「さて、私が今貴殿に問いたいことを理解していないとは言わせない」
齢十七歳とは思えない口上で正面のソファに座った黒服をシュクは鋭い眼光で睨みつけた。
だが、やはり黒服も大人。威圧感があるとはいえ子供の睨み程度に怯むほど弱くはない
「ええ、理解していますとも。コラプサー」
黒服は心底楽しそうに、正面で銀の杖を抱えてテーブルにショットガンを置いた少年の姿をそのひび割れた仮面に映し出した。
「その名で呼ぶのはやめてもらおうか」
コラプサー、と呼ばれたシュクは露骨に嫌悪の表情を浮かべ、ガサツに組んだ足を再び組み直す。
コラプサーというのはいわゆるゲマトリア内での字名のようなもの。自身の素性を隠し、他のゲマトリアと円滑なコミュニュケーションを組み上げるための手段の一つでもある。
詰まるところ、ゲマトリア内だけの愛称のようなものである。
「良いではないですか。私は気に入っていますよ」
「貴殿が気に入っている気に入っていないの問題ではない。私は私の名に誇りを持っている。貴殿のようにコロコロ名前を変えてはしゃぐような気楽さも持ち合わせていないものでな」
蒼い瞳孔だけを黒服に向け、片目を瞑る。
シュクの心情的には目の前の男は直視に値しないという意思の表れである
「......では、これまで通り『シュクさん』と呼ばせて頂きます」
「......ああ、それで良い」
話が脱線したが、ようやく2人は本題について議論をかわし始めた。
「私が解いたいのはあの下賎な蛸どもだ。アビドスにあんな粗野な足取りで彷徨かれてはユメちゃんやホシノちゃんにいつ危害が及ぶか分からない」
「......ちゃん、ですか」
「何か?」
「いえいえ、気にせずに」
どんな時でもホシノとユメの呼び方を変えないシュクに黒服は少しの感服を抱きながら、話し続けるシュクに再び目線を移した。
「カイザー、と言ったな。貴殿はあの蛸の大元と取引をしていただろう」
「ええ、大変ご厚意にさせていただいている『お得意様』です」
「ならば話は早いだろう。あの礼儀知らずの者どもをアビドスから退かせろ」
「......それは、どうにも________『ダァンッ!!』
轟音と共に黒服の座ったソファの背もたれに、大量の穴が空いた。
そして黒服の目の前にはテーブルに置いたショットガンを左手で持ち、銃口を黒服に向けたシュクの姿があった。
シュクの愛銃『Gehrman』が火を吹く
「NOの答えは聞いていない。貴殿に残されている選択肢は二つだけだ」
ジャコ、と金属音を奏でながらシュクはショットガンのレバーを倒して排莢。
銃口に再び弾丸が装填される
「YESかここで死ぬか......二つにひとつだ。選びたまえ」
銃口から燻る硝煙を黒服はじっと見つめ、一切慌てることもなくその銃口をしっかりとその瞳に焼き付けていた。
「私の答えは、変わらず『いいえ』とさせて頂きましょう。あなたとの関係性も重いものではありますが......こちらとしてもお得意様を失うリスクがある」
それどころか、黒服は物怖じひとつせず本音をそのまま語った。
「そのリスクを、あなたが上回れるというデータもまた存在しない。そして私はあなたの『共犯者』でもある」
黒服がそう言い切ったのち、シュクは腰のホルダーにショットガンを再度収納した
「.........ああ。貴殿のいうとおりだ。至極真っ当で、正答だ」
シュクは少し後悔を孕んだような口ぶりを唱えつつ、ソファから立ち上がった。
「すまない、言ってみただけだ」
そのまま入ってきた自動扉に向かって杖をつく。
遠慮のない杖突によってフローリングは傷つくが、黒服がそれを気にすることなどないだろう
「......お帰りですか?」
「......ああ。先ほどはすまなかった。後ほどその椅子代を弁償しよう」
入ってきた時よりも少し抑揚の高い声で別れの言葉を告げ、シュクは自動扉をくぐり去っていった。
「.........ふー.........」
シュクが出ていったのち、黒服はテーブルに置いたコーヒーを少し呷った。
砂糖もミルクも入っていないただのブラックコーヒー
「......相変わらず、規格外な方だ」
マグカップを握った黒服の手が、小刻みに震えていた。
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「......お帰りなさいシュク兄さん」
「た、ただいま......ホシノちゃん......」
シュクが家の扉を開けた瞬間、パジャマ姿のホシノが出迎える。
現在時刻は午前12時38分。
完全に深夜帰りのシュクをホシノは玄関先でずっと待っていたのである
「......入ってください」
「は、はい......」
ホシノは家の中の口調ではなく、いつも通りの敬語でシュクに接した。
シュクはホシノに言われるがまま家の中に入り、扉と鍵を閉めた。
「......お帰り」
そして、ホシノは家の中に入ったシュクに倒れ込むように抱きつく
「......うん、ただいま」
シュクもまたホシノを抱きしめ、桃色のショートカットを優しく撫でる
「......心配した」
「ごめんね......」
「こんな時間まで、どこ行ってたのさ」
「え、えと......お散歩?」
「随分長い散歩だね」
ホシノはあえて変えていた口調を家の中のものに戻し、できるだけシュクに体を密着させた。
「......もうご飯食べちゃったじゃん」
「うっ......その、ごめん」
「......ううん、いいよ」
側から見ればまるで付き合いたてのカップルのように見えるかもしれないが、2人は歴とした兄妹である。
ホシノは一度シュクの体を離し、シュクもまた玄関から室内に上がる。
シュクの生徒会長権限を用いて使わせてもらっている空き家に、2人は暮らしていた。
「どうしたの?」
「......せっかくだから、一緒に夜更かししようと思って」
諸々省いたが、風呂に入り寝支度を整えたシュクの元にお菓子の袋とゲームを持ったホシノがいた
「そっか、明日お休みだもんね」
「うん。だから久しぶりに勝負しない?」
いつもの低い声ではなく、少しテンションが高めのホシノにつられてシュクの声の抑揚も高くなる。
「いいね......お兄ちゃんの強さ見せつけちゃおっかな」
ホシノからコントローラーを受け取り、2人はベッドに腰掛けてテレビにゲーム機を接続する
「負けたら罰ゲームね?」
「受けて立つよ」
ホシノの挑発的な目線を受けながら、2人の夜はゲームによって更けていった。
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「......ん......」
ホシノは暖かな腕の中で目を覚ました
どうやらゲームをしているうちに2人で眠ってしまっていたらしい
「......うへ......お兄ちゃん......」
最近は気恥ずかしくて呼ばなくなった名前をホシノは何度か反復する。
「......大好き」
それは兄妹愛に相当するものか、それとも別の何かなのか
ホシノ自身も、それが何かは知らないままに
赤バー?!
まじでありがとうございます
そして私の曇らせ方針は2人をいちゃつかせるだけいちゃつかせて最後にどんの底に叩きつけます。何回も
だからもう少しだけお待ちください。地面に叩きつけるので