ホシノ推しには悪いですが鏑丸、動きます
ホシノかわいい
「あっ.....がっ......!」
月光に映えた銀の剣が機械仕掛けの兵士の顔を反射する。
表情がないというのに、その声色と動きによって銀の剣を担いだ男に恐怖しているというのは誰にでもわかるであろう事実であった。
「......ここはアビドスの自治区だ。貴様のような薄汚い蛸の足が入り込んで良い場所ではない」
銀の剣を右肩に当て、左手にはウィンチェスターレバー式ショットガンを手に持った男は
そして、ゴリ、とその脳天にショットガンを突きつける
「ひっ......」
「貴様の主人に伝えろ」
そのまま容赦なく、そのトリガーを引いた。
機械の兵士は声も出せずに機能を停止し、未だに記録を続けているメインカメラは月明かりに照らされた剣と、その表情を映していた。
「......次は本物の悪夢を見ることになる」
そのカメラすらも銀の剣に貫かれ、記録を終えた。
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「だぁーっ!!またこんなチラシなんかに騙されて!!ユメ先輩は恥ずかしくないんですか!?」
砂だらけの校舎に、少女の声が大きく響いた。
「う、うぅ......ごめんねホシノちゃん......」
「今回は兄さんと私で助けられましたけどもっと危ない奴らだったらどうするつもりだったんですか!!」
生徒会室と書かれた教室で、三人の男女がテーブルを囲んでいた。
ショートカットに切り揃えられた桃色の少女
長髪の翡翠色の少女
どちらとも人間の少女であるのだが、ただの人間との相違点があるとするのなら、2人の頭上にはふわふわと天輪が浮かんでいること。
「『シュク』兄さんからも何か言ってやってください!」
そして、『ホシノ』と呼ばれた少女はパイプ椅子に座っている白桃色の青年......自身の兄に視線を向け、『梔子ユメ』への説教を求めた。
「危なかったけど、僕はユメちゃんが無事だったから、安心」
ゆったりとした、悪く言えばどこか間の抜けたような声で青年は________『小鳥遊シュク』は答えた。
もちろんその答えは妹の『小鳥遊ホシノ』の望んだものではない上に責任感も何もないセリフだった。
「ホシノちゃんも、そんなにかっかしないで、ね?」
「っ〜〜〜!兄さんユメ先輩に甘すぎじゃないですか!?」
「次も、僕とホシノちゃんで助けてあげればいいんだよ」
危機感のない兄、死ぬほどにお人好しの先輩。
その板挟みとなっている彼女の気苦労は計り知れないだろう
「私もこれからは気をつけるから......許してほしいなー......なんて......」
2人の視線に、ついにホシノは折れた。
「......はぁ......次からはもっと相手のことをちゃんと疑ってください。それか兄さんを通してからああいうチラシのバイトに応募してください」
このやりとりも何回目か。ホシノはため息を吐きながら結局お人好しの先輩を許すほかなかった。
「ありがとね、ホシノちゃん」
「ちゃ、ちゃんと次からは気をつけるから.......!」
「......ここまで信用ならない言葉もあまりありませんよ......」
「ひぃん......」
謎の鳴き声を発するユメはシュクの隣に隠れるように椅子に座った。
「次からね、気をつけよう」
「はいぃ......」
隣に座ったユメを慰めるようにシュクはその頭を撫でる。
「うぅ......シュクくんママァ......」
撫でられているユメは抱きつくようにシュクに全体重をかける。
そんな甘えた猫のようなユメを、シュクは聖母の如く受け入れた。
「..................」
そんな様子を見ていたホシノは、シュクを取り囲むように反対隣の椅子に腰掛けた。
少しむすっとした表情のまま、ホシノもシュクの肩に頭を乗せ......ようとしたがホシノの小さな体躯ではシュクの二の腕に抱きつく程度しかできなかった。
「ごめんね、ホシノちゃんも頑張ったね。えらいよ」
「......ん......」
ホシノもまた、シュクからの撫でに身を預けた。
生徒会室ではよく見られる、兄妹同士のスキンシップ。
側から見ればくっつきすぎとも思える行動だが、これが日常となっているせいで特に違和感も覚えない
「......むぅ......」
今度はホシノに集中し始めたシュクに、ユメは抱擁の力をさらに強めた。
何がとは言わないが、女子高生の発育の暴力がシュクの腕に押し付けられる
「ユメ先輩くっつきすぎです」
「え〜......たまには私にもシュクくん貸してよぉ......」
「貸すも何も兄さんは誰のものでもないでしょうが......」
グイグイと自分の体を押し付けるユメを兄から引き剥がそうと奮闘するホシノ。
幼馴染に構って欲しいが故おかしな行動に移り始めたユメ
普通に取り合いである
「......僕の体は二つもないよー......」
アビドス生徒会、生徒会長『小鳥遊シュク』
副生徒会長『梔子ユメ』、書記『小鳥遊ホシノ』
計三名、アビドス生徒会……いや
アビドス高等学校の総生徒数である。
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「ほんとに......あの人はどれだけ理想家なんですか......」
「仕方ないよ、ユメちゃんだから」
「それにお人好しすぎます」
「アビドスを復興させようと必死になってくれてるんだよ」
シュクとホシノの2人は学校の備品を買うためにアビドス郊外の小都市を訪れていた。
余談だがユメはお仕置きとして1人で書類仕事中である。
「......それに......くっつきすぎなんですよ......」
さっきまでの不満をホシノは小さく吐き出し、手元のショットガンのチャンバーを手持ち無沙汰にカチャカチャといじる。
そしてシュクは銀の杖をガツガツと音を立てながらついて歩いていた
「ホシノちゃんもお兄ちゃんにもっとくっついていいんだよ?」
「うへっ!?」
だいぶ小声でつぶやいはハズだというのに、シュクはそのホシノの声を聞き逃さなかった。
まさに地獄耳である。
「まぁ、ホシノちゃんももう高校生だもんね、恥ずかしいか」
「あ......いや、えっと.........」
気恥ずかしさとトクトクと早る心臓に急かされたせいで、ホシノの口は言葉を発しない。
「ごめんね。子供扱いは嫌だよね」
そう言いつつもシュクはホシノの柔らかな髪を優しく撫ぜる。
頭を撫でるのはどうやら彼の中では子供扱いに当たらないらしい
ホシノは悶々としつつ、シュクは兄として満足そうに目的の雑貨屋に到着。
「チョークは......もういっか。今はホワイトボードだけだし」
昔から使っていた名残か、シュクは大容量のチョークの箱を手に取りかけた手を引っ込める。
「代わりに水性ペンにしましょうか。まぁ、多少値は張りますけど......」
2人が雑貨棚を左右するたびに腰に下げられた
どちらとも同じ銃種ではあるものの、ホシノの最新式の自動排莢式ショットガンに対し、シュクのショットガンは排莢を手動で行う
肩紐を通し、いつでも両手で持てるようにしてあるホシノ。制服の上にホルダーをつけ、左手で取れるようにしてあるシュク
注視すれば見えてくる違いもさまざまだった。
「あとは......」
杖の石突きでむフローリングを傷つけないように杖を持ってシュクは店内を練り歩く。
「おやまぁ、ホシノちゃんかい?」
「こんにちは、お婆さん」
「先月ぶりですね」
すると、店の奥から先ほどのシュクと同じように杖をついた犬のような見た目の高齢の女性が出てきた。
もっとも、シュクとは違い女性の足は本当に悪いようだが。
「......ああ、シュクくんもいたのね、いらっしゃい......ごめんなさいね、最近あまり目が見えないの......」
ホシノの挨拶に続いて聞こえてきたシュクの声でようやく女性はシュクの声に気づいたようだ。
「もう歳ね」
「言うほどでもないのでは......」
「あら、お世辞が上手な子はきっと出世するわね」
もう見えているかどうかもわからないその瞳を薄め、孫を見るような瞳を2人に向けた。
「今日もありがとう、最近はめっきりお客さんも減っちゃってね......来てくれるのはもうあなたたちくらいよ」
「それじゃあこれからも顔を出しにきますね」
「ふふ......そう言ってくれると楽しみが増えるわねぇ.........でも、お断りさせてもらうわ」
女性は古めかしいレジスターを軽やかに打ち、会計を終えた。
「ちょうど今週、アビドスを出ることにしたの」
「......そう、ですか」
その言葉は、今になってみれば意外な言葉ではなくなっていた。
アビドス自治区
学園都市キヴォトスでも有数の巨大校、アビドス高等学校の自治区。
一時は多数の生徒会長を抱えるほどの力を持っていた.........のだが
「また、遊びに来てください」
「ええ、たまに会いに来てもいいかしら?」
「歓迎します」
今ではその巨大な砂漠の猛威により、自治区のほとんどが砂に埋もれた。
そのせいでアビドスには多額の借金だけが雪だるま式に降り積り、今ではシュクたちだけが最後の生徒となっていた。
それに伴って、アビドスの住人たちもゆっくりとだがアビドスを離れていっている
「......ところで、なぜここを離れるか、聞いてもいいですか?」
シュクは、いつも通りの調子でそう聞いた。
「確か、カイザーさん?って会社から立ち退きの連絡が来てねぇ......最近は足も悪くなってきたし、そろそろ潮時かと思って孫のところに引っ越す予定なの」
「......そうでしたか」
瞬間、一瞬シュクのヘイローにノイズのようなものがかかったのをホシノは目撃した。
一瞬すぎるが故、ホシノは見間違いだと判断したようだが
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「カイザー」
ガツガツと、真夜中の路地裏に杖をつく音が響く
「カイザー」
白桃色の頭髪をした誰かが、杖を力強く地面に突き立てながら路地を進む
しきりに何かの名を呟きながら
「ホシノちゃんとユメちゃんだけには手を出させやしないさ......誰にも」
そして、呟きと杖の音が止む
どうやら彼は目的地に到着したようだ
「......開けろ、私だ」
いつも通りの穏やかな声など見えぬ、冷ややかで威圧的な声色
その声に応じて、目の前の自動扉が静かに開いた。
路地裏から入り込んだとはまるで思えないほどに小綺麗にされた広いロビー
その中心の通路に、背丈の高い黒いスーツを纏った『大人』が立っていた。
「......お待ちしていました.........クックック......」
彼もまた、普通の人間と呼べるような格好をしていない
顔のように見える黒い仮面、その仮面には大きな白いヒビが細かく入っており、にんまりと笑ったような不気味な人相を作り出していた。
「......今日は、黒服」
「ええ、今日は」
白桃色の青年________________小鳥遊シュクは、目の前の男を黒服と呼んだ
そして、黒服は彼を
「コラプサー」
と、呼んだ
小鳥遊シュク
アビドス高等学校三年生
所属
『ゲマトリア』
フロム構文とか書ければいいんだけど全然そう言うのには才能ないからなぁ…….