追放された。ヤケでダンジョンに潜ることにした。 作:ここで大喜利したかった
対戦よろしくお願いします
「優、そして春樹、お前らはこのパーティから追放する」
そんなことを俺、廣田優と親友、野村春樹がリーダーから言われたのは、このモンスターを倒せば一人前と言われるハイオークを三体も倒した帰りだった。
「……どうしてだ、これまで一緒にやってきただろ」
勿論、俺はリーダーに噛み付く。
俺達はずっと一緒にパーティを組んできた。
今更パーティを追放すると言われたところで納得できるはずがない。
「何を言っているんだ? お前らが役に立たないことなんて分かりきってるじゃないか」
しかし、俺達のリーダーは、頭がどうしようもなく残念だった。
これまで
それらのことを全て忘れて俺達を追放しようとしているのだ。
「リーダー、いくら何でもおかしいよ……」
「あ? なんか文句でもあるのか?」
「文句、しかないって……」
「あ゛?」
春樹も不満を言おうとするが、リーダーは圧で黙らせようとしている。
俺は、他のリーダー以外のメンバーの方を見つめるが、全くこちらの方を向こうとしない。
あいつらだって、この決定がおかしいと分かっているはずだ。
なのに、何故何も言わないんだ?
「……ごめん」
申し訳そうな顔をされたって困るんだ。
そんな顔をするくらいだったら
そして、何も文句を言わないメンバーを見て、リーダーは勝ち誇ったように言った。
「分かったか? お前らは必要とされてないんだ。じゃあさっさと出て行け」
それは、あまりに横暴で。
俺達の都合をすべて無視した酷すぎる決定だった。
◆◆◆
「クソッ、何でだよ!」
「優、気持ちは分かるけど落ち着こうよ……」
リーダー達から離れた後、俺は大いに荒れていた。
ダンジョン近くに設置されている休憩所を出たところまでは良かったが、それからはリーダーへの怒りが止まらないのだ。
春樹に迷惑をかけてしまっているとは分かっているが、腑が煮えくり返る思いは消えてくれない。
流石に物にはまだ当たっていないが、今のままでは時間の問題な気もする。
リーダーは、最後に嘲笑うかのような笑みを俺達に見せていた。
何で急に俺達を追放しようと思ったんだよ。
ちょっと性格がアレだとは昔から思っていたが、まさかあそこまでだったとは……
思い出したからなのか、余計に腹が立ってきた。
このままだと、更に迷惑をかけそうだ。
少し、一人になって頭を冷やすか。
「ごめん春樹、ちょっと頭冷やしてくる」
「う、うん。気をつけてね……」
そのまま、俺は春樹と一旦別れ、ちょうど通りかかった公園のベンチに腰を下ろす。
ふと顔をあげると、子供達が遊んでいるのが見えた。
「俺、大きくなったらダンジョンに潜って沢山モンスター倒すんだぜ!」
「ええ!? そんなん無理だろ!」
「無理じゃない! 俺はそのうちめちゃくちゃ強い能力を手に入れてモンスターを全員倒してやるぞ〜」
ダンジョンというものの現実を知らない、子供達の無邪気な声が耳に響く。
俺も、小さな頃はこんな事を言っていた。
けれど、現実はそんなに甘くなくて。
俺に生えてきたスキルは戦闘には殆ど役に立たない駄目スキルだった。
物語にはスキルが覚醒して、というものもあったけれど、勿論現実じゃそんなものはない。
弱い奴は切り捨てられて、強い奴が優遇される。
それが現実だ。
最近流行り出したダンジョン配信だって、派手なスキルを持ってる奴しか見てもらえない。
周りにも、これで一発当てようとして結局失敗した奴が何人もいる。
考えれば考えるほど、気持ちは沈んでいく。
自分が何をしたかったかなんて、もうとっくに忘れた。
そして、俺は。
いつの間にかダンジョンの方へ足を傾けていた。
◆◆◆
「すみません、ソロでお願いします」
「ソロ……ですか? 貴方の
「大丈夫です」
「……では、行ってらっしゃいませ。気をつけて下さいね」
俺は、ダンジョンの受付のお姉さんに、自分の実力を示すカードを渡してダンジョンの中へ入る。
先程の会話であった通り、ここは俺が一人で挑むには少し危険なダンジョンだ。
せめて、春樹を呼んでいればと思わないこともないが、彼を俺の癇癪に巻き込む訳にはいかない。
──だって、これは俺のヤケだから。
ダンジョンに入って直ぐ、第一階層と呼ばれているエリアは広場のような構造になっている。
ここでは、駆け出し達が今日も雑魚敵を倒しているのだ。
雑魚敵と言っても、スライムなどを舐めると顔に纏わりついてきて窒息させられることもあるから、注意が必要なのだが。
別にモンスターの素材が欲しいだけなら、ここで駆け出しと混ざって倒すのだけで良い。
それくらいだったら、俺でも出来る。
「……でも、ここじゃない」
俺が行きたいのはそのもっと先。
人型と呼ばれるモンスターが出てくるようになる第四階層だ。
そこは、俺が今日、リーダー達とハイオークを倒したところでもある。
俺の目的は、たった一人で今日倒したようなハイオークを殺すことだ。
無駄な消耗はしたくない。
だから、四階層に行くまでは極力モンスターと出会わないように気をつける。
それでも、遭遇してしまうことはあるので、その時は、気づかれる前に殺す。
こちらに気づいていないゴブリンを見つけた。
直ぐ様、近づいてその首に剣を振るう。
これで、ある程度までのモンスターに対しては対応が可能だ。
広場の様になっている第一階層では絶対に使えない不意打ちだが、狭い道が多くなる第二階層からは凄く役に立つ。
そして俺は、二層から三層へと、三層から四層へと階段を降りて進んでいく。
俺が、ここまであまり苦労しないで来れているのには、理由がある。
それは、このダンジョンでは第五層からしかフロアボスは存在しないということだ。
だから、俺みたいな推奨ランクに至っていないソロでも
それこそ、隠し部屋なんかに転移トラップに引っかからない限りは。
そうやって四階層の狭い通路を進んでいると、お目当てのモンスターを見つけた。
あれは、間違いなくハイオークだ。
あちらは、まだ俺に気づいていない。
そのため、さっさと近づいて首を切り下ろしたいところだが、ハイオークは警戒心が強い。
余程一瞬で距離を縮められない限り、途中で気づかれてしまう。
そして俺には、戦闘で役に立つスキルがない。
ハッキリ言って詰んでいる。
だが、俺はここまで来た。
簡単には諦められない。
気づかれても良い、アイツだけ絶対に殺す。
──ここだ。
「グ、グガッ!?」
アイツが警戒を解いた一瞬を狙う。
首は堅いが、切れない程じゃない。
「これで……どうだッ!」
「ウガッ、ガ、ガ……」
完全に切ることは出来なかったが、それでも生き物を絶命させるだけには充分。
ハイオークは俺を忌々しげに見た後、崩れ落ちた。
その瞬間、俺は途轍もない高揚感に包まれる。
別にあんなリーダー達と組まなくたって、このモンスターは倒せるんだ。
その事実が、また俺の気分を上げる。
しかし俺はこの時、ダンジョンで忘れてはいけない警戒を怠ってしまった。
そう、稀にある転移トラップの存在を。
「ッ!」
気がついた時はもう遅く。
俺は足元の光る魔法陣をただ見つめることしか出来なかった。
TS要素は二話目からです、申し訳ない