追放された。ヤケでダンジョンに潜ることにした。 作:ここで大喜利したかった
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「え? え……?」
女になっている事は分かっていたが、いくら何でもこれは予想外だった。
改めて鏡を見る。
そして映るのは、勿論先ほど見た黒髪の少女。
髪の長さや目の色こそ違うものの、ダンジョンで出会った彼女にそっくりな顔。
もし彼女の隣に並んだら、親子と思われるかもしれない。
それくらいそっくりだ。
どんな仕組みでこんなことになってしまっているのやら。
自分の頭がどうにも想像すらつかない。
顔の細部は違うのに、やっぱりどうしてもそんな面影を残している。
何故だ、よく分からない。
……それにしても、頬やらなんやらが本当に柔らかいな。
男の頃は全体がゴツゴツとしていたのに。
そうして、しばらく自分の体を眺めたり触っていたりすると、春樹から呼びかけられた。
「優〜? いつまで自分の顔眺めてるの?」
「あ、いや……」
「なんかまだよく分かんないけど、今の優は可愛いんだから気をつけてね〜」
春樹は、俺がこんなことになってしまっても態度を全く変えないで接してくれている。
しかし、心なしか春樹の順応があまりにも早すぎる気がする。
なんならこの状況に対して俺より落ち着いているまであるような……。
いや、別に当事者ほどかは落ち着いているのが当たり前だとは思うけれど、それ以上落ち着きすぎではあるだろう。
「なあ春樹? ちょっと良いか?」
「何?」
「いくら何でも落ち着き過ぎじゃね?」
「そう?」
「いや、普通知り合いが女になって来たらもうちょっと焦るもんだろ……」
「こんなもんだよ。どうせ優のことだからダンジョンにでも潜って何かに巻き込まれたんでしょ」
これは、なんかはぐらかそうとしているな。
目が泳いでいるし、隠し事があるのは間違いない。
だが、こうなってしまったのは自分のせいだし、春樹の反応がおかしいからって探る必要はないのか?
いや、でもやっぱり気になるものは気になってしまう。
うーん……まあ今度聞くくらいにしておくか。
だっていくらなんでももう少しくらいは動揺するはず。
いくら変に図太い春樹だっても。
「あ、言い忘れてた。さっきも言ったけど、今の優は女の子なんだからもうちょっと色々意識した方が良いよ」
そんな中、春樹がそんなことを言ってきた。
そこで、そう言われた俺は自分の今の格好を見直す。
少し身長が縮んでいるせいかダボっとした服とズボン。
走ったことにより赤くなっている顔。
……確かに、これはちょっとマズイかもしれない。
なんなら、ちょっとどころかかなりアレだ。
「着替えた方がいいか……?」
「まあ、せめてサイズだけは合わせた方が良いと思うよ」
しかし、おそらく俺の家にも春樹の家にも今の俺に合うサイズの服はないはず。
買いに行く、という手もあるが、気持ち的にもうこの格好では出歩きたくない。
今の俺は、春樹と同じくらいの身長。
つまり、160cm前後だろう。
だがら、通販でそれくらいに合うサイズを見つけて買えば問題ない……多分。
「今通販で済ませようとか思ったでしょ」
「!? え、あ、ちょっ」
しかし、ホッとしたのも束の間。
いつの間にか俺は手を掴まれていて、ドアの方へ向かわされていた。
まるで心の声を読んだような言葉を言う春樹へというより、あまりにも早すぎる行動にビビってしまう。
「こういうのは実際に試さないと分からないんだよ、ほら早く行くよ」
せ、せめてもう少しだけ心の準備をする時間が欲しいのだけれど……?
あ、駄目ですか、そうですか……。
そしてそのまま、俺はなす術もなく外に連れ出されてしまった。
字面だけでは何かしらの誘拐事件すら想像できそうだが、いかんせん春樹は良く女に間違えられるほどの女顔。
絵面は仲の良い女友達の戯れのようになっていただろう。
あいにく、俺も春樹も男だが。
◆◆◆
「わぁ〜、優凄く似合ってるよ!」
「お客様、お似合いですよ」
「やめてくれ……本当に……」
それから少し経って。
俺は春樹と店員の人による褒め殺しにあっている。
この店員の人、どうやら春樹の知り合いだそうで、明らかに悪ノリが激しい。
さっきなんかはスカートだけは辞めてくれと言っていたのに、大量のスカートを持ってきた。
流石に男としてのプライドがそれを許さないので抵抗したが、結局着てしまったし。
ちゃんと似合っているだけになんか、もう辛い。
一応ズボンなどのボーイッシュっぽい服も何着かあったが、ちゃんと少数だった。
俺の事情とかを考えるとこっちの方を多く持ってくるものでは?
違う? そうか……。
いや、別にスカートが死んでも嫌だというわけではないのだが……。
だって似合ってるし。
「うーん、とりあえずはこれだけあれば良いんじゃない?」
「スカートだけは……せめてズボンを……」
「仕方ないなぁ」
しかし、そう言いながらも差し出されるのはかなり丈の短いスカート。
膝より短いのをはくのはいくら何でも勘弁してほしい。
余談にはなるが、これもなんだかミステリアスな感じを醸し出していて似合っていたのは言うまでもない。
この体、基本何を着ても似合うんじゃないかな。
そんな新手の尊厳破壊を終えて、俺はやっと一息をつくことが出来た。
服装が大事なのは自分でもわかっているが、どうしてもこれだけはちょっとこれからも慣れることが出来るかと言われると……。
はぁ、ダンジョンから帰ってきてから精神がどんどん幼くなっている気がする。
ちょっと前までならほとんど気にしなかったようなことを何個も気にしてしまう。
でも、女になるだなんて経験は今までしたことがないので気にしてしまうのも仕方ないはず。
……本当に仕方がないのか?
ま、まあいいか。
「春樹、ちょっとダンジョンによっていかないか?」
「なんでそんなに短いスパンで行こうとするの……戦闘が好きすぎるんじゃ?」
ついでにダンジョンに行こうとしたのだが、遠回しに駄目だと言われてしまった。
うーん、第一階層くらいだったら今の色々かわっている自分でも行けると思ったのに。
「自分の服装見たほうが良いよ?」
「ん?」
しかしよく考えて見ると、今の自分は戦闘に適した服装なんかじゃない。
むしろ、若干動きにくいような。
そんな印象を抱く丈の長いスカートをはいていた。
そういえば、色々あってこれを着たまま店を出たんだった。
流石にこれではゴブリンたちとの戦闘なんて到底無理だ。
記憶力とかもダメになっているのかもしれない。
気を付けないと。
「明日、もしくは明後日だったら僕も予定が合いそうだけど」
「マジ? めちゃくちゃちゃんと準備してくるわ」
「いきなり目を輝かすところとかダンジョンに取りつかれてるんじゃない……」
もう一度指摘されてしまった……。
そんなにダンジョンに対して飛びつくような反応なのか?
何かがおかしい気がするな。
そこで、俺は少し自分の言動を振りかえってみる。
……今まではいつも慎重に、ダンジョンに入る時はしっかり対策をしてから入っていた。
だが、今はどうだろう?
今は、自分の服装も忘れてダンジョンに飛びついてしまう。
確かに、これはいくらなんでも異常だ。
けれど、自分の中でそこまで意識は変わっていないはず。
現に今だって、ダンジョンに入るという事は危険が伴うことだとちゃんと理解しているから大丈夫だろう。
それでも、何かが自分の中で起きている。
その事実がどうも俺に不安を与えてくるのだった。
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