サントハイムを出発した後、アリーナ、クリフト、ブライの3人は、ミントスを目指して進み続けた。
しかし、映画の演出の影響で減量をしていたクリフトは空腹と闘い続けていたこともあって、体調がいまいちすぐれなかった。
「ねえねえ。大丈夫?何だか顔色悪いけれど…。」
「だ…、大丈夫です…。姫をお守りする立場の私が、こんなところでダウンするわけには…。」
「その気持ちはうれしいけれど、それじゃ旅なんて無理よ。お願いだから、休みましょう。」
「わしのルーラで再びサントハイムに戻っても良いんだが…。」
「せっかくここまで…、来たのに…、私のせいでそうなるのは…嫌です…。何としても…、ミントスに…。」
クリフトは懸命に大丈夫であることをアピールしたが、(半分は演技とはいえ)体調不良であることは誰の目にも明らかだった。
「こうなったら、クリア命でミントスに行くしかないわ。」
「では、ここで聖水を使うことにするぞい。」
「分かったわ。頼んだわよ。」
アリーナの頼みを受けて、ブライは袋から早速そのアイテムを取り出して使用した。
その甲斐あってその後はエンカウントすることもなく進むことが出来、一行はようやく目的地に到着した。
「ハイ、カット。3人とも、ご苦労様。」
ソロの合図とともに、それまで悲壮感にあふれていた3人の表情は一気に明るくなった。
「いやー、病気の演技ってかなりしんどいですね。何だか本当に病気になりそうな気分です。」
緊張感から解放されたクリフトは誰よりもほっとし、出された食事をこれでもかとばかりに口に詰め込んでいった。
食事が終わると、彼は湯たんぽを体に当てて、熱を出している状態の準備をした。
「さあ、これからが本当の意味での本番ですね。何だか気が重いです。」
「頑張って!これも映画をヒットさせるためよ!」
「あっ、はい、姫。」
彼は熱さを我慢しながら、アリーナの励ましに応えた。
そして休憩時間が終わりに近づくと、クリフトは(湯たんぽで)熱を出した状態でベッドに入って横になり、アリーナが両手で彼の右手を握った。
するとここでソロから「アクション!」という号令がかかったため、クリフトはここから病人として演技をすることになった。
「ねえ、クリフト。大丈夫?」
「とても…、大丈夫では…、ありません…。本当に…、申し訳ない…。」
彼はさっきまでとは打って変わり、ぐったりとしたまま、弱々しい声で返事をした。
「困ったわねえ…。一体熱はどれくらい出ているのかしら…。」
アリーナは困った表情をしながら手を離し、自分の顔をクリフトの顔に近づけていった。
(えっ?えっ?姫、何をするんですか?こんな展開は聞いてないですよ。)
意外な展開に彼が思わずドキッとしていると、アリーナは自分の額を当ててきた。
(ええっ!?まっ、まさか、これってキ、キ○の額バージョンですか!?こんなの台本に無いですよ。いいんですか?)
クリフトは彼女のアドリブに驚きながらもそれを声には出さず、じっと横たわったままドキドキしていた。
「うーーん…。これはかなりの高熱ねえ。これでは旅を続けられないわ。何とかして病気を治す方法を見つけないと…。」
アリーナは顔を上げて上体を起こすと、自分の手を額に当てて首をかしげた。
するとここで「はい、それではここでカット!」というソロの声がかかったため、撮影が一旦中断になった。
「あら、監督さん。ここでカットなの?ということは、これってNG?」
「いえ、そう言うわけではありません。個人的には2通り撮影して、一方を採用するつもりで考えていますので。」
「そういうことなのね。じゃあ今度はさっきとは少し違う演技をしてみるわね。」
アリーナはその場で次はどのようなことをしようか考えだすと、クリフトががばっと起き上がった。
「あ、あの、監督さん、すみません。」
「何ですか?」
「この場面って、台本は用意していないんですか?」
「最初は用意するつもりだったんですが、アリーナにはあえてそうしない方がいいような気がしたので、試しにこうしてみたんですよ。」
「ああ、なるほど。そう言うことですか。分かりました。」
「というわけで、君には先の読めない展開になるから、少々負担が増えるかもしれんが、何とか頑張ってほしい。いいでしょうか?」
「も、もちろん、大丈夫です。頑張ってやらせていただきます!」
クリフトは威勢よく返事をした。
(やっ!やった!これは願ってもない展開だ。正直、病人の演技をするのは大変だし、早く終わってほしいと思っていたが、姫がそばにいてくれるのであれば、かえって好都合です!出来ることなら、もう一度ではなく、何度でも撮り直してほしいです!)
彼は表情やジェスチャーにこそ出さなかったが、心の中では大はしゃぎだった。
「ねえ、どうしたの?顔が赤いけれど。」
「えっ?そ、そんなことはありません。演技に熱が入っているだけです!」
「そうかしら。ちょっと確かめてみるわね。」
アリーナはすかさず手袋を外した状態で右手を伸ばし、クリフトの額に当てた。
「やっぱり熱いわね。本当に大丈夫かしら…。」
「私なら心配いりません!とにかく演技に入りましょう!」
「そう。まあ、私もあんまり時間をかけたくないし、それにセリフも浮かんだから、早く取り掛かりましょう。」
「はいっ!分かりましたっ!」
クリフトの威勢のいい返事を聞いて、アリーナは両手を握りながら気合を入れた。
撮影が再開になると、アリーナは素手でクリフトの手を握り、やさしい言葉をかけ続けた。
(ひっ、姫が私に寄り添ってくれている。私に本当に好意を持ったかのように演技をしてくれる。こんなうれしいこと、今まであっただろうか。これはまさに天国だ。私は幸せだ。恐らく多くの男性読者が「クリフト!代わってくれ!」と言っていることでしょう!)
彼は苦しそうな演技をしながらも、心の中では大盛りあがりの状態で、赤面しながら演技を続けた。
その後、パデキアの根っこに関する情報を仕入れたブライがやってきたため、誰か一人がそのアイテムを探しに行くことになった。
「それじゃ、私がそれを探しに行くことにするわ!」
アリーナは迷うことなく名乗りをあげた。
「そうか。分かった。じゃあ、わしがここでクリフトの看病をすることにするぞい。」
ブライがそう言うと、それまでやる気満々だったクリフトの表情が一変した。
(そんな、ひどい…。姫が出かけてしまうなんて…。)
彼はショックのあまり、身体中の力が抜けてしまった。
「とはいえ、姫様。一人では危険じゃ。誰か仲間を見つけて、一緒に行くのがよいじゃろう。」
「あらそう…。出来れば一人でも行きたかったけれど…。」
アリーナはなかなか納得出来なかったが、それでも最終的にブライのアドバイスに従うことにした。
そして一緒に行動してくれる人達を探しに行くことを告げると、部屋を後にしていった。
「というわけで、この後はわしがそばにいるから、頼んだぞ。」
「は、はい…。分かりました…。」
クリフトは本当に病人になってしまったかのように、力なく返事をした。
(うう…。何だかすごい脱力感に襲われています。こんなじいさんが私の額に手を当ててもうれしくないです…。姫、お願いです。どうか早くパデキアの根っこを手に入れて、ここに戻ってきてください…。)
彼はこれまでの至福の時が一変してしまい、今度は顔を青ざめさせながらベッドの中でぐったりとしていた。
なお、それからまもなくソフィア達一行が到着し、彼女達はガチで病人状態のクリフトと対面した。
一方、アリーナはキメラの翼でブランカの城に飛び、そこで別のパーティーに出会った。
そして彼女が事情を説明すると、戦士、兵士、詩人の3人が一緒についてきてくれることになった。
「本当?どうもありがとう!」
「どういたしまして。仲間が増えてうれしいです。」
「では、パデキアの洞くつに早速行くでござる。」
「絶対に目的のアイテムを見つけましょうね。」
彼らは気合を入れながら目的地へと向かっていった。
その途中、アリーナはこれまで見たこともない一羽の鳥を見かけた。
彼女は当然その鳥の名前も知らなかったので、同行している人に聞いてみることにした。
「あれはクリフトリです。」
詩人の人が答えると、アリーナの表情が途端に切なくなった。
「そう…。そういう名前なのね。『クリフト』を名前として持っているならば、聞いてみることにするわ。クリフトリよ。ミントスにいる私の仲間は無事でいるの?」
彼女が鳥に向かって問いかけると、他の3人はその気持ちを感じ取ったのか、みんな涙腺ウルウルになっていった。
その後、ブライがソフィア達のグループに加わり、アリーナが戻ってくると、クリフトの表情は一変し、再びイキイキした表情で病人の役を演じることになった。
(やっぱり、姫が看病してくれるのは格別です。私にとってこんなにうれしいことはありません。姫、今ここに約束します。これから、もし姫がピンチになった時には、誰よりも率先して回復をします!)
彼が心の中で誓った言葉は嘘ではなく、本心であった。
その証拠に、ある戦闘でアリーナのHPが残り40%程度になり、ブライが25%以下になった時に、彼は迷うことなくアリーナにベホイミを唱えるという行動に出た。
「こりゃあっ!お主はわしがピンチの時に何を考えとるんじゃ!」
ブライは自分が無視されたことで怒りが収まらず、戦闘終了後にクリフトに詰め寄った。
「す、すみませんでした。次は気をつけます。」
彼は帽子を取り、頭を下げて謝ったものの、心の中では1ミリも反省をしていなかった。
そんなクリフトの血迷った行動は他のキャラにも注目の的になっていた。
マーニャ「本当に彼、どうしたのかしらねえ。」
ミネア「もしかしたら、病気なのかしら?」
ソフィア「それってもしや、恋の病ってやつなのかしらね。」
かたわらでその様子を見ていた彼女達はこの状況を打開するために、再びパデキアの根っこを手に入れることにした。
「クリフト君。お願いがあるんだけど、これ、君のために用意してきたから、飲んでみて。」
ソフィアの行為は元々台本に無かったことだけに、クリフトは驚き、とまどっていたが、その隙をつかれてすりつぶした根っこを飲まされてしまった。
果たして、彼の病(?)は治るのであろうか?
もし治ってしまった場合、アリーナ&クリフトの関係はどうなるのだろうか?
ソフィアはそれを気にしながらも、まるでからかい上手のアリーナさん状態の2人をうらやましそうに見つめていた。
(シンシア。今、どうしているの?私も出来ることなら、一緒に行動してみたい…。でも、映画の上ではあなたはああなってしまった以上、それは無理よね…。)
アリーナと一緒に行動することになった3人は、FC版とリメイク版で異なりますが、ここではFC版を採用しました。
特に理由があるわけでもないので、リメイク派の人はそちらに置き換えてもらって構わないです。
なお、今回は後日談がありまして、うp主とクリフトが対話をしました。
「どうでした?今回の病人役は。」
「食事制限もあってしんどかったですが、姫が看病をしてくれる時はまさに天国でした!この上なく幸せなひとときでした!」
「一体どれくらい幸せだったんでしょうか?」
「例えるなら、うp主がバーバラと2人きりで不死鳥ラーミアに乗って、空を飛び回っている時と言えば、分かりやすいと思います。」
「おおっ!それは分かりやすい!確かにあれはこの上ない幸せでしたっ!!!」
「その幸せを、私も体験してみたいです。」
「分かりました。では、今からルイーダのところに行って、クリフトとアリーナを登録しますね。」
「ぜひお願いしますっ!!!」
この後、彼らは3のHD-2D版を立ち上げて、思う存分プレイを楽しみました。
そして次の日。クリフトがソフィア達に合流すると...。
「ソフィアさん、お待たせしました。」
「おはようございます。夕べはお楽しみでしたね。」
「バレてーら。」
バッモーニーン!となったそうな…。