獣耳吸血鬼少女の売れないなろう作家が自作品を電子書籍にするようです   作:左高例

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19話『キャラデザインを考えよう!』

 

 

 

「無事に絵師さんから連絡が来て、快諾してくれたのじゃー!」

「やりましたわね、カレーちゃん」

 

 カレーちゃんが新刊の表紙イラストを頼めないか、廃墟となったグループチャットで秘密会話を行ったところ色よい返事があったようだ。

 ついでに「廃墟を利用するのはちょっとアレですから」と当然のことを言われて、Discordに案内された。

 カレーちゃんはDiscordのことをこれまで見たこともなくて全然知らないが、まあとにかくチャット会話で今後やり取りをするらしい。

 

「感謝なのじゃ! とりあえずこれで間違いはあるまい!」

「とりあえずは表紙イラストを発注するんでしたわね」

「そうじゃのう。表紙が綺麗で可愛いイラストなら手に取ってくれる人は増えるじゃろうし。同人誌のアンソロ本だって表紙だけ凄腕のゲストに描いてもらって中を読むと寄稿してない! ってなる詐欺作戦をよく使っておる」

「具体的すぎますわ!」

 

 ※特に含むところはありません。

 ドリル子が首を傾げながらカレーちゃんに「そういえば」と尋ねた。

 

「表紙でしたら、既に出ている『ゾン曽我』の表紙を改めて注文してみたらどうですの? あれ、カレーちゃんがペイントでフォント埋め込んだだけの、今どきの小学生だってもうちょっと工夫するって感じでしたわよね」

「うみゅ……クールな感じでやったらどうかと提案してみたのじゃが、『あれはチープなほうが味があっていいので』って断られたのじゃ」

「快諾は!?」

「あくまで新刊の表紙のほうじゃな」

 

 カレーちゃんとしても二作品分の表紙イラストを頼むには懐が寂しいので、過去を振り返らずに新作を頼むことにした。

 さて、ドリル子が新たな疑問を口にする。

 

「ところで表紙って『どんな構図で~』みたいにカレーちゃんが指定するのかしら」

「いや、そこら辺は自由にやってもらう方針じゃのう。儂、デザイン系の知識や発想は全然じゃし。『明治なのである』の書籍のときも、儂は特に意見しなかったしのう。編集さんは色々指示していたような感じじゃったが」

「なるほど」

「儂も正直、ラノベの表紙ってあんまり詳しくないしのう。一時期のMF文庫の表紙がやたら赤い髪のヒロインだったぐらいしか印象に残っておらん」

「なんですのその印象……」

 

 それはさておき。

 

「表紙を描くのは良いけれど、表紙に出すキャラクターの容姿指定を欲しいと言われたのじゃ」

「容姿指定?」

「まあつまり、本文中で出てくる描写と矛盾しないようにしつつ、作者としてはこの主人公はどんな顔や体型をしているのかちゃんと説明せんといかんのじゃな」

「確かにそうですわね」

「一部のライトノベルでは、作中だと貧乳なのにイラストだと巨乳になっていたり、黒髪が金髪になっていたりといった意思疎通の失敗が時々見られるからのう」

「巨乳は単にイラストレーターの趣味な可能性もありますわね」

「コミカライズで乳を盛られることもあるから、まあそれぐらいは作風の範疇なのかもしれん」

 

 作風はともかく、しっかりと作者が指定したファイルを提出することで責任の所在というものも決まる。 

 設定表を出して作者が巨乳だとするのならば巨乳にすることに間違いはない。

 まあ、久しぶりに登場させたキャラの設定で巨乳にしていたら「このキャラ前に出したとき普乳の設定だったのでは?」と逆にイラストさんに聞き返されることもあったりするのだが。忘れていたのである。作者が一番キャラに詳しいわけではないのだ!

 

「よし、早速容姿設定を出してみよう」

 

 カレーちゃんはノートパソコンを立ち上げてテキストファイルを起動させた。相変わらずなにを書くにしてもメモ帳ソフトを使う物書きである。

 

「でも次にカレーちゃんが出すのって、電子書籍出版のノウハウ付きエッセイ本的なのじゃありませんでしたっけ」

「そうじゃな」

「だったら登場するのは主に作者であるカレーちゃんなのではなくて? ……写真でも送ればどうかしら」

 

 なにせカレーちゃんは素のままでも金髪ケモミミ美少女なのだ。配信などにも出ているし、人気もある。

 多少2次元ライズさせたイラストに寄せてくれれば十分ラノベヒロインっぽくはなりそうだ。

 だがカレーちゃんは顔をしかめて、

 

「いや……絵師さんに作者の似絵的な姿を描いてもらうのはアレじゃろ……自意識過剰みたいでつらいものがある」

「そんなこと気にしますの⁉」

「というわけで、ハウツー本の主役は儂を参考にした架空のキャラクターにしておこう。身バレもあるしのう」

「色んな意味で複雑になってきましたわね」

 

 大雑把にカレーちゃんが設定を考える。

 

「ネズミの獣人……ミッキマーちゃんでどうじゃ!?」

「カレーちゃん! そういう危険なネタに他人を巻き込まない!」

「正論すぎる」

 

 怒られて思わず素で返すカレーちゃんである。

 ただでさえ彼女の作品は歴史・宗教・人種などに配慮が必要なテーマが多いのだから、厄介な版権まで絡めてはいけない。

 そうでなくても江戸時代の衣服を調べて貰ったり、中世ヨーロッパの衣服を調べて貰ったり、と面倒をかけているのだから迷惑をかけないようにしよう。

 

「仕方ない、ネズミの獣人の……名前はポテトちゃんでいいか。フライドポテトが大好きなのじゃ」

「カレーちゃんも結構好きですわよね、フライドポテト」

「カレー屋でナンの代わりに頼んでカレーをディップすると美味いのじゃ」

 

 というわけでカレーちゃんのアバター的存在としてポテトちゃんを設定した。

 

 ポテトちゃんはネズミの獣人少女で黒髪黒耳。Fランなろう作家(書籍化1回)をしていて食い詰めたので同人小説を売り出そうという魂胆だ。

 顔はよくて巨乳でメガネで目隠れ系の陰キャオーラを出している。

 

「とりあえずこんな感じで設定しておくのじゃ」

「微妙にカレーちゃんからのズラしを感じますわね」

「あとはそんな感じの美少女を脳内でグッと想像して……設定表に落とし込む!」

「どれぐらい設定が必要ですの?」

「これぐらいじゃ!」

 

 

 ******

 

 

【重要度・登場頻度】

 

【キャラクター名・渾名】

 

【性別】 

 

【印象】 

 

【性格】 

 

【特徴】 

 

【年齢】 

 

【外見年齢】 

 

【身長】

 

【髪型・色】

 

【目の形・色】

 

【肌の色】 

 

【利き腕】

 

【体型】

 

【筋肉量】

 

【胸】

 

【足の長さ】

 

 

【身体能力的強さ】

 min□□□□□□□□□□max

 

【精神的強さ】

   □□□□□□□□□□

 

【美人度】

   □□□□□□□□□□

 

【親近感】

  □□□□□□□□□□

 

【性的魅力】

   □□□□□□□□□□

 

【本人のスケベさ】

   □□□□□□□□□□

 

【カリスマ度】

   □□□□□□□□□□

 

【高貴さ】

   □□□□□□□□□□

 

【自信家】

   □□□□□□□□□□

 

 

 

【服装】

 

【イメージカラー】

 

【シルエット】

【露出度】

   □□□□□□□□□□

 

【裕福さ】

   □□□□□□□□□□

 

【オシャレさ】

   □□□□□□□□□□

 

 

【靴】

 

【季節感】

 

 

【装備品、武器】

 

【アクセサリ】

【鞄(荷物量)、アイテム】

 

 

 

 ******

 

 

 

「なっが! これ全部決めますの!? 必要ですの!?」

 

 細かいキャラ設定表を見せられたドリル子は呻いた。

 

「キャラクターって……こんなに決めないといけないものだったなんて……」

「そうじゃのう。なんならもう一回貼るか?」

「行数稼ぎみたいなことは止めてくださいまし。はあー、『いい感じにお願いします!』ぐらいで終わるのかと思っていましたわ」

「まあ、絵師さんにも依るのじゃろう。そのあたりは。完全に丸投げする作者もたぶん居るじゃろうし。某主人公が幼女に転生する戦記作品の作者なんぞ主人公のことを全然幼女と思って書いておらんかった、という噂話もあるのじゃ」

「そういえばアレも、書籍版とアニメ版とコミカライズ版で結構デザイン違いますわよね」

 

 イラストレーターの中にも「細かく注文を受けたほうが描きやすい」という人もいれば「自由に描かせて貰ったほうがいい」という人も居るだろう。

 そこらへんは発注時に話し合いが必要なのだが、今回はこういった設定表を送ってもらったのでそれに合わせて設定することになる。

 ドリル子さんが提案する。

 

「こういうときってイメージを伝えやすくするために、『既存作品のあのキャラみたいな感じ』って言ったら駄目なのかしら」

「なるほど。『ぶっちゃけセイバーですw』理論じゃな」

「なんですのそれ」

「うむ。キャラのイメージを読者に伝えようとしたとある作者が、キャラの容姿をそう説明して物議を醸した理論なのじゃが……なんかググっても出てこんし、確かそんなことあった気がするよなあぐらいのうろ覚えなのでハッキリとしたことは言えぬ……」

「なんでそんな曖昧な記憶の単語を出しますの」

「思い出しただけじゃ」

 

 カレーちゃんも近頃は呆けてきたのか、記憶が曖昧になっているのだ。

 

「それはともあれ、既存のキャラ印象をつけるのは……これまた絵師さん次第じゃな。わかりやすくて良いって人もいれば、イメージが固定されて既存キャラにデザインが寄っちゃうので言うなって人もおる。発表した後で既存キャラのパクリなんて言われて叩かれるのは絵師さんの方になるかもしれんし、注意が必要じゃのう」

「なるほどですのね」

「特定のキャラ名を出したくないが近づけたい……というときは『チャット理論』という手法もある」

「ふむふむ」

 

 なにやら真面目そうな名前の理論だが、洗浄関係で使われるCHAT(Chemical Heat Agitation Time)理論ではないので注意である。

 

「これもとあるクライアントが使用した手法の又聞きじゃが……その依頼者はskebである絵師さんに、テイルズオブエターニアのチャットというキャラクターのイラストを頼みたかった。

 じゃが、その絵師さんは『二次作品は受けられません』という制約があったのじゃ。そこで依頼者は『金髪ベリショの平坦な体つきをしたややツリ目気味の褐色ロリで目は青で耳には大きな輪っかのイヤリング、額に逆三角形の白い宝石を付けたキャラをお願いします』と依頼してまんまと自分の好きなキャラを描かせたという……」

「こ、姑息ですわ!」

 

 ※解決はしたかもしれないが、騙し討ちみたいなやり口はあまり褒められたものではない。

 

「じゃがこの理論にも、キャラの容姿設定は詳細にすればイメージ通りにできるという知見も得られるのう」

「ま、まあともかくそれぐらい説明できれば、作者の脳内にあるイメージが齟齬なく伝わるってことですわね」

「うみゅ。作者の脳内にすら朧気にしかイメージが無いパターンも多々あるのじゃが……」

「そこはちゃんとイメージしておいて欲しいですわ」

「とにかく、最初からやってみるのじゃ!」

 

 頑張れカレーちゃん! 次回へ続く!

 

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