追放された。ヤケでダンジョンに潜ることにした。 作:ここで大喜利したかった
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床の輝きが収まり、視界が開ける。
そして、直ぐ様俺は剣を構えて周りを見渡す。
俺にとって、転移トラップは一度でも気を抜いたら殺されるレベルの罠。
しかもこれは、実力がある人でも逃れられない方が多い。
それくらい凶悪なものなのだ。
だから、集中が切れた時が俺の死ぬ瞬間だということが容易に想像できる。
周りは、信じられないほどに真っ白な空間。
本来ダンジョンにあるべき壁がどこにあるのかも想像がつかない。
試しに足踏みをしても、音すら鳴らなかった。
ダンジョンの仕組みはまだまだ分かっていないことばかりだとは知っていたけれど、まさかここまでだったとは。
そんな俺の耳に一つ。
先程自分では鳴らなかったはずの足音が聞こえてきた。
それと一緒に、感じたことがない威圧感を身に受ける。
俺は、足音が聞こえる方向に対して気を張り直した。
──段々と足音が大きくなる。
特に自分の体に異変はないはずなのに、その音が嫌に耳に残る。
そして見えてきたのは。
モンスターなんかではなく、言葉にも表せないような絶世の美女だった。
「ッ!」
けれど、威圧感は半端なものではない。
目の前にいるだけで意識を失いそうな、それほどの威圧感が彼女から放たれていた。
勝てない。
あまりダンジョンに潜っていない俺でも、それが分かる。
デコピン一つ、いや、何もしなくても人を殺す力を持っているだろう。
そんな、どうしょうもない力の差がある存在に対して、俺はただ死の時を待つことしか出来ない。
俺は、目を瞑り、殺されることを覚悟した。
しかし、中々殺されない。
殺されないどころか、何の行動も相手がしてこようとしてこない。
恐る恐る目を開け目の前の強大な存在を見ると、彼女は困惑したような表情を見せている。
あっちは俺のことなんてハエよりも小さな存在のはずなのに。
互いに相手の事を見つめ合う時間が始まる。
とても銀色の髪を腰の高さまで伸ばした彼女は、とてもこの世の存在だとは思えない。
「……人間、何故ここへ来た」
先に口を開いたのは、あちらの方からだ。
あまりにも突然に会話を切り出すものだから、思わず言葉に詰まってしまう。
「……もう一度問おう。何故ここに来た?」
もう一度彼女が口を開く。
それで、彼女が自分に何を聞いているのか分かる。
嘘を吐いてもしょうがない。
俺は、追放されたことから転移トラップのところまで話した。
言ったところでどうしようもないことは分かっている。
けれど、もしかしたら、もしかしたら何かあるかもしれない。
ただ、その思いが届いたのか、次に彼女が発したのは。
俺にとって願ってもないことだった。
「分かった、ここで出会ったのも何かの縁。少しではあるが其方に力を与えることにしよう」
目の前の存在が何なのかはもう俺にとって気にならない。
何か、裏があるのかもしれないがそれすらもどうでも良い。
俺は、思わぬ所から垂れてきた蜘蛛の糸に藁をも掴む気持ちで手を取った。
「あり、がとう……」
「礼は良い。ただ、ここは私の場所だから次はないと思え」
「帰りは……どうすれば?」
「安心しろ、其方が元いた所に戻してやる」
そう彼女が言葉を発すると、俺の周りがここに来た時と同じような光に包まれる。
「少しは代償があるかもしれないが、命には問題ないだろう」
最後に気になる言葉を言ってはいたが、力を貰えるだけで十分だ。
そして、光が完全に自分を包み──
◆◆◆
ダンジョンの壁が見えた。
足音は……ちゃんと鳴る。
間違いない、ちゃんと俺は帰ってきた。
転移トラップから、帰って来れたんだ……。
ただ、少し気になってしまうのは先程彼女が言っていた代償について。
命に代償は無いと言っていたとはいえ、何があるのか分からないので少し怖い。
これといって五感におかしい所は見当たらない。
視界はちゃんとしているし、音も聞こえる。
そして、歩き出そうとしたのだが、何か違和感が。
目線がいつもより低いのと、重心が今までと違う……?
そこで、俺は初めて自分の体を見た。
胸には、男であれば絶対にないはずの膨らみ。
「……は?」
慌てて、自分の体を確認する。
そこには、肩まで伸びたサラサラの髪。
そして、ちょうど良く丸みを帯びた体。
極め付けは、
自分の体に何が起こっているのかは分かる。
けれど、それはあまりにも現実からかけ離れまくっていた。
「代償って……これのことかよ」
間違いない。
代償は、男から女になってしまうというものだったのだ。
まだ貰ったという力がどんなものか分からないが、まあ中々大きな代償であることには変わりない。
……とりあえず、春樹の所に合流するか。
信じて貰えるかは分からないが、何とかなると信じて。
やはり、少し動きにくい。
腕の力が低くなったりしていないのが幸いだ。
流石に今の状態でハイオークは倒せないだろう。
帰る時に出会ったモンスターがゴブリンくらいだけで助かった。
それにしても、周りからの視線が気になる。
近くに鏡がなく今の自分の容姿が分からないのだからなおさらだ。
見た感じ服装はダンジョンに来た時と同じようだから、変に見られているのかもしれない。
ああ、もう。
ダンジョン内でもこんなに注目されるなら外に出たらどうなんだよ……。
早歩きでダンジョンを出て、春樹が住んでいる場所へ向かう。
ダンジョン内と同じく道行く人達からの視線に晒されているのを感じる。
自分が今どんな容姿をしているのかが気になってしょうがない。
早く沢山の人の目から逃れられる所へ行きたい。
そうして、さほど遠いはずではないのに何時間もかかったように感じる道を抜けて、春樹の家に着いた。
えっと……確かこのアパートの二階だったはず。
「どちら様でしょうか?」
よし、間違いなく春樹の家だ。
「俺だよ、廣田優」
「僕の知り合いに女の人で廣田優はいないんですけど……」
「色々あったんだよ、とりあえず開けてくれ」
「えぇ……」
そんなやり取りを何回か繰り返し、やっとドアが開く。
出てきたのは、勿論春樹。
ふぅ、やっと人にジロジロ見られないで済む。
「いや……あなた誰ですか?」
しかし、春樹は目の前にいる俺を、俺だと認識してくれない。
「いやいや、だから廣田優だって。多分女になってるけど」
「顔のパーツも違うと思うよ」
……どうしたら信じてくれるんだ?
春樹の言い方的には、元の俺とはかけ離れた容姿になっているようだし、どうすれば良いか分からない。
「あ、そうだ。二人しか知らない思い出でも語れば流石に信じるだろ?」
「そう、だね。じゃあ僕が初めて倒したモンスターは?」
「スライムだろ、それも魔石が複数あったやつ」
「えぇ、本当に優なの……?」
「そうだって言ってるだろ」
そんなこんなで、やっと俺は家の中に入ることが出来た。
いやぁ、それにしても元の面影が無いほどに変わっているのか……。
覚悟を決めてやったこととはいえ、冷静になってみると中々辛い。
「優、ちょっと鏡見てみなよ」
そんな中、春樹が俺に声をかけてくる。
ああ、そういえばまだ今の自分の容姿を見てなかった。
そして、俺が春樹に促されるまま洗面所へ行くと、そこには。
俺がダンジョンで出会ったような、これまた人間とは思えないような美少女が映っていた。
「……え?」
ちゃんとTSさせることが出来ました、良かったです
初期案では親友をTSさせようかと思ってました