく分かった気がした。

 

 

……

 

ジュ〜ジュ〜とそんな音が響き渡り、カチャカチャと食器が重なる音が鳴り響く。

それ程広くは無いキッチンに、それなりに整頓されている道具は綺麗に並んでいた。

 

見違えたように汚れ一つない、そんなキッチンに一人の赤毛のシミ一つないハリの良い肌を持つ美しい←(ここ重要)女性が立つとエプロン姿で何かをスキレットを片手に作っていた。

スパイスを使い豪勢にも見える料理の数々は、実際栄養価を計算して作り出されているのだろう、一人一人に合わせて量を変えてある。

 

その直ぐ側では、もう一人黒髪の少女が何か汁物を作っている。そんな光景が繰り広げられる中、一人の男がだらしなくもトランクスパンツにランニングと言う風体で現れると、その姿に女性は抗議した。

 

「おい貴様!!いい加減その格好をなんとかしろと、何度言われれば直す!!」

 

「え?ああ、そうだったな済まない。ぼーっとしてたよ。」

 

パーマの男はそう言うと、再び自分の部屋へと戻りながらその料理の匂いを嗅いで、腹の虫が鳴り響く。

そんな風体を見て、思いっ切り溜息を放ちながら女性は手慣れたように、その手に持った物から料理を並べていった。

 

「ニャアン…、クワトロはどうした?」

 

「……?まだ寝てるのかも」

 

「まったく…どいつもこいつも世話の焼ける…、どうしてこうもだらしがないのか…。」

 

小言を言いながらも、彼女は少し嬉しそうにしている。そんな顔を観るのはニャアンだけであるが、非常に満足しているようだったので、彼女はそれをスルーする。

それにしても、二人が警戒していないと言うのだから分からないものである。

 

ニャアンにしてみれば、彼女がどんな人間であるのかと言うのは大まかに分かっていた。

 

ただ、そんな彼女をニャアンが信頼しているのだから安心しても良いと、そう判断する二人は少し人として警戒心が欠如しているのではないか?

いつ牙を剥くとも限らない人間を、そんな態度でいては困るだろうに。

 

と、女キャサリン・オルコット(キシリア    ザビ)は、胸中に一抹の不安を抱きながらも考えている。

だが、そんな彼女にしても今のこの生活は悪いものではないと、そう思っていた。

この一月の間、変な緊張感に苛まれる事もなく、ただ周囲に気遣う事もせず。堂々と女として生活を送ることが出来ると言う、ザビ家では何も出来なかった事が、何の苦労もなく行えるのだ。

 

威圧感を出す為に、わざわざ付けていた覆面も。派手な衣装で着飾る事もする必要のない、そんな素朴な日常に密かな憧れを抱いていた彼女にとって、ここは理想郷だった。

また政争の世界に戻れと言われれば、ハッキリと嫌だとそう思う程度には。

 

「あの二人にあの娘が似てしまわないようにしなければな、やっとマトモに喋ることも、食事に口をつける事も出来るようになったと言うのに…、世話の焼ける。」

 

喜色を浮かばせながら、ヤレヤレと言った風体で廊下へ出ると一つの部屋に辿り着く。

ドアを開ければ、少し煩雑に置かれた物が部屋に散らかりその中で一人寝息を立てる華奢な少女二葉(ふたば)と言う名前を付けられた少女がいた。

 

「おい、朝食の時間だ。ルーズにするのは良いが、食事位はマトモに取れ。」

 

身体を揺さぶると

 

「ゔ…う〜ん」

 

と言う唸り声、うなされていると言うこともなくただ眠いだけなのだろうが、そんな少女を小脇に抱えて部屋から引きずり出すとテーブルの前の椅子へと座らせる。

すると、ちょうど服を着替えてクワトロが姿を現す。

 

キャサリンはその姿に一瞬ドキリとするが、少し目を逸らしその胸の高鳴りが収まるのを待つ。

 

「済まないな、少し寝坊した。まあ、休日だからなこういう事もある。」

 

「そうか…。だがな、健康は規則的な生活リズムからと言う言葉がある。あまり…夜更かしは感心しないな。」

 

そんな会話を一言二言交わすと、最後に現れたのは短パンとポロシャツを着たユウキ(アムロ)の登場である。

 

「先ほどは済まない、昨日は少し野暮用でね。あまり眠れてないんだ…。」

 

「そうか…、後で仮眠を取ると良い。ただ、食事は皆で取るとの約束だ。貴様が言い出したことを、忘れるな?」

 

その言葉にバツの悪そうな顔をするが、それが笑いを誘ったのかキャスバルは大きく笑うと、両手を組んで祈りの姿勢をとった。

それはクリスチャン式の食事の礼拝、そんな物を知っている者は少ないだろうが、キャサリンが来てからそれをやるようにしている。

 

何事も感謝と礼儀が大切なのだと。これっぽっちも神を信じていないが、彼等彼女等は形だけでもとそれだけで食卓が作られた。

 

それが終われば各々に配膳された食事を食べ始める。

 

私語を交わしながら、難しい話や笑い話など、ごくごく普通の会話を交える。

そんな最中、キャサリンはふとある事を思い出してユウキにそれを、問いただした。

 

「そう言えば、セイラ・マスと言う女との関係はどうなっているんだ?昨日はその関係で、遅くなったのだろう?」

 

「なんだと!?貴様!!コソコソとしているかと思えば、よりにもよって!!」

 

「誤解だよ…、彼女とはそう言う関係じゃない…。まだな…」

 

その一言が余計であったのだろうか、クワトロは座っていた姿勢からいきなり立ち上がると、ユウキに詰め寄ろうとする。

それを見たキャサリンは、同じく立ち上がると机を大きく叩く。

 

「今は食事中だ!!そう言うのは後でやれば良い。」

 

元凶であるユウキはお構いなく食べ続け、その一喝に怯んだクワトロは渋々座り直し、それを見ていたニャアンはどうでも良さそうに、黙々と食べ続け、二葉はうつらうつらとしながらチョコチョコと食べていた。

 

「話は変わるが、今日は何処へ行く?」

 

皆で何処かへ行こうか?と言う誘いの言葉。主導権は完全にキャサリンが持っている。

 

「あの〜、私は今日はマチュと約束があるから…。」

 

「頑張って来いよ、応援してるからな。」

 

何か得意な事が見つかったのだろうか?その言葉に、ニコリとする。

そんな食卓は、今日も何事もなく終わっていくのだ。

 

 




コレにて終了となります。

見切り発車ではありましたが、取り敢えずの完結で自分としては満足ですね。
その後の展開はどんなものなのかと言うところもありますが、たぶん原作よりかはマシなんじゃないかなぁ。 

また何か思い出したり、足りなかったりしたら投稿しようかなぁと思っています。

と言うことでね、今までご愛読ありがとうございました。

次作は、Zガンダムのパラレルをやろうか…。それとも、まったく別のオリジナルの小説にしようか…。と、迷っていますが、またのご愛読よろしくお願いします。
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