映画のオーディションを突破し、王宮の戦士に抜てきされたライアンは、銅の剣と皮の鎧を身につけてバトランドの城にやってきた。
(はあ…、緊張しますね。何しろ、初めてのことばかりですから...。)
彼はこれから役割をまっとう出来るのか、不安で仕方なかった。
しかし、それは城にやってきた他の兵士達も同じだったため、そのおかげで少しは気持ちが落ち着いた。
撮影が始まるとライアンをはじめ、何人もの戦士達の前に王様がやってきた。
「皆のもの、楽にしてよいぞよ。最近、子供達がいなくなるといううわさはお前達も聞いておろう。」
彼は母親達が心配していることや、ことの真意を確かめたいことを話すと、戦士達に出撃を命じた。
「かしこまりました。必ずや、真相を明らかにしてまいります!おまかせください!」
ライアンはみんなを代表して、威勢よく答えた。
すると、そこからはみんなが単独行動になり、彼は一人で行動することになった。
兵士達が続々と外に出ていく中で、ライアンはしばらくの間城内で情報を集め、さらに単発バイトのような仕事をこなしてお金を貯めた。
そして皮の盾と薬草を手に入れると、いよいよイムルに向けて出発していった。
しかし、一人での旅は予想していた以上に厳しく、しかも彼は素早さが低いため、相手の攻撃が一通り済んでからようやく行動することが多かった。
(うーん、これではHPが高くても体が持ちませんねえ。何とかしなければ。せめて、誰か回復役がいれば…。)
彼は地道にレベルを上げながら対策を色々考えた。
ライアンは洞くつを抜けて、何とかイムルに到着すると、すぐに皮の帽子を購入して守備力を上げた。
そして薬草を補充すると、ここで情報を集めることにした。
その結果、(途中ですごいものを見てしまいますが)記憶を取り戻したアレクスから重要な情報を得たため、彼はイムルの東にある立て札のところにやってきた。
「ふむ、なるほど。この立て札から東にある森の中に何かあるのか。それが何なのかは現時点では分からんが、とにかく行ってみることにしよう。」
彼は現在の太陽の位置を参考にしながら方角を確認し、その場所へと歩いていった。
するとそこには井戸のようなものがあり、しかも中からは「こっちへ、おいでよ…。」という声が聞こえてきた。
「ムムッ!この声は誰なんだ?どうやら悪意のあるような声ではなさそうだが…。」
ライアンが迷っていると、ふと井戸の中から再び同じ声が聞こえてきた。
「行くべきか、やめるべきか。どうしようか…。」
彼が腕組みしながら考えていると、ふと誰かのセリフが頭をよぎった。
『迷わず行けよ。行けば分かるさ。』
(※この後のセリフはカットさせていただきます。)
気がついたら、ライアンは右手を高々と上げて「ダアーーーッ!!」と叫んでいた。
「おっと、いけないいけない。つい、やってしまった。」
ふと我に返った彼は、気持ちを切り替えて井戸の中に入っていくことにした。
(うーん、このリアクションは台本になかったし、本来ならNGにするところだが、案外おもしろそうだ。このまま本編に使ってみることにしよう。)
ソロは意外な状況にも動じず、このまま次のシーンに移ることにした。
そして、10分間の休憩時間が終わって撮影が再び始まると、ライアンはいよいよ井戸の中に入っていくことになった。
しかし、あろうことか、ここで着ている鎧が井戸にはさまってしまった。
「うおっ!これはっ!助けてくれ!」
あせった彼はその場でジタバタしていたが、入ることも出ることも出来ずにいた。
「ちょっと監督さん!助けてください!」
さすがにラチが開かない状況に焦ったライアンが叫ぶと、そこにソロがやってきて彼を引っ張り出そうとしたが、それでも抜けなかった。
「ど、どうしましょう…。」
思わぬハプニングにソロが頭を抱えていると、そこに休暇中のソフィアがノコノコとやってきた。
「あら、これは大変な状況になりましたね。」
「そんなことより、とにかく何とかしてください!抜けないんです!」
「分かりました。では、その井戸に思いっきり飛び蹴りをお見舞いしてみましょう。」
「おおっ!それで解決するんでしょうか?」
「とにかくやってみます。私は昨日、アリーナが壁を壊すシーンを見ましたから、それを参考にします。」
ソフィアはうまくいくことを願いながら10歩程度後ずさりをした。
そして、そこから助走をつけて向かっていき、思い切り飛び蹴りをお見舞いした。
「バキッ!」
その蹴りは見事に会心の一撃になり、その衝撃でレンガが崩れたため、ライアンはようやく自由の身になった。
…はずだったが、彼はそのまま井戸の底に落ちていってしまった。
「ぐおおおおっ!これは痛い!」
「あっ、ごめんなさい。大丈夫?」(←井戸の上から叫んでいます。)
「大丈夫…、と言いたいところだが…。」
ライアンはお尻を強打してしまったこともあって、痛みで立ち上がることが出来なかった。
「大丈夫ですか?今僕が治療してあげますから!」
井戸の奥で出番を待っていたホイミンは状況を理解すると大急ぎでやってきて、即座にホイミを唱えた。
しかし、それでもライアンは立ち上がれるようにはならず、その場に座り込んだままだった。
「ちょっとみなさん!こっちに来てください!」
思わぬハプニングに焦ったホイミンはとっさに大声で井戸の中にいるホイミスライム達を呼ぶことにした。
その結果、現地に生息している彼らが総出でホイミを唱えながら治療をした。
その後。ようやく立ち上がれるようになったライアンは彼らに何度もお礼を言った。
「どういたしまして。元気になって良かったです。」
ホイミンが答えると、他のホイミスライム達も満面の笑みを浮かべた。
するとホイミンはライアンと一緒に行動をしたいという気持ちを持つようになり、思い切って打ち明けることにした。
「いいでしょう。私も一人では心もとなかったので、ぜひ協力をお願いします。」
「わーい!ありがとう!」
ホイミンはその場で飛び上がって喜び、仲間に加わってくれた。
するとそこに他の3匹のホイミスライム達も仲間に加わりたいと要請してきた。
A「よろしくお願いします!」
B「私も協力させてください。」
C「一緒に頑張りたいです。」
彼ら(Bはメス)の気持ちはライアンにもよく理解出来たが、映画では敵対する関係である上に、仲間はホイミンのみの予定になっていたため、彼はいいえを選択した。
A「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
B「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
C「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
A「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
B「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
C「そんな、ひどい…。お願いします。仲間に加えてください。」
「いいえ。」
ライアンは何度も断り続けたが、ホイミスライム達は引き下がらなかった。
「あの、ソロさん。これではラチが開きませんから、何とか解決策を教えてくれませんか?」
「そうですね…。では、今回の井戸の撮影ではライアンとホイミンがホイミスライム達と勝負することにし、撮影が終わったらその3匹をスタッフとして迎えることにしましょう。」
A「スタッフってどういうことですか?」
「つまり、この後の場面では君達も撮影に協力してもらいながら、出演者の回復役という形で貢献してほしいと思っています。」
B「回復役でしたらもってこいですね。」
C「それなら喜んでお受けいたします。」
彼らはソロの提案を迷うことなく受け入れた。
「分かった。では、よろしく頼んだぞ。」
「はいっ!」
ホイミスライムAは笑顔で返すと、自分の名前をホイムンと名乗ることにした。
するとそれに続いてBはホイラン、Cはホイロンと名乗ってきた。
(何か、どこかで聞いたことあるような…。)
ソロは思わず首をかしげながらも、それを口に出すことはしなかった。
その後、映画の撮影が再開となったため、ホイムン、ホイラン、ホイロンは1匹ずつライアンとホイミンに勝負を挑んでいった。
その後、晴れてスタッフの一員になった3匹の彼らは、撮影の合間に戦いで傷ついた出演者達の回復役を担当した。
その中で彼らはホイミンと同じ気持ちを持つようになり、機会あるごとに「早く人類になりたい!」と言うようになっていた。
(そのセリフもどこかで聞いたことあるな…。何だろう…。)
ソロはそれが何か思い出せずにいたが、これが後に流行語になることを予感していた。
さらに彼は今回ライアンの身に起きたハプニングが思わぬ形で人間とホイミスライム達とのきずなを生み出したことを喜んでいた。
なお、ソフィアが壊してしまった井戸は彼女がシンシアと協力しながら修復中だったため、ライアンが井戸に入るシーンは後回しになってしまった。
翌日。ようやく準備が整ったが、彼は別の場所に行っていたため、シンシアがライアンのところに行ってモシャスを唱えて変身し、キメラの翼でイムルにやってきた。
(※シンシアはルーラも唱えられる設定にしていますが、ライアンに変身している間は呪文が使えなくなるため、キメラの翼になりました。)
そして彼女が吹き替えという形で撮り直しが行われた。
後に第5章でホイミンが人間になった時、他のホイミスライム達も願いを叶えることが出来た。
それを記念して、彼らはライアン達と再会した時、「いいな いいな 人類っていいな」と歌いながら踊りを披露した。
それは導かれし者たちの間で好評だったため、後にモンバーバラの舞台でも披露することになった。