この日。裏切りの洞くつと呼ばれる場所では、ソフィアが6匹(6人?)の魔物達に会い、まずは世間話で雰囲気を和ませたあと、いよいよ本題である映画の話に移った。
「というわけで、ベロベロとお坊ちゃん(裏切り小僧)達にはこの変化のつえを使ってもらうことになります。まず、残りの2人は、私に変身してもらおうと思いますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。」
「喜んで引き受けます。」
2人(名前は後ほど)はやる気をみなぎらせながらOKを出してくれた。
「では、残った4人には、こちらの人達に変身してもらおうと思います。本人達、どうぞ。」
彼女が合図をすると、そこに2人の女性が姿を現した。
「初めまして。あたしはマーニャ。みんな、頑張ってね。」
「ミネアと申します。みなさんにお会い出来てうれしいです。」
「というわけで、君達には彼女達の吹き替えをお願いしたいと思います。」
「えっ?女の人間に変身ですか?」
「これは聞いていませんでした。」
「まさか異性になるなんて。」
「何だか恥ずかしいですけど。」
ベロベロと裏切り小僧は思わぬ展開に動揺してしまった。
「これも映画のためよ。それに、君達も有名になれるチャンスだから、頑張ってくださいね。」
「分かりました。」
裏切り小僧Aをはじめ、4人は不安を感じながらも、ソフィアの後押しを受けて気合いを入れた。
そして、6人はまずソフィア、マーニャ、ミネアを相手に戦闘の訓練をした。
訓練が終わると一旦休憩になり、その後はいよいよ変化のつえで本人の吹き替えをすることになった。
しかし、最初は全然似ておらず、何度もやり直しになってしまった。
すると、ベロベロAがやっとマーニャそっくりの姿に変身した。
「それなら確かにあたしとキュウリ2つね。お見事っ!」
「姉さん、ウリ2つですよ。」
「あら、そう?」
「そうよ。こんなところで言葉を間違えないで。」
「はあい。まあ、とにかく、その姿なら合格よ。」
「ありがとうございますっ!」
彼(見かけ上は彼女)は深く頭を下げた後、洞くつ内をその姿で走り回るシーンに移った。
(おっ!何だか首から20センチほど下の部分が騒がしいような気がするんですが?)
彼はこれまで経験したことのない状況に、思わずとまどってしまった。
そして、「すみません。ちょっと気になることがあって…。」と言い出すと、物陰に向かって駆け出していった。
すると、ミネアに変身したもう一人のベロベロも同じことが気になったため、そちらに向かっていき、隠れてしまった。
(一体どうしたのかしら?)
(まさかとは思うけれど…。)
胸騒ぎを感じた本物のミネアとマーニャは、足音を立てないように忍び足でそっと向かっていった。
そして、顔をそっと出してのぞきこむと…。
「キャアアッ!君達、そこで何しているのよ!!!」
「コンプラ違反で大炎上してしまうじゃない!!!」
2人は大声を出すやいなや、連続でビンタ攻撃をくらわせた。
「んもーー、いきなり何するんですか。マジで痛かったんですけれど…。」
「ちょっとくらい、いいじゃないですか。せっかく異性になれたのに…。」
元の姿に戻ったベロベロ2人は顔中が真っ赤に腫れた状態で肩を落としていた。
(いやー、マジ危ないところだった。)
(僕達も同じ目にあうところだった。)
かたわらにいる裏切り小僧2人は声には出さなかったものの、額にはいくつもの汗をかいていた。
その後、本物のマーニャとミネアは彼らが変身することにすっかり抵抗を感じるようになったため、当初のプランを変更することをソフィアに提案した。
「分かりました。では、お坊ちゃんとベロベロは変身を取り止めて、私と勝負をするシーンに専念してもらうことにしましょう。」
マーニャ「それが良さそうね。本当に油断したら大変なことになりそうだから。」
ミネア「でも私達に変身して会話をするまでのシーンは誰にやってもらうのですか?」
「それは残りのこちらの方にお願いすることにしましょう。やってもらえますか?」
ソフィアは裏切りお嬢2人に声をかけた。
「じゃあ、私達はソフィアさんの役はやらないんですか?」
「そのとおりです。ですから、君達はそれぞれマーニャとミネアに2回変身してもらうことになります。」
「ということは、2人そろって2回ずつ出られるんですね?」
「はい、そうです。引き受けてくれますか?」
「もちろんです!」
「頑張ります!」
彼女達は当初、ソフィアに変身してから時間差で1回ずつ出てくる予定だったが、結果的に2回出演することになり、喜んで同意をした。
(※その後、彼女達は戦闘面で不安を露呈し、さらに元の姿で出演することに抵抗を感じていることを打ち明けたため、本物のマーニャとミネアと会話をして勝負をするシーンがカットになりました。)
その結果、裏切り小僧とベロベロは戦闘の訓練に、裏切りお嬢は人間役に専念することになった。
(とはいえ、予定を変更したせいで、男性陣4人の出演シーンが当初よりも減ってしまったわね。どこかで埋め合わせをしなければ…。)
ソフィアは魔物達が頑張る姿を見ながら、何かいいアイデアがないか考え続けた。
その後、練習が終わると、彼女は大灯台で4人をもう一度出演させることを提案した。
「というわけで、君達には後日、現地に集まってもらい、一人はルーラを唱えて頭をぶつける役を、残りの3人は聖なる種火の宝箱を守る役をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか?」
「えっ?それは…。」
小僧2人はその場で決めることが出来ず、それまでずっと無言で様子を見守っていた炎の戦士(彼らの父親)に聞いてみることにした。
その結果、炎の戦士は自分を大灯台のボスの一人として出演させてくれるのであればという条件でOKを出してくれた。
「分かりました。では。監督さんに予算を工面してもらい、予定を合わせることにします。」
ソフィアは自分の判断で同意をすることにした。
するとそこにマーニャとミネアの姿のお嬢2人がやってきた。
「そうですか。役には満足出来そうですか?」
A「ええ。首から20センチ下が豊かになりましたから。」
B「そのお陰でソフィアさんに変身するより満足でした。」
「ちょっと!何よそれ!つまり私のは小さいってこと!?」
ソフィアは思わず頭に血がのぼってしまい、彼女達に詰めよってきた。
ミネア「まあまあ。いいじゃないですか。」
「良くないわよ!世の中には言っていいことと悪いことが!」
マーニャ「アリーナさんは『いいじゃない。アレなんか小さくったって。』と言っていましたよ。」
「どうか彼女を見習ってください。」
2人はキレてしまったソフィアをなだめるのに必死だった。
とりあえず、色々とドタバタはあったものの、その後は順調に物語が進んでいった。
しかし、撮影が終了すると、ベロベロと裏切り小僧は即座にマネマネのところに行き、変身するための修業をすることにした。
一体彼らは何を考えているのだろうか?
今回は時間をさかのぼって、第5章の序盤で登場する裏切りの洞くつのシーンを発表しました。
この作品は僕が発表にこぎつけるためのラインである3000字に届かなかったため、一旦はボツにしました。
その後、サイト内でやり取りをしている人に見せたところ、結構好意的な意見をいただきました。
それを受けて内容を大幅に加筆、変更をしたうえで、正式に発表することにしました。