猫と2人のおっさん   作:丸亀導師

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天パとマチュとガンダム

 

キラキラという輝きが前から後ろへと流れいで、その大河の流れのように時は過ぎ去っていく。

 

その光景が何であるか、その解釈は人それぞれであるが彼の目にはこの流れがこう見えていた。

 

様々な意思の奔流は多くの人々を呑み込みながらそれを大河へと形成し、其々の意思と混ざり合いながら1つへとなっていく。

時というものは人の感覚であって、その光一つ一つに意志(いのち)が宿っていると。

 

その中で一際輝く光に沿って、周囲のそれはまるで避けるように流れていく。

強い輝きは人の意思の強さであり、その光の正体を男は知っていた。

その輝きは形を鳥と成し、そして褐色の一人の少女へとその姿を変えていく…。男にとってそれは初めての事ではなかったが、同時に困惑が宇宙を駆けた。

 

「ララァ・スン…!シャアと俺を追ってきたとでもいうのか!!」

 

「お久しぶりねアムロ…、違うわ。私は大佐とアナタを追ってきたわけではないわ。」

 

ララァ・スンと呼ばれた少女は親しげに、そしてアムロはそれに更なる困惑を強めた。

 

「ではどうしてここにいる………!?宇宙は繋がっているからか!」

 

「そうよ…、私は時の川を遡ってここにいるの…。でも、この世界にアナタ達がいるなんて…驚いたもの。」

 

一言目には全てを理解したかのように、互いに短い言葉ばかりが紡がれる。

 

「この世界の大佐も…時の流れを見たのよ?」

 

「だからか…!今もこうして人々は惑いでいるというのは…。」

 

もはや何を知り、何を知らないのか?2人の高度な話し合いは、まるで答えを知っているかのように、この先を見るように…。

 

「新たな悲劇が…幕を開けてしまう。必要のないそれが。」

 

「俺にそれを止めろというのか…?だが、それはこの世界を咎める俺たちのエゴだ!一人の人間にやれる事には限界がある!!」

 

その言葉を言った辺りで少女は少し笑みを浮かべて、相対するアムロに助言めいた事を言う。

 

「子供たちの…その先を…。」

 

「子どもたち…、ニャアンの直ぐ側で何かが始まる…。いや、始まっているということか…、ではだとすれば、あのガンダムモドキに何かがあるのか…?」

 

アムロのその問いかけに、答える事は無くララァはその姿を宇宙へと溶かし一雫の光となって、何処へとも知れぬ場所へと進んでいく…。

 

待て!!まだ話は!!!っく、俺に何をしろというんだ…。まったく……、シャアがいない時に。」

 

掛け布団を吹き飛ばす様に起床すると、じっとりと彼は汗を流していた。決して悪夢ではない悪夢ではないが、あまり良いものではないとそう思っていた。予知夢めいたそれは、いつもララァとともに彼に啓示をもたらしていた。  

 

ジュウジュウ

 

何かを焼くような音が聞こえる。時計を見ればもう8時を過ぎていた。

 

「今日は…、外回りだったか?ならまだ時間はあるか、まったく俺に営業の真似事をしろとは、シャアに色々とやらせているのが間違いか?」

 

この日、シャアはこのイズマコロニーとは別のところに泊まっていた。彼は真の外回りをやっていたが、それ以外の事に首を突っ込んでいる事などアムロは知りもしない。

 

だが、その前に…。

 

「あの…、ご飯作ったから食べて。」

 

「わかった、ありがとうニャアン。」

 

エプロン姿のニャアンが作る朝食を食べてから、物事を考えてもまだ間に合うだろう。と、アムロは割り切った。

後に問題を持ち込んでくるシャアに頭を抱える事になるとは、アムロを持ってしても図りきれない事であった。

 

 

 

……

 

 

その日も、ポメラニアンズの拠点であるカネバン有限公司の事務所にマチュはやって来ていた。

やる事は勿論、シュウジと一緒にラブ・ランデブーもといクランバトルである。

 

今日も今日とて、敵を打ち倒しランクが上がるとともに資金繰りも良くなってきている。

ここ最近調子の上がってきているポメラニアンズであるが、致命的な問題が浮上してきていた。

 

それは、バトル中の出来事である。

相手は様々な戦術を駆使してこちらを攻撃している。マチュ達の駆る機体よりも機動力の劣るザクは、遠距離用のザクマシンガンをばら撒き、進行を妨げてくる。

 

それは常道であり、シンプルで尚且つ効果的であった。マチュの駆るジークアクスはもとより、シュウジの駆る赤いガンダムはザクマシンガン如きで貫徹される程軟な装甲はしていない。

だが、どれほど強固な装甲を持ち。どれだけ高機動を行ったとしても、その問題は必ず付き纏ってくる。

部品の摩耗である。

 

ガンダムの関節駆動系は、そもそも軽キャノンと同様の時代のものであるから、そこから部品取りをすれば充分に都合がつく代物である。その為、シュウジはガンダムを誰かに整備してもらっているのだろう。そこは機動面で問題になってはいなかった。

 

問題はジークアクスの方にある。

 

元々ジオンの最新鋭機である本機は、部品は市場に流通するものとの互換性はなく、一言で言えば試作品の域を出ていない代物である。

勿論、オメガサイコミュ搭載試作機としての側面が多いが、新機軸の技術を詰め込んで作成されているために、それが間に合わない事もある。

 

無論、カネバン公司の面々は整備は怠ってはいないものの、次第に摩耗は酷くなっていた。

 

だからだろうか?マチュは無意識に、機体への負荷を最小限にしようとしている。その為、機体限界を超えての挙動を一度もした事は無かった。

 

そして、もう一つの問題点として本来であれば白兵戦時に使用されるであろう手持ちの武器が、互いに飛び道具を所持していないところであろう。

少なくとも、射撃武器があれば敵の動きを制限する事により、挙動とそれの負担を軽減するには役に立つものなのだ。

今、ジークアクスもガンダムもそれが出来ていない。何れ、双方動かなくなる可能性だってあったのだ。

 

戦闘を終えて一段落、最近はカネバンに良くニャアンも来ることが増え、一人の時間も少なくなったマチュである。

そろそろ時間もアレだし、途中まで一緒に帰ろうかなぁとそう思って事務所の玄関の戸口を開くと…、チャイムを押そうとして辞めたのだろうか?一人のパーマのオッサンが、スーツを着て立っていた。

 

「ニャアン、君はこんなところにいたのか。なるほど、コレがねぇ。」

 

開口一番言われたのはニャアンの事を知っているかのような口振りに、コレと言われて不愉快を感じたマチュは

 

「はい…?どなたですか?」

 

と非常に他人行儀に口を開いた。ムッスーという感じに本当に不愉快を感じているだろう。

 

他人行儀というか、マチュにとって目の前のパンチの効いた髪をしているスーツ姿の男は、本当に他人である。

その為、いったい何故にこんな寂れたジャンク屋に客など来るのかと、訝しんだ。

だが、同時にニャアンの知り合いであるということで、警戒を解くかどうか考えた。

 

「ニャアン、この子が…?」

 

「う…、そうです。」

 

その言葉の意味は何であるのか、この子という言葉の中には幾つかの意味がある。

この子が君の友達なのかい?という問い掛けと、この子がガンダムモドキのパイロットなのか?という疑問であった。

そう、この瞬間アムロはマチュこそがジークアクスのパイロットであると看破していた。

だが、それに気が付いている等とは毛ほども出さない。別に敵対する意思はなかったからだ。

 

「そうか…、なるほどな。」

 

「あの、そろそろ要件言って貰っていいですか?私そろそろ帰らなきゃならないんですけど。」

 

高圧的にマチュは言うが、そんなものどこ吹く風という風にアムロは対応した。

 

「そうだな、俺はここのオーナーに依頼を受けてきた所謂メカニックマンなんだが、入っても良いかな?」

 

「メカニックマン…?あぁ…。」

 

マチュには思い当たる節があった。それは良くわからないが、ジェジー等が何やら話していた事を思い出したからだ。

 

「じゃあ…どうぞ。」

 

 

カネバン公司内を案内し、その事務所に到着すると男は徐ろに名刺を出した。

 

「貴方が…あのコスモ・ユウキさん…ね。本当に請け負って頂けるとは思わなかったわ。」

 

「ええ、表稼業ではありませんが…一応やらせてもらっているだけですよ。それで…、1つ聞きたいのですが、彼女等はどういった関係で?」

 

その問い掛けは鋭く刺さる、学生をクラバに参加させているなどと、そんな事を知られれば最後何をされるか分かったものではない。

そこで、代表取締役としてアンキーは一考した。

 

「そう…、バイト。バイトなのよ彼女達。」

 

だがそんな言葉が嘘だとは百も承知である。

 

「そうかい…、じゃあ取り敢えず査定をさせてもらいたいんだが…、そこのお嬢さんも一緒に見ててもらいたいんだが?」

 

「彼女達はバイトだから、企業秘密には関わらせるわけには…」

 

というアンキーに対して、睨みを利かせるように見る。

 

「ジャンク屋にお嬢様学校の生徒が関わるかい?普通。十中八九クライアントの関係者だろう?」

 

そう言われてしまえば彼女等には否定する事など、出来はしなかった。あまりにも目の前の男は率直だった、人の裏側を覗いているのではないかと、そう思わせるレベルで。

 

秘密格納庫へと案内されながら、アムロはそのMSを見下ろす。確かに、クランバトルに使用されていた見覚えのない機体であった。そして同時に、この機体が生半可ではない性質を持っていると言うことを、一目で感じ取った。

 

「査定をやらせてもらうが…、アマテさん。この機体、最近どうだい?何か困りごとはあるかな?」

 

「別にぃ、無いけど。」

 

「そうか…。なるほどな」

 

目の前にあるそれを眺め、少しだけシステムを見させてもらうと駆動系統に少しだけ、本当に微量の歪が蓄積され始めているのを確認した。それだけで、だいたいを把握したのだろうその手を止め再び事務所の方へと戻った。

 

「少し見ただけだが、やはり歪があった。まあ十数回なら持つだろうが、それ以上となると深刻な問題になると思う。

早急ではないが、準備は必要だろうな。

ちなみにだが…これくらいはするだろうな。」

 

提示された金額は概算ではあるが、その額は笑えないものだった。

 

「ザク1機分はあるぜ…法外だろ。」

 

「法外で仕事をやれって言われてるんだから、こうもなるだろ。それとも何か?この事を軍警に言われたいのかい?それにだ、部品だって1から造らなきゃならん。コレでも、格安だと思うんだがな?」

 

大人達のそんな歯に衣着せぬやり取りに、マチュは嫌なものを見たような気がした。

現実は金金金であるという物は、あまりにも夢がない。

 

「あの〜、私たち帰っちゃいますけど…。私、一応門限あるんで…。」

 

「ああ、付き合わせてしまって済まないね。後はこっちの話だろうから…、また何処かであった時はよろしく。」

 

にこやかにするユウキさん…という認識で、難しい顔をするアンキーとは対象的だった。

事務所の扉を閉めるとき、一瞬ではあるがその瞳があまりにも強烈な光を放っているようなそんな気がした。

 

 

 

事務所を出たマチュとニャアンであったが、そのまま何処かへ向かうということもなく、流れる川を眺めるように橋の直ぐ側でだべっていた。

 

「ねぇ、あの人ってニャアンの知り合いなんでしょ?」

 

「うん…。一応保護者的な人…。」

 

保護者的な人、と言う言葉を聞いてマチュは驚いた。難民で両親もいないのだから、一人で暮らしているのだとばかり思っていたのだ。それに、あんなに普通そうな人だったのだから意外である。

マチュによるニャアンへの認識が少し変わった瞬間でもあった。

 

なんかおっちょこちょいで、両親がいないだけの普通の子なのではないか?というものである。実際その通りだろう。だがマチュにとってのニャアンとは、日常と非日常との接点であるわけで、それが何か穢されたようなそんな気がした。

 

「ふぅ〜ん……、あれ?」

 

だが、ふとその中で違和感を覚えたのだ。

 

「名前教えたかなぁ…。」

 

そもそもあの事務所にいた面々はマチュとしか彼女の事を呼んでいなかった。アマテ・ユズリハ等とは一言も発していないのである。

それがどうして、アマテという名前を知っているのかという問題があった。

 

「ねぇ、あの人の名前なんだっけ?」

 

「コスモ・ユウキ、ジャンク屋で一応専務らしい事は確か。それ以外は私も知らない。」

 

コスモ・ユウキ…、その名前でも何故か違和感を覚えた。本当にそんな名前なのか?もっと別の誰かの名前があるのではないか?それは直感的な判断から来るものであったが、確証はなかった。

それに…、本当にジャンク屋が本業なのだろうか?と思うところも。

きっとパイロットスーツが似合うんだろうなぁと、無意識に思っていた。

 

「コスモ・ユウキねぇ、今度正式に紹介してよ。友達なんだし。」

 

その言葉に対する返答をどうすべきか、ニャアンは悩んだ。

 

 

 




はい…であい…ですかね?
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