映画ドラゴンクエストⅣ オモシロ場面集   作:地球の星

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第3章 レイクナバ北の洞くつ

 雇われ店員として店で働いているトルネコは、この日も愛する妻ネネと息子のポポロのために実を粉にして働いていた。

 しかし、「働けど働けど、我が暮らしワーキングプアなり、そっと手を見る。」という日々だったため、彼はこの状況を打破するために店番をしながら何かいいアイデアがないか考えていた。

 そんな中、お店にやってきたお客の男性から「簡単に稼げる仕事があります。誰でも出来ます。決して怪しいものではありません。」という話を聞いた。

 それに心を動かされたトルネコは家族に相談を持ち掛けようとしたが、相手からは「今すぐに来てほしい。早い者勝ちです。後で後悔しても知りませんよ。」と言われてその場で契約書にサインするように求められたため、間髪入れずに決断をしなければならない状況になってしまった。

「分かりました。では、1日だけなら…。」

 彼がペンを持ってその紙に手を伸ばそうとした時、ソフィアが店にやってきた。

「すみません。この武器を…、って、あなた、今何をしているのですか?」

 突然彼女の声を聞いて、お客は驚き、思わずあたふたとしてしまった。

「いやあ、ちょっと単発の仕事をこの店員さんに紹介していたんですよ。あなたもやってみませんか?誰でもあっという間にお金持ちですよ。」

「私はそんな言葉にはのりません!ちょっとその契約書を見せてください!」

 ソフィアの堂々とした態度を見た途端、お客の表情は見る見るうちに曇っていった。

 そして慌ててその紙をわしづかみにすると、「こうなったらあんたからお金をむしり取ってやる!女だからって手加減はしねえぞ!」と言い放った。

「ちょっ、ちょっと!ここで戦闘はやめてください!私はただ、家族のためにお金が欲しかっただけで…。」

「それがワナなんです!これは8・3・8・1・10です!のったら最後、抜け出せなくなって、一生を棒に振ってしまいますよ!」

「そんな、まさかこれが8・3・8・1・10だなんて。」

「とにかく私を信じてください!」

 トルネコとソフィアが会話をしていると、お客はしびれを切らしたのか、ソフィアめがけて先制攻撃を仕掛けてきた。

 しかし、彼女はうまく攻撃をかわすと、相手のすねに強烈なキックをお見舞いした。

 すると彼は痛がりながらよろめいてしまった。

「くっ、おのれっ!」

「さあ、もう一方のすねにも攻撃を受けてみますか?」

「そ、それはっ…。」

 もし両足に攻撃を受ければその場に倒れ込んでしまうだけに、相手の男性は途端に戦意を喪失してしまった。

 そして「覚えてろよ!顔覚えているからな!」と捨てゼリフを吐いた後、ケンケンをしながらその場を去っていった。

「あの、ど、どうも…。」

 トルネコは状況がまだはっきりと理解出来ていなかったため、どう感謝していいのか分からなかった。

 しかし、ソフィアの話を聞いて、これが典型的な8・3・8・1・10の手口であることや、これに引っかかった人がその後、どんな人生を歩んだのかを打ち明けた。

 それを聞いて、ようやくトルネコも自分が被害者になりそうな状況に置かれたことを理解し、彼女に感謝をした。

 そして、続けざまに自分の経済的な事情についても正直に話すことにした。

「そうですか。分かりました。あなたも大変なのですね。」

「はい。それでも生活していかなければなりませんから、どうしてもお金が必要なんです。」

 彼の切実な気持ちを聞いて、ソフィアはソロが監督をつとめている映画の出演オファーを出すことにした。

「えっ?その話は本当ですか?」

「はい。今、出演者を募集しているところなんです。良かったら、監督に会って話をしてみませんか?」

「ぜひお願いします!では、今日の仕事を終えたら、ソロさんに会わせてわせてください。」

「かしこまりました。では、私は今から彼のところに行き、交渉に行ってきます。」

 ソフィアはトルネコからの要請を受けて、持っていた武器を売った後、早速キメラの翼で飛び立っていった。

(この話を本当に信じていいのかは分からんが、あの女性の目は純粋だ。彼女を信じてみることにしよう。そして、仕事が終わったらネネとポポロにも話すことにしよう。)

 トルネコはソフィアに感謝をしながら、その日の仕事を頑張ってこなした。

 

 その後、ソロに会って面接を受け、無事に出演が決まったトルネコはこの日、レイクナバ北の洞くつに向かうことになった。

 それを聞いた彼の妻ネネと息子のポポロはその様子を見に行きたいと言いだした。

 最初、トルネコはどうしようか迷っていたが、そうしているうちにネネとポポロが協力して3人分のお弁当を作り出したため、それに感化されて一緒に行くことにした。

「本当に楽しみね。どんな感じになるのかしら。」

「ボク、パパの頑張る姿を見るの、すごく楽しみ。」

 お弁当を作り終えた2人は、ワクワクしながらトルネコと一緒に外に出た。

 そして、左からトルネコ、ポポロ、ネネという順番に横並びし、手をつなぎながら北を目指していった。

 

 彼らが洞くつに到着した時、現地ではソロやライアン(大道具を担当)をはじめとするスタッフが待っていた。

「みなさん、お待たせしました。」

ソロ「おはようございます。今朝はお楽しみだったようですね。」

「ちょっ、ちょっと!ライアンさん!変なこと言わないでください!」

「冗談ですよ。私はあなたに家族がいることがうらやましかったんです。」

「とはいえ、誤解を招いたらどうするんですか!」

「そうよ。毎朝チューはしていますが、お楽しみとは違いますから!」

「ちょっ、ちょっと!ネネまで!」

 トルネコはライアンに加えて妻にまでツッコまれてしまい、思わず顔が真っ赤になった。

 そんな中、ポポロは不思議そうな顔をしながら首をかしげていた。

「どうしたんだい?何かあったのか?」

「ねえ、パパ。お楽しみってなあに?ボクにも作れるの?」

「だあああっ!」

 息子のおとぼけ発言を聞いて、トルネコは思わずずっこけてしまった。

(うーーん、どこかの赤毛の魔法少女が言っていたことと似ているな。誰だっけ?)

 ソロは腕組みをしながらふとその場面を思い出した。

 

 その後、彼はソロと洞くつでの演技の仕方について話し合った後、いよいよ撮影に取り掛かった。

 しかし、入ってすぐに大ミミズの群れに出くわしてしまった。

 幸い相手は戦う気がなく、ただ通り過ぎていっただけだったが、そのような生き物を初めて見たポポロは思わず叫び声をあげてネネの陰に隠れてしまった。

「コラコラ、君。今、撮影中なんだから、黙っていてください。」

「あっ、息子のせいですみません。」

「だってこんなの見たらビックリするでしょ!」

 ネネがソロに謝る一方、ポポロは撮影というものが分っていないのか、思わずくってかかってしまった。

 それを見たトルネコは慌てて息子をなだめ、本番中は何があっても静かにしているように忠告した。

「でもさあ…。」

 彼はなかなか納得してくれなかったが、このままでは自分のせいで撮影が延びていってしまうことを自覚したため、素直に従うことにした。

(※この後、トルネコが壁のボタンを押して下の階に向かうシーンは諸事情で書きたくなかったので、カットさせていただきます。)

 

 地下4階では大岩(実際はハリボテ)に追いかけられる場面に挑戦した。

「トルネコさーん、準備はいいですか?」

「いいですよ。どうぞ!」

 彼がゴーサインを出すとライアンは背後から岩を押して動かした。

「うわああーーーっ!逃げろーーーっ!」

 トルネコは大慌てで走っていき、途中の分岐点でうまくよけた。

 その直後、岩はまっすぐにゴロゴロと転がっていき、先にある大穴に落ちて止まった。

「ふう…。これで通れるようになった…。」

 彼がほっと一息つくと、そこでカットがかかったため、休憩時間になった。

 するとライアンはハリボテの岩を穴から出し、今度は彼やスタッフが協力して本物の大岩を用意し、穴に入れる作業を行った。

 その間、トルネコはネネとポポロと一緒に少し早い昼食をとることになり、洞くつの物陰に隠れるような形でお弁当を食べ始めた。

「はい、あなた、卵焼きよ。アーン。」

「やめてください。誰かが見ているかもしれないと思うと、恥ずかしいです。」

「ええっ?誰も見ていないじゃない?気にし過ぎよ。」

「でもねえ…。」

 トルネコが赤面していると、今度はポポロが「はい、パパ、アーン。」と言いながらソーセージを差し出してきた。

「あのねえ…。」

「ええっ?」

 息子までもネネに影響されてしまい、トルネコはその場で苦笑いを浮かべるばかりだった。

 

 食事も終わり、撮影が再開になると、彼は階段を降りていき、地下5階にやってきた。

 そこには先程よりは小さいものの、岩が置いてあった。

 しかし、トルネコはそれを無視してそのまま奥に進んでいってしまったため、ここでカットの声がかかった。

「あのねえ。この岩を押して進んでいくんですよ。」

「あっ、すみません。うっかりしていました。」

 トルネコはソロに向かって頭を下げた。

 テイク2が始まると、彼は今度こそ岩を押しながら進んでいった。

 しかし、右折した先に宝箱が見えてくると、小部屋に入る前に押すことをやめて先に進んでしまったため、これもNGになってしまった。

「よいしょ、よいしょ…。」

 カットがかかっている間、ライアンが頑張って岩を元の位置にまで押し続けた。

「本当にすみません…。」

「こちらにとってはいい運動になっていますから、心配しないでください!」

 ライアンは力強い口調でトルネコを励ました。

 しかし、テイク3では押している最中でつまずいて転んでしまい、次のテイクでは岩を小部屋の入り口付近で止めてしまった。

 そのため、宝箱を開けて扉が閉まっていった時に岩に当たってしまった。

 さらに次のテイクでは岩を小部屋の突き当たりまで進めてしまったため、後ろから押せなくなってしまった。

「本っっ当にごめんなさい…。」

「まあ、いい運動になっていますので…。」

 ライアンは相変わらず威勢よく返事をしたが、すでに肩で息をしており、疲れが見えているのは明らかだった。

「あなた、今度はうまくいくわ。頑張って!」

「パパ、ファイトーーッ、百ぱーーーつ!」

「はい、分かりました。」

 NG続きのトルネコは悔しさでいっぱいだったが、ネネとポポロの励ましを受けて、何とか冷静さを取り戻した。

 

 次のテイクではやっと所定の位置に岩を置いたうえで宝箱を開けた。

 その結果、見事に鉄の金庫を手に入れただけでなく、岩をその宝箱のあった場所に置くことが出来、扉は無事に開いていった。

(よし!長かったが、やっとOKになった!)

 トルネコはこれまで自分のせいで多くに人達に迷惑をかけてきただけに、心の底からほっとした。

 しかし、扉を開ける係を担当していたライアンが途端に「ヘーッキシンッ!!」とくしゃみをしてしまった。

 するとトルネコの近くにあった石柱の1本が徐々に傾いていき、今にも倒れそうになった。

「あっ、あなた!危ない!」

 ネネの叫び声に反応したトルネコは急いでかわしたため、事故にはならずに済んだ。

 しかし、石柱は鉄の金庫に直撃してしまい、その衝撃で柱が真っ二つになってしまった。

「ちょっと!今度はあなたですか!?」

「ごめんなさい。わざとではないんです。でも、まさか私のくしゃみでこんなことが起きるなんて…。」

 ライアンは平謝りしながらも、部屋の中で起きたことが信じられずにいた。

 

 割れた石柱は直すのに時間がかかりそうだったため、以降はそれがなるべく映らないように工夫をしながら撮影をすることになった。

「本当に頼みますよ。何とか早いところOKを出してください。」

 ソロはすがるような気持ちでトルネコ達に声をかけると、再び撮影が始まった。

 しかし、その瞬間にライアンが再び大きなくしゃみをしてしまい、またNGになってしまった。

ソロ「ちょっとおっ!」

トルネコ「勘弁してください!」

「ごめんなさい!」

 ライアンは再び平謝りをしていたが、その際、ネネは小部屋の天井から何かミシッという音がしたことに気が付いた。

「あなた、すぐにこっちに来て!」

「えっ?どうしてですか?」

「いいから早く!」

「でも、まだ撮影が…。」

 トルネコは最初こそ移動することを渋っていたが、その時、自分の肩に何か細かい砂や砂利のようなものが当たったことに気が付いた。

 そして上を向くと、天井はミシミシと音を立てながら、不穏な雰囲気を出していた。

(まずい!本当に事故に巻き込まれてしまう!)

 身の危険を感じた彼は、大急ぎで駆け出した。

 そしてソロやライアン、ネネやポポロ達と一緒に小部屋から離れたところへと避難していった、

 それから10秒後。天井はさらに大きな音を立てながら崩れていき、鉄の金庫はすっかりがれきに埋もれてしまった。

 その様子を一行は「わあああーーーーっっ!!」と叫びながら、なす術なく見つめていた。

 

ネネ「どうしましょう…。こんなに崩れてしまったら…。」

トルネコ「こうなってしまっては『ダメだこりゃ』ですね。」

ソロ「仕方ありません、鉄の金庫無しで話を進めましょう。」

 彼らが話をする中で、ハプニングの原因を作ってしまった(?)ライアンは、手を合わせながらひたすら謝り続けていた。

 

 




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